未登記の建物を相続したらどうする?通常の相続登記との違いや手続きの流れ、費用を理解しよう

公開日:2023年12月6日

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未登記の建物が相続財産に含まれていると、「相続できるの?」「どうやって手続きをするの?」と気になりますよね。

未登記の建物は相続できますが、通常の相続時とは異なる登記手続きが必要です。

本記事では、未登記建物を相続したときの登記手続きの流れや費用について詳しく解説します。これから手続きをする予定の方はぜひ参考にしてください。

未登記建物とは

未登記建物とは、登記の記録上の所有者情報が不明の状態である建物のことです。

本来、新築の建物を取得した場合、所有権取得から1か月以内に建物の種類や構造、所有者の情報を登記申請しなければならないと不動産登記法で定められています。

そのため、通常であればどのような建物であっても登記されて、法務局の登記簿のデータで管理されています。

しかし、古い建物の場合、建物を建てたときに登記をしなかったケースもあるようです。現在もそのままの状況になっており、未登記建物が発生してしまいます。

また、建物自体は登記されていても増築部分が登記されていないケースもあります。たとえば、あとから増築した物置やガレージなどです。通常であれば増築部分についても登記が必要ですが、まれに未登記のままになっているケースが見受けられます。

建物の登記状態を確認する方法

建物の登記状態は、毎年市区町村役場から送付される固定資産税納税通知書で確認できます。

固定資産税納税通知書を確認し、以下のような場合には未登記建物である可能性があります。

  • 家屋番号が空欄になっている
  • 未登記と記載されている

ちなみに、未登記建物であっても固定資産税は発生する場合があります。

たしかに建物は法務局で登記されている情報が元になって固定資産税が請求されますが、未登記状態であっても市区町村の台帳に所有者が登録されている場合があるためです。

未登記の建物を相続したらどうすればよいか

未登記の建物を相続したら、相続人が登記しましょう。誰が相続するかを決め、所有権を引き継ぐことになった相続人の名義で登記します。

亡くなった方の名義で登記することも可能ですが、結局は相続登記しなければならないため二度手間です。

また、登記しないままにしておくこともできますが、後述の通りデメリットが大きいため選択肢に入れないでおきましょう。もし、未登記のままにしておくのであれば、市区町村役場で固定資産(未登録家屋)所有者変更届を提出する必要があります。

さらに、未登記の建物を取り壊すという選択肢もあります。しかし、登記されている建物の解体撤去をしたときに行う建物滅失登記の手続きができません。代わりに、建物がなくなったことを証明するために家屋滅失届を行います。

家屋滅失届をしなければ、データ上から建物の存在は消えません。そのため、翌年も固定資産税納付通知書が届いてしまいます。

未登記のままにしておくメリット・デメリット

未登記建物を登記せずにそのままにしておこうと考えているのであれば、あらかじめメリットとデメリットをよく理解しておきましょう。メリット・デメリットについて詳しく解説します。

未登記のままにしておくメリット

未登記のままにしておくメリットは、登記をするための手間や費用がかからないことです。

建物の登記をする際にかかる費用は、10〜15万円程度です。自分で行ったとしても、1万円程度の費用がかかります。自分で行うと、必要書類の準備や図面作成に手間がかかります。

未登記のままにしておくデメリット

未登記のままにしておくデメリットは、以下の通りです。

  • 過料の対象となる
  • 所有権を主張できない
  • 固定資産税の軽減措置を受けられない
  • 相続トラブルに発展するリスクがある

4つのデメリットを確認して、これから登記することを前向きに検討しましょう。

過料の対象となる

建物の登記は、不動産登記法という法律で定められた義務です。未登記のまま放置していると、10万円以下の過料の対象となってしまいます。

過料に処された場合、自分で登記するコストよりも何倍もの費用がかかってしまいます。

所有権を主張できない

登記をしなければ、建物の所有権を主張できません。自分が所有者であることを法的に証明できないため、以下のような不都合が出てきます。

  • 抵当権が設定できず融資が受けられない
  • 底地所有者へ対抗できない
  • 売却できない場合がある

このように、せっかく相続した土地や建物を活用できません。

固定資産税の軽減措置を受けられない

未登記の建物は、固定資産税の軽減措置を受けられません。そのため、固定資産税が高くなる場合があります。

土地に建物が建っている場合、以下のような軽減措置が適用されます。

  • 土地の固定資産税が最大6分の1
  • 都市計画税が最大3分の1

本来受けられるはずの軽減措置が受けられず、余分な税金を納税し続けることになります。

相続トラブルに発展するリスクがある

明確に相続人を決めておかなければ、あとから相続トラブルに発展する可能性があります。所有権が登記上では確認が取れず、所有権を争うことになりかねません。

未登記のままでいると、他の相続人が登記手続きをしてしまい、知らないうちに別の相続人に所有権が渡ってしまうことも予測できます。

相続時には書面で明確に相続人を定め、登記も済ましてしまう方が賢明です。

未登記建物を相続した場合の登記手続きの流れ

未登記建物を相続した場合の登記手続きの流れのイメージ

 

