兄弟に認められる遺産相続の遺留分について解説!遺留分が認められないケースやトラブルを防ぐポイントとは

公開日:2023年8月24日

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遺産を最低限受け取る権利である遺留分は、兄弟姉妹には認められていません。

被相続人の血縁者で近しい存在でもある兄弟姉妹にはなぜ遺留分が認められないのでしょうか?また、遺留分がなくても遺産を受け取る方法はあるのでしょうか?

この記事では、兄弟姉妹の遺留分や遺産を受け取れるケース・遺産トラブルを防ぐ方法について分かりやすく解説します。

そもそも遺留分とは

遺留分とは、法律によって守られる遺産の最低保証額のことです。

遺留分を侵害して相続が発生した場合、遺留分を有する人は侵害された遺留分の請求ができます。相続では、法定相続分を目安として遺産を分割します。

ただし、遺言や遺産分割協議によって法定相続分とは異なる相続割合での相続も可能です。たとえば、「遺産はすべて子供Aにゆずる」という遺言があれば、遺言が優先されます。しかし、それでは配偶者や他の子供が遺産を受け取れません。

遺産は被相続人の死後、相続人の生活を支えるという性質を持つものです。遺産がないと高齢の配偶者など生活ができない場合もあるでしょう。また、そもそも遺産となった財産は、配偶者など他の相続人の支えもあって築かれたものでもあります。

そのため、遺留分として一定の遺産を相続人が受け取る権利を持っているのです。上記の場合は、遺言で子供Aにすべて譲ると残されても、配偶者や他の相続人は侵害された遺留分を子供Aに請求できます。

ただし、遺留分を持つ人は次のように定められています。

  • 配偶者
  • 子供
  • 直系尊属(親・祖父母)

つまり、兄弟姉妹は遺留分が認められていないのです。

少子化が進む日本では、兄弟姉妹が法定相続人になるケースが増えています。被相続人に子供がおらず、父母が他界しているケースでは配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。

しかし、遺言で「配偶者にすべて」「愛人にすべて」といった内容が残されていると、兄弟姉妹は遺産を受け取れません。しかも、兄弟姉妹は遺留分がないため、遺言通りに相続されてしまい一切の財産を受け取れないのです。

このように血縁関係の深い兄弟姉妹に遺留分がないことで、相続時にトラブルに発展するケースは珍しくありません。そのため遺留分や兄弟姉妹への相続について理解しておくことが大切です。

「遺留分」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

兄弟・姉妹に遺留分が認められない理由

被相続人と血縁関係がある兄弟・姉妹なのになぜ遺留分が認められていないのでしょうか。

遺留分を認められない理由としては、次の3つが挙げられます。

  • 被相続人と関係が遠い
  • 兄弟には代襲相続がある
  • 生活に困らない

被相続人と関係が遠い

兄弟姉妹は血縁関係としては近いですが、法定相続人としてみた場合は遠い関係となります。

相続順位は民法によって次のように定められています。

  • 配偶者は常に相続人
  • 相続第1順位:子供
  • 相続第2順位:父母
  • 相続第3順位:兄弟姉妹

法定相続人は配偶者と相続順位が高位の人となります。

例えば、被相続人に配偶者と子供がいる場合は、配偶者と子供が相続人となり、下位の順位である父母と兄弟姉妹は相続人になれません。

配偶者がいて子供がいない・父母がいる場合では、配偶者と父母が相続人です。一方、配偶者がいない場合は、相続順位の高位の人のみが法定相続人となります。また、子供が無くなった場合でも子供に子供(被相続人の孫)がいる場合は、孫が兄弟姉妹よりも優先されます。

つまり、兄弟姉妹が法定相続人になれるケースは、子供も父母もいない場合のみです。ちなみに、法定相続割合も相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1と相続できる割合も少ないのです。

このように、兄弟姉妹は相続人としてみた場合、法律上配偶者や子供・父母の下位というように関係が低いことから遺留分が認められていないのです。

「法定相続人の範囲」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

兄弟には代襲相続がある

代襲相続とは、本来の相続人が死亡している場合その子供が相続人に成り代わるです。

例えば、本来の相続人が配偶者と子供A・Bであり、子供Aが死亡しているとします。この場合、子供Aに子供(被相続人の孫)がいれば、子供Aに代わって孫が相続権を持つこととなり、このことを代襲相続といいます。

代襲相続は兄弟姉妹にも認められています。そのため、兄弟姉妹が相続人になるケースで兄弟姉妹が死亡している場合は、その子供(被相続人の甥・姪)が相続人になるのです。

兄弟姉妹に遺留分を認めると、甥や姪にも遺留分を認めることになります。甥や姪は血縁としては少し遠く、それよりも生前お世話になった人に遺産を多く残したいという人もいるでしょう。

そのように、血縁関係の遠い甥や姪に遺産が渡る可能性が出てしまうことも、兄弟姉妹に遺留分が認められない一因としてあるのです。

「代襲相続」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

生活に困らない

一般的に、兄弟姉妹と生計を同じにしているケースは多くありません。

配偶者や子供・父母と言った場合は、被相続人と生計を同じくしている可能性が高く、被相続人が無くなることで生活が困窮する可能性も出てくるでしょう。しかし、兄弟姉妹の場合は生計が分かれていることが多く、被相続人が死亡したからと言って生活に支障が出るケースは稀と言えます。

被相続人が無くなったことへの影響が少ないことも、兄弟姉妹へ遺留分が認められない一つの要因となるのです。

ただし、特別な事情などで兄弟姉妹と生計を同じくしている場合、被相続人の死亡で生活が困窮する可能性があります。例え、生計を同じくしていても法律上兄弟姉妹には遺留分がありません。

