親族と絶縁!?連絡が取れない等の相続トラブル対処法や予防策をご紹介

公開日:2024年4月24日

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「相続が発生したけど兄弟で絶縁していてどうすればいいのか分からない…」兄弟姉妹など親族間に絶縁状態の人がいると、連絡が取れない、話したくないなどで相続トラブルが発生しやすくなります。この記事では、絶縁した親族とどのような相続トラブルがあるのか、その対処法や予防策を含めて詳しく解説します。

絶縁状態であっても相続の権利は通常と変わらない

「そもそも絶縁しているのだから相続権はないのでは?」そう考える方もいるでしょう。しかし、絶縁状態かどうかは相続権には関係ありません。例え、絶縁して何十年も音信不通状態であっても、絶縁した人が法定相続人に該当し相続欠格や相続廃除されていない限りは遺産を相続する権利があるのです。

遺産分割の対象となる財産は、遺言がない限り分割方法が決まるまで相続人全員により法定相続分に応じた共有状態になっています。遺産を分割するには、遺産分割協議を行い遺産の分割方法を決めなければなりません。

ですが、遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要になり絶縁して連絡が取れない人がいると手続きを行うことはできません。もし、絶縁した人を除いて遺産分割を勝手に進めてしまうと、相続権の侵害でトラブルになる可能性があるでしょう。

遺言書があれば、絶縁した人の合意なく遺言内容に従って相続を進めることは可能です。ただし、遺言書に記載のない財産がある、遺言の内容があいまいで財産の特定が難しいと言った場合は、遺産分割協議が必要です。

遺言書が有効である場合でも、遺留分を侵害する内容であれば絶縁した人から遺留分侵害額請求を受ける恐れがあります。そのため、絶縁した人が法定相続人である以上、相続が発生したら連絡を取るなどなにかしら対応が必要になるのです。

「相続順位」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

絶縁した親族とのよくある相続トラブル・揉め事

絶縁するほど仲が悪い状態の親族がいると、相続時にトラブルになる可能性は高くなります。

ここでは、絶縁した親族とのよくある相続トラブルとして、下記の3つを紹介します。

  • 遺産分割協議で合意できない
  • 連絡を取りたくない
  • そもそも連絡が