抵当権付き不動産を相続したらどうすべき?必要な手続きや対応方法を解説

公開日:2024年11月13日

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「不動産に抵当権が設定されている事実が相続によって発覚した」というケースは珍しくありません。本記事では、相続財産のなかに抵当権付き不動産が含まれているときの対応方法や注意点について詳しく解説します。通常の不動産相続とは異なる手続きについてもご紹介しています。相続放棄すべきか悩んでいる方も、ぜひ記事を読んだうえで判断してくださいね。

抵当権が設定されている不動産の相続

相続した不動産のなかには、抵当権が設定されている場合があります。

まずは、抵当権付きの不動産の相続について理解を深めるために、下記の順番にポイントを確認しましょう。

  • 抵当権とは
  • 相続した不動産に抵当権が設定されているか確認する方法
  • 抵当権が設定されている不動産を相続した場合は放置しない

詳しく解説します。

抵当権とは

抵当権とは、住宅ローンや事業資金の借入をする際に、金融機関や保証会社などが債務者に対して土地や建物を担保にし、債務者が借入金を返済できなくなった際に担保となっている土地や建物を競売にかけられる権利です。返済できなくなった債務残高は、売却代金から弁済することとなります。

住宅ローンなどを完済すると、抹消する手続きを行えば抵当権の抹消が可能です。しかし、抹消しないままだと登記簿上では抵当権が設定されたままとなり、不動産を売却・活用する際に支障が出る恐れがあります。

被相続人が住宅ローンなどの借入をするときに抵当権を設置していた場合や、住宅ローンなどの完済後に抹消手続きを行なっていない場合に、抵当権が設定された不動産が相続の対象となる可能性があります。

相続した不動産に抵当権が設定されているか確認する方法

抵当権の確認方法は、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得することです。

登記簿謄本は表題部と権利部の2部で構成されており、表題部には不動産や所有者の情報が書かれています。権利部には、抵当権者や債権額、設定された日付、順位を確認することが可能です。

ただし、抵当権設定の記載があったとしても、すでに被相続人によって抹消されている場合もあります。抵当権設定に関する記載事項に下線がある場合、抵当権は抹消されています。

同じ欄の下部に抵当権抹消に関して記載されているため、よく内容を確認しましょう。

また、債務額の欄に書かれている金額は、抵当権設定当時のものです。書かれている金額の債務をそのまま相続するわけではなく、完済している可能性も十分に考えられます。そのため、相続発生時における債務額とは異なる点に注意しましょう。

相続発生時点での債務額は、債権者に確認をしなければなりません。利権部に記載されている「抵当権者」が債務者にあたるため、問い合わせましょう。

抵当権が設定されている不動産を相続した場合は放置しない

相続した不動産に抵当権が設定されている場合、放置しないようにしましょう。

完済されていれば問題ありませんが、債務残高があるのであれば相続人が債務を引き継ぐこととなります。最悪の場合、家や土地を競売にかけられても文句を言えません。

もし、すでに完済している場合や、相続人が弁済して債務残高がなくなった場合は、抵当権の抹消登記をする必要があります。なぜなら、抵当権が設定された状態では売却することができず、金融機関から融資を受けることが困難になるからです。

このように、債務残高の有無にかかわらず、抵当権が設定されている不動産を相続したときは適切に対応しなければなりません。次の章で、抵当権付き不動産を相続した際の対応方法を詳しく確認しましょう。

抵当権付き不動産を相続した際の対応方法

抵当権付き不動産を相続した際の対応方法のイメージ

抵当権付き不動産が相続財産のなかに含まれていたときの対応方法の選択肢は、主に5つあります。

  • 相続放棄・限定承認
  • 団体信用生命保険加入の確認・適用
  • 不動産を売却して弁済
  • すでに弁済している場合は抹消登記
  • 借金を相続して返済していく場合は債務者変更登記

順番に内容を確認し、適切な選択をしましょう。

相続放棄・限定承認

抵当権を担保する残務額が大きい場合、相続放棄や限定承認を検討しましょう。

相続放棄とは、すべての遺産を放棄する相続方法です。相続放棄をすると、債務だけでなく、預貯金や不動産などの資産も相続する権利を失います。

一方、限定承認とは、プラスの財産を上限としてマイナスの財産を引き継ぐ相続方法です。相続によって、相続人が経済的負担を負うことはありません。

相続放棄や限定承認をする場合、家庭裁判所で手続きをする必要があります。手続きができる期間は、自身に相続が発生したことを知ってから3か月以内です。

3か月以上経過すると、相続放棄や限定承認の手続きができなくなる可能性が高まります。早めに抵当権の残務額や他の遺産について調査を行いましょう。

「相続放棄」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

団体信用生命保険加入の確認・適用

抵当権が設定されている不動産であっても、団体信用生命保険に加入していれば相続人は住宅ローンを引き継ぐ必要はありません。

近年では、住宅ローンの債務者は団体信用生命保険への加入することが一般化しています。団体信用生命保険が適用されれば、債務者の死亡によって住宅ローンは完済となります。つまり、抵当権を抹消することが可能です。

