相続で税理士に依頼すると費用はいくら?相続に強い税理士を選んで節税をしよう

公開日:2023年10月19日

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「税理士に相続税の算出・申告を依頼したい」とお考えではありませんか。土地を複数所有しているケースや遺産総額が大きい場合、税理士に相談することで大きな節税が期待できます。

本記事では、税理士費用の考え方と相場について解説します。税理士費用の支払い方法や、相続に強い税理士の選び方についても紹介するので、参考にしてください。

適切な税理士費用を支払って、納付すべき相続税を最小限に抑えましょう。

税理士費用の相場

税理士に依頼するときに多くの人が気になる点は、税理士費用でしょう。

税理士費用は依頼先の事務所ごとに自由に料金体系を定められます。そのため、必ず複数の税理士事務所で相見積もりをとってから依頼しましょう。

税理士報酬決定までの流れと大まかな費用目安について、以下の流れで解説します。

  • 報酬額が決められていた
  • 相続手続きを税理士に依頼したときの費用

順番に確認しましょう。

以前はどの税理士に依頼しても同じ報酬額だった

税理士報酬は、平成14年まで多くの事務所で横並び状態でした。

なぜなら、税理士報酬規程に基づいて、税理士報酬に限度額が設けられていたためです。多くの税理士事務所は、その限度額から1~2割ほど引いた金額を報酬額としていました。

平成14年に税理士法改正により税理士報酬の限度額が廃止され、現在は自由に税理士報酬を設定できます。ただし、当時の報酬額をベースに税理士報酬を定めている事務所が現在でもたくさんあります。

相続手続きを税理士に依頼したときの費用

税理士報酬の相場は、遺産総額の0.5~1.0%です。

遺産総額とは、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた額です。

プラスの財産とは、現金・預貯金に限らず、不動産や株、宝飾品など金銭として見積もりできる財産すべてを指します。一方、マイナスの財産とは、ローンや借金、葬儀費用などです。

税理士費用は、一般的に以下の項目で構成されています。

  • 基本報酬
  • 加算報酬(その他報酬)

基本報酬と加算報酬を合計した額が税理士に支払う費用です。

それぞれどのような費用なのか、確認しましょう。

基本費用

基本報酬とは、税理士に依頼したときに必ずかかる基本的な費用です。

以下の表に、遺産総額の0.5%を基本報酬としたときの額をまとめました。

遺産総額基本報酬額(0.5%の場合)
5000円25万円
1億円50万円
1億5000万円75万円
2億円~100万円~

遺産総額が多くなるほど相続手続きの手間が増えるため、基本報酬も比例して高額になります。

遺産総額の少ない案件やオンライン面談のみで進められる案件だと、割安な料金設定をしている事務所もあります。相続した遺産総額に合ったプランを提供している税理士事務所を探しましょう。

加算報酬(その他報酬)

加算報酬とは、基本報酬に加算される追加料金です。税理士事務所によって加算報酬の項目や算定方法は異なります。

代表的な加算報酬の項目は、以下の通りです。

  • 複数人の相続人
  • 急ぎ案件(依頼日が申告期限より3か月以内)
  • 土地の評価
  • 非上場株式
  • 延納・物納の申請
  • 現地調査や訪問などの交通費
  • 資料取得にあたっての手数料や実費
  • 美術品や骨董品などの別途評価

