相続登記しないで滅失登記はできる?相続人が手続きする方法や必要書類まとめ

公開日:2023年12月14日

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「不動産を相続したけど、取り壊すなら相続登記はしなくていい?」
「相続登記しないで滅失登記することは可能?」

結論から言うと、相続登記しないで滅失登記はできます。

そこで今回は、滅失登記の手続きの流れや必要書類、費用について詳しく解説します。最後によくある質問をQ&A形式でまとめているため、ぜひ参考にして不安を解消してくださいね。

滅失登記とは

滅失登記とは、解体や取り壊し、焼失などで建物がなくなったときに行う登記です。滅失登記を行わなければ、実際には建物が存在していなくても登記簿上に建物が存在し続けてしまいます。

そもそも、住宅や会社、店舗などの建物は、建物や所有者の情報が第三者にも確認できるよう法務局でデータベース化されています。もちろん、法務局が調査して記載しているのではありません。所有者が登記申請をして、その情報をもとに登記されています。

そのため、建物がなくなった場合にも「建物が存在しない」と自動的に反映されません。建物がなくなったら登記記録に反映させるために滅失登記をする必要があります。

滅失登記の期限と罰則

所有者、または所有権の登記名義人は、建物がなくなってから1か月以内に滅失登記の申請をしなければなりません。

万が一義務を怠った場合、10万円以下の過料が課せられる可能性があります。申請期間が短いうえに罰則もあるため、早めに手続きを行いましょう。

滅失登記をしないとどうなる?

滅失登記をしないまま放置していると、10万円以下の過料だけでなく以下のような不都合が出てきます。

  • 登記上に建物のある土地に新しい建物を建てられない
  • 登記上に建物のある土地は売買できない
  • なくなった建物に固定資産税が発生し続ける

取り壊した建物が登記上「存在する」となっていると、再建築や売買取引がうまく進まない可能性があります。

また、市区町村役場は、建物が取り壊されている事実を知る機会がないため、固定資産税の義務があると判断します。無駄な出費が増えるため、滅失登記の手続きは期限内に済ませましょう。

相続登記をしないで滅失登記は申請できる?

相続した建物を解体するとき、相続登記をしないで滅失登記をすることが可能です。すでに存在しない建物について、相続登記する意味がないからです。そのため、相続登記の手続きを飛ばして、相続人が直接滅失登記の申請をします。

申請は、相続人の1人で行えます。すでになくなっている建物の滅失登記を行っても、他の相続人が不利益を被ることはないためです。

ただし、相続人全員での共有状態になっている建物については、建物の取り壊しについて相続人全員の同意を得る必要があります。

また、土地の相続登記は省略できません。更地にして売却する場合にも、土地の所有者であることを主張するためには相続登記が必要です。忘れずに申請しましょう。

滅失登記は誰ができる?

滅失登記の申請をできる人は、建物の所有者です。建物を共有で所有している場合、所有者のうち1人が代表して単独でも申請できます。

また、相続した建物の所有者は被相続人です。この場合、相続人が滅失登記の申請を行います。

もちろん、自分で本人申請をすることも可能ですが、専門家に依頼することもできます。滅失登記の申請手続きの代行は、国家資格を持つ土地家屋調査士に依頼することが一般的です。

手続きにかける時間のない方や、法務局での手続きに慣れていない方は、土地家屋調査士に依頼すると安心してお任せできます。

滅失登記を自分で申請するときの必要書類と費用

滅失登記を自分で申請するときに必要な書類と費用について確認しましょう。

必要書類

建物の滅失登記を相続人本人が申請する場合、以下の必要書類を準備しましょう。

  • 建物滅失登記申請書
  • 取り壊した建物を証明する書類
  • 建物滅失証明書(解体証明書・取り壊し証明書)
  • 解体工事業者を証明する書類
  • 相続を証明する書類
  • 状況に応じて必要な書類