その場合は遺言書で兄弟姉妹に遺産を譲るように配慮する必要がある点に注意しましょう。

「遺留分」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺留分のない兄弟・姉妹でも遺産がもらえるケース

遺留分のない兄弟・姉妹でも遺産がもらえるケースのイメージ

法定相続人としての順位が低く、遺留分のない兄弟姉妹ですが、遺産を絶対に貰えないというわけではありません。遺産を貰える可能性を上げるためにできることはいくつかあるので、覚えておくとよいでしょう。

兄弟姉妹で遺産を貰えるケースとしては、次の3つが挙げられます。

  • 寄与分の請求を行う
  • 遺言無効の主張を行う
  • 第1・第2順位の相続人が1人もいない

寄与分の請求を行う

寄与分とは、被相続人に特別な貢献をした人に対して法定相続割合を超えて相続できる制度のことです。

「被相続人を長年介護していた」「長年家業を無償で手伝っていた」というように、被相続人への貢献度が相続の際に考慮されます。寄与分が認められるのは、相続人のみです。

ただし、子供の配偶者と言った相続人以外の親族であっても特別寄与料の請求が認められています。

兄弟姉妹であっても、介護や家業の手伝いなどで寄与分が認められるケースがあります。しかし、寄与分が認められるには、細かい条件をクリアする必要があるので、寄与分を検討している場合は弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

遺言無効の主張を行う

実際には相続権があるのに遺言により相続ができない状況の場合、遺言の無効を主張する方法があります。

遺言書が無効になれば、法定相続分での相続か相続人全員での遺産分割協議で相続割合を決めることになり、兄弟姉妹でも法定相続分の相続が可能です。

以下のように、法的な効力のない遺言書の場合は無効を主張してみるとよいでしょう。

  • 遺言書の要件を守れていない
  • 認知症など判断力が低下した状態で書かれている
  • 偽造や改ざんされている

また、遺言書の内容が一方的と言った場合で、相続人全員の理解が得られれば相続人全員での遺産分割協議への移行も可能です。

ただし、遺言書の無効の主張が認められるのは難しいケースもあるので、専門家に相談してみることをおすすめします。

第1・第2順位の相続人が1人もいない

相続第1順位の子供・第2順位の父母がいないケースでは、配偶者と兄弟姉妹が相続人となり、法定相続分の遺産を受け取れます。

しかし、遺言によって遺産を別の人に譲る旨が残されていると、一切受け取れなくなるので注意が必要です。兄弟姉妹に遺留分がないことを理解していない被相続人も少なくありません。

遺留分を踏まえた相続割合について、生前中に兄弟姉妹間で話し合っておくと良いでしょう。

兄弟・姉妹の遺留分トラブルを防ぐポイント

兄弟姉妹の相続では遺留分を巡ってトラブルに発展するケースもあるので、遺留分についてしっかりと理解しておくことが大切です。

遺留分トラブルを防ぐポイントとして、次の2つを抑えておくとよいでしょう。

  • 遺留分は遺言より強い効力がある
  • 家族構成によって遺留分割合は変わる

遺留分は遺言より強い効力がある

「遺言があるから遺留分はない」そう解釈している相続人も少なくありません。

遺留分と遺言の関係性を理解していないことから、遺留分の無効を主張され相続トラブルに発展するケースも珍しくありません。遺留分は遺言よりも強い効力を持つものです。

例え、遺言により一人の相続人が全財産を譲り受けた場合でも、遺留分を持つ相続人は遺留分の請求ができます。このことを相続人全員が理解しておくことが大切です。

とはいえ、いくら法的に遺留分があると主張しても、そんなものないと信じ込んでいる人に納得させることは簡単ではありません。また、相続時には感情論となり冷静な判断ができないケースも多いものです。

遺留分を巡って話し合いが必要な場合は、法的な知識を持つプロに第三者の立場から説明してもらったほうが冷静に受け入れてもらいやすくなるでしょう。

家族構成によって遺留分割合は変わる

遺留分は常に一定ではなく、相続人の間柄によってその割合が変わっていきます。

自分のケースでは、誰がどれくらい遺留分を持っているのかを理解しておかなければ、遺留分の割合でトラブルになる恐れもあるでしょう。

主な相続ケース別の遺留分の割合は以下の通りです。

相続人遺留分割合
配偶者のみ配偶者:2分の1
子供(孫)のみ子供(孫):2分の1
親(祖父母)のみ親(祖父母):3分の1
兄弟姉妹のみ遺留分なし
配偶者と子供配偶者:4分の1
子供:4分の1
配偶者と父母配偶者:3分の1
父母:6分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者:2分の1
兄弟姉妹:遺留分なし

遺産総額に対して上記の割合で遺留分が発生します。

ちなみに、相続人が複数いる場合はそれぞれの遺留分で分け合います。例えば、配偶者と子供が2人の場合、配偶者の遺留分は4分の1となり、子供は遺留分4分の1を2人で分けるためそれぞれ8分の1となるのです。

まとめ

兄弟姉妹の遺留分が認められない理由と遺産を受け取る方法・注意点についてお伝えしました。近しい存在である兄弟姉妹ですが、相続人としての関係性は遠いことから遺留分が認められません。

兄弟姉妹に遺留分がないことで、本来受け取れる遺産を一切受け取れない事態も発生するので注意が必要です。兄弟姉妹であっても遺産を受け取ることはできるので、生前中に兄弟間で話し合っておくことが大切です。

ただし、兄弟姉妹の遺留分や相続は難しくトラブルに発展しやすいものでもあるので、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。

著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。【資格】宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年8月24日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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