遺言書には3種類ある!公証役場で作成する公正証書遺言の手続きや注意点を解説

更新日:2023年1月4日|公開日:2022年6月29日

自分の財産を希望通りに相続させる方法として遺言書があります。しかし、遺言書は正しく作成しなければ無効になり、希望通りに相続してもらえない可能性があるのです。遺言書が無効にならずに確実に残したい相手に財産を譲るための選択肢が「公正証書遺言」です。この記事では、公正証書遺言の基本やメリット・デメリット、作成するうえでの注意点などを分かりやすく解説していきます。

公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、公証人が作成する公正証書としての遺言書です。遺言書に書きたい内容を公証人に伝え、公証人はその内容を元に法的に正しい表現で作成します。

遺言書は、書き方に不備があると無効になってしまう可能性があるものです。その点、公正証書遺言書なら不備がなく無効になるケースはほとんどありません。また、原本は公正役場で保管されるため、紛失や見つからないということを防ぐことも可能です。

遺言書は3種類

そもそも遺言書には、大きく次の3つの種類があります。

  • 自筆証書遺言書
  • 公正証書遺言書
  • 秘密遺言書

自筆証書遺言書

被相続人(亡くなった方)が自筆で作成した遺言書を「自筆遺言書」といいます。紙とペンさえあれば誰でもいつでも作成できる、最も手軽な遺言書であり、一番多く利用されている種類と言えるでしょう。

ただし、書き間違えや内容の不備などで無効になってしまうケースや発見されないケースも多い点に注意が必要です。

自筆証書遺言書は原則手書きで自宅での保管となります。しかし、2019年より財産目録部分はパソコンでの作成や通帳のコピーでも可能となりました。また、自筆証書遺言書を法務局で保管できる自筆証書遺言書保管制度も2020年7月よりスタートしています。

保管制度を利用することで、遺言書の紛失や見つけてもらえないというリスクをなくすことが可能です。ただし、遺言書の内容については確認されないため、遺言書としての有効性は確実ではない点には注意しましょう。

公正証書遺言書

証人立ち合いの元、公証人によって作成される遺言書が、公正証書遺言書です。公証人とは、公正証書の作成を担う法の専門家のことをいい、裁判官や弁護士などの長年の経験を有する法律の専門家などから任命されます。

公正証書遺言書は、法の専門家がチェックし、公証役場で保管されるため、遺言書の有効性や保管面で確実性が高い遺言書と言えます。「財産を特定の人に確実に残したい」「相続トラブルに発展する可能性が高い」といった場合に、適しているのが公正証書遺言書です。

秘密証書遺言書

秘密証書遺言書とは、遺言内容は秘密のまま公証人と証人に遺言書の存在だけを証明してもらう方法です。遺言書自体はパソコンなどを利用して作成することも可能で、公証人や証人に内容を知られることもありません

遺言書の存在を証明できるため、亡くなった後に遺言書が見つけてもらえないことや寄贈されるリスクを防いでくれます。ただし、自分で作成するため不備があれば無効となる可能性がある点には、注意が必要です。

トラブルを回避したいなら公正証書遺言書がおすすめ

法定相続分とは異なる分け方で財産を譲りたい場合は、特定の人に財産を残したい場合など、相続時に遺言書の有効性を巡ってトラブルになるケースが多いものです。相続トラブルを回避するためにも、法的に有効性のある公正証書遺言書を作成することが有効です。

また、遺言書を自筆や自宅で保管すると、盗難や偽装される恐れがある場合も公正証書遺言書が適しているでしょう。以下のようなケースでは、公正証書遺言書の作成をおすすめします。

  • 配偶者に財産をすべて残したい
  • 相続人以外の特定の人のも財産を残したい
  • 高齢で自筆が難しい
  • 自宅で保管すると紛失や盗難される心配がある
  • 他の人に遺言書を偽造される心配がある

公正証書遺言の書き方と注意点

公正証書遺言書は、遺言内容を証人立ち合いの元、口頭で公証人に伝え公証人に作成してもらいます。そのため、自分で遺言書自体を作成する必要はありません。また、聴覚・言語機能に障害がある人でも作成できるよう、筆談方式や手話通訳方式も選択可能です。

遺言書に記載したい内容を公証人に伝える必要があるため、事前に以下のような準備をしていくことが大切です。

  • 財産をすべて書き出す
  • 誰にどれくらい引き継いでもらいたいのか具体的な内容をまとめておく

公正証書遺言書の具体的な作成手順については、以下で紹介するので参考にしてください。

公正役場で公正証書遺言を作成する場合は?