順番に解説します。

建物滅失登記申請書

建物滅失登記申請書を作成し、提出しましょう。申請書のひな型が法務局の公式サイトに掲載されているため、ダウンロードして作成できます。

<建物滅失登記申請書>

様式(Word:ダウンロード/PDF:ダウンロード

記載例(Word:ダウンロード/PDF:ダウンロード

公式の記載例を参考に作成しましょう。不明点があれば、法務局で相談することも可能です。

参照:建物を取り壊した/建物を新築した|法務局

取り壊した建物を証明する書類

法務局に取り壊した建物の情報を伝えるために、以下の書類を準備しましょう。

  • 登記簿謄本
  • 公図
  • 地積測量図
  • 建物図面

建物所在地を管轄する法務局で申請をするか、「登記情報提供サービス」を使ってインターネットで取得できます。

建物滅失証明書(解体証明書・取り壊し証明書)

解体業者から建物滅失証明書を取得しましょう。解体証明書や取り壊し証明書とも呼ばれ、建物を取り壊した事実を証明するための書類です。

解体業者によっては、依頼から発行までに時間がかかります。解体工事を依頼する際に「完了時に受け取りたい」と依頼しておきましょう。

解体工事業者を証明する書類

滅失登記の際、建物を取り壊した解体業者を証明するための書類の提出も求められます。以下のいずれかの書類を解体業者から発行してもらうよう依頼しましょう。

  • 代表者事項証明書
  • 履歴事項証明書

また、解体業者と取り壊す建物の管轄法務局が異なる場合、解体業者の印鑑証明書の提出も必要です。必要かどうかがわからない場合は、あらかじめ依頼しておくと素早く手続きを進められます。

相続を証明する書類

所有者の相続人が手続きをするとき、相続が発生した事実を証明するための書類も準備しましょう。以下の書類を揃え、自分が所有者の相続人であることを証明しましょう。

  • 亡くなった方の死亡を証明する戸籍謄本(除籍謄本)
  • 相続人(申請者)の戸籍謄本

すでに相続登記を行っている場合には所有者が相続人であるため、上記の書類は不要です。

状況に応じて必要な書類

状況によって、以下の書類を求められる場合があります。

  • 解体した建物の地図や写真
  • 委任状

法務局が建物情報の詳細を知りたい際に必要となります。スムーズに手続きを進めるため、あらかじめ用意しておくとよいでしょう。

また、自分で手続きを完了させるのなら委任状は不要です。専門家や第三者に代行を依頼する際に準備しましょう。

自分で申請する際にかかる費用

自分で滅失登記をする際に発生する費用は、実費のみです。800円〜1500円程度におさまるケースがほとんどです。

ただし、対象の建物の管轄法務局が遠方である場合、何度も足を運ぶと交通費が発生します。郵送申請やオンライン申請を活用すると、費用を軽減できます。

もし、土地家屋調査士に申請の代行を依頼する場合、報酬費用の相場は3〜5万円程度です。必要書類の収集や申請書作成、書類提出のすべてをお任せできます。手間を省きたい方は、土地家屋調査士に見積もり依頼をして納得のいく料金で依頼しましょう。

