相続における固定資産税の注意点と対策!相続対策や基本情報を解説

公開日:2023年8月31日

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「不動産を相続したけど固定資産税ってどうなっているの?」と気になっていませんか。

故人が一括で支払っていない限り、亡くなった年の固定資産税の支払い義務は相続人全員です。支払い期日を過ぎると延滞金が発生するため、期日までに支払わなくてはなりません。

今回は、相続した固定資産税について詳しく紹介します。不動産を相続した場合の固定資産税について理解を深めましょう。

固定資産税とは

そもそも、固定資産税とは毎年1月1日に土地や家屋などの固定資産所有者にかかる税金です。地方税のため、対象となる固定資産の所在する自治体に税金を納めます。

納付義務者は、固定資産の所有者です。固定資産の所有者をどのように判断しているかというと、固定資産課税台帳に登録されている情報で識別しています。

つまり、居住実態がなくても固定資産課税台帳に所有者として登録されていれば、固定資産税を納めなくてはなりません。

また、真の所有者ではない場合でも固定資産課税台帳に氏名が登録されていれば、納税義務が発生します。その場合、真の所有者に固定資産税分を後日求償が可能です。

固定資産税は一括払いか、年に4回に分けて支払う分割払いから選べます。毎年4月〜6月に送られてくる納税通知書には、以下の納付書が同封されています。

  • 1年分を一括納付する全期用納付書
  • 第1〜4期の各納期限ごとの納付書

故人が固定資産税の分割払いを選択している年に亡くなると、法定相続人に残りの固定資産税を支払う義務が発生します。

不動産を相続した場合の固定資産税

不動産を相続したときに固定資産税の扱いがどうなるか、以下のポイントを中心に見ていきましょう。

  • 対象となる財産
  • 対象者(納税者)
  • 金額
  • 納税方法
  • その他注意点など

順番に確認して、固定資産税について理解を深めましょう。

対象となる財産

固定資産税の対象となる財産を以下の表にまとめました。

種類
土地田んぼ・畑・住宅地・山林などの土地
家屋住宅・分譲マンション・お店・工場などの建物
償却資産広告・フェンス・車両・パソコン・工具などの事業用資産

償却資産とは、反復継続して行う事業に使える資産です。営利目的だけでなく、ボランティア活動で使う資産も含みます。

今回は、住宅(土地・家屋)を相続したときの固定資産税について解説します。

対象者(納税者)

固定資産税を納付する義務を負う人は、1月1日時点での固定資産課税台帳に記載された者です。つまり、2月10日に所有者が亡くなったとしても、4~5月に送られてくる納税通知書の宛名(納税義務者)は故人です。

相続による固定資産税の対象者は、死亡時期や相続時期によって変わります。

対象者となるポイントは、以下の通りです。

固定資産税は、遺産分割協議成立まで法定相続人全員に納税義務あり

不動産を相続する人が決まるまで、相続人全員に固定資産税の納税義務が発生します。なぜなら、遺産分割されていない財産は、相続人全員の共有財産だからです。

故人が固定資産税を分割払いしている場合、残りの支払い義務は相続人全員に課されます。

相続時期によって、納税義務を負う人が変わります。

  • 遺産分割協議成立した年は、法定相続人全員に納税義務あり
  • 遺産分割協議成立した翌年1月1日からは、新所有者(相続人)に納税義務発生

例を挙げると、遺産分割協議が1月1日を過ぎた6月に成立した場合、その年の固定資産税は相続人全員の負担です。翌年の1月1日から新所有者に納税義務が生じます。

不動産所有者が亡くなっても、固定資産税免除や納税期限の延長などの措置は取られません。納付期日を過ぎると延滞扱いになるため、便宜上の代表者を決めて支払うことが一般的です。

「相続登記」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

参照:[固定資産税]土地と家屋の名義人であった家族が死亡しましたが、固定資産税はどうなりますか|鈴鹿市

金額

固定資産税の金額は、納税通知書で確認しましょう。納税通知書を紛失した場合、自治体から固定資産税公課証明書を取得して確認できます。

固定資産税を求める計算式は、以下の通りです。

固定資産税=固定資産税評価額(課税標準額)×標準税率1.4%

固定資産税評価額は、「固定資産評価基準」に基づいて各自治体が個別に決める評価額です。各自治体の固定資産評価員が1軒ずつ確認して決定しています。固定資産税評価額は3年に1度見直されているため、定期的に変動します。

