不動産相続は誰に相談すべき?パターン別相談先や相談する前に知っておくべきことなどご紹介

公開日:2023年7月18日|更新日:2023年7月27日

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「田舎の家を相続したけどどうすればいい?」「畑を相続してしまった…」そんな風にお困りの方は意外と多いものです。

複雑な手続きが必要な不動産の相続。思わぬ不動産相続でどう対応すればいいのか分からない人も少なくありません。そんな時に役立つのが、不動産相続の相談窓口です。相続の相談先として弁護士を思い浮かべる人も多いですが、必ずしも弁護士が適任なわけではありません。

不動産相続のお悩みごとに相談すべき専門家が異なってくるので、それぞれ何が解決できるかを理解しておくことが大切です。

この記事では、不動産相続の代表的な相談先について分かりやすく解説していきます。

どこに相談すればいい?パターン別相談先

不動産の相続の代表的な相談先について、解決できるトラブルと一緒に一覧で確認しましょう。

相談先相談すべき悩み
弁護士不動産相続のトラブル
税理士相続税の申告
司法書士不動産登記
不動産会社売却相談
管理会社賃貸経営の相談
ハウスメーカー土地活用

同じ士業であっても、不動産登記は司法書士しかできないなど対応できる分野は異なります。自分の相談したい内容に合わせて、対応してくれる相談先を選ぶことが大切です。

相続全体の相談先については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。

詳細なパターン別相談先

ここでは、相談先についてパターン別に見ていきましょう。

相続のトラブルに関する相談は弁護士

不動産を相続した場合、現金のようにきっちり分けにくいことから相続割合を巡ってトラブルに発展しやすいものです。

相続人同士でのトラブルが発生している場合は、弁護士が適任です。

  • 相続割合で揉めている
  • 遺言書に納得できない
  • 遺留分の侵害がある
  • 遺産分割協議が必要
  • 相続放棄したい

裁判や調停など法的な手続きが必要になるトラブルを解決できるのは、弁護士のみです。また、裁判などまでは必要ないケースでも、相手との交渉ができるのも弁護士になります。

トラブル以外でも、相続財産の調査や相続放棄の手続きなど相続全般的なサポートも可能です。しかし、弁護士は費用が他の士業よりも高い傾向がある点に注意しましょう。

弁護士の依頼費用や依頼する事務所や依頼内容によっても異なりますが、遺産分割調停で着手金の目安が20~30万円程です。着手金以外にもトラブル解決後には、トラブル解決で得られた利益に応じた報酬が発生します。

相談するだけでも30分5,000円程が相場と、ある程度の費用がかかるでしょう。弁護士事務所によっては初回無料というケースもあるので、探してみるのもおすすめです。

トラブル解決まで必要な場合は弁護士が必要ですが、トラブルのないスムーズな相続の場合は別の士業に相談した方が費用を抑えられる可能性があるでしょう。

弁護士への依頼料を抑えたい人や弁護士に相談してもいいのか分からないという人は、まずは「法テラス」を利用することをおすすめします。法テラスとは、国が設置する法的トラブルの解決窓口です。

お悩みごとの適切な手続きや依頼先を案内してくれます。また、所得などの条件を満たしている場合は、専門家への無料相談弁護士への依頼料の一時立替もできるので、一度相談してみるとよいでしょう。

相続税や申告などの相談は税理士

相続で問題になりやすいのが相続税です。相続税や財産の評価について相談したい場合は、税理士に相談しましょう。

  • 不動産の正確な価値が知りたい
  • 相続税の申告を任せたい
  • 控除を利用して節税したい

相続税の申告手続きができるのは、税理士のみです。

相続税にはさまざまな控除がありますが、どの控除を利用すればいいのか分からない場合も税理士に相談することで適切な節税ができます。また、相続財産の調査も不動産を含めた正確な財産額を把握するなら税理士が適しているでしょう。