税理士事務所のなかには、上記を独立させて「その他報酬」という名目で計上している事務所もありますが、基本報酬に追加される費用という意味では加算報酬と同じです。

追加費用の考え方として、より多くの労力を要する事案や作業に必要な実費は、加算報酬(その他報酬)として計上されます。

加算報酬の費用は、依頼内容によって変動します。税理士費用の正確な金額を把握するなら見積もりを取りましょう。

税理士報酬が加算される5つのケース

税理士報酬に加算される代表的なケースは、主に5つあります。

  • 相続人が多い場合
  • 申告期限まで時間がない場合
  • 土地の評価が複雑な場合
  • 遺産に非上場の株式がある場合
  • 相続税を支払えない場合

順番に見ていきましょう。

相続人が多い場合

相続人が増えると、加算報酬として費用が上乗せされます。相続人の数が多いと、遺産分割協議が難航したり必要な資料が多くなったりと工数がかかるからです。

そのため、多くの税理士事務所で相続人が増えるごとに加算報酬も追加される料金システムを導入しています。

相続人が多い事案の加算報酬の目安は、以下の通りです。

基本報酬×10%×追加人数

ただし、加算報酬の対象人数に上限を設けている事務所もあります。相続人が多い場合、加算報酬の対象人数に上限を設けている税理士事務所を探した方が得策でしょう。

申告期限まで時間がない場合

相続税の申告期限まで時間のない状況で依頼を受けた場合、加算報酬として追加費用を請求されます。

急ぎの案件だと、他の案件があっても優先的に手続きを行わなければなりません。税理士事務所に大きな負担がかかるため、加算報酬が請求されます。

申告期限まで3か月を切っているような案件だと、報酬総額の20〜50%を上乗せして請求するケースが一般的です。

土地の評価が複雑な場合

土地を所有している場合、相続税の算定に土地の評価が必要です。評価しにくい土地や複数の土地を所有していると、評価するための工数がかかるため、利用区分ごとに加算報酬が計上されます。

土地を評価するための加算報酬の目安は、1利用区分当たり4~6万円です。

土地を評価するには、被相続人の死亡時点における土地の時価を求めなければなりません。
必要な資料の収集と現地調査を行い、財産評価基本通達という財産評価に関するルールに従って土地を評価します。

評価するときに、以下の要件に当てはまる土地だと評価額が変わるため、相続税の算定に影響を与える可能性があります。

  • 道路に接する面が少ない
  • 奥行きがある
  • 不整形(旗竿地など)
  • 道路に面していない
  • 道路や敷地内で高低差がある
  • 災害に巻き込まれる可能性がある

土地の評価は、相続税の金額に影響を及ぼすため、慎重に行わなければなりません。評価のための手間や労力が大きいため、加算報酬という形で費用を計上します。

遺産に非上場の株式がある場合

非上場の株式を保有していると、株式の評価が必要です。株式の評価方法によって加算報酬の金額は変わります。

そのため、非上場株式の加算報酬額の目安は1企業(銘柄)あたり5~20万円と幅があり、見積もりをとらないと詳しい金額を把握できません。

非上場株式の評価方法は、以下のように同族株主であるか否かによって変わります。

  • 原則的評価方式(同族株主)
  • 配当還元方式(同族株主ではない)

同族株主とは、株主と親族(同族)たちの保有する議決権割合が議決権総数の30%以上を占める同族関係者である株主のことです。

非上場株式の主な評価方法を以下にまとめました。

<原則的評価方式(同族株主)>

  • 大会社(純資産価額方式):会社が解散したと仮定して、株主に配分される金額で評価
  • 中会社(大会社と小会社の方式併用):類似業種比準方式と純資産価額方式の併用で評価
  • 小会社(類似業種比準方式):事業内容が似ている上場企業の株価をベースに評価

<配当還元方式(同族株主ではない)>

今後10年間でもらえる配当金の総額で評価

非上場株式の評価は、同族株主の有無や会社規模によって評価方法が変わります。そのため、1銘柄(企業)の評価ごとに加算報酬が計上されます。

相続税を支払えない場合

相続税を支払えない状況だと、延納・物納手続きに対する加算報酬が計上されます。原則として、相続税は現金一括で支払わなければいけません。

しかし、相続の内容によっては多額の相続税を納めることになるため、例外的に延納・物納が認められています。

相続税の延納とは、相続税額を分割して毎年少しずつ支払う方法です。物納は、延納しても金銭での納付が困難な場合に適用されます。延納で対応できない金額分を相続財産(物)で納付する方法が物納です。

延納や物納制度を使うために税理士事務所は、要件に当てはまるか判断して申請書を作成・提出するため、どうしても工数が大きくなりがちです。

そのため、多くの税理士事務所は延納や物納を申請する金額に応じて、延納・物納の加算報酬額を設定しています。

延納・物納申請税額が1億円未満のとき、加算報酬の目安は20~40万円です。

税理士費用は誰が支払う?払えないときはどうする?

税理士費用は誰が支払う?払えないときはどうする?のイメージ

節税を意識するなら、被相続人の配偶者が税理士費用を全額負担すると有利だとされています。

被相続人の配偶者による支払いが有利とされる理由は、以下の2つです。

  • 配偶者控除による負担軽減
  • 二次相続時の負担軽減

詳しく確認しましょう。

配偶者控除による負担軽減

被相続人の遺産を配偶者と子どもが相続する場合、配偶者(残された親)の相続分に税理士費用を上乗せして遺産分割すれば、配偶者の税額の軽減措置(配偶者控除)と基礎控除により子どもの税負担を軽減できます。

