相続を司法書士に依頼するメリットとは?基本業務と費用相場を解説

公開日:2023年10月20日

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相続に関して、司法書士にどのような依頼ができるのか気になっていませんか。司法書士の業務範囲は広く、ほかの士業と比べてリーズナブルに相続に関する相談ができます。

本記事では、相続手続きを司法書士に依頼するときに知っておきたい取扱業務の内容と費用の目安について解説します。費用を抑えるポイントについてもご紹介しているため、参考にしてください。

生前の財産管理から相続発生後の各種手続きまでを司法書士に依頼して、スムーズに相続手続きを行いましょう。

そもそも司法書士とは?

司法書士の仕事として、法律に関する業務において書類作成・手続き代行などが挙げられます。登記業務や供託業務は司法書士の独占業務です。

相続における司法書士の特徴は、3つあります。

  • 相続で対応できる業務範囲が広い
  • 費用が他の専門家と比べて安価
  • 不動産・実務・相続に強い

順番に詳しく見ていきましょう。

相続で対応できる範囲が広い

司法書士の業務は多岐にわたり、広範囲におよぶ相続業務に対応できます。

裁判所へ提出する書類の作成から生前対策まで相続業務を幅広く扱うため、司法書士に相談すれば複数の窓口に相談する必要がありません。

司法書士に依頼できる相続・遺言に関する業務は、以下の通りです。

  • 相続財産調査
  • 相続登記の申請(不動産の名義変更)
  • 相続放棄手続き(裁判所からの照会対応は不可)
  • 遺言書の検認
  • 遺言書の作成
  • 遺言執行者の選任手続きの書類作成
  • 遺留分侵害請求(140万円未満)
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続人調査(戸籍の収集、相続関係説明図作成)
  • 特別代理人の選任申立(相続人に未成年者がいる場合)
  • 不在者の財産管理人選任申立(相続人に行方不明者がいる場合)
  • 遺産分割調停の申立(書類作成)
  • 遺品整理業務(金融機関の相続手続き・解約など)
  • 家族信託手続き

相続業務の多くを司法書士で対応できます。ただし、相続争いが発生して裁判に発展した場合、弁護士に依頼する必要があります。

つまり、相続争いがなければ、司法書士で一通りの相続手続きが可能です。

費用が他の専門家と比べて安価

司法書士へ支払う費用は、他の専門家と比べてリーズナブルです。

以下の表で、相続放棄の依頼を弁護士と司法書士に依頼した場合の相場を比較しました。

弁護士司法書士
費用5〜10万円/人3~5万円/人

費用の差は、家庭裁判所で行われるすべての手続きを代理できるか否かです。弁護士はすべての手続きを代理できるため、相続人の負担を最小限に抑えられます。

一方、司法書士に家庭裁判所の代理権は認められていません。例を挙げると、相続放棄で家庭裁判所へ行く必要がでた場合、相続人本人が出向きます。司法書士が相続人の代わりに出向くことはできません。

このように、相続人の負担はあるものの、司法書士に依頼するとリーズナブルに相続手続きが可能です。

ただし、家庭裁判所の訴訟代理権は弁護士のみに与えられています。相続トラブルにより訴訟に発展している事案だと司法書士は対応できませんので、弁護士に依頼する必要があります。

また、相続税の申告業務は税理士にしかできません。相続の内容や状況に応じて、弁護士や税理士にも相談しましょう。

「弁護士の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

「税理士の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

不動産・実務・相続に強い

司法書士は、相続に関する不動産登記や実務に強い専門家です。不動産登記は司法書士の独占業務のため、登記の専門家として不動産の権利変動について正確に登記申請手続きを行います。

不動産登記は、不動産に関する権利を守るために必要な行為です。不動産取引において、当事者間で契約を結ぶだけだと不動産に関する権利を主張できません。登記申請をして、はじめて不動産に関する権利を主張できます。

司法書士は不動産の登記申請だけでなく、以下のような相談・手続きにも幅広く対応可能です。

  • 生前対策としての遺言書の作成
  • 家族信託の手続き
  • 相続発生後の遺産管理業務など

令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。相続財産に不動産が含まれるなら、まず司法書士に相続について相談をしましょう。ワンストップで手続きを依頼できます。

司法書士に依頼するときにかかる基本的な費用

司法書士に依頼するときの基本的な費用を確認しましょう。あくまでも目安のため、依頼内容や依頼先の事務所によって費用は大きく変わります。

項目費用
相談料無料~5000円
調査費用(不動産調査・現地確認)1〜3万円
司法書士費用業務内容により1万5000~20万円
相続関係の資料取得費用(実費)戸籍・除籍謄本など、1相続人あたり450~750円
※相続人の数や必要枚数で費用は大きく変動します。