課税標準額は、固定資産税額を算出するためのもととなる数字です。本来なら、課税標準額と固定資産税評価額は同じです。 しかし、固定資産税の軽減措置や税負担の調整措置が適用される場合、課税標準額は固定資産税評価額よりも低く算出されます。

地方税法により標準税率を各自治体で税率を定められるため、標準税率は全国一律でありません。1.5%や1.6%の自治体もあります。正確な税率を知りたいときは、自治体のホームページで確認しましょう。

3000万円の土地・2500万円の建物の場合、固定資産税の計算式は以下の通りです。

  • 土地…3000万円×1.4%=42万円
  • 建物…2500万円×1.4%=35万円

上記の計算式はあくまでも概算です。固定資産税を減額するための特例措置が適用されれば金額は変わります。

「不動産の評価方法」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

納税方法

不動産の相続者が決まっていないときに固定資産税を納税するとき、代表者が相続人全員分をまとめて納付します。納付書が1枚しかないため、代表者を1人決めて支払わなくてはなりません。

誰がどのくらい負担するかは相続人全員で話し合って決めましょう。

納税方法は各自治体によって異なります。納付すべき自治体のホームページで確認してください。

たとえば、横浜市では以下の方法で納付できます。

  • クレジットカード
  • スマホ決済
  • ペイジー
  • 口座振替
  • コンビニ支払い
  • 金融機関・郵便局支払い

納期を過ぎると延滞とみなされるため、余裕をもって支払いましょう。

相続した不動産で発生する固定資産税の注意点

相続した不動産に住まない場合、家を放置したままだと固定資産税が大幅に高くなる可能性があります。

居住しない不動産で固定資産税が高くなるポイントは以下の2つです。

  • 特定空き家の勧告を受けると負担が増す
  • 住宅を解体すると負担が増す

特定空き家とは、放置することが不適切な状態にある空き家のことです。 倒壊の恐れや著しく衛生上の有害、景観を損なっている状態などが当てはまります。自治体から特定空き家に認定されると、空き家を適切に管理するための助言または指導が入ります。

それでも改善されないと、勧告を受けて固定資産税が高額になるため注意してください。勧告を受けると翌年から軽減措置(住宅用地)を受けられません。そのため、土地の固定資産税は最大6倍となり、税額が高くなってしまいます。

同様に、特定空き家の前段階である管理不全空き家も税制優遇の除外対象となる恐れがあります。管理不全空き家とは、壁や窓が割れていたり、雑草が生い茂っていたりして管理が行き届いていない家のことです。管理不全空き家についても勧告を受けると小規模住宅用地の軽減の特例措置が適用されないため注意しましょう。

また、住宅を解体すれば軽減措置(住宅用地)を受けられず、土地の固定資産税が高くなります。なぜなら、軽減措置(住宅用地)は住宅所有者の負担を軽減するために、土地の固定資産税を安くする仕組みだからです。

ただし、一部自治体では、空き家解体後も固定資産税を減免できる制度を設けています。減免制度の有無については自治体のホームページで確認するか、窓口で相談しましょう。

相続した不動産で居住しない場合、適宜適切な手入れを行って固定資産税の負担を増やさないようにする必要があります。

相続した不動産の固定資産税を下げる方法

固定資産税を下げるイメージ

相続した不動産を維持し続けたいと考えているものの、固定資産税の負担が大きいと感じるなら減税制度の利用を検討しましょう。

固定資産税の軽減措置(住宅用地)を利用すれば、土地の固定資産税を抑えられます。

また、今後も住宅として利用し続けるなら、建て替えやリフォームを検討しましょう。建て替えやリフォームの実施で固定資産税を抑えられます。

固定資産税を抑えられる制度を以下の表で確認しましょう。

固定資産税の軽減措置(住宅用地)
代表的な条件小規模住宅用地:200平方メートル以下
一般住宅用地:200平方メートル以上
減額期間期限なし
減額割合小規模住宅用地:課税標準の6分の1
一般住宅用地:課税標準の3分の1
固定資産税の軽減措置(住宅用地)
代表的な条件新築住宅
新築 認定長期優良住宅
減額期間新築住宅/戸建て:3年間・マンション:5年間
新築 認定長期優良住宅/戸建て:5年間・マンション:7年間
減額割合固定資産税の2分の1
バリアフリー改修に関する特例措置
代表的な条件築10年以上を経過した住宅
減額期間翌年度
減額割合固定資産税の3分の1
耐震改修に関する特例措置
代表的な条件昭和57年1月1日以前から所在する住宅
減額期間翌年度
減額割合固定資産税の2分の1

