相続登記で登記漏れしやすい土地とは?対策とあわせて解説

公開日:2024年1月31日

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被相続人が所有するすべての不動産は相続登記が必要です。しかし、中には存在を把握できずに登記漏れしてしまう不動産もあります。

登記漏れした不動産が判明すると、遺産分割協議のやり直しや登記の手続きなど手間もコストもかかるものです。

この記事では、登記漏れしやすい不動産や登記漏れしないための対策について解説していきます。

登記漏れになりやすい不動産とは?

登記漏れしやすい不動産としては、下記のようなものが挙げられます。

  • 前面道路(私道)
  • 分譲地のゴミ置場
  • 敷地内にある建物が建っていない部分の土地
  • 共有名義の不動産
  • 用水路や墓地

代表的な登記漏れしやすい不動産に前面道路があります。敷地に接道している道路のことです。

この道路の名義人が都道府県や市区町村であれば、公道であるため個人に所有権はありません。しかし、道路の名義人が自治体以外の個人や法人という場合、その道路は私道(公衆道路)となります。

私道の場合、自分の敷地に接している部分を持分として所有権を有している可能性があり、持分があれば登記が必要です。公道か私道かをチェックするには、土地の登記簿や公図で確認できます。

不動産購入時の売買契約書にも記載されているので、一度チェックして見るとよいでしょう。

分譲地のゴミ置き場や用水路も、近隣と共同で所有し持分を有しているケースがあるので注意が必要です。

共有名義の不動産も別の共有者が税金の支払いや管理をしていると、所有している自覚がなく相続時に存在に気付かない可能性があります。

上記のような不動産は、相続時に相続財産から漏れるケースが珍しくありません。所有している自覚を持ちにくい不動産でもあるため、そもそも被相続人自体も所有している自覚がない可能性もあります。

相続登記漏れの不動産が後から判明すると、再度相続登記の手続きが必要です。さらに、登記漏れしている不動産は遺産分割協議の時点で存在を把握されていないケースがほとんどでしょう。

遺産分割協議時に存在が把握されていない遺産が判明した場合、再度遺産分割協議を行い、遺産分割協議書の再作成や追加が必要になるなど負担が大きい点には注意が必要です。

再度相続登記すればいいとはいえ、手間や時間・コストがかかるので、一度の登記ですべて完了できるように、相続不動産は慎重に判断するようにしましょう。

登記漏れを防ぐための確認方法

相続登記漏れを防ぐには、被相続人の所有不動産を漏れなく把握することが大切です。ここでは、被相続人の所有不動産の確認の仕方として、次の3つを紹介します。

  • 権利証(登記識別情報)で確認する
  • 名寄帳で確認する
  • 納税通知書を確認する

権利証(登記識別情報)で確認する

不動産を所有し登記すると、登記時に権利証(登記識別情報)が交付されます。権利証を確認すれば、登記しなければならない不動産を把握できます。

権利証は、登記時に交付された後は自宅などで保管しているのが一般的です。書類棚や金庫など思い当たる場所を探してみるとよいでしょう。

ただし、昔取得した不動産など権利証を紛失しているケースや故人でないと保管場所が分からない可能性もあるので、注意が必要です。

可能であれば、被相続人の生存中に権利証の場所を確認しておくことをおすすめします。

名寄帳で確認する

名寄帳とは、所有者ごとの所有不動産を一覧にした帳簿のことです。自治体が管理しており、自治体の窓口で発行してもらえます。

名寄帳では、固定資産税非課税の不動産も一覧に掲載しているため、所有している不動産が多数ある・非課税の不動産がある場合でも把握しやすいでしょう。

ただし、名寄帳は自治体単位で作成されるため、別の自治体にある所有不動産については記載されません。複数の自治体に不動産を所有している場合は、それぞれの自治体で名寄帳を発行してもらうようにしましょう。

被相続人に引っ越し歴がある、実家が別の自治体にあるといった場合は、ゆかりの土地の自治体すべてでチェックしてみることをおすすめします。また、基本的に取得できるのは不動産所有者本人か本人の代理人・相続人に限定されている点にも注意が必要です。

名寄帳の発行手続きについては、自治体によって異なるので事前に確認する必要があります。

納税通知書を確認する

毎年送付される、固定資産税納税通知書でも所有する不動産の把握が可能です。

納税通知書の課税明細書には、課税対象となっている不動産の詳細が記載されているのでチェックしましょう。

しかし、納税通知書は課税されている不動産のみしか記載されていません。私道や小規模の不動産など非課税の不動産は記載されていないため、登記漏れが生じる恐れがあります。

また、共有名義の不動産の場合、納税通知書は共有者全員ではなくそのうち1人にしか送付されないため、持分が少ないなどで送付されていない可能性もあります。納税通知書のみで確認すると、不動産をすべて把握できていない可能性があるので、別の方法と組み合わせての確認をおすすめします。

所有する不動産が多い・非課税の不動産が含まれているというケースでは、不動産の把握が難しい可能性があります。

司法書士などの専門家は、相続財産の調査も依頼できるので相談してみるとよいでしょう。

要らない土地の放棄は可能?