配偶者控除は配偶者が相続した遺産額において、以下の条件のどちらかに当てはまれば非課税になる制度です。

  • 遺産額が1億6000万円まで
  • 配偶者の法定相続分相当額

配偶者控除が適用されれば、多くのケースで配偶者の相続税額は0円となるでしょう。

二次相続時の負担軽減

相続人が配偶者と子どもだった場合、被相続人の配偶者が税理士費用を負担して配偶者の財産を減らせば、二次相続時にかかる負担を軽減できます。

二次相続とは、両親のうち片方が相続したあとに、配偶者が亡くなってさらに相続が発生することです。

相続税は、基礎控除額を超えた分に対して課税されます。そもそも遺産総額が基礎控除額を上回っていなければ、申告・納税の義務は発生しません。

基礎控除額は相続人の数をもとに算出されるため、相続人が少なくなると基礎控除額も減少します。

つまり、最初の遺産分割時に配偶者への相続額を減らしておくと、二次相続時の遺産総額を抑えられるため相続税の負担の軽減が可能です。

遺産総額や相続人数によって各家庭に最適な遺産分割方法は異なるものの、基本的に被相続人の配偶者が税理士費用を支払えば、最小限の税負担で済ませられます。

費用を抑えるために税理士選びで注意すること

費用を抑えるために税理士選びで注意すべきポイントは、3つです。

  • 遺産総額の0.5%~1.0%で設定している
  • ホームページに税理士費用を掲載している
  • 成功報酬型に注意する

それぞれ確認して、適正価格の税理士事務所に依頼しましょう。

遺産総額の0.5%~1.0%で設定している

税理士報酬を遺産総額の0.5~1.0%で設定している税理士事務所を目安としましょう。

税理士法改正により税理士報酬の限度額が廃止されたものの、多くの事務所で当時の報酬基準を踏襲しています。その結果、税理士報酬の相場は遺産総額の0.5~1.0%です。

税理士報酬は基本報酬のほかに、事案によって加算報酬が費用に計上されます。加算報酬の費用は、依頼内容の複雑さや手間によって変動します。

加算報酬項目の少ない相続であれば、遺産総額の0.5~1.0%で収まる場合がほとんどです。ただし、土地の複数所有や相続税の申告までの期間が短いといったイレギュラー作業の多い事案だと、遺産総額の0.5~1.0%の費用を超えてもおかしくありません。

加算報酬の金額設定は、税理士事務所によって異なります。必ず複数の税理士事務所を見つくろって、相見積もりを取りましょう。

ホームページに税理士費用を掲載している

事務所のホームページに相続税申告の実績や情報を掲載し、なおかつ税理士費用を掲載している税理士事務所を選びましょう。

費用を掲載していない税理士事務所が必ずしも高いわけではありませんが、税理士費用を掲載している事務所だとあらかじめ費用感が算出でき安心です。

また、相続税の計算は非常に複雑です。相続税申告業務に不慣れだと、節税対策や特例の活用といった依頼者に有利な提案ができません。

むしろ、不慣れな業務による申告漏れが原因の追徴課税や、制度を把握せずに相続税を過払いしてしまうなど、必要以上の税金を支払う可能性があります。

成功報酬型

成功報酬型の報酬体系に注意しましょう。成功報酬型とは、多額の節税を成功させた場合に、節税金額に対して一定率を上乗せして費用を算出する料金プランです。

もちろん、法的に成功報酬を禁じているわけではないため、一概に悪とは言い難いです。ただ、見積り時に成功報酬について詳しく説明されないまま契約してしまうと、想定していた費用と異なる場合があります。

見積りを依頼するときに成功報酬制を取り入れているか聞いておくと、納得した料金の支払いができます。

相続税の申告は税理士に依頼しよう

相続税の申告が必要な場合、相続について経験豊富な税理士に相談しましょう。経験豊富な税理士であれば二次相続まで見据えた対策を行うため、長期目線で節税対策が可能です。

税理士費用は、遺産総額が大きいほどかさみます。

最小限の税負担と税理士費用を抑えるためのポイントは、以下の3つです。

  • 相続に強い税理士事務所を探す
  • 相見積もりをとる
  • 相続税の申告までに余裕をもって依頼する

相続税に詳しい税理士に依頼して、適切な金額で税金を納付しましょう。

ただし、税理士はあくまでも相続税に関する業務をメインに取り扱っています。相続争いに発展した場合や不動産の登記が必要な際は、弁護士や司法書士に依頼しましょう。

「弁護士の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

「司法書士の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

著者紹介

安持まい(ライター)

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年10月19日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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