しかし、団体信用生命保険への加入は任意となっている場合もあるため、債務者が亡くなってもローンが残る可能性はゼロではありません。この場合、相続人が債務残高を引き継いで返済していく必要があります。

住宅ローンの債権者である金融機関に問い合わせると、債務者が団体信用生命保険に加入しているかどうかが分かります。加入している場合、必要書類を提出すれば保険会社の審査後にローン完済となるため、早めに手続きをしましょう。

ただし、被相続人名義で事業資金の融資を受けていた場合など、団体信用生命保険に加入していないときには、相続人が借金を引き継いで返済しなければなりません。

不動産を売却して弁済

抵当権を設定している不動産の売却価格が住宅ローンなどの債務残高を上回る状態をアンダーローンと呼びます。

アンダーローンの場合であれば、不動産を売却して弁済するという選択肢もあります。不動産を売却すれば諸費用を差し引いても利益が出るため、相続人にとって悪くない話でしょう。

不動産の売却額は、不動産仲介会社に査定してもらえば概算を知ることが可能です。住宅ローンなどの残務高と不動産の売却額を比較して、売却すべきかどうか判断することをおすすめします。

すでに弁済している場合は抹消登記

すでに住宅ローンなどの返済が終わっている場合は、抹消登記を行いましょう。

相続する前に完済していた場合、相続人の代表者が登記権利者となって手続きを行います。債権者である金融機関に問い合わせ、抹消登記手続きの必要書類を提出しましょう。

一方、相続したあとに完済した場合、先に不動産の所有者情報を被相続人から相続人変更するために相続登記を行います。相続登記をした方が登記権利者となって、抹消登記手続きを進めましょう。

抹消登記の手続きは、法務局で行います。ただし、必要書類や準備することが多いため、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが一般的です。

弁済が終わっているにもかかわらず抹消登記をしなければ、新たに所有者となった相続人が新たにローンを組もうとしたときに審査が通りにくくなってしまいます。また、不動産は抵当権付きのまま売却することができません。

早めに抹消登記を済ませましょう。

「抵当権の抹消手続き」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

借金を相続して返済していく場合は債務者変更登記

住宅ローンなどを相続して相続人が返済していく場合、抵当権のある不動産の債務者変更登記を行わなければなりません。被相続人の名義のままでは手続きできないため、先に相続登記を行う必要があります。

しかし、相続登記と債務者変更登記には必要書類や準備することが多いため、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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第三者の債務で抵当権が設定されている場合

第三者の債務者のために被相続人が所有している不動産に抵当権が設定されているケースもあります。このとき、被相続人の債務ではないため、借金は相続財産の対象外です。

当然、債務者の返済が完済すれば債務の弁済義務は発生せず、抵当権が設定されている不動産が売却されることもありません。

しかし、第三者の返済が滞れば強制的に不動産を売却されるリスクが発生します。また、不動産を売却をする際、本来の不動産の評価から第三者の債務額が差し引かれてしまいます。そもそも、抵当権が設定されている不動産を好んで購入する人はあまりいません。買い手がつかず、相続人が損をするリスクがあります。

また、債務者である第三者の資力は、遺産分割をどのように行うかを決定するための重要なポイントです。第三者に十分な資力があれば、不動産評価価格にもとづいて遺産分割ができます。

一方、十分に資力がない場合、返済が滞って不動産を強制的売却されるリスクがあります。そのため、相続発生時における残務額を不動産評価価格から差し引いて遺産分割を行うようにしましょう。

抵当権付き不動産の相続において知っておきたいこと・注意点

抵当権付きの不動産が相続財産のなかに含まれている場合に、知っておきたいことや注意点は下記の通りです。

  • 相続放棄する場合は3か月以内
  • 被相続人が事業をしていた場合はよく確認する
  • 相続する場合は債務を前提にした遺産分割協議を行う
  • わからないことがある場合や複雑な場合は専門家に相談する
  • 戸建ての場合は土地と建物両方に抵当権が設定されている場合もある
  • 再発行が難しい書類や期限があるものもある

詳しく理解し、相続後に後悔しないようにしましょう。

相続放棄する場合は3か月以内

相続放棄を検討している場合は、手続きできる期限が短いため注意しましょう。

相続放棄や限定承認の手続きの期限は、自身に相続が発生したと知ってから3か月以内です。被相続人が亡くなった日から起算することが多く、早々に対応しなければなりません。

