相続登記の費用項目と目安金額を解説(土地や家などの不動産の名義変更費用)

公開日:2023年11月30日

土地や家などの不動産の相続登記(名義変更)にかかる費用まとめ_サムネイル

「相続登記にかかる費用はどのくらいなんだろう」と気になっていませんか。

土地や家などの不動産の名義変更にかかる主な費用は、法務局に申請するための登録免許税や司法書士への報酬などです。

本記事では、相続登記を行うときに発生する費用について詳しく解説します。費用が変動するケースについても紹介するので参考にしてください。

司法書士に依頼するときの相場も把握して、適切な金額で手続きを行いましょう。

相続登記(不動産の名義変更)とは

相続登記とは、土地や家屋など不動産の所有者が亡くなったときに、相続人へ名義変更するための手続きです。相続人、もしくは司法書士が不動産を管轄する法務局で申請します。

相続登記を行う目的は、相続した不動産の情報や所有者を登記して、権利関係を一般に公示することです。

ちなみに、相続登記は令和6年4月1日から義務化されました。相続人は相続で不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請しなくてはなりません。令和6年4月1日以前に相続した不動産であっても相続登記義務化の対象です。

正当な理由がないにもかかわらず相続登記せずにいると、10万円以下の過料を科される可能性があります。

「相続登記」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続登記で発生する費用項目と目安金額

不動産の相続登記(名義変更)で発生する代表的な費用は、以下の4つです。

  • 申請書類の取得費用
  • 登録免許税
  • 司法書士報酬
  • その他報酬

司法書士に依頼せずに自分で登記申請する場合、司法書士報酬やその他報酬はかかりません。

どのような手続きで費用が発生するのか順番に見ていきましょう。

申請書類の取得費用

相続登記申請に必要な書類と取得費用は、以下の表の通りです。

種類費用目安(1通あたり)
戸籍謄本450円
除籍謄本・改製原戸籍謄本750円
住民票300円
住民票の除票300円
印鑑登録証明書300円
固定資産評価証明書
(固定資産課税台帳登録事項証明書)
土地:300円
家屋:300円

各書類は自治体で取得できますが、取得費用は自治体や取得方法によって異なります。

戸籍謄本は、本籍地の自治体でしか取得できません。そのため、本籍地が遠方だと、郵送で取り寄せなくてはならないため、往復400~500円ほどの郵送料が別途必要です。

また、必須ではないものの登記事項証明書も取得することをおすすめします。なぜなら、被相続人が亡くなったときに、本当にその不動産の所有者として登記されていたのか正確な情報を確認できるからです。

登記事項証明書の取得費用は、登記所の窓口で交付請求すると600円、オンライン請求をすると480〜500円です。

不動産を引き継ぐ相続人の数や被相続人(亡くなった人)所有の不動産が多いと、取り寄せる書類の増加に伴い、費用もかさみます。

登録免許税

登録免許税とは、登記を申請するときに納める税金です。

登録免許税の計算式(税率)は、被相続人と相続人(相続した人)の関係によって異なります。

相続人登録免許税の計算式
法定相続人不動産の固定資産税評価額(課税価格)×0.4%
法定相続人以外不動産の固定資産税評価額(課税価格)×2%

参照:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

法定相続人は、法律で被相続人の財産を相続できると定められた人を指します。

固定資産税評価額は、自治体から毎年送付される固定資産税の納税通知書に記載されています。納税通知書が見当たらない場合は、自治体で管理している固定資産課税台帳で確認しましょう。

登録免許税の計算方法

登録免許税を計算するにあたり、注意点は以下の2つです。

  • 固定資産税評価額の1000円未満を切り捨てた額に0.4%をかける(課税価格)
  • 0.4%をかけた数字から100円未満を切り捨てる(登録免許税)

例として、固定資産税評価額が111万1500円の不動産の相続登記をするとき、登録免許税を算出してみましょう。

111万1500円のうち1000円未満は切り捨てのため、課税価格111万1000円に対して税率を掛けます。

111万1000円(課税価格)×0.4%(登録免許税率)=4444円

4444円のうち100円未満は切り捨てのため、登録免許税は4400円です。

登録免許税の免税措置

令和7年3月31日までに相続登記した場合、以下のいずれかの条件のときに登録免許税に免税措置が適用されます。

  • 相続により土地を得た人が相続登記前に死亡したときの相続
  • 相続により得た土地の課税標準価額が100万円以下の相続

ちなみに、免税措置の対象は土地のみです。建物の登録免許税は、別途納めなくてはなりません。

参考:相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について|国税庁

司法書士報酬

相続登記に必要な手続きを依頼すると、司法書士報酬の目安は5~15万円です。

価格幅がある理由は、地域や相続人の数、被相続人が所有していた不動産の数によって司法書士報酬が変動するためです。明確な費用を知りたいなら、見積もりをとるしかありません。

