空き家に固定資産税かかる?かからない?空き家の活用方法や処分の仕方とは

公開日:2022年6月30日|更新日:2023年1月4日

空き家

「空き家の固定資産税はいくらになるのだろう」と気になっていませんか。適度に管理されている空き家の場合、住宅用地特例の対象となるため土地の固定資産税を軽減できます。しかし、全く管理されていない空き家の場合、特定空き家に指定される可能性があり、土地の固定資産税が最大で6倍になるかもしれません。今回は、固定資産税の計算方法と特定空き家に指定される要因について解説します。空き家の固定資産税について把握して、どのように活用・処分するとお得なのか考えましょう。

そもそも空き家とは?

空き家とは、人の住んでいない状態が続いている家のことです。空き家には以下の2種類あり、固定資産税の負担率が変化します。

  • 空き家
  • 特定空き家

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

空き家の定義

空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)による空き家の定義は、住んだり使用したりされていないことが通常の状態であることです。

目安として1年以上だれも住んでいなかったり使用されていなかったりしていると、空き家とみなされると思ってよいでしょう。

人が住んでいない状態でも、所有者が倉庫として活用し、定期的に搬入・搬出している場合は空き家として認められません。

建物の老朽化や破損がなく、限度を超えて植物が生い茂っていない空き家は、適切な管理をされていると判断されるため、住宅用地特例の対象です。そのため、土地の固定資産税は居住している建物と同様に軽減されます。

第二条 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
※引用:空家等対策の推進に関する特別措置法第2条|空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)

特定空き家とは

特定空き家とは、管理不十分な空き家のことです。

具体的にどのような状態のことを指すのか以下の表で確認しましょう。

項目内容
倒壊など保安上の危険性がある
  • 柱が傾斜している
  • 建物の重みによって地盤や建物が沈んでいる
  • 屋根が変形している
  • 外壁が剥がれ落ちている
  • 階段やバルコニーが腐食してる
  • 上記が予見される状態
衛生上有害になるおそれがある
  • 吹き付け石綿(アスベスト)が飛散している
  • 浄化槽の放置により悪臭を放っている
  • 不法投棄により悪臭やねずみ、はえが飛んでいる
  • 上記が予見される状態
適切な管理が行われず景観を損なっている
  • 景観保全ルールに適合していない
  • 落書きされている
  • 窓ガラスが割れたまま
  • 植物が建物を覆うように茂っている
周辺の生活環境の保全が図れない
  • 空き家に住みついた動物の糞尿被害
  • 白アリの大量発生
  • 不特定の者が容易に侵入できる状態

上記をまとめると、特定空き家とは、長期間にわたって手入れされておらず、放置し続けると周囲に被害を及ぼす可能性の高い家のことです。

この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
※引用:空家等対策の推進に関する特別措置法第2条の2|空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)

適正な管理のされていない空き家は、景観だけでなく衛生や安全といった面で問題になっています。そのため、空き家法が制定され特定空き家について上記のように定義し、適正な管理を促しているのです。

空き家法だと、所有者による空家等の適切な管理は努力義務となっていますが、自治体によっては条例により適切な管理を義務化していることもあります。

「空き家」と「特定空き家」にかかる固定資産税額は異なる

相続放棄に掛かる費用

一般的な空き家と特定空き家で固定資産税額が異なります。なぜなら、特定空き家だと固定資産税等の住宅用地特例の対象から外れるからです。

固定資産税等の住宅用地特例とは、居住するための敷地として利用されている土地に対する特例措置のことで、固定資産税や都市計画税が軽減されます。都市計画税とは、市街化区域内に不動産を有している人に課される税金のことです。

固定資産税の住宅用地特例について詳しく見ていきましょう。

固定資産税の住宅用地特例

住宅用地特例の内容について確認しましょう。

用地措置内容
小規模住宅用地
(住宅やアパート等の敷地で200平方メートル以下の部分)
固定資産税:価格×1/6
都市計画税:価格×1/3
一般住宅用地
(住宅やアパート等の敷地で200平方メートルを超える部分)
固定資産税:価格×1/3
都市計画税:価格×2/3