公正証書遺言書は、公正役場で公証人に作成してもらいます。ここでは、作成手順やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

公正役場とは

そもそも、公正役場とは公証人が公正証書や法務業務を行う機関のことをいいます。公正役場では、公正証書遺言書以外にも、協議離婚の際の養育費支払い契約や慰謝料を伴う示談契約などの公正証書の作成が可能です。

役場と名がついているので、市役所と混同される方もいますが、市役所とは関わりはありません。市役所に出向いても公正証書は作成できないので、気を付けましょう。公正役場は、法務局の管轄機関となり、全国に約300か所設置されているのです。各都道府県に設置されており、特に都心部は多く設置されています。

ただし、すべての市区町村に設置されているわけではないため、住んでいる地区によっては近場に公正役場がない可能性もあるものです。そのような場合、公正証書遺言書を作成しようと思ったら遠方の構成役場まで出向かなければなりません。公正役場の所在地は、日本公証人連合会のホームページなどで確認できるので、近場の公正役場を調べておくとよいでしょう。

遺言者が高齢などで公正役場に行けない場合、公証人に出張してもらうことも可能です。出張費用は別途必要ですが、行くのが難しい場合は相談してみるとよいでしょう。

公正役場で作成するメリット&デメリット

公正役場で公正証書遺言書を作成するメリット・デメリットには、次のようなことがあります。

メリット

  • 偽造や変造・無効になる心配がない
  • 遺言書の紛失の恐れがない
  • 遺言書の検認が不要

公正証書遺言書は、法の専門家が遺言書にしたい内容を元に、書面で作成してくれます。法律上の不備のチェックをしてくれるため、内容にミスがあり遺言書が無効になることはほとんどありません。

また、作成された遺言書は原本を公正役場で保管し、遺言者には謄本(コピー)が交付されます。万が一、謄本を紛失しても原本は保管されているので影響はなく、再発行も可能です。相続開始後に紛失した場合でも、相続人が謄本を交付請求できるため、遺言書を紛失してしまう可能性は低くなるでしょう。

ただし、公正証書遺言書を作成したからと言って遺言者が死亡した際に、公正役場から相続者に相続人に通知が来るわけではありません。相続人が公正証書遺言書の存在を知らない場合、遺言書を見つけてもらえない可能性がある点には注意しましょう。確実に遺言書を見つけてもらうには、公正証書遺言書の存在を相続人に伝えておくことや、遺言執行人を指定しておくなどの対策が必要です。

自筆証書遺言書と秘密証書遺言書の場合、遺言書の偽装や変造を防ぐため、家庭裁判所で開封の手続きである「検認」が必要になります。検認前に開封した場合、直ちに遺言が無効になるわけではありませんが、他の相続人から偽造を疑われるなどトラブルの元になる可能性があるものです。

また、5万円以下の過料を科せられる可能性もあるので、注意しましょう。公正証書遺言書の場合、公証人と証人の立ち合いの元に作成されているため、それ自体が高い証拠能力を有しているとして、検認の必要がありません。家庭裁判所での検認手続きは、2~3ヵ月掛かる場合もあるため、検認作業が必要のない公正証書遺言書であれば、相続開始後スムーズに手続きを進めることができるでしょう。

デメリット

  • 公正証書遺言書を作成するデメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
  • 費用や手間がかかる
  • 承認を2人見つけなければならない

公正証書遺言書は公正役場に出向いて作成する必要があります。詳しい流れは以下で解説しますが、作成まで2〜3週間ほど掛かり、長い場合は1ヵ月以上かかるケースもあるものです。必ずしも住んでいる地区に公正役場があるとは限らず、その場合は遠方まで行かなければなりません。

また、作成のための費用も必要です。公正証書の場合、作成する書類に応じて公証人手数料が発生します。手数料は、記載する財産の金額によって決められるため、財産が高額になる場合手数料も高額になる点には注意しましょう。

公正証書遺言書の場合、作成の際に2人以上の証人が必要です。事前に証人となる人を決めて日程調整しておくようにしましょう。ただし、誰でも証人になれるわけではありません。以下のような条件に該当する場合、承認になれません。

  • 未成年
  • 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

上記以外の人であれば、友人や知人でも証人となることが可能です。証人は作成に立ち会うので、遺言の内容を知られても問題ない人にする必要があります。基本的には、証人は自分で見つけなければなりません。しかし、証人が見つからない場合は公正役場からの紹介を受けることも可能です。その場合は、費用が発生するので注意しましょう。

弁護士でも公証人になることが可能なため、弁護士に公証人と遺言執行人を依頼しておくと、相続時にもスムーズに相続を進められるでしょう。

公正役場で公正証書遺言を作成する流れと手数料

公証役場で公正証書遺言書を作成する大まかな流れは、以下の通りです。

  • 遺言の原案を作成する
  • 公正役場に連絡して原案を伝え、公証人と内容を確認・検討する
  • 必要書類の準備と提出
  • 証人2名の選定と日程調整
  • 公正役場に証人と遺言者で出向き遺言書の内容確認
  • 遺言書への署名押印
  • 手数料の支払いと遺言書謄本の受け取り

公正証書遺言書は作成に2~3週間ほどかかるため、時間に余裕を持って作成するようにしましょう。

必要書類

  • 公正証書遺言書作成で必要な書類としては、以下のようなものがあります。
  • 実印と印鑑証明
  • 相続人との続柄が分かる戸籍謄本
  • 証人の確認資料と認印
  • 相続財産が分かる資料(不動産の場合は登記簿謄本なども必要)
  • 遺言執行者を指定する場合は、その特定資料など

