相続放棄照会書が届いた!照会書の内容や回答書の書き方を解説

公開日:2024年4月30日

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相続放棄を家庭裁判所に申し立てると、後日相続放棄照会書や相続放棄回答書が送付される場合があります。照会書や回答書を放置していると相続放棄が認められない恐れがあるので慎重に対応することが重要です。本記事では、相続放棄照会書や回答書の基本や書き方・注意点について、わかりやすく解説します。

相続放棄照会書とは

相続放棄照会書とは、相続放棄手続き後に家庭裁判所から送られてくる意思確認のための書類です。大まかには「本当に自分の意志で相続放棄手続きを行っているか」を確認する旨が記載されています。

相続放棄手続きが完了すると、マイナスの財産だけでなくプラスの財産も相続できません。
さらに、一度相続放棄すると原則撤回できない重要な手続きです。そのため、本当に相続放棄手続きを進めていいかの確認として送られてきます。

相続放棄手続き後の、相続放棄までの流れは以下の通りです。

  • 家庭裁判所に相続放棄の申し立て
  • 家庭裁判所から照会書・回答書の送付
  • 回答書の返送
  • 家庭裁判所にて相続放棄の審査
  • 相続放棄申述受理通知書の受け取り

相続放棄申し立て後、2週間~1か月程で申し立てをした人宛てに相続放棄照会書が郵送で送られてきます。また、照会書と一緒に回答書も送られてきます。回答書とは、照会書の質問に回答するための書類です。

照会書に、回答書の回答期限が記載されているので、その期限内に回答書を記載して返信する必要があります。期限は家庭裁判所により異なりますが、一般的には1週間~10日ほどが目安です。万が一、気付くのが遅れたなどで返送期限に間に合わない場合は、早い段階で家庭裁判所に連絡して相談するとよいでしょう。

回答書を返送すると、回答内容を踏まえて家庭裁判所にて相続放棄の審査が行われます。相続放棄が受理された場合、相続放棄申述受理通知書が届くのです。

このように、照会書・回答書は相続放棄手続きを進めるうえで重要な手順です。期限内に回答書の返送ができない・回答書の記載内容に不備があると言ったケースでは相続放棄が受理されない恐れもあります。そのため、照会書・回答書が届いたら慎重に対応する必要があるのです。

なお、照会書の入った封筒の差出人は家庭裁判所の職員というケースもあります。送られてくる封筒も家庭裁判所ごとに異なりますが、特別目立つ封筒ではないケースが多いので、他の郵便に紛れて紛失しないように注意しましょう。

「相続放棄申述書」や「受理証明書」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

回答書の書き方や記入例

回答書の記入内容は相続放棄審査の判断材料になる重要な項目なので、ひとつずつ慎重に回答することが重要です。回答書の質問内容や文言・書式などは家庭裁判所によって異なります。回答方法もチェックを入れる・丸を付ける・自分で記述するタイプなど異なるので、回答書や照会書をしっかり読んで確認しましょう。

ここでは、基本的に確認される下記の項目について書き方を解説します。

  • 被相続人との関係
  • 被相続人の死亡を知った日・相続人であることを知った日
  • 相続放棄の意志
  • 相続放棄の理由
  • 遺産を消費していないか
  • 遺産を取得できなくなることの確認
  • 回答者(申し立てした人)の署名押印

被相続人との関係

被相続人との関係とは、故人と申し立てをした人との関係性のことです。被相続人から見た自分の間柄を回答するのが一般的でしょう。

自分が被相続人の「子」なのか「父母」なのかを、チェックを入れるなど回答方法に従って回答します。

被相続人の死亡を知った日・相続人であることを知った日

相続放棄手続きは、相続開始があったことを知った日から3か月という期限があります。その期限内に手続きを行っているかを確認する内容です。

一般的には、死亡を知った日と相続人であることを知った日は、被相続人の死亡日と一緒というケースが多いでしょう。しかし、被相続人と関係性が希薄、他の相続人が相続放棄したことで相続人になったなどの理由で、死亡日・死亡を知った日・相続人であることを知った日が異なるケースも少なくありません。

死亡日と同じであればチェックを入れるだけというケースが多いでしょう。それぞれの日にちが死亡日と異なる場合は、正確な日付を記載します。

相続放棄の意志

相続放棄の意志とは、申し立て人が本人の意思で相続放棄しているかの確認項目です。相続放棄手続きを進めるのに問題なければ、本人の意思で手続きしている旨の回答欄にチェックを入れるなどして回答します。

相続放棄の理由

相続放棄する理由にチェックを入れて回答します。理由の欄は、一般的に選択制となり主な選択肢は次の通りです。

  • 自分の生活が安定している
  • 他の人に継がせたい
  • 遺産が少ない
  • 債務超過のため
  • 被相続人から生前に財産をもらっている
  • その他(記述式)

どの理由であっても相続放棄手続きに影響はないので正直に答えて問題ありません。

遺産を消費していないか

遺産を消費していないかは、相続財産を勝手に消費していないかの確認です。相続放棄手続きする際、相続人の財産を消費すると単純承認にあたり相続放棄できなくなります。

ただし、実際使ってしまったものを使っていないとして回答すると虚偽にあたるので、正直に回答する必要があります。財産を使ってしまって相続放棄できないのではと不安がある場合は、弁護士に相談して回答することをおすすめします。

また、葬儀費用や家の保存行為のための遺産の消費は単純承認にあたらないとされています。とはいえ、どこまで許容されるかは明確ではないので、基本的には遺産には手を付けないことをおすすめします。

遺産を取得できなくなることの確認

相続放棄が受理されると、実家などのプラスの財産も相続できません。そのことを理解しているかの確認項目です。問題なければ、取得できないことを了承する旨にチェックを入れましょう。

