相続放棄の範囲はどこまで続くの?相続の順位を理解しておこう

公開日:2024年3月22日

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相続放棄すると、自分の相続分は次の相続人に移ります。もし自分が借金を相続放棄したら、別の人が苦しむのではと気になる方も少なくありません。相続放棄する前に、どこまで相続権が移るのかを把握しておくことが大切です。この記事では、相続の順番や相続放棄の範囲・注意点について、分かりやすく解説します。

相続の順位について

死亡した人の財産は、遺言などで指定がない限り「法定相続人」が相続します。

法定相続とは、法定相続人が相続割合で相続するという民法によって定められた相続方法です。法定相続人は、被相続人(亡くなった人)の家族であれば誰でもなれるわけではありません。

法定相続人になれる人の範囲や優先順位は決められており、下記の通りです。

  • 常に相続人:配偶者
  • 第1順位:子どもや孫(直系卑属)
  • 第2順位:両親や祖父母(直系尊属)
  • 第3順位:兄弟姉妹・甥姪(傍系血族)

配偶者は常に相続人となります。また、配偶者以外の相続人には優先順位があり、相続順位が上位の人が相続人となります。

たとえば、被相続人に配偶者と子ども・両親がいる場合は、配偶者と子どもが相続人です。仮に子どもが亡くなっている場合でも、子どもの子(被相続人の孫)が相続人になります。

配偶者との間に子どもがない・子どもが亡くなって孫もいないという場合は、両親や祖父母が相続相続人です。子ども・孫・両親・祖父母もいない状態なら、兄弟姉妹が相続人となります。

このように、配偶者以外の相続人は、順位が上位の人が優先して相続できるようになっています。さらに、相続人の組み合わせによって相続できる割合(法定相続分)も異なってくるので、注意しましょう。

「相続の順位」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄について

相続が発生すると、相続の方法を決めることになります。
相続の方法には、次の3つがあります。

  • 単純承認
  • 限定承認
  • 相続放棄

一般的な相続の方法は、すべての相続財産を相続する「単純承認」です。しかし、相続財産に借金が多いなど相続したくないケースも少なくないでしょう。そのような際の相続しない選択肢が、限定承認か相続放棄になります。

限定承認とは、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続する方法です。不動産など相続したい財産がある場合などで選択されますが、複雑でもあるので限定承認を選ぶケースは多くありません。

一方、すべての財産を相続しない方法が相続放棄です。相続放棄を選択すると、借金などを相続しなくて済みます。ただし、相続放棄ではマイナスの財産だけでなくプラスの財産も相続できないので、本当に相続放棄してもいいのか慎重に判断するようにしましょう。

また、相続放棄できる期限は「相続の開始を知った日の翌日から3か月以内」という点にも、注意が必要です。

「相続放棄」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄の範囲はどこまで続くのか?

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相続放棄すると、はじめから相続人でなかったことになります。相続順位が上位の人が相続放棄すると、その人の相続権は次の順位の人に移るのです。

ただし、相続放棄する人や他の相続人によって誰に相続順位が移るかが異なるので注意しましょう。以下では、配偶者・子ども・両親・兄弟姉妹が相続放棄した場合の、次の相続人のパターンを解説します。

配偶者が相続放棄した場合

配偶者には相続順位はないため、配偶者が相続放棄してもその相続権は誰にも移りません。

配偶者が相続放棄すると、はじめから相続人がいなかったとされ、他の相続人で相続することになります。たとえば、相続人が配偶者と子どもの場合、子どもがすべての相続財産を相続することになるのです。

子どもが相続放棄した場合

子どもが相続放棄した場合、相続権は次のようなパターンで移ります。

  • 他に子どもがいる:他の子どもで相続財産を分ける
  • 他の子どもがいない:父母・祖父が相続人になる

被相続人の子どもが2人いて、そのうち1人が相続放棄するというように他の相続権を持つ子どもがいる場合は、残りの子どもで相続財産を分けることになります。

一方、子どもが1人の場合やすべての子が相続放棄した場合、第1順位の人がいなくなるため第2順位の父母や祖父母が相続することになるのです。

なお、子どもの子ども(孫)がいる場合であっても、孫に相続権が移ることはありません。
こうした、孫へ相続することを代襲相続と呼びますが、相続放棄すると、はじめから相続人でなかったとされるので代襲相続は発生しないのです。