必要書類をそろえた後の手続きの流れ

必要書類を揃えたら、以下の手順で滅失登記の手続きを進めましょう。

  • 滅失登記の必要書類を法務局へ提出
  • 不備がある場合は修正して再提出
  • 登記完了証を受け取る

詳しく解説します。

滅失登記の必要書類を法務局へ提出

滅失登記の必要書類をまとめて法務局へ提出しましょう。提出先は、取り壊した建物を管轄する法務局に限られます。法務局の公式サイトから、管轄の法務局を調べられます。

登記申請は、以下の3つの方法でできます。

  • 直接窓口に持っていく
  • 郵送する
  • オンライン申請する

窓口に持っていくと、提出前に書類の不備を簡単にチェックしてもらえます。すぐに再提出できるよう、訂正用の印鑑を持っていくと便利です。

法務局から遠方にお住まいの方や、平日の昼間に時間が取れない方は、郵送やオンライン申請を活用しましょう。

不備がある場合は修正して再提出

不備があると、平日の日中に法務局から電話が入ります。申請書の訂正や追加の必要書類など、必要に応じて対応しましょう。

一度提出した書類が一式返送され、修正後に送り直すよう指示される場合もあります。法務局の指示に従いましょう。

登記完了証を受け取る

登記が完了したら、法務局で登記完了証を受け取ります。申請から登記完了まで、1〜2週間程度です。郵送での受け取りを希望する場合、自宅に届くのは2〜3週間後と思っておきましょう。

滅失登記の申請でよくある質問

滅失登記の申請でよくある質問のイメージ

最後に、滅失登記の申請でよくある質問についてQ&A形式でお答えしていきます。

滅失登記の申請でよくある質問は、以下の通りです。

  • 所有している土地に他人名義の建物が登記上残っているときの対処法は?
  • 滅失登記を忘れるとどうなる?
  • 建物滅失証明書がなくても登記できる?
  • 相続時に取り壊した建物が登記上に残っている場合はどうすればいい?

あらかじめ知っておくと、スムーズに手続きを進められます。

所有している土地に他人名義の建物が登記上残っているときの対処法は?

相続した土地に現存しない他人名義の建物が登記上残っている場合でも、勝手に滅失登記することはできません。

なぜなら、滅失登記を申請できる人は、以下のように定められているからです。

  • 表題部所有者
  • 所有権登記名義人
  • 上記の相続人やその他の承継人

ただし、土地所有者は利害関係者として、滅失登記の申し出を行えます。法務局に対して「他人名義の建物が現存していないにもかかわらず登記されているため、滅失登記してほしい」と申し出をすると、登記官によって調査が行われ、実際に現存しないと確認できたら滅失登記されます。

そのまま放置していると、建物の再建や土地の売却ができないため、法務局へ申し出をしましょう。

滅失登記を忘れるとどうなる?

滅失登記の申請期限は、建物がなくなってから1か月以内です。もし、忘れていて申請を怠ると、10万円以下の過料が課せられる可能性があります。

また、既になくなっている建物に対して固定資産税がかかり続けてしまい、無駄な費用がかかってしまいます。滅失登記を忘れてしまった場合のデメリットが多いため、忘れずに申請しましょう。

建物滅失証明書がなくても登記できる?

建物消失証明書が取得できない場合、所有者が作成した上申書を代わりに提出します。

上申書には建物を特定するための情報や建物が存在しないことを明記します。作成者の実印を押印して、印鑑証明書も一緒に提出しなければなりません。

この方法であれば、建物滅失証明書がなくても申請を受け付けてもらえます。

相続時に取り壊した建物が登記上に残っている場合はどうすればいい?

相続をしたときに、過去に所有していた建物の滅失登記を申請していなかった事実が発覚するケースは珍しくありません。この場合、所有者の相続人として滅失登記ができます。

滅失登記には相続人全員の印鑑や書類の提出を求められないため、スムーズに手続きを進められます。

取り壊す建物は相続登記しないで滅失登記できる

取り壊すことが決まっている建物であれば、相続登記しないで滅失登記の手続きを進められます。相続人のうちの1人が代表して単独申請できるため、ハードルは高くありません。

ただし、複数の相続人の共有状態になっている建物を取り壊す場合には、共有者全員の同意が必要です。独断で取り壊してしまうとトラブルの種になりかねないため、注意しましょう。

滅失登記をする際には、必要書類の収集や申請書の作成をしなければなりません。1か月以内の申請が難しい場合は、専門家である土地家屋調査士に依頼しましょう。

また、土地の相続登記は省略できないため、注意しなければなりません。土地の相続登記であれば、司法書士に依頼することが可能です。

積極的に専門家を頼って心配ごとをひとつでも減らし、スムーズに相続手続きを進めましょう。

著者紹介

安持まい(ライター)

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年12月14日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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