相続した土地・建物など不動産の名義変更は必須?手続きの流れや注意点を徹底解説

公開日:2023年12月1日

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監修
片野坂弘平(司法書士)

片野坂弘平(司法書士)

法務テーラー司法書士事務所

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相続した土地・不動産の名義変更が必要かどうかお悩みではありませんか。結論から言うと、相続した土地・不動産の名義変更は必須です。令和6年4月1日から、相続登記が義務化されました。本記事では、土地・不動産の名義変更の必要性や手続きの流れ、費用を解説します。これから土地・不動産を相続する予定の方や、名義変更せずに放置したままの方は、ぜひ参考にしてください。

相続した土地・不動産の名義変更は必須?

相続した土地・不動産の名義変更は必ずしなければなりません。そもそも名義変更とは、所有者の情報を登記記録データに登録することです。

土地・不動産の持ち主が亡くなってしまうと、相続人に所有権が移動します。書き換えをしなければ、亡くなった元の持ち主のままとなり、現在の所有者がわからない状態です。

そのため、相続した土地・不動産の所有者が自分であることを証明するために、名義変更の手続きをしなければなりません。

ちなみに、相続によって所有権が移動したときに行う名義変更の手続きを相続登記といいます。相続登記によって相続した土地・不動産の名義が相続人に変更されます。

相続した土地・不動産の名義変更は義務化される

令和6年4月1日より、相続によって取得した土地・不動産の名義変更が義務化されました。

名義変更の期限は、土地・不動産の所有権を取得した事実を知ってから3年以内です。遺産分割協議によって土地・不動産を取得した場合は、遺産分割協議の成立日から3年以内に手続きをしなければなりません。

もし、この期限を守らなければ10万円以下の過料が科せられます。ただし、相続人が重篤な病気だったり、遺産について相続人同士で争いが起きていたりすると、名義変更できない正当な理由として認められます。

ちなみに、相続した土地・不動産の名義変更の義務化は、令和6年4月1日以前に相続した土地・不動産も対象です。期限については、施行日である令和6年4月1日か、相続による所有権の取得を知った日のいずれか遅い日から起算して、3年間の猶予期間が与えられます。

今まで相続したまま放置していた土地・不動産についても名義変更しなければならないため、注意しましょう。

相続した土地・不動産を名義変更しないとどうなる?

相続した土地・不動産を名義変更しないままでいると、以下のようなデメリットやリスクが発生します。

  • 権利が複雑化する
  • 子孫の相続で大変になる
  • 土地・不動産を売却できない

それぞれ詳しく確認し、名義変更が必要であることを改めて認識しましょう。

権利が複雑化する

相続によって所有権を取得したにもかかわらず名義変更をしないでいると、相続人全員が法定相続分に従って不動産を共有して所有する状態になります。

つまり、遺産分割協議で「長男が相続する」と決まったにもかかわらず手続きしないままだと、他の相続人を含む長男・次男・三男の全員で共有している状態です。

また、名義変更をしないまま相続した人が亡くなってしまうと、所有権は配偶者や子どもに移行してしまい、共有する人数が増えてしまいます。

誰が土地・不動産の権利を持っているのかがわからなくなってしまい、処分や管理において相続人同士でトラブルを引き起こす原因となってしまいます。

子孫の相続で大変になる

名義変更をしないまま相続した人が亡くなって次の世代に引き継がれたとき、次の世代の相続人は「祖父母の代」「親の代」の2世代分の名義変更手続きが必要です。

名義変更をする際には、相続人全員の戸籍謄本や、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を提出しなければなりません。

親族同士の付き合いがあれば提出書類が多くても、手続きはスムーズに進められます。しかし、関係者が多くなってしまうと連絡が取れないといったことも起こりかねません。

このように、名義変更をしないままでいると子孫に迷惑をかけてしまいます。

土地・不動産を売却できない

土地・不動産を売却したくても、土地・不動産の所有者であることを証明できないため売却できません。

土地・不動産の所有者は、登記情報提供サービスから誰でも確認できます。しかし、相続後に名義変更をしていないのであれば、当然登記情報に正しい所有者は記載されていません。

所有者がはっきりしていない土地・不動産を買いたいと思う業者はいないため、売却はできないでしょう。

また、売却をしようと思い立ったタイミングで名義変更をしようとしても、すでに権利が複雑化しているとすぐに手続きを完了させられません。手続きがスムーズに済ませられる相続のタイミングで名義変更をしておく方が賢明です。

相続した土地・不動産の相続登記(名義変更)をする手順・流れ

土地・不動産の名義変更をするには、相続登記の手続きが必要です。

相続登記の手続きは複雑で時間と手間がかかるため、司法書士にお願いする相続人は少なくありません。もちろん、自分で手続きすることも可能です。そこで、ここでは一般的な相続登記の流れを解説します。

一般的な相続登記の流れは、以下の通りです。

  1. 相続人の調査を行う
  2. 不動産を評価する
  3. 必要書類を準備する
  4. 遺産分割協議書を作成する
  5. 登記申請書を作成する
  6. 法務局で相続登記をする

