認知症の方は意思能力がないとされているため、自分で相続放棄することができません。本記事では、認知症の方が相続放棄をする方法や期限の考え方について解説します。相続人に認知症の方がいる場合は参考にしてください。
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認知症の相続人の相続放棄は無効になる可能性がある
認知症の相続人による相続放棄は、あとから無効となってしまう可能性があります。理由は、相続放棄は相続人自らの意思で行うべき行為であり、認知症を発症している人による相続放棄は、他の相続人からの申立てなどにより、無効と判断される可能性があるためです。
なお、遺産分割協議へ参加して遺産の分け方について話し合っても、同じ理由であとから無効となってしまう可能性があります。
認知症の方が相続放棄をする方法
認知症の方が相続放棄をするには、成年後見制度を利用する必要があります。
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって1人では十分な判断ができない方の財産管理や身上監護をするための制度です。
日常生活における詐欺被害や本人以外の家族による金銭の使い込みなどを成年後見人が防ぎます。相続においては、遺産分割協議や相続放棄などによって不利益を被らないように成年後見人が認知症の相続人に代わって判断と手続きを行います。
家族や親族が後見人になることも可能ですが、弁護士や司法書士など法律に詳しい専門家が選任される場合も少なくありません。
「成年後見制度」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

後見人選任の手続き
成年後見制度の利用を開始するためには、家庭裁判所にて申立て手続きを行って成年後見人を選任します。申立ての際、以下のような書類が必要です。
- 医師による成年後見制度用診断書
- 後見登記されていないことの証明書
- 本人の戸籍謄本
- 本人と後見人候補の住民票
申立てを行う家庭裁判所は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に限られます。
家庭裁判所における審理・審判を経て後見人が選出され、後見の登記を行うと後見が開始します。親族への照会作業や本人調査、認知症の度合いを調べるための医師による鑑定などが行われるため、後見人選任の審判が下りるまでに2〜5か月程度かかると考えておきましょう。さらに、審判が下りた後に即時抗告の期間を経て、審判確定までには2週間かかります。
後見人を選出する場合の熟慮期間の考え方
通常、相続放棄ができる熟慮期間は、自分に相続があったことを知ったときから3か月間です。しかし、認知症の相続人は、そもそも自分が相続人であることを理解できない状態だと判断されるため、相続放棄の期間が開始されません。
相続人に代わって成年後見人が相続放棄を行う場合の熟慮期間は、成年後見人が選任されて、後見人が相続人になったことを知ってから3か月間となります。
つまり、成年後見人の選任をするための手続き期間中に相続放棄の期限を迎えることはありません。心配せず、成年後見人の選任後、手続きを進めましょう。
後見人が相続放棄する方法
成年後見人が相続放棄をする方法は、認知症の相続人に代わって相続放棄の申請を行います。手続きの流れは本人が行う場合とほぼ同様ですが、申述書に「法定代理人(成年後見人)」としての記載が必要になります。
申述書や必要書類の準備ができたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出して手続きを行います。
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認知症の相続人が相続放棄をする際の注意点
ここからは、認知症の相続人が相続放棄をする際の注意点を解説していきます。
成年後見人が相続放棄をするとは限らない
相続放棄のために成年後見人を選任したとしても、成年後見人が相続放棄を積極的に選択するかどうかはわかりません。
成年後見人は、本人の財産を守る役目を持っています。本来受け取れるはずの相続財産を拒否することはその役に反するため、本人の利益を損なうような相続放棄はできません。
もちろん、借金やローンなどの負債がプラスの財産を上回っている場合では、相続人の財産が脅かされることとなるため相続放棄が認められます。
利益相反の場合は相続放棄ができない
認知症の相続人本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合、成年後見人による相続放棄の手続きができません。
しかし、家族が成年後見人として相続放棄の手続きをする場合、後見人も相続人だと利益相反になってしまいます。
例えば、父が亡くなり、法定相続人が母と息子の2人だったとき、母が認知症で息子が成年後見人となっていると、先に認知症の相続人の相続放棄を手続きすることはできません。なぜなら、母に相続放棄をさせることで息子が財産を独り占めする可能性があるからです。
認知症の相続放棄には「成年後見人」が必要
認知症の相続人による相続放棄は、後から無効とされる場合があります。これは、相続放棄が相続人本人の意思で行うべき手続きであり、認知症を発症している人が自分の意思で放棄をしたと認められにくいためです。
そのため、認知症の方が相続放棄をする場合には、成年後見制度を利用する必要があります。
成年後見人は、日常生活での詐欺被害や家族による金銭の使い込みなどから認知症の方を守ります。また、相続手続きにおいては、遺産分割協議や相続放棄などの場面で不利益を受けないように、成年後見人が認知症の相続人に代わって判断や手続きも行います。
ですが、成年後見制度で後見人が選出されるには2〜5か月程度の時間がかかるため、事前の準備や専門家との相談で対策をしておきましょう。
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