公正証書遺言作成にかかる費用|専門家にかかる料金や費用を抑えるコツも

公開日:2023年7月20日

公正証書遺言作成にかかる費用|専門家にかかる料金や費用を抑えるコツも_サムネイル

公正証書遺言の作成において、費用が気になっていませんか。たしかに一定の費用がかかりますが、費用を抑えるためのポイントがあります。

本記事では、公正証書遺言の作成にかかる費用や、専門家に作成を依頼した場合の費用を詳しく解説します。費用を抑えるコツもご紹介しているため、遺言書を作成したいと考えている方はぜひ参考にしてください。

そもそも公正証書遺言とは

遺産相続についての遺言書を作成し相続人に遺志を伝えたいと考えているのであれば、公正証書遺言の作成をおすすめします。公正証書遺言の作成方法や効果について知れば、きっとその理由がわかるはずです。

公正証書遺言とは

公正証書とは、公証人が作成した公正証書としての遺言書です。

そもそも公正証書とは、法律の専門家である公証人が作成する公文書を指します。公正証書には証明力・執行力があるため、公正証書として遺言書を残せば確実に遺言書を相続人に残すことが可能です。

遺言書は自宅で作成することも可能ですが、ルールが細かく定められており、せっかく遺言書を残しても無効になってしまう恐れがあります。しかし、公正証書遺言なら公証人によって証明される文書が作成されるため、無効になることはほとんどありません。

原本は公正証書を作成する公証人役場で保管されるため、紛失の心配もなく相続人に遺言を残せます。

「公正証書遺言の手続きの流れ」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

公正証書遺言の書き方と効力

公正証書遺言は、公証人役場に赴いて遺言者が直接公証人に対して内容を伝えて作成します。

法律の専門家である公証人が直接聞き取りをして遺言書を作成してくれるため法律上のミスがなく、内容の不備も防ぐことが可能です。原本は、公証人役場で以下の期間保管されると決まっています。

遺言者の死亡後50年、証書作成後140年または遺言者の生後170年間保存する

引用:Q4. 公正証書遺言は、どのくらいの期間、保存されるのですか?|日本公証人連合会

具体的な作成の流れは、以下の通りです。

  • 相続させたい財産を整理する
  • 遺言内容の原案を考える
  • 必要書類を準備する
  • 公証人2人に作成依頼をする
  • 公証人と事前打ち合わせをする
  • 公証人役場にて遺言書を作成する

また、公正証書遺言で認められる効力は、以下の通りです。

  • 誰に何を譲渡(相続・遺贈)するかの指定
  • 隠し子の認知
  • 特定の人物の相続権剥奪
  • 遺言執行者の指定
  • 保険金受取人の変更

公正証書遺言は公証人によって作成してくれる公文書のため、裁判でも高い証拠力が認められます。相続人同士の争いを防ぐことにも有効です。

ただし、公正証書遺言を作成するには一定の費用が発生する点に留意しなければなりません。

「公正証書遺言の書き方や効力、注意点」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

公正証書遺言の作成にかかる費用

公正証書遺言の作成にかかる費用は、大きく2つの費用に分けられます。

  • 共通してかかる費用
  • 専門家に依頼した場合の費用

専門家に依頼しなくても、公正証書遺言の作成は可能です。しかし、公正証書遺言作成のための手数料や必要書類費用は必ず発生します。

それぞれ詳しく確認していきましょう。

共通してかかる費用

公正証書遺言を作成する際、どのような場合にも共通してかかる費用の相場は4〜7万円程度です。内訳は以下の通りです。

公証人役場へ支払う公正証書作成手数料5000円〜
(財産の合計額によって変動する)
必要書類費用
(住民票・戸籍謄本・印鑑証明書など)
1000〜5000円
証人2人分の日当1万〜3万円程度
(1人あたり5000〜1万5000円程度)
用紙代(原本・正本・謄本)3000円程度
(遺言用紙1枚あたり250円、原本は4枚を超えた場合のみ用紙代が発生する)
公証人2人分の日当・交通費
(自宅や病院へ出張が必要な場合のみ)
公証人の日当:1日2万円(4時間以内なら1万円)
交通費:実費分

公証人役場へ支払う公正証書作成手数料は財産の合計額によって変動するため、人によって費用に大きな差が生まれます。手数料について詳しく確認しましょう。

公正証書作成手数料の計算方法

公正証書作成で発生する手数料は、遺言書に記載する財産の価格に応じて変動します。公証人手数料の基準表は、以下の通りです。

遺言書に記載する財産の価格手数料
100万円まで5000円
200万円まで7000円
500万円まで1万1000円
1000万円まで1万7000円
3000万円まで2万3000円
5000万円まで2万9000円
1億円まで4万3000円
3億円まで4万3000円に、超過額5000万円ごとに1万3000円加算
10億円まで9万5000円に、超過額5000万円ごとに1万1000円加算
10億円超え24万9000円に、超科学5000万円ごとに8000円加算

相続や遺贈を受ける人ごとに譲渡する財産の価格を計算して、基準表に当てはめて手数料を求めます。

たとえば、妻に5000万円、長男・次男それぞれに3000万円相続させるといった内容の遺言書を作成する場合、手数料は以下のように計算します。

  • 2万9000円+2万3000円+2万3000円=7万5000円

また、以下のように手数料が加算されるケースもあるため注意しましょう。

遺言加算全体の財産が1億円以下の場合は、基準表の手数料に1万1000円加算される
病床執務加算自宅や病院、老人ホームなどに公証人が赴むく場合は、基準表の手数料にその50%が加算される