遺言書がある場合や、法定相続分に従って相続する場合には「4.遺産分割協議書を作成する」のステップを飛ばします。それでは、手順ごとに詳しく確認しましょう。

1.相続人の調査を行う

まず、土地・不動産を相続する権利を持つ人が誰であるのかを確認するために、相続人の調査を行いましょう。なぜなら、相続登記の手続きには、相続人全員分の戸籍謄本が必要だからです。

2.不動産を評価する

つづいて、相続する不動産の評価を行います。

相続登記を申請する際、登録免許税がかかります。登録免許税を算出するには、不動産の評価額が必要です。

土地・建物の評価額は、固定資産税課税明細書や固定資産評価証明書で確認できます。毎年4~5月に市区町村役場から送付される固定資産税納付通知書にも、記載されています。

手元にない場合、市区町村役場にて固定資産評価証明書を取得できます。

3.必要書類を準備する

一般的な相続登記で提出が求められる書類は、以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 土地・不動産を相続する人の住民票
  • 遺言書、または遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書
  • 相続関係説明図
  • 不動産の評価証明書(固定資産評価証明書)

遺言書があれば土地・不動産を相続する人が誰かを証明できますが、ない場合は遺産分割協議書の提出が必要です。遺産分割協議書で相続する人を証明する際、相続人全員の印鑑証明書も一緒に提出しなければなりません。

また、申請を司法書士に依頼する場合、委任状も必要です。

「相続登記の委任状」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

4.遺産分割協議書を作成する

遺言書がない場合や、法定相続分に従って相続しない場合は、遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分け方について話し合い、全員の合意が取れたことを証明する書類です。相続財産ごとに誰が相続するのかを記載し、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。

遺産分割協議書の作成後、相続人単独で内容を変更することはできません。慎重に遺産分割方法を決定しましょう。

5.登記申請書を作成する

登記申請を行うためには、登記申請書の作成が必要です。登記申請書には様式が定められています。

法務省のホームページに様式や書き方の見本が掲載されているため、参考にして作成しましょう。

6.法務局で相続登記をする

必要書類や登記申請書の準備が整ったら、法務局で相続登記をしましょう。全国に法務局はたくさんありますが、申請場所は土地・不動産の所在地を管轄する法務局です。ただし、郵送やオンラインによる申請も受け付けています。

登記申請をすると、書類に不備がなければ1週間程で登記完了証と登記識別情報通知書が交付されるため、受け取りに行きましょう。

書類に不備がある場合は、法務局から連絡が入ります。指示に従って書類を訂正したり収集し直したりして、再度審査を受けます。

「不動産相続の手続き」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続した土地・不動産の相続登記(名義変更)に必要な費用

土地・不動産の相続登記(名義変更)に必要な費用には、以下の3つの種類があります。

  • 申請書類の取得費用
  • 登録免許税
  • 司法書士報酬

ただし、すべての手続きを自分で行えば司法書士報酬は発生しません。項目ごとに、どれほどの費用がかかるのか確認しましょう。

申請書類の取得費用

申相続登記申請に必要な書類と取得費用は、以下の表の通りです。

書類名取得費用
戸籍謄本450〜750円/1通あたり
住民票・住民票除票200〜300円/1通あたり
印鑑証明書200〜300円/1通あたり
固定資産評価証明書300〜400円

相続人が増えると取得する書類の数が増えるため、取得費用も増えます。

登録免許税

登記申請の際、登録免許税の納付を求められます。登録免許税の額は、以下の通りに計算します。

課税標準額×0.4%の100円未満を切り捨て

課税標準額は、相続人が相続するすべての不動産の評価額を合算して1000円未満を切り捨てた額です。

ちなみに、不動産の価額が100万円以下の土地に関しては、令和7年3月31日まで登録免許税が免税されます。免税措置を受けるためには、申請書に免税の根拠となる法令の条項を記載しましょう。

申請書の記載例(Word)

一方、遺言書などによって相続人以外の人に土地・不動産の所有権が移動するとき、登録免許税の税率は2%です。あくまでも0.4%の税率は「相続」による名義変更である相続登記の場合にのみ適用されます。

参照:登録免許税計算のポイント|法務局相続登記の登録免許税の免税措置について|法務局

司法書士報酬

司法書士に相続登記の手続きを依頼をするときの報酬額の目安は、5〜15万円です。ただし、司法書士の報酬は自由に定められるため、具体的な報酬額は依頼先によって異なります。

また、相続人の数や名義変更する土地・不動産の数が多いと、その分手続きが煩雑となるため費用が加算されることが一般的です。

それぞれの相続ごとに費用が変わるため、必ず見積もりを出してもらい、納得したうえで依頼しましょう。

「相続登記の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続した土地・不動産の名義変更は自分でやるべき?司法書士に依頼するべき?