ただし、日本司法書士連合会がまとめた司法書士報酬アンケートから、おおよその金額は確認できます。

司法書士報酬アンケートによる、各地域の報酬平均額は以下の通りです。

<条件>

  • 相続により土地1筆と建物1棟(固定資産評価額の合計1000万円)の登記手続き
  • 住民票や戸籍謄本など5通の交付請求
  • 遺産分割協議書および相続関係説明図の作成
  • 法定相続人は3名、うち1名が遺産分割協議により単独相続
地域報酬平均額
北海道地区6万983円
東北地区6万667円
関東地区6万5800円
中部地区6万3470円
近畿地区7万8326円
中国地区6万5670円
四国地区6万5578円
九州地区6万2281円

引用:報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)

上記のケースの報酬額の全国平均を算出すると、約6万5000円です。

最もリーズナブルな東北地区と高額である近畿地区を比べると、同じ条件でも1万7659円の差があります。

不動産の共同相続や大量の相続物件といった案件だと手間がかかるため、上記の表よりも司法書士報酬は高額になる傾向があります。

案件や地域によって司法書士報酬は異なるため、正確な金額を知りたいのであれば見積もりをとりましょう。

その他報酬

司法書士にかかるその他報酬を確認しましょう。事務所の料金設定により、「相続による名義変更プラン」として、その他報酬の項目まで含まれている場合もあります。

しかし、以下の項目の作業があると、別途追加費用が必要となる司法書士事務所は珍しくありません。

項目費用の目安
遺産分割協議書5~10万円
(遺産総額の0.3~1%)
不動産調査1000円~
戸籍収集5000~3万円
相続関係説明図作成1万5000円~

不動産調査とは、相続登記申請するにあたり、事前に不動産の登記状況を確認する作業です。

相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を明らかにするための一覧表です。作成は任意ですが、相続関係説明図があると、提出した戸籍謄本の原本の還付や複雑な相続関係の把握に役立ちます。

ケース別で見る相続登記費用のシミュレーション

相続登記にかかる費用を、以下の3つのケースでシミュレーションします。

  • 一般的な相続登記費用
  • 税額が変動するケース
  • 司法書士費用が上がるケース

それぞれ確認しましょう。

一般的な相続登記費用

一般的な相続において、かかる費用は以下の通りです。

<例>評価額500万円の土地と評価額500万円の戸建てを相続人1人が相続したケース

  • 登録免許税…1000万(土地と建物の合算額)×0.4%=4万円
  • 司法書士報酬…報酬アンケート結果の全国平均より6万5000円
  • 必要書類の収集による実費=約3000円

上記のケースで、司法書士に相続登記を依頼したときの相場は10万8000円です。

税額が変動するケース

税額が変動するケースは、2つあります。

  • 免税措置が適用されるケース
  • 税率が変わるケース

それぞれ確認しましょう。

免税措置が適用されるケース

登録免許税の免税措置を受けられる条件は、以下の通りです。

  • 相続登記していない不動産の相続
  • 不動産の価額が100万円以下の土地を相続

相続登記していない不動産の相続について、具体例で確認しましょう。

Aが死亡しBが相続(1次相続)したものの、相続登記をせずに死亡したため、Bの財産をCが取得(2次相続)しました。このケースだと、以下の部分で免税されます。

Bをその土地の登記名義人とするための相続登記

前提として、過去の相続登記を行わないと新たに名義変更ができません。この場合、免税措置により1次相続の相続登記にかかる登録免許税は不要です。

上記の免税措置は令和7年3月31日まで有効です。

参考:相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について|国税庁

税率が変わるケース

登録免許税の基本税率は0.4%ですが、税率変更となるケースがあります。

法定相続人以外が不動産を相続:税率2%

固定資産税評価額が2000万円の不動産を法定相続人以外の人が相続した場合の登録免許税をシミュレーションしましょう。

2000万円×2%=40万円

法定相続人以外の人が相続したケースだと税率は2%のため、登録免許税は40万円です。

司法書士費用が上がるケース

司法書士費用に加算される、主なケースを確認しましょう。

  • 登記する不動産が複数ある
  • 高額な不動産を登記する
  • 法定相続人の数が多い
  • 代襲相続が起きている
  • 収集すべき戸籍や住民票が多数ある
  • 申請先の法務局が複数ある

代襲相続とは、被相続人より先に相続人が亡くなっていたときに、被相続人から孫やひ孫、甥、姪などが遺産を相続することです。たとえば、被相続人の相続人である長男が先に死亡しており、長男の子どもが被相続人の相続財産を引き継ぐ状態などが挙げられます。

