成年後見人を税理士や弁護士など専門家に依頼するメリット・デメリットをご紹介

公開日:2023年11月21日

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認知症など本人の判断能力が低下した時に、財産を守る方法に成年後見制度があります。

成年後見制度では、成年後見人を選定することで、後見人が本人の判断を補い財産を管理してくれるのです。この成年後見人は、家族以外でも弁護士や司法書士・税理士など専門家を選定することも可能です。

この記事では、成年後見制度の基本や依頼できる専門家、メリット・デメリットについて解説していきます。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害など判断能力が不十分な人の生活や財産を守るために支援する制度です。支援してもらう人を「被後見人」、支援する人を「成年後見人」と呼び、成年後見人が本人に代わって適切な財産管理や契約行為を行っていきます。

成年後見制度には、大きく次の2種類があります。

  • 法定度後見制度
  • 任意後見制度

法定後見制度

法定後見制度とは、すでに本人の判断能力が不十分になった状態で行われる後見制度です。

認知症などで判断能力が衰えた状態で、本人が後見人を選ぶのは難しいでしょう。

とはいえ、そのままでは財産の管理や契約行為が本人以外ではできないので、生活に大きな影響が出てしまいます。このような場合、配偶者や家族が家庭裁判所に申し立てることで後見人を選定することができます。

ただし、後見人は家庭裁判所が選定するので家族がなるとは限りません。一般的には、弁護士などの専門家が選定されるケースが多いでしょう。

任意後見制度

任意後見制度とは、本人が後見人を選んで将来の後見を依頼する契約です。法定後見制度が本人の判断能力が低下してから用いられるのに対し、任意後見制度は本人の判断能力が充分なうちに用いられるという違いがあります。

任意後見制度では、本人は判断能力が十分あるので後見人の選定や契約内容などで本人の意思を十分反映できるというメリットがあります。

成年後見制度について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

成年後見人を依頼できる専門家は?

成年後見制度で成年後見人に選定できるのは、家族だけではありません。

法定後見制度の場合、家庭裁判所が後見人を選定するため家族以外が選定されるケースが多いものです。また、任意後見制度でも専門家に依頼するケースは少なくありません。

専門家に依頼する場合は、一般的に弁護士や司法書士などの士業が多いでしょう。しかし、それぞれの専門家ごとにメリット・デメリットが異なるので、慎重に判断する必要があります。

ここでは、後見人として依頼できる専門家として、次の5つを紹介します。

  • 司法書士
  • 弁護士
  • 社会福祉士
  • 行政書士
  • 税理士

司法書士

司法書士は、書類の作成や財産管理など後見業務を幅広くカバーできます。

依頼費用も弁護士よりは安価になるため、バランスが良いと言えるでしょう。ただし、司法書士は依頼人と家族とのトラブル時の交渉は出来ません。

後見制度を巡って家族間でトラブルになっているような場合は、弁護士が適任でしょう。

弁護士

後見人と言ってもっともイメージされるのが弁護士でしょう。

弁護士であれば、契約手続きや財産管理だけでなくトラブル対応も可能なので、トラブル時にも安心して任せられます。

管理する財産が高額・親族間でトラブルが起きる可能性がある・本人が遠方に住んでいるなどの場合は、弁護士に依頼するのが適切です。

しかし、弁護士は依頼料が他の士業よりも高めになる点に注意が必要です。管理する財産や依頼先にもよりますが、月に2~6万円程が必要になるでしょう。

社会福祉士

社会福祉士とは、社会福祉に関する専門的な知識や技術を持つ人です。

医療や福祉に関する相談や援助などを行っています。社会福祉士であれば、後見制度の福祉と深いつながりがあるので十分にサポートしてくれるでしょう。

しかし、裁判所に提出する書類の作成ができないため、書類の作成は別の専門家に依頼する必要があります。また、資産の管理に重点を置く場合も別の専門家が適しているでしょう。

行政書士

書類の収集や作成を担う行政書士は、後見制度で書類の作成や相談などのサポート・後見人の就任が可能です。

ただし、裁判所に提出する書類の作成や申し立て代行などはできないため、別の専門家に依頼することになります。

税理士

税理士でも後見人になることが可能です。

お金や税金のプロである税理士なら、適切な財産管理が可能でしょう。成年後見人は、家庭裁判所への財産の管理状況や収支報告義務がありますが、その辺も安心して任せられます。