相続した土地・不動産の名義変更は自分でやるべき?司法書士に依頼するべき?のイメージ

土地・不動産の名義変更を自分でやるべきか司法書士に依頼すべきか、悩んでいる方もいるでしょう。ここでは、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。ぜひ、検討の参考にしてください。

自分で名義変更をするときのメリット・デメリット

自分で手続きを行うメリットは、最低限の費用で名義変更できることです。司法書士に依頼すると少なくとも5万円程度の報酬が発生するため、その分を節約できます。

一方でデメリットは、時間と労力がかかることです。細かなルールに従って申請書を作成したり、必要書類を収集したりしなければなりません。

また、書類に不備があると登記漏れや審査に時間がかかったり、何度も法務局に行く必要がある場合もあります。

司法書士に依頼して名義変更をするときのメリット・デメリット

司法書士に手続きを依頼するメリットは、すべてお任せできることです。

申請書の作成や必要書類の収集、登録免許税の計算をすべて依頼できるため、時間の節約になります。直接法務局に出向く必要もなく、登記漏れの心配もありません。

デメリットは、報酬費用が発生することです。相続人や名義変更する土地・不動産の数が多いと、支払う報酬額も大きくなります。

司法書士に依頼したほうがいいケース

司法書士に依頼した方がいいケースは、以下の通りです。

  • 相続人や土地・不動産の数が多い
  • 相続人のなかに疎遠な人や行方不明者がいる
  • 相続してから長期間名義変更をしていなかった
  • 遠方にある土地・不動産の名義変更をしたい
  • 早く名義変更を完了させたい

以上のようなケースの場合、手続きに必要な書類が増えたり、調査が煩雑になったりします。自分で手続きを行うと時間と労力がかかりすぎるため、一度司法書士に相談しましょう。

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相続した土地・不動産の名義変更でよくある疑問

最後に、相続した土地・不動産の名義変更でよくある疑問について、Q&A形式でお答えします。

  • 登記されていない不動産を相続した場合はどうすればいい?
  • 担保に入っている不動産を相続登記すると抵当権は消える?
  • どうしても3年以内に名義変更できない場合はどうすればいい?

それぞれ確認し、疑問を解消しましょう。

登記されていない不動産を相続した場合はどうすればいい?

相続した土地・不動産が登記されていなかったというケースが稀にあります。増築した部分が登記されておらず、一部だけ未登記となっている不動産もあります。

もちろん、未登記のままでも相続することは可能です。遺産分割協議書には不動産の内容が特定できるように表記し、未登記である旨を表記しておきましょう。

遺産分割協議書を作成して相続人を決めたら、その相続人の名義で登記します。現在の所有権が誰であるのかを明確にできれば問題ありません。

担保に入っている不動産を相続登記すると抵当権は消える?

相続する予定の不動産が担保に入っている場合、相続財産のなかに借金が含まれていると考えられます。残念ながら抵当権付きの不動産を相続登記しても、抵当権は消えません。つまり、抵当権付きの不動産と一緒に相続することとなります。

抵当権を外すには、まず借金を返す必要があります。被相続人の借金であるため、相続財産のなかから返済することが妥当でしょう。借金の完済後、金融機関から抵当権抹消の書類を受け取り、法務局で抵当権抹消登記の手続きを行います。

どうしても3年以内に名義変更できない場合はどうすればいい?

さまざまな事情によって相続発生から3年以内に名義変更できない場合もあるでしょう。相続人に重篤な病気があったり、相続争いが起きていたりすると、期限を守れない正当な理由として認められます。

なかには、何世代にも渡って名義変更をせずにいた土地・不動産で、相続人を全員把握できないケースもあるでしょう。このような場合の救済措置として、令和6年4月1日より相続人申告登記制度がスタートします。

相続人申告登記制度とは、土地・不動産の相続人が自分であると申し出るための制度です。事情があって相続登記できない人も、相続人申告登記をすれば義務を履行したとみなされます。そのため、3年以内に相続登記をしなくても10万円以下の過料は発生しません。

ただし、あくまでも相続人申告登記は一時的な救済措置に過ぎず、最終的には相続人全員で相続登記を完了させる必要があります。特別な事情がない限りは、相続登記を速やかに完了させましょう。

相続人申告登記」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

 

土地・不動産を相続したら早めに名義変更の手続きをしよう

土地・不動産の相続をしたら、早めに名義変更の手続きをしましょう。名義変更をしないまま放置していると、権利が複雑化したり、不動産の売買取引ができなかったりと、デメリットやリスクが発生してしまいます。

相続した土地・不動産の名義変更は、登記申請書と必要書類を法務局に提出すれば1週間程度で完了します。自分で名義変更することはできますが、準備が多く時間と労力がかかってしまうため、司法書士の力を借りることも検討しましょう。

【プロフィール】

昭和62年千葉県生まれ。法務テーラー司法書士事務所代表。司法書士事務所、司法書士法人に所属し、平成27年4月司法書士法人の役員として勤務。その後、令和5年6月に法務テーラー司法書士事務所を開業し、相続に特化した事務所として相続に関する幅広い業務に対応。特に家族信託・遺言・任意後見などの生前対策に力を入れている。

【所属】

札幌司法書士会:第966号
簡裁訴訟代理等認定番号:第1101273号
一般社団法人 家族信託普及協会

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年12月1日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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