税理士への依頼料は、一般的に相続財産に応じた割合で発生します。

相続財産が高額なほど、必要な作業も増えるので費用は高くなるでしょう。目安としては、相続財産の0.5~1.0%程です。仮に相続財産が1億円なら、50万円~100万円程になります。

ただし、相続税には基礎控除があり、相続税が発生するケースは多くありません。相続税が発生しないケースや税計算が複雑でないケースなら、依頼料を抑えるために税務署や自治体の相談窓口を利用するのも一つの手と言えるでしょう。

相続税は、相続開始の翌日から10ヵ月以内に納める必要があります。相続税が発生するなら、早めに税理士に相談して期限に間に合うようにしましょう。

不動産の相続登記は司法書士

不動産を相続した場合、相続登記して相続人に名義の変更をする必要があります。相続登記に関わることであれば、司法書士へ相談しましょう。

  • 相続登記の手続きをまかせたい
  • 相続の書類の作成をお願いしたい

相続財産はそれぞれ名義変更が必要です。

不動産以外の名義変更は他の士業でもできますが、不動産に関しては司法書士しか手続きできません。他の財産は別の士業・不動産は司法書士と依頼すると、手間も費用も掛かるので、相続財産に不動産が含まれる場合は、最初から司法書士に依頼するとよいでしょう。

司法書士への依頼料の目安は、5万円~10万円程です。ただし、登録免許税などの実際に収める税金は別途必要になります。

また、不動産の相続でトラブルが発生してる場合、司法書士では交渉などの対応はできません。その場合は、弁護士に依頼するようにしましょう。

売却の相談は不動産会社

相続した不動産を活用する見込みがない場合は、売却するのもおすすめです。不動産は所有しているだけでも固定資産税や維持管理の費用がかかります。

田舎の空き家などを放置していると、瓦が飛んだなどで近隣に迷惑がかかり損害賠償請求を受ける可能性もあるでしょう。そのような場合は売却してしまう方が、管理の手間や費用を抑えられます。

売却する場合は、不動産会社に相談しましょう。

  • 相続した不動産を売却したい
  • とりあえずいくらで売れるか知りたい
  • 解体するかリフォームするか悩んでいる
  • 相続税の納付に間に合うように売却したい

売却を検討しているなら、まずはそのままの状態で査定や相談することをおすすめします。査定であれば無料で受けられ、価格に納得できなければ売却する必要はありません。また、古い不動産の場合は更地にすることを検討する人もいるでしょう。

しかし、今は古い物件を自分でリフォームしたいという買い手も増えているので、一概に解体したほうがいいとは限らないので、相談して決めることをおすすめします。

不動産会社への依頼の場合、査定や相談は無料でできます。売却に進んだ場合は、売買成立後に仲介手数料が発生するので注意しましょう。

相続財産に不動産が多い場合は、相続税に注意が必要です。相続税の納付期限は、相続開始から10ヵ月以内となります。現金で納税できるだけの資金がなければ、納付期限までに売却が必要です。

一般的な売却では3ヵ月から半年ほどの時間がかかるので、売却して納税を検討している場合はその旨を不動産会社に伝えて早めに動くようにしましょう。

アパートなど賃貸経営は管理会社

アパートやマンションといった賃貸物件を相続するケースもあるでしょう。相続後に賃貸経営を引き継ぐ場合は、管理会社を切り替えることをおすすめします。

  • 賃貸物件の管理会社を変えたい
  • 今の賃貸物件は空室が多い

もちろん、相続前から利用している管理会社でそのまま引き継ぐことも可能です。しかし、空室が多い・物件の管理状態が悪いといった場合は切り替えることで経営が改善する可能性があります。