下記のような調査をしなければ、相続放棄をすべきかどうかの判断はできないでしょう。

  • そもそも不動産に抵当権があるのか
  • 抵当権を担保する残務額
  • 不動産の時価(いくらで売却できる見通しか)
  • 他の相続財産の評価額

相続放棄の手続きは家庭裁判所で行わなければならず、必要書類の作成や収集に1か月程度かかります。そのため、相続放棄すべきかどうかの判断は、期限の1か月前に終わらせておく必要があります。

しかし、多くの方は相続放棄すべきかどうか適切な判断が難しいでしょう。早めに弁護士などの相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

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被相続人が事業をしていた場合はよく確認する

被相続人が事業を行っていた場合、一般の方と比べて融資を受けるために抵当権を設定していた可能性が高いためよく調べましょう。

抵当権付きの不動産だけでなく、他の債務もよく調べておく必要があります。開業資金や事業継続のために、家族に相談せず融資を受けていた可能性も否定できません。

ちなみに経営していた会社の借金は相続人に引き継がれないため安心してください。会社と経営者は別人格であり、会社が抱えている借金は会社に責任があります。

しかし、会社が借り入れをする際に経営者個人が所有する不動産に抵当権を設定していた可能性も考えられます。しっかり被相続人の財産について調査を行い、あとから相続人が経済的負担を負わないよう注意しましょう。

相続する場合は債務を前提にした遺産分割協議を行う

抵当権の債務残高がある場合、相続するのであれば債務を前提とした遺産分割協議を行いましょう。

なぜなら、債務残高の額と不動産の価値を比較すると、法定相続分に合わない額の債務を一部の相続人が負担しなければならない場合があるからです。

また、法定相続分とは異なる債務の相続をする場合、債権者である金融機関の承諾が必要となる場合があります。遺産分割協議と併せて、債権者への相談も進めましょう。

分からないことがある場合や複雑な場合は専門家に相談する

不動産の扱いや抵当権の債務残高の確認など、疑問点や不安点がある場合は早めに専門家へ相談しましょう。

抵当権付きの不動産が相続財産に含まれている場合、やらなければならない作業が通常よりもたくさんあります。相続放棄や抵当権抹消登記など状況によって判断しなければならない手続きも少なくありません。

少しでも不安があるのであれば、迷わず専門家へ相談して適切なアドバイスをもらいましょう。

戸建ての場合は土地と建物両方に抵当権が設定されている場合もある

土地と建物のそれぞれに抵当権が設定されているケースもあります。このとき、共同担保目録という書類を取得すれば、抵当権の詳細が確認できます。

共同担保目録とは、1つの債権の担保として複数の不動産に設定されている抵当権を一覧で見れる登記事項です。法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する際に、申請書に「共同担保目録が必要」と記載すれば共同担保目録を取得できます。

再発行が難しい書類や期限があるものもある

抵当権を抹消する手続きにはさまざまな必要書類があり、なかには再発行が難しい書類や期限が定められている書類があります。

たとえば、抵当権解除証書や金融機関の登記委任状は再発行が可能です。しかし、登記識別情報や登記済判付きの抵当権設定契約書などは再発行できません。

再発行できない書類が見つからない場合、事前通知制度や資格者代理人による本人確認情報制度を活用して手続きすることが可能です。しかし、より手続きが煩雑となり、債権者である金融機関側の実印の捺印や、金融機関側の発行から3か月以内の印鑑証明書も揃えなければなりません。

また、必要書類の紛失によって抵当権を抹消する証拠が提出できなくなると、裁判所での手続きが発生する場合があります。万が一、必要書類を紛失した場合は専門家に相談し、正しい手順で手続きしてもらいましょう。

抵当権が設定されている不動産があれば債務の確認を急ごう

相続財産のなかに抵当権が設定されている不動産を見つけたら、急いで債務の確認を行いましょう。なぜなら、原則、被相続人の死亡から3か月以内に相続放棄すべきかどうかの判断をして手続きを終えなければならないからです。

もし、被相続人が債務を完済していれば抵当権の抹消登記の手続きをしなければなりません。債務があってもなくても、しなければならない手続きがたくさんあると理解しておきましょう。

少しでも手続きにおいて不安や疑問があるのなら、早めに相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。専門家であれば、債務残高の確認や相続登記、抹消登記などの一連の手続きをすべて一任できます。そもそも相続放棄すべきかどうかを判断する手助けもしてくれるはずです。

専門家の力を借りて、スピーディーに相続手続きを終えましょう。

記事の著者紹介

安持まい(ライター)

【プロフィール】

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て平成30年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年11月13日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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