代襲相続が発生すると手続きが複雑になるため、司法書士報酬に加算される要因です。このように煩雑な手続きが多い案件だと、司法書士費用は相場より高くなります。

相続登記の費用を安く抑えるポイント

相続登記の費用を安く抑えるポイントのイメージ

相続登記にかかる費用を安く抑えるポイントは、3つあります。

  • すべての手続きを自分で行う
  • 必要書類の収集のみ自分で行う
  • 自分で遺産分割協議書を作成する

自分で行う作業を増やして、相続登記にかかる費用を抑えましょう。

すべての手続きを自分で行う

司法書士に依頼せずにすべての手続きを自分で行うと、司法書士報酬を支払わずに済むため、相続登記申請の費用を抑えられます。

ひとりの相続人で引き継ぐ不動産は1つのみといったシンプルな相続であれば、すべて自分で相続登記申請を行ってもいいでしょう。

必要書類の収集のみ自分で行う

必要書類の収集を自分で行って登記申請を司法書士に依頼する方法は、一部の司法書士報酬を節約できます。

ただし、書類の取得にかかる実費は自分で取得する場合でも必要です。書類の内容や自治体にもよりますが、1枚あたり250~750円ほどかかります。

司法書士事務所のなかには、必要書類の収集を自分で行ったときの料金を掲載している事務所も存在します。自分で必要書類を揃えたときの正確な料金を知りたいときは、見積もりを依頼しましょう。

自分で遺産分割協議書を作成する

自分で遺産分割協議書を作成すると、司法書士に支払う費用を抑えられます。

遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分割について協議して合意した内容を書面に記したものです。

遺産分割協議書の作成におけるポイントは、以下の通りです。

  • 被相続人の名前・亡くなった日を記載する
  • 相続人を明確にする
  • 誰がどの財産を相続するのか記載する
  • 相続人全員で自署と実印の押印をする
  • 相続人全員の印鑑証明書を添付する
  • 複数枚にわたる場合は各用紙に契印する

遺産分割協議書の書き方に法的な決まりはありません。ただし、相続財産の内容や情報は正確かつ、登記事項証明書に記録されている通りに書く必要があります。

司法書士費用をなるべく抑えたいときは、自分で遺産分割協議書を作成しましょう。

自分で手続きせずに専門家に依頼すべきパターン

専門家に依頼する最大のメリットは、時間をかけずに確実に登記申請ができることです。一方で、自分で登記申請すると大幅に費用を抑えられます。

費用をかけてでも専門家に依頼した方がいいケースは、以下の通りです。

  • 遠方に在住の相続人がいる
  • 不動産や相続人の数が多い
  • 遺産分割協議がまとまらない
  • 相続手続きに時間をかけられない
  • 相続登記されていない不動産がある

相続人が被相続人と異なる地域に住んでいたり相続する不動産の数が多かったりすると、書類を集めるだけでも大変です。

遺産分割協議がまとまらないケースは、専門家である第三者を介入させると、スムーズに進む傾向があります。

代々相続登記されていない不動産を相続するときは、所有者が変わるごとに登記申請しなくてはならないため、これまでの相続関係者の調査や必要書類収集が必要です。

複雑な手続きを要する場合は司法書士に依頼しましょう。

相続登記の費用に関する注意点

相続登記の費用において注意すべき点は、以下の3つです。

  • 相続登記の費用を誰が負担するか決めておく
  • 相続登記の費用は必要経費として処理できる
  • 依頼する事務所によって報酬額は大きく変動する

スムーズな相続登記を行うために、順番に確認しましょう。

相続登記の費用を誰が負担するか決めておく

遺産分割協議のときに、相続登記の費用を誰が負担するか決めましょう。相続登記費用を誰が負担すべきか法的な決まりはありません。

一般的に、不動産を相続した人が相続登記で必要な費用を負担します。共同で不動産を相続する場合では、それぞれの相続割合に応じて負担するケースが多いです。

相続登記の費用は必要経費として処理できる

登録免許税や司法書士への報酬は、以下の2つのケースにおいて必要経費として確定申告のときに処理できます。

  • 賃貸物件などの業務用資産の相続
  • 相続した不動産の売却

賃貸物件の相続登記にかかった費用は必要経費としてみなされるため、課税対象となる不動産所得の金額を抑えられます。

相続した不動産を売却すると、必要経費に登録免許税や登記費用などが含まれます。そのため、課税対象となる譲渡所得の金額を抑えることが可能です。

依頼する事務所によって報酬額は大きく変動する

相続登記申請を依頼する司法書士事務所によって、報酬額は変動します。

一般的な司法書士事務所は基本プランと基本報酬を定めて、相続人や不動産の数などによって報酬を加算するシステムで運用しています。

正確な報酬を知るには、見積もりを依頼しましょう。

相続登記の費用は案件や司法書士事務所による

相続登記にかかる主な費用は、申請書類の取得にかかる実費・司法書士費用・登録免許税の3つです。

自分で相続登記申請を行えば、司法書士費用はかかりません。ただし、不動産の共同相続や遺産分割協議がまとまらないときは、専門家に依頼すると手間や時間をかけずに済みます。

手続きにかける時間がない方や、専門的な書類の作成に不安がある方は、司法書士に頼って心配ごとをなくしましょう。

監修者紹介

坂本孝文(司法書士)

司法書士法人さくら事務所

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続きや不動産登記、債務整理業務を手がける。【所属】東京司法書士会:第4535号、簡裁訴訟代理等認定番号:第601263号

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年11月30日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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