実際に計算してみましょう。

200平方メートル分が小規模住宅用地のため、課税標準額を以下のように計算します。

  • 3000万(200平方メートル分の価格)×1/6=500

残りの200平方メートル分が一般住宅用地のため、課税標準額の計算式は以下の通りです。

  • 3000万(残りの価格)×1/3=1000

土地の固定資産税を算出します。

  • (500万+1000万)×1.4%(標準税率)=21万(固定資産税)

今回のケースにおける土地の固定資産税は、21万円です。

一方で、特定空き家に指定されると特例措置が適用されないため、以下の計算で土地の固定資産税を算出します。

  • 6000万(土地評価額)×1.4%(標準税率)=84万(固定資産税)

特例が適用されたケースよりも大幅に増額され、土地の固定資産税は84万円です。

特定空き家に指定されると住宅用地特例の対象外となるため、これまでより最大で6倍の固定資産税を払わなくてはなりません。

今回は土地のみの固定資産税を算出しただけなので、実際は建物の固定資産税や都市計画税も別途かかります。

特定空き家と指定される要因

特定空き家に指定されるまでには、いくつかのステップを踏みます。

特定空き家に指定される大まかな流れは以下の通りです。

  1. 空き家の調査
  2. 特定空き家に指定
  3. 所有者へ助言・指導
  4. 勧告
  5. 命令
  6. 行政代執行

特定空き家に指定されると、自治体から所有者へ助言や指導が行われます。これにより空き家の状況が改善されると、特定空き家から指定解除されます。

改善されなかった場合、自治体から勧告がなされ固定資産税等の住宅用地特例の対象外となるので注意してください。

それでも改善されないと命令がくだり、命令違反すると50万円以下の過料(行政上の罰金)が科されます。

それでも放置していた場合は、最終手段として行政代執行により自治体が強制的に管理を行うのです。行政代執行が行われると、管理にかかった費用は税金債務と同様に扱われます。そのため、支払うことができないと最悪の場合、差押えに至るかもしれません。

特定空家の所有者が適正な管理を実施した場合は、その建物は特定空家の指定から外れます。特定空き家の指定が外れれば、固定資産税の住宅用地特例の適用対象です。

このように、特定空き家に指定されないことが節税につながります。

特定空き家に指定される要因は以下の4つです。

  1. 保安上危険となる恐れがある状態
  2. 衛生上有害となる恐れがある状態
  3. 管理不足によって景観を損なっている状態
  4. 放置することが周辺の生活環境の保全を損なう状態

具体的にどのような状態が特定空き家に指定されるのか確認しましょう。

要因1:保安上危険となる恐れがある状態

空き家が保安上危険となる恐れのある状態だと、特定空き家に該当します。建物がすでに倒壊や変形している場合だけでなく、将来的にそのような状態を予見できる建物も同様です。

たとえば、以下の状態のような建物を指します。

  • 柱が傾斜している
  • 建物の基礎が変形している
  • 屋根が変形している
  • 給湯設備等が転倒している
  • 土留め壁から水がでている

考え方としては、上部構造を支えきれなくなっていたり、将来的に役目を果さなくなると予見できるものは、特定空き家に該当すると考えてよいでしょう。また、今すぐ屋根が壊れるわけではないものの、すでに損傷している場合も同様に考えます。

すでに建物が倒壊する危険性があったり、近い将来倒壊する可能性が高まる場合、保安上危険となる恐れがある状態と認定されます。

要因2:衛生上有害となる恐れがある状態

衛生面で問題が起きていて日常生活に支障をきたしている建物は特定空き家の基準を満たします。

たとえば、以下のような状態です。

  • 排水による臭気の発生
  • 浄化槽の破損による汚物の流出
  • ゴミの放置や不法投棄

今のところ近隣住民の生活に支障をきたしていなくても、将来的に衛生上有害になると予見できる建物は特定空き家の基準に該当します。

要因3:管理不足によって景観を損なっている状態

管理不足による景観を損なっている状態は特定空き家に指定される要因です。

具体的には、以下のような状態をいいます。

  • 景観法に基づいた景観計画や地域で定めた景観ルールから大きく逸脱している
  • 周囲の景観から浮いている状態

周囲の景観から浮いているとは、割れた窓ガラスや壁の落書きなどを放置している状態のことです。また、樹木やツタなどが生い茂って建物を覆ってしまいそうな状態も該当します。