両親が相続放棄した場合

両親が相続放棄した場合、次のようなパターンになります。

  • 両親のどちらかだけ相続放棄:相続放棄していない方がすべて相続
  • 両親が相続放棄し祖父母がいる場合:祖父母が相続人になる
  • 両親が相続放棄し祖父母がない場合:兄弟姉妹・甥姪が相続人になる

両親ともに相続放棄すると、祖父母に相続権が移ります。祖父母が他界している場合は、第3順位に相続権が移るので兄弟姉妹が相続人となるのです。

兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥姪が相続人になります。

兄弟姉妹が相続放棄した場合

兄弟姉妹が相続放棄する場合は、下記のようなパターンになります。

  • 兄弟姉妹が他にいる:他の兄弟姉妹ですべて相続
  • 兄弟姉妹が他にいない:相続人がいなくなる

兄弟姉妹のうち1人が相続放棄した場合や配偶者がいる場合は、他の兄弟姉妹や配偶者ですべて相続することになります。

配偶者も相続せず他に兄弟姉妹もいない場合は、それより下の相続順位の人はいないため誰にも相続権は移らないのです。相続放棄した場合、代襲相続も発生しないので甥姪に相続権が移ることもありません。

「兄弟姉妹の相続放棄」や「相続放棄の代襲相続」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄に関する注意点

相続放棄の範囲に関する注意点として、下記のようなことが挙げられます。

  • 相続放棄したことは次の相続人に通知されない
  • 相続放棄には期限がある
  • 相続放棄しても空き家の管理義務が残る場合がある

相続放棄したことは次の相続人に通知されない

相続放棄は、相続人単独で申請できます。しかし、相続放棄が受理されたからと言って裁判所が次の相続人に相続権が移ったことを通知することはありません。

借金を相続放棄した場合、次の相続人が本人の知らない間に借金を背負うことになってしまうので注意が必要です。相続放棄する場合は、あらかじめ次の相続人にその旨を連絡しておくことをおすすめします。

多額の借金があるという場合は、誰か相続人が残ってしまうとその人の負担が大きくなります。できるだけ相続人全員で相続放棄するようにしましょう。

相続放棄には期限がある

相続放棄が手続きできる期限は相続があることを知った日から3か月と決まっています。この期限を超えてしまうと相続放棄できなくなってしまうので、早めに手続きするように準備を進めましょう。

期限間近、期限を超えてしまったという場合でも、相続放棄できる可能性もあるので、早めに専門家に相談することが大切です。

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相続放棄しても空き家の管理義務が残る場合がある

田舎の実家など、相続しても使い道がないような場合、相続放棄するケースは珍しくありません。しかし、場合によっては相続放棄しても空き家の管理義務が残っている点には注意が必要です。

相続放棄しても、次の相続人が決めるまでは相続財産の管理義務があります。自分が最後の相続人で他に相続人がいないというケースでは、空き家を管理する義務は残るのです。

管理義務がある空き家を放置して近隣に被害が出るなどすると、損害賠償請求を受ける恐れもあるでしょう。空き家の管理義務を無くすには、家庭裁判所に相続財産清算人の選定を申し立てる必要があります。

「相続放棄の注意点」や「不動産の相続放棄」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄を検討するなら相続人を把握することが大切

相続放棄することでマイナスの財産を相続せずにすみますが、その分を別の相続人が相続することになります。次の相続人にあらかじめ相談したうえで相続放棄しなければ、トラブルに発展する恐れもあるので注意が必要です。

相続放棄した影響がどこに出るかは、相続人同士の関係性などによって異なります円満に相続放棄したいなら、相続放棄が適切なのかの判断も含めて専門家に相談するとよいでしょう。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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