また、以前の管理会社をそのまま利用すると、なにかと先代と比較されて対応してもらえないなど良好な関係性を築きにくい場合があるので注意しましょう。

相続と同時に、自分で見つけた管理会社で管理をスタートさせると、賃貸経営しやすくなるケースもあるので検討することをおすすめします。

アパート経営以外の土地活用はハウスメーカー

相続した土地で土地活用を検討しているならハウスメーカーがおすすめです。

土地活用方法には、アパートやマンション以外にも、駐車場や太陽光発電などさまざまな選択肢があります。

大手のハウスメーカーであれば、賃貸物件以外の土地活用についてもプランを提案してくれる会社が多いので相談してみるとよいでしょう。

  • 土地活用すべきか悩んでいる
  • 土地活用方法について知りたい
  • 土地のニーズに合った活用をしたい
  • 土地活用に収支をシミュレーションしてもらいたい

土地活用を検討している場合、土地の立地状態やニーズによって適切な活用方法が異なります。市場調査だけでも自分でするのは大変で、ニーズにマッチしていないと活用を失敗する恐れもあります。

ハウスメーカーなら土地活用のプロに、プラン提案や収支シミュレーションをしてもらえるので、相談してみるとよいでしょう。

不動産の相談をする前に知っておくと良いこと

不動産の相談をする前に知っておくと良いことイメージ

不動産の相続相談の前に、自分でもある程度相続について知っておくと相談もスムーズに進めやすくなります。

相続前に知っておくとよいことには次のようなことがあります。

  • 相続税対策
  • 相続放棄
  • 不動産の共有

相続税対策

相続税対策として不動産の所有は有効的です。

現預金の場合、相続税は額面金額に対して課税されますが、不動産は評価額に対して課税され、評価額は市場価格の7~8割ほどになります。現金よりも評価額を抑えられる不動産で相続したほうが、相続税を抑えることにつながるのです。

具体的な不動産を使った相続税対策には次のような方法があります。

  • マンションを購入し賃貸にする
  • 法人化して法人に不動産を所有させる
  • 売却する

不動産を購入し賃貸にすることで評価額をより下げられるだけでなく、家賃収入を得ることも可能です。

法人で不動産を所有することで、法人の財産となり相続財産の対象から外れます。また、使い道のない不動産であれば思い切って売却することで相続税を納めることが可能です。生前中に売却してしまうことで、現金での生前贈与も検討できるでしょう。

「相続税」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄

不動産のほかに遺産がなく不動産も使い道がないなら相続放棄を検討するのもおすすめです。田舎の不動産の場合は、売却しようにもなかなか売れない恐れがあります。

売れない期間が長くなることで、相続税の納付期限に間に合わない場合も出てくるでしょう。売却せずに管理するにしても、遠方では管理を適切にするのが難しくなります。

このような場合は、相続放棄がおすすめです。しかし、相続放棄した場合でも別の相続人に土地の相続が移る可能性があるので、事前に了承を得ておくとトラブルを避けやすくなります。

ただし、相続放棄は相続開始の開始から3ヵ月以内に申請が必要なので、早めに判断することが大切です。また、相続放棄した場合でも土地の管理責任がなくなるわけではない点には注意しましょう。

不動産の共有

相続人が多い場合で、不動産を共有名義で相続するケースがありますが、あまりおすすめできません。共有名義の場合、後々売却する際に名義人全員の合意が必要など自由に取り扱いができません。

その状態で二次相続に進んでしまうと、より名義が複雑になります。不動産の共有はトラブルに発展しやすいので、名義は1人だけにすることをおすすめします。

相続については、生前贈与などの対策もあります。しかし、被相続人が生前意識のハッキリしているうちでなければ、相続や生前贈与について話し合うこともできません。

相続が発生してから後悔することの無いように、できるだけ元気なうちに相続について話し合っておくことが大切です。

まとめ

不動産相続の相談先についてお伝えしました。

トラブルなら弁護士相続税なら税理士不動産登記なら司法書士というように、不動産相続のお悩みによって適切な相談先は異なります。相続税や相続放棄には期限があるので、早めに相談してスムーズに解決することが大切です。

この記事を参考に、適切な相談先でアドバイスを得て円満な相続ができるようにしましょう。

著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。【資格】宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年7月18日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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