司法書士への相談料に関して、無料で受け付けている事務所は少なくありません。

また、不動産登記のための現地調査や相続預貯金調査で発生する調査費用は、依頼する事案に応じて費用が変動します。

司法書士費用は、登記申請や相続人確定などの作業に対する報酬で、司法書士事務所や依頼内容により費用の大きさが変わります。

相続関係の資料取得に必要な費用は、実費で請求されます。複数の司法書士事務所から見積もりをとって、適正な費用を把握しましょう。

相続手続きの内容ごとにみる司法書士費用の相場感

相続手続きの種類と司法書士費用の相場感について確認しましょう。

代表的な相続手続きは、以下の通りです。

  • 相続登記の申請(不動産の名義変更)
  • 相続放棄手続き
  • 遺言書の検認
  • 遺言書の作成
  • 登記事項証明書の取得(登記簿調査)
  • 戸籍収集
  • 遺産分割協議書の作成
  • 固定資産税評価額の調査
  • 金融機関の相続手続き・解約

今回紹介する相場感は、あくまでも費用の目安です。お住まいの地域や相談内容、依頼する事務所によって費用は変わるため、必ず見積もりをとりましょう。

相続登記の申請(不動産の名義変更)

相続登記の費用相場は、5~15万円です。

 項目費用
司法書士報酬5~15万円
登録免許税固定資産評価額の0.4%
実費(住民票や登記事項証明書など)1通あたり300~750円

司法書士報酬のほかに、登録免許税や実費が加算されます。登録免許税とは、不動産の名義変更するときに法務局へ支払う税金です。

司法書士報酬は、相続人の数や不動産の数で変動します。

「相続登記」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄手続き

相続放棄の司法書士報酬は、ひとりあたり3〜5万円程度です。

項目費用
司法書士報酬
(相続を知ったときから3か月以内)
約3万円
司法書士報酬
(相続を知ったときから3か月以上経過)
5万円~
戸籍収集報酬約1000円
実費(切手代や収入印紙など)1通あたり400~800円

原則、相続放棄の申し立ては自身に相続の開始があったことを知ったときから3か月以内です。

被相続人と疎遠だったり、借金を含めた相続財産がまったくないと思い込んでいたりといった特別な事情があれば、相続放棄の期限である3か月を過ぎても申立てはできます。

しかし、通常の手続きより手間や時間を要すケースは少なくありません。そのため、費用を割高に設定している事務所もあります。期限を過ぎてからの相続放棄だと、5万円以上請求されてもおかしくありません。

「相続放棄」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺言書の検認

遺言書の検認申立費用の目安は、約5万円です。検認とは、自筆証書遺言を家庭裁判所に提出して、内容を記録する手続きのことです。遺言書を検認する作業によって、遺言書の偽造を防止します。

遺言書の検認申立費用の内訳は、以下の通りです。

項目費用
司法書士報酬約5万円
実費(印紙代・予納郵券代など)1通あたり800円~

ちなみに、公正証書遺言の場合、検認の申し立てをする必要はありません。自筆証書遺言でも、遺言書保管所へ預けられていたのであれば、検認の申し立ては不要です。

「遺言書の検認」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺言書の作成

遺言書の作成費用は、遺言書の種類によって目安が異なります。

  • 自筆証書遺言作成
  • 公正証書遺言作成
  • 公証人手数料

それぞれの費用について、確認しましょう。

自筆証書遺言作成

自筆証書遺言の作成にかかる費用の目安は、以下の通りです。

項目費用
司法書士報酬3~6万円
実費(登記事項証明書発行など)1通あたり約600円

自筆証書遺言の注意点として、法的なポイントを押さえていないと有効な遺言書と認められないケースがあります。また、自筆証書遺言を遺言書保管所へ預けていない場合、相続開始後に検認手続きが必要です。

公正証書遺言作成

公正証書遺言作成にかかる費用の目安は、以下の通りです。

項目費用
司法書士報酬5~8万円
遺言証人(公証人)約2万円
戸籍・登記事項証明書発行など(実費)1通あたり450~750円
公証人手数料(実費)5000円〜
相続する財産価額に応じて変動

公正証書遺言を作成するときは、遺言証人を選任しなくてはなりません。司法書士事務所で準備してもらう場合、招集費用がかかります。

また、公正証書遺言を作成すると公証人手数料も実費で必要です。

「遺言書の作成」と「公正証書の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

登記事項証明書の取得(登記簿調査)

登記記録の事前調査と登記事項証明書(登記簿謄本)の取得にかかる費用は、それぞれ約500~1500円です。

項目費用
司法書士報酬
(登記記録の事前調査)
500~1500円
司法書士報酬
(登記事項証明書(登記簿謄本)の取得)
500~1500円
実費1通あたり500円