成年後見人の選び方

成年後見人の選び方のイメージ

ここでは、成年後見人の選び方について解説します。後見人の選び方は、法定後見か任意後見かによって異なります。

法定後見の場合

法定後見制度を利用する場合、成年後見人は家庭裁判所が選任することになります。

申し立て時に家族の誰かを成年後見人候補者として指定することはできますが、必ずしも指定した人が選ばれるわけではありません。成年後見制度の申し立て後、家庭裁判所によって候補者の確認が行われ、候補者に財産の使い込みや家族トラブルなどがあると希望が通らない可能性が高いのです。

候補者が後見人に不適と判断されると、専門家が後見人に選定されるケースが多いでしょう。

任意後見の場合

任意後見制度では、被後見人が自由に後見人を選ぶことが可能です。

被後見人と後見人の合意があれば、後見人になることができます。ただし、すべての人が後見人になれるわけではありません。
後見人として欠格事由に該当する人は後見人になれないので、注意しましょう。

後見人の欠格事由には、次のような項目があります。

  • 未成年
  • 過去に家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人
  • 破産者
  • 行方不明者
  • 本人に対して訴訟した人とその配偶者・直系血族
  • 不正な行為など後見人の任務に適しない事由がある人

未成年や破産者・行方不明者は後見人に指定できません。また、過去に後見人などを家庭裁判所から解任されたことがある人も後見人にできないので注意しましょう。

本人に対して訴訟した人は、本人に対して不平や悪意を持っている可能性があるのでその配偶者や子を含めて後見人にはできません。

反対に、これらの欠格事由に該当しない人であれば自由に指定できるのです。

専門家に成年後見人を依頼するメリット・デメリット

専門家を成年後見人にすることには、メリット・デメリットがあります。
それぞれを理解したうえで、慎重に判断するようにしましょう。

メリット

メリットとしては、次のようなことが挙げられます。

  • 親族に後見人の負担がかからない
  • 専門知識を有しているので安心して任せられる
  • 使い込みなどのリスクを抑えられる

成年後見人には、適切な財産管理や契約行為だけでなく報告書の作成など様々な作業が必要です。

専門的な知識がない親族に後見人を任せると、大きな負担がかかってしまうでしょう。また、財産管理をするとなると他の親族から不平を抱かれたり使い込みを疑われたりと、親族間トラブルに巻き込まれる可能性もあります。

後見を任せるくらいに信頼できる親族に大きな負担を掛けてしまうのは、被後見人も望まないところでしょう。後見人を任せた親族による財産の使い込みというトラブルも発生しています。

後見人を親族から選ぶ場合は、その負担や本当に信頼できるかどうかを慎重に判断しなければならないのです。
その点、専門家であれば法律やお金・福祉・契約などそれぞれ専門知識を有しており、安心して後見を任せられます。

デメリット

デメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

  • 専門家への報酬費用が毎月掛かる
  • 基本的に途中で辞められない
  • 専門家ごとに専門分野が異なる

専門家に依頼すれば、当然ですが依頼料が発生します。

士業の中でも高額になる弁護士では、月に2~6万円程掛かり年間では数十万円にもなってきます。また、一度成年後見人になると基本的に途中で撤回はできません。

後見人に不正な行為や被後見人からの解任などの理由で辞めることは可能ですが、後見人が専門家であれば辞めることは難しいでしょう。

成年後見制度は長期的な契約でもあるため、費用の負担などについてはしっかりと検討しておくことが大切です。

専門家と言っても依頼する専門家によって専門分野は異なります。行政書士や社会福祉士・税理士では裁判所に提出する書類ができないなど、できない業務や適性が異なります。

後見制度で任せたい内容や家族状況などによって、適切な専門家を選ぶようにしましょう。

成年後見制度はまずは専門家に相談しよう!

成年後見制度を利用することで、自分が認知症になっても安心して財産の管理や生活のサポートを受けることが可能です。

後見人となる人は家族以外からも選ぶことができ、士業の専門家を選ぶケースが多いでしょう。ただし、士業に依頼するとある程度の依頼料が発生します。

後見制度以外にも、財産を管理する方法はあるので、後見制度の利用を検討している場合は、まずは専門家に相談してみるとよいでしょう。

著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。【資格】宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年11月21日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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