すぐに人が住める状態でない景観は、適切な管理をしていないとみなされる可能性があります。

要因4:放置することが周辺の生活環境の保全を損なう状態

放置し続けることで周辺の生活環境の保全がなされない状態だと、特定空き家の基準を満たします。

例を挙げて確認しましょう。

  • 伸びきった樹木が道路にはみ出し歩行者の通行を妨害している
  • ねずみやハクビシンなどの動物が住みつき糞尿被害が出ている
  • 白アリが発生し近隣へ飛来している
  • 施錠が破壊され不特定多数の人が侵入できる

通行できなかったり害獣が発生したりする建物は、近隣住民の迷惑になります。

また、不特定の人が簡単に侵入できる状態だと犯罪の温床になりかねません。すでに近隣住民の生活に支障をきたしているため、このまま放置していれば生活環境の保全が損なわれたままです。

近隣住民の生活環境の保全を損なう状態の家は、特定空き家に指定される可能性があります。

空き家をうまく使うor処分する方法は?

空き家を上手く活用したり処分したりするためにどのような方法があるのか確認しましょう。

所有者や親族が住む

最も簡単でシンプルな方法が空き家の所有者や親族が住むことです。周囲に住む人がいないか聞いてみましょう。

住む人が見つからない場合は、別荘として数か月に1度宿泊するだけでも建物の劣化速度を緩められます。

賃貸として活用する

親族で住む人が見つからなければ、居住用として第三者に貸すことを検討しましょう。借り手が見つかれば不労所得を得られます。

賃貸には以下の種類があるので参考にしましょう。

  • 居住用の賃貸
  • 貸店舗
  • シェアハウス

建物に不備がなければ、クリーニングをしてすぐに貸し出せます。また、借り手によるリフォームを可能にすれば、貸し出す前のリフォームをする必要はありません。

住んでいる地域や環境にあわせた貸し出しを行いましょう。

売却する

空き家を管理しきれないなら、売却しましょう。売却すれば、毎年の固定資産税や都市計画税などに悩まされずに済みます。

ただし、空き家を売却したときに譲渡所得(売却益)を得ると税金が発生します。譲渡損失(売却損)の場合だと、税金は発生しません。

譲渡所得を得たときにかかる代表的な税金は以下の3つです。

  1. 譲渡所得税
  2. 住民税
  3. 復興特別所得税

譲渡所得税と住民税は、空き家の所有期間が5年超えかどうかで税率が変わります。

所有期間譲渡所得税住民税
短期譲渡所得
(5年以下の所有)
30%9%
長期譲渡所得
(5年を超える所有)
15%5%

所有して5年経つかギリギリの場合は少し待ってから売却すると、節税につながります。

解体して土地活用する

空き家を解体して土地を活用することも、ひとつの方法です。

土地活用の例として以下が挙げられます。

  • トランクルーム
  • 駐車場
  • 資材置き場

土地を手放したくないと考えている人は検討しましょう。

固定資産税を滞納すると…

固定資産税を滞納すると、以下の流れで自治体から働きかけがあります。

  1. 督促
  2. 催促
  3. 財務調査
  4. 差押え
  5. 換価(差押さえた財産を金銭に換える)

最終的に自治体から財産を差押えられてしまう可能性があるため、早急に納付しましょう。

また、固定資産税を滞納すると延滞金が加算されます。そのため、もとの税額よりも大きな金額を支払わなくてはなりません。延滞金は、納期限の翌日から納めた日までの期間分を法律で定められた割合で計算します。

つまり、固定資産税が高額だからと言って無視すると、差押えられたりより多くの金額を納付することになったりするため、デメリットしかありません。

固定資産税の納付通知がきたら期限内に納付しましょう。

まとめ

空き家でも固定資産税から免れることはできません。万が一、特定空き家に指定されると固定資産税が最大で6倍になるため、適切な管理が必要です。

長い間放置され続け、近隣住民の生活に支障をきたしている空き家は特定空き家に指定される可能性があります。特定空き家に指定されたら早急に適正な管理を行いましょう

定期的に管理のされている空き家なら住宅用地特例の適用となるため、土地に対する固定資産税が軽減されます。

空き家の固定資産税について理解を深めて、必要以上に税金を納める必要がないように立ち回りましょう。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月30日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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