登記記録の事前調査項目は見積もりにおいて、相続関係・事前調査という項目名での計上や相続登記のプランに含まれている場合があります。

戸籍収集

戸籍収集を依頼すると、司法書士報酬は1通あたり1000~2000円です。

項目費用
司法書士報酬1通あたり1000~2000円
実費(戸籍・原戸籍など)1通あたり450~750円

戸籍の取得にあたり、実費が加算されます。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書の作成費用は、5~20万円程度と依頼先によって金額に幅があります。なぜなら、相続財産の額や、事案の複雑度によって金額が変動するからです。

項目費用
司法書士報酬1通あたり5~20万円

遺産分割協議書を作成するときは、あらかじめ費用の確認をしましょう。

固定資産税評価額の調査

固定資産評価証明書の発行を依頼すると、司法書士報酬に1000円~1万円かかります。固定資産評価証明書とは、固定資産課税台帳に登録された評価の証明書です。

項目費用
司法書士報酬1000~1万円
実費1通あたり200~400円

法務局によって、固定資産評価証明書を毎年春に送付される固定資産税納税通知書で代用できるケースがあります。

費用や手間を抑えられるため、事前に固定資産税納税通知書で代用可能か法務局や司法書士に相談しましょう。

「相続における固定資産税」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

金融機関の相続手続き・解約

金融機関の相続手続きや相続口座の調査にかかる費用は、3~5万円程度です。ただし、事案に応じて費用変動する可能性があります。

項目費用
司法書士報酬3~5万円
実費(戸籍謄本・除籍など)450~750円

金融機関の相続手続きにかかる費用に占める実費の割合は少なく、司法書士報酬が費用の大半を占めます。そのため、他の手続きと比べて、依頼する事務所ごとの金額の幅が広がります。必ず複数の事務所で見積もりを取りましょう。

司法書士の依頼費用を抑えるポイント

司法書士の依頼費用を抑えるポイントのイメージ

費用がかさみがちな相続手続きにおいて、支出を抑えるポイントは以下の3つです。

  • 複数の事務所で費用比較
  • 書類を自分で収集して依頼する
  • 【番外】自分で手続きをする

相続手続きは、専門的な知識や労力を要するため想像以上に大変です。無理せず自分にできそうな範囲で費用を節約しましょう。

複数の事務所で費用比較

相見積もりをとりましょう。複数の司法書士事務所から見積もりをとれば、適正価格を把握できるため、ムダな支出を抑えられます。

司法書士の業務は幅広く、事務所によって得意分野と不得意分野があるものです。相続手続きをメインに扱う事務所なら、リーズナブルな価格設定だったり、相続に関する困りごとを総合的に解決できたりといったメリットを感じられるでしょう。

相続手続きに強い事務所か見極める意味でも、相見積もりをとることをおすすめします。複数の司法書士事務所に相談して、依頼できる範囲や費用の相場感を把握しましょう。

書類(実費分)を自分で収集して依頼する

司法書士に資料収集を依頼するだけでも司法書士報酬がかかるため、自分で資料を集めましょう。

戸籍・除籍謄本などの書類を自分で収集すれば、司法書士報酬を抑えられます。ただし、取得するために必要な実費は、自分で収集する場合でも市区町村役場に対して支払わなければなりません。

相続人で収集できる代表的な書類・資料は、以下の通りです。

  • 戸籍謄本
  • 戸籍附票
  • 除籍謄本
  • 相続預貯金調査(残高証明書)

司法書士事務所によっては、相続人で必要書類を揃えて専門的な業務のみ司法書士に依頼する方法を相続手続きプランのひとつとして提供しています。

司法書士に相談しながら必要書類を揃えれば手間はかかるものの、リーズナブルかつ確実に相続手続きを行えます。

【番外】自分で手続きをする

相続人が少なく時間に余裕があるなら、相続に関する手続きをすべて自分で行って費用を抑える方法もあります。

不動産登記は司法書士の独占業務ですが、相続人が登記申請しても構いません。

ただ、見慣れない用語や書類が多く、申請完了するまでに時間と労力を費やします。また、申請に不備があれば修正や再申請をしなくてはならないため、時間のない人だと大きな負担となるでしょう。

たとえば、登記した情報の中に、誤字・誤植などがあった場合、更正登記を行わなくてはなりません。更正登記の申請には、不動産1つにつき1000円の登録免許税がかかります。

このように、自分で相続手続きをすべて行うと、時間や労力だけでなく余分な費用までかかる可能性があります。

不動産の相続があるなら司法書士に頼ろう

不動産の相続があるなら、相続業務を得意とする司法書士に相談しましょう。司法書士は相続登記のエキスパートです。

また、司法書士は幅広い相続手続きに対応できるため、その場限りの問題解決ではなく総合的に相続問題を解決します。

複数の事務所に相談と見積もりを依頼し、信頼できる司法書士を見つけてスムーズに相続手続きを行いましょう。

著者紹介

安持まい(ライター)

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年10月20日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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