公正役場や遺言の内容によっても必要な書類が異なります。必要書類は作成の際に指定されますが、事前に確認して用意しておくとスムーズに進められるでしょう。

手数料

手数料は、遺言書に記載する財産の額に応じて以下のようになります。

財産の価額 手数料
100万円まで 5000円
100万円を超え200万円まで 7000円
200万円を超え500万円まで 1万1000円
500万円を超え1000万円まで 1万7000円
1000万円を超え3000万円まで 2万3000円
3000万円を超え5000万円まで 2万9000円
5000万円を超え1億円まで 4万3000円
1億円を超え3億円以下のもの 4万3000円+超過額5000万円までごとに
1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下のもの 9万5000円+超過額5000万円までごとに
1万1000円を加算した額
10億円を超えるもの 24万9000円+超過額5000万円までごとに
8000円を加算した額

公正証書遺言を作成する際の注意点

ここでは、公正証書遺言書を作成する際の注意点を確認していきましょう。注意点としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 無効になる可能性もある
  • 遺留分が優先される
  • 遺言内容を変更する場合は新たに作成が必要

それぞれ詳しく見ていきましょう。

無効になる可能性もある

法の専門家にチェックを受けるため、基本的には無効になる可能性は低いものです。しかし、以下のような場合は無効になる可能性があるので注意しましょう。

  • 公証人や証人が不在の間に作成した
  • 証人になれない人が立ち会った
  • 口述ではなく身振り手振りで伝えた
  • 遺言者に遺言能力がない

公証人や証人が不在の間に作成した

公正証書遺言書は、公証人が遺言者の口述を筆記し、2名以上の証人立ち合いの元、作成します。公証人が席を外している間に遺言者や証人が勝手に筆記した場合は、証人が欠けている状態で作成した場合、無効になる可能性があります。公証人や証人が作成中に席を外す場合などでは、作成を中断するなどの注意が必要です。

証人になれない人が立ち会った

先述したように証人になれない人についても定められており、その条件に該当する人が証人である場合は無効になる可能性があるでしょう。ただし、証人を3人以上確保し、証人として有効な人が2人以上いる場合は、3人のうちの1人が不適格者であっても無効にはならないとされています。

口述ではなく身振り手振りで伝えた

公証人に遺言内容を伝える際には、遺言者が口述で伝えるのが原則です。単に身振りや手ぶりだけで伝えてしまうと、内容が無効になる可能性があります。ただし、耳や言語に障害がある場合は、手話や筆談で伝えることも可能です。

遺言者に遺言能力がない

遺言者が作成時点で認知症など判断能力が欠けている状態の場合、遺言能力がないとされ遺言が無効になる可能性があります。

遺留分が優先される

遺留分とは、相続人の生活を守るため最低限の相続財産取り分を確保する制度です。遺言者との続柄や相続人に応じて、それぞれ遺留分が定められています。

遺言内容が、それぞれの遺留分を侵害する場合、侵害された部分は無効となる点には注意が必要です。

仮に、相続人が配偶者とこの場合、それぞれの遺留分は4分の1になります。子が2名の場合は、子はそれぞれ8分の1です。この時、相続財産が1000万円あり、遺言で配偶者の相続分を100万円としたとしましょう。配偶者の遺留分は250万円となるため、遺言で侵害された150万円分を侵害した相続人に請求できるのです。

遺留分は、公正証書遺言であっても優先されます。遺留分については、相続時のトラブルになりかねないため、あらかじめ遺留分を把握したうえで、相続割合を決めておくとよいでしょう。

内容を変更する場合は新たに作成が必要

遺言書は一度作成したからと言って変更できないわけではありません。遺言書の優先順位は、基本的に新しく作成した遺言書が優先される仕組みです。そのため、遺言書の内容を変更したい場合は、新しく遺言書を作成する必要がある点には注意しましょう。

新しく作成する遺言書が自筆証書遺言書であっても問題ありません。しかし、自筆証書遺言書は法的に無効になる可能性があるため、確実に変更したいのであれば、新たに公正証書遺言を作成する必要があります。また、すでに作成した公正証書遺言の謄本を自宅で保管しますが、この保管した遺言書を書き換えても原本は公正役場に保管されているため、意味がないので注意しましょう。

まとめ

公正証書遺言書の基本や作成手順・メリット・デメリットについてお伝えしました。遺言書を無効にせずに希望通りに相続してもらいたい場合、公正証書遺言書が有効です。作成の手間や費用がかかりますが、弁護士に手続きを一任することも可能です。

弁護士であれば、遺言内容の相談から相続時のサポートまで任せられるため、相続トラブルを回避したい方にもおすすめです。この記事を参考に、公正証書遺言書について理解して、自分の財産を希望通りに遺せるようにしましょう。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報をわかりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月29日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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