要らない土地の放棄は可能?のイメージ

相続放棄することは可能ですが、別の相続財産も放棄することになるので土地のみ放棄はできません。

被相続人の不動産を調査した結果、要らない土地だったというケースもあるでしょう。要らない土地であっても相続すると、固定資産税などの費用がかかります。

住むなど活用する予定がないなら、売却や他の相続人で相続できないか検討するのがひとつの方法です。

しかし、売却しにくい土地や自分以外相続人がいない・他の相続人も相続する気がないというケースも少なくありません。そのような場合、相続放棄を検討する方法もありますが、他に取得したい財産があるならおすすめできません。

相続したくない土地がある場合は、相続土地国庫帰属制度の活用を検討してみるとよいでしょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地を国に返す制度です。一定の要件を満たし負担金を納付することで、土地の所有権を国に帰属できます。

ただし、どのような場合でも制度の利用が認められるわけではない点に注意が必要です。

「相続土地国庫帰属制度」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

「未登記」の土地・建物

未登記の土地・建物とは、登記されておらず所有者情報が不明の不動産のことです。

建物については、新築取得から1か月以内の登記申請が必要のため、基本的には全ての建物が登記されています。特に、近年は住宅ローンの利用率も高いため、抵当権設定手続きとしても登記が必要となり登記されていない建物は少ないでしょう。

しかし、古い建物の場合、自己資金のみで建設しているなどで登記していないケースが珍しくありません。また、登記が必要な増築部分の登記が漏れているケースもあります。

ちなみに、建物が未登記であっても固定資産税は課税される可能性は高いので、注意しましょう。
建物が未登記か分からない場合は、固定資産税納税通知書を確認してみるとよいでしょう。課税明細書の家屋番号の部分が空欄または、未登記と記載されていると、未登記の可能性が高くなります。

土地についても、相続登記が行われず長年放置され登記簿上の所有者が不明な土地を未登記土地と呼びます。

相続登記は令和6年4月1日から義務化されましたが、それ以前は登記の義務がないため相続登記を怠っているケースが多くあるのです。未登記の土地や建物を相続した場合、相続人が登記手続きをする必要があります。

登記せずに放置していると、罰則が科せられるだけでなく、所有権を証明できずに売却が難しくなるなどデメリットも多いため、速やかに登記することをおすすめします。

ただし、未登記建物では表題部分から登記申請が必要となり、土地の場合も所有者が古い代で止まっていると手続きに必要な書類の収集が難しい恐れがあります。自分で手続きするにはかなりの時間と手間がかかるので、専門家に相談するとよいでしょう。

「未登記建物」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

未登記建物・土地に罰則はある?

建物を新築した際には、取得から1か月以内に表題登記することが法律により定められており、怠ると10万円以下の罰則が科せられます。

また、相続登記についても令和6年4月1日から義務化されました。相続から3年以内に登記しない場合10万円以下の過料に科せられるので速やかな登記が必要です。

この義務化では、施行日以前の相続も対象となります。すでに相続しているのに登記していない場合は、早い段階で登記手続きを行うようにしましょう。

未登記の建物がある、未登記の建物の相続登記が必要・相続登記を長期間放置していたといったケースの場合、登記手続きが煩雑になる恐れがあります。早めに司法書士に相談して、適切に登記手続きを完了できるようにしましょう。

相続する不動産はしっかり調査して登記漏れを防ごう

相続時に不動産の把握ができずに登記漏れが起こると、相続登記の再手続きや遺産分割協議のやり直しなど手間や時間がかかってしまいます。

登記漏れを防ぐには、名寄帳や固定資産税納税通知書などで被相続人の所有不動産を細かく調査することが重要です。

しかし、調査方法によっては調査しても漏れが出る可能性があるので、心配な人は相続登記を含めて不動産の調査を専門家に相談することをおすすめします。

著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。【資格】宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年1月31日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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