回答者(申し立てした人)の署名押印

回答書には署名・押印する項目があります。日付や住所・電話番号も記入するのが一般的なので、記載しましょう。印鑑は認印で問題ありませんが、相続放棄申述書で使用したものと同じでなければならない点に注意が必要です。

「相続放棄の手続き」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

回答書を書くときの注意点

回答書を書くときの注意点のイメージ

回答書を書くときには、下記の点に注意が必要です。

  • 申述書と食い違いがないように回答する
  • 申述書と同じ印鑑を使う
  • 嘘の内容を記載しない
  • 返送期限を厳守する
  • 代筆が認められるケースはまれ
  • 家庭裁判所から電話がくるケースもある

申述書と食い違いがないように回答する

回答書は、基本的に回答の選択肢が用意されており、質問を読んで素直に回答すれば問題ありません。しかし、相続放棄の申述書と記載内容が異なると問題になる可能性があります。

申述書を提出する際には写しをとっておき、回答書は写しをチェックしながら記入するようにしましょう。

申述書と同じ印鑑を使う

回答書に署名押印する印鑑は、申述書で使用した印鑑と同じものを使用します。同じ印鑑であることで申し立てた人本人であることの証明となるのです。

申述書を記入する際には、どの印鑑を使用したか分かるようにしておきましょう。万が一、どの印鑑を使用したか分からなくなった場合は、心当たりのある印鑑をすべて押印しておけば大丈夫です。署名・押印欄に、該当すると考えられる印鑑を並べて押印するようにしましょう。

嘘の内容を記載しない

回答書の記載内容に嘘があれば、虚偽の申告をしたとして相続放棄手続きに影響がでる恐れがあります。とくに、遺産の消費については注意が必要です。

相続放棄受理前に、遺産を勝手に処分してしまうと単純承認にあたり相続放棄できなくなります。だからといって、遺産を使ったのに使っていないと偽ってはいけません。

仮に、遺産を間違って使ったとしても状況によっては単純承認にあたらない可能性もあります。回答内容が不利になるのではと心配な場合は、一度専門家に相談するようにしましょう。

返送期限を厳守する

回答書には返送期限が設けられています。この期限内に返送するようにしましょう。返送期限を超えてしまうと、相続放棄できない可能性があります。

間に合わない事情があれば、家庭裁判所に相談することで柔軟に対応してもらえる可能性もあるので、早めに連絡するようにしましょう。

代筆が認められるケースはまれ

原則として代筆は認められません。ただし、腕をケガしているなど、やむを得ない事情がある場合は代筆が認められます。しかし、代筆できるのは相続人およびその配偶者以外という点には注意しましょう。

また、代筆した場合は、代筆者の氏名・住所・連絡先、代筆者の署名押印・代筆者と依頼人の関係の記載も必要です。なお、弁護士に相続放棄申述を依頼した場合、照会書・回答書は弁護士で記入して返送までしてくれます。

家庭裁判所から電話がくるケースもある

回答書の返送後、家庭裁判所から電話確認が入ることがあります。一般的には、簡単な内容の確認です。重要な場合は、さらに家庭裁判所に出頭を求められるケースもあります。

どちらのケースにしても、家庭裁判所からの問い合わせに対してはきちんと対応するようにしましょう。弁護士に依頼している場合は、それらの電話確認も弁護士宛てに来るため、裁判所からの問い合わせなど対応に不安がある場合は弁護士に依頼しておくことをおすすめします。

相続放棄照会書に関するよくある質問

最後に、相続放棄照会書に関するよくある質問をみていきましょう。

相続放棄照会書はいつ届くのか

相続放棄照会書は、相続放棄申述後1週間~10日ほどで届きます。家庭裁判所の混み具合によっては、1か月ほどかかる可能性もあります。1か月しても相続放棄照会書が届かない場合は、家庭裁判所に問い合わせてみるとよいでしょう。

相続放棄の受理はいつ完了するのか

一般的には、相続放棄申述受理通知書が届くのは、回答書の返送から10日程度です。相続放棄手続きを開始してからでは、1~2か月程が目安となるでしょう。

届かない場合の対処法

照会書は必ずしも送られてくるわけではありません。家庭裁判所が特に確認したいことがない場合など、照会書の手順を省略しているケースもあります。その場合は、相続放棄が受理され相続放棄申述受理通知書が届く可能性が高いでしょう。

また、弁護士に依頼している場合は、弁護士宛てに送付されるので自分の手元には届きません。そのことを踏まえて、届かないことが不安な場合は、依頼した弁護士や家庭裁判所に確認してみるとよいでしょう。

回答書の修正方法

回答内容を修正したい場合は、書き直したい部分に二重線を引き訂正印を押します。その横に、本来記載したい内容を記入します。

受理されなかったらどうなるの

回答書返送後の審査で、相続放棄が認められない場合は、相続放棄不受理の決定通知が届きます。反対に、相続放棄が認められれば相続放棄申述受理通知書が届きます。

相続放棄照会書は慎重に回答することが大切。不安な場合は弁護士に相談を

相続放棄を申し立てすると、1週間~10日ほどで相続放棄の意志を確認する照会書が送付されます。照会書の質問に対して、回答書で期限内に適切に回答することが大切です。

回答書の期限を超えてしまったり、回答内容が不適切だったりといった場合、相続放棄手続きができない恐れがあります。回答書の書き方が不安な場合は、弁護士などに相談するようにしましょう。

そもそも相続放棄手続き自体を弁護士に依頼している場合は、照会書・回答書も弁護士に届き返送までしてくれるので手間もかかりません。相続放棄をスムーズに進めたい場合は、最初の段階から弁護士に相談しておくとよいでしょう。

著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。【資格】宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年4月30日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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