さらに、専門家に作成を依頼した場合には専門家への費用が上乗せされます。

参照:Q7.公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?|日本公証人連合会

専門家に依頼した場合の費用

公正証書遺言は、主に以下の専門家に作成を依頼できます。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士

専門家に依頼するメリットは、遺言の内容を相談できることです。公証人とは事前に打ち合わせできるものの、「誰にどの財産を相続させるべきか」「相続税対策をするにはどう分けるべきか」といった相談はできません。

遺産分割の内容について詳しく相談したい場合には、専門家に依頼することをおすすめします。ただし、専門家ごとに必要な費用は異なります。それぞれ確認しましょう。

弁護士に依頼した場合の費用

弁護士は、法的な紛争を解決するための専門家です。費用相場は、以下の通りです。

  • 相談費用:1時間あたり1万円程度
  • 書類作成代行費用:15万円〜30万円程度(相続財産の総額に応じて変動)

相続に強い弁護士であれば、複雑な相続における相続トラブルを防ぐための内容を提案してくれます。

万が一、相続発生時に相続人同士で争いごとが起きたとしても遺言執行者として指名しておけば対応してもらえます。

司法書士に依頼した場合の費用

司法書士は、法律に関する書類を作成できる専門家です。費用相場は、以下の通りです。

  • 相談費用:1時間あたり5000円程度
  • 書類作成代行費用:8万円〜20万円程度(相続財産の総額に応じて変動)

なかでも不動産登記に強く、不動産が相続財産に含まれる場合に強い味方となってくれます。相続発生時の相続登記も手伝ってもらえます。

遺言書作成の費用相場は安価な傾向にありますが、相続紛争への対応はできないため注意しましょう。

行政書士に依頼した場合の費用

行政書士は、公的機関向けの書類を作成できる専門家です。費用相場は、以下の通りです。

  • 相談費用:1時間あたり3000〜5000円程度
  • 書類作成代行費用:8万円〜20万円程度(相続財産の総額に応じて変動)

比較的安価に公正証書遺言の作成依頼はできるものの、業務範囲が幅広いため相続に特化している行政書士は少ない傾向です。

相続が発生したときも相続争いや相続時の手続きには対応していないため、注意しましょう。

公正証書遺言の作成費用を抑えるポイント

作成費用を抑えるポイントイメージ

公正証書遺言の作成にお金をかけるよりも、ほかにお金を使ったり相続人たちにお金を残したいと考えたりする方は多いのではないでしょうか。

ここでは、公正証書遺言の作成費用を抑えるポイントについて解説します。知っておきたいポイントは、以下の3つです。

  • 自ら公証役場に行く
  • 証人2名を自ら用意する
  • 専門家に無料相談する

順番に確認し、無駄なコストを削減しましょう。

自ら公証役場に行く

自ら公証役場に行って公正証書遺言を作成すれば、費用が抑えられます。

病気や怪我などによって自ら外出できない場合、公正証書役場に行かなくても公証人が病床まで赴いて作成してくれます。一見便利に思えますが、その分手数料が5割増しになり、別途公証人の日当や交通費を追加で支払わなければなりません。

費用を抑えるためにも、自分の足で公証役場に行ける元気なうちに公正証書遺言を作成しましょう。

証人2名を自ら用意する

公正証書遺言作成の際に立ち合ってもらう証人2名を知り合いに依頼すれば、証人2名分の日当を抑えられます。

法律では、公正証書遺言の作成には証人2人以上の立ち会いが必要であるとされています。遺言書の内容が本人の意思であることを証明してもらうために必要です。

しかし、証人は誰でもなれるわけではありません。以下の要件に当てはまる人は公正証書遺言の証人になれないため注意しましょう。

  • 未成年者
  • 相続人・受贈者になる予定の人
  • 相続人・受贈者になる予定の人の配偶者や直系血族(子・孫・両親・祖父母など)
  • 公証人の配偶者や四親等内の親族、書記、使用人

これらに該当しなければ、友人・知人も証人になってもらえます。ただし、証人には遺言書の内容が知られてしまうため、知られても問題のない相手を選びましょう。

専門家に無料相談する

弁護士や司法書士の専門家に遺言書の内容について無料相談しましょう。専門家に依頼すると楽で安心ですが、どうしても費用がかかってしまいます。

しかし、初回のみ無料で相談を受け付けてくれる専門家もたくさんいます。無料相談の時間内に聞きたいことがすべて聞けるよう、事前に相談内容をまとめておきましょう。

相談時までに以下の内容をまとめておくとスムーズに相談できます。

  • 相続財産のリストアップ
  • 相続人・受贈人の予定者のリストアップ
  • 遺言書の原案

公証役場に行く前に、専門家と遺言内容の整理をしてから遺言作成に取り掛かる方は少なくありません。相続発生後に相続人同士が揉めない分割方法や意思が尊重される分割方法を知っておけば、のちのトラブルを防げます。

無料相談をうまく活用し、専門家の知恵を借りましょう。

まとめ

公正証書遺言の作成にかかる費用相場は、4〜7万円程度です。専門家に作成を依頼すると、さらに8〜30万円程度費用がかかります。ただし、相続遺産の総額によって大きく異なるため注意しましょう。

公正証書遺言には一定の費用がかかりますが、相続トラブル防止や意思を確実に残すといったメリットが大きいです。遺言書を残したいと思ったら、気軽に専門家の無料相談を活用しましょう。

著者紹介

安持まい(ライター)

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年7月20日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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