未登記建物を相続した場合、通常の登記手続きの流れと異なります。大きな違いは、表題部・権利部それぞれの登記が必要である点です。

表題部・権利部は、被相続人と相続人のどちらの名義でも手続きができます。しかし、最終的に相続人名義で登記したいのであれば、必要書類や手続きの回数を抑えるために初めから相続人名義で申請しましょう。

未登記建物を相続した場合の登記手続きの流れは、以下の通りです。

  • 相続する人を決める
  • 建物表題登記の申請をする
  • 所有権保存登記の申請をする

ここでは、初めから相続人名義で申請する方法で解説します。

相続する人を決める

まず、対象の未登記建物を誰が相続するかを決めましょう。遺言書がない場合や、複数人相続人がいる場合には、遺産分割協議を行います。

遺産分割協議にて遺産の分割方法が決まったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員分の署名と実印での押印が必要です。

このとき、未登記建物を特定するために、固定資産評価証明書や名寄帳に記載されている事項を転記しましょう。また、未登記であることがわかるように「未登記物件」と併記する必要があります。

建物表題登記の申請をする

次に、建物表題登記の申請を行います。不動産の登記には、表題部と権利部の項目があります。表題部には、以下の情報を登録します。

  • 建物の所在
  • 建物の構造
  • 建物の大きさ
  • 建物の建築年月日

建物表題登記の申請には、以下の書類の提出が求められます。

  • 登記申請書
  • 固定資産税の納付証明書
  • 建物図面・各階平面図
  • 建築確認書、および検査済証
  • 建築代金の領収書
  • 施工業者からの引き渡し証明書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 未登記建物を相続する人の住民票
  • 遺言書、または遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書

このように専門的な図面作成が必要となるため、建物表題登記を自分で行うことは現実的ではありません。登記申請書や建物図面・各階平面図などを作成してくれる土地家屋調査士に依頼しましょう。

所有権保存登記の申請をする

つづいて、所有権保存登記の申請を行いましょう。権利部には、所有者の情報が記載されます。

所有権保存登記の申請には、以下の書類の提出が求められます。

  • 登記申請書
  • 未登記建物を相続する人の住民票
  • 住宅用家屋証明書

住宅用家屋証明書は、登録免許税の免税を受けられる証明書です。住宅用家屋証明書は、市区町村役場で取得できます。

相続した未登記建物の登記にかかる費用

相続した未登記建物の登記にかかる費用には、以下の3つの種類があります。

  • 必要書類の取得費用
  • 登録免許税
  • 専門家への報酬

どれくらいの費用がかかるのか、具体的に確認しましょう。

必要書類の取得費用

必要書類の取得費用の総額の目安は、3000円程度です。戸籍謄本や住民票などの取得費用を以下の表にまとめました。

書類名取得費用
戸籍謄本450〜750円/1通あたり
住民票・住民票除票200〜300円/1通あたり
印鑑証明書200〜300円/1通あたり
固定資産評価証明書300〜400円

ただし、相続人が多いと、その分必要な書類が増えて取得費用も増えます。

登録免許税

登録免許税は、所有権保存登記をするときに納付しなければなりません。登録免許税の額は、不動産評価額によって変動します。

登録免許税の額=不動産評価額×0.4%

不動産評価額は、固定資産税納税通知書に書かれている固定資産税評価額です。

また、申請時に住宅用家屋証明書を提出すると、登録免許税が免税されます。住宅用家屋証明書が発行される条件は、以下の2つの要件を満たしていることです。

  • 床面積50㎡以上の自己居住用の戸建て、あるいはマンションであること
  • 鉄筋コンクリート造・鉄骨造のマンションや戸建ては25年以内、それ以外の木造・軽量鉄骨造などの戸建ては20年以内に建築されていること

要件を満たしていれば、市区町村役場で住宅用家屋証明書を発行できます。

専門家への報酬

専門家へ支払う報酬の目安は、表題部・権利部それぞれ以下の通りです。

建物表題登記(土地家屋調査士)5〜15万円
所有権保存登記(司法書士)2〜3万円

もちろん、自分で手続きすればこれらの費用は発生しません。しかし、専門的な書類を作成しなければならないため、すべて専門家に任せて心配ごとをなくすことをおすすめします。

未登記建物を相続したら早めに登記手続きをしよう

未登記建物を相続したら、早めに登記手続きをしましょう。登記しないままでも住むことに問題はありませんが、過料の対象となったり、あとあと相続トラブルに発展したりとリスクが大きいです。

未登記建物は通常の相続時と違って、2段階で登記の手続きが必要です。準備する必要書類が多いため、自分で完了させるには膨大な時間と労力がかかります。

専門的な書類の作成が心配な方や、時間的余裕がない方は、専門家へ相談しましょう。作業の一部だけを依頼することも可能なため、予算と相談しながらお任せする部分を探ることをおすすめします。

著者紹介

安持まい(ライター)

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年12月6日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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