新築住宅に係る税額の減額措置は、令和6年3月31日までの制度です。

バリアフリー改修に関する特例措置と、耐震改修に関する特例措置は令和6年3月31日までに工事を完了する必要があります。

参照:新築住宅に係る税額の減額措置|国土交通省

相続した不動産の固定資産税の注意点と知っておきたいこと

固定資産税の支払いでトラブルに発展しないための注意点と、知っておきたいポイントが3つあります。

  • 故人の未納の固定資産税がある場合
  • 相続放棄をした場合の固定資産税
  • 固定資産税の支払いが難しい場合・支払わないとどうなる

どれも重要な内容のため、順番に確認しましょう。

故人の未納の固定資産税がある場合

故人の固定資産税を相続人が支払った場合、相続税の債務控除の対象です。

債務控除とは、相続税を計算するときに、故人が残した借入金や葬式費用などの債務を遺産総額から差し引くことです。

以下の3つのパターンで、債務控除できるか確認しましょう。

パターン債務控除の有無
相続前に全期一括払い債務控除なし
相続前に一部支払済み相続人が支払った分だけ債務控除
納税通知書が届く前に相続発生1月1日過ぎて相続発生なら全額債務控除

相続発生時点で未払いの固定資産税は、故人の債務として相続税の計算のときに債務控除できます。

相続放棄をした場合の固定資産税

相続放棄をしたら、原則として固定資産税を支払う必要はありません。なぜなら、相続放棄をすれば「最初から相続人でない」とみなされるからです。

ただし、相続放棄をしても1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されれば、固定資産税を納めなくてはなりません。固定資産税には、固定資産課税台帳に基づいて課税される「台帳課税主義」の原則があります。

相続放棄しても固定資産課税台帳に記載される要因として、以下の2つが挙げられます。

  • 相続放棄手続きが年をまたいだ
  • 相続放棄手続きを怠った

登記簿上の所有者が亡くなると、自治体が独自に調査を行って所有者を推定します。このときに自治体が相続人だと推定し、固定資産課税台帳に情報が登録される仕組みです。

そのため、年をまたいで相続放棄をしたり、相続放棄の手続きを怠ったりすると、自動的に法定相続人が不動産の所有者とみなされます。そのため、固定資産税の納税義務が発生します。

このような事態を回避するには、自ら相続放棄申述受理通知書、または相続放棄申述受理証明書を役所に提出しましょう。書類を提出すれば相続放棄したとして、固定資産課税台帳から抹消されます。

ただし、相続放棄をしたにもかかわらず固定資産税の納税通知書が届いた場合、期日内に納付しましょう。放っておくと、財産の差し押さえに至る可能性があります。支払った固定資産税は、実際に相続した人に固定資産税相当額を求償できます。

固定資産税の支払いが難しい場合・支払わないとどうなる

固定資産税を支払えず滞納し続けると、延滞金が追加徴集されるだけでなく不動産を差し押さえられ、競売にかけられるかもしれません。

滞納し続けたときの自治体の対応は、以下のステップで行われます。

  1. 支払期日から20日以内に督促状の発行・送付
  2. 催告書の送付
  3. 給与や預金、生命保険、不動産などの差し押さえ

なお、納付期日を過ぎると延滞金が発生します。

固定資産税の支払いが難しいときは、自治体に相談しましょう。固定資産税の相談をしたいと伝えれば、適切な窓口に案内してくれます。

自治体に相談すれば、以下の減免や期限の延長を認められるかもしれません。

  • 徴収猶予
  • 減免
  • 災害などによる納期限の延長

自治体に相談することも重要ですが、毎年の固定資産税に悩んでいるなら不動産の売却を視野に入れましょう。不動産を手放せば、翌年以降固定資産税を支払う必要はありません。また、多くのケースで今年度分の固定資産税は売却代金から支払えます。

まとめ

不動産の固定資産税は、1月1日時点で固定資産課税台帳に記載されている人に納税義務が発生します本来故人が支払うべき固定資産税を相続人が支払った場合、相続税で債務控除を忘れないようにしましょう。

相続した不動産の固定資産税額は毎年送付される通知書や、固定資産税公課証明書を取得すれば確認できます。固定資産税を払ってでも相続すべき不動産なのか検討するためにも、納めるべき金額の確認は早めにしましょう。

毎年の固定資産税が負担に感じるなら、税負担を軽くする方法を税理士に相談するのもひとつの方法です。

相続による固定資産税について理解を深めて、家族に合った不動産の扱いを決めましょう。

著者紹介

安持まい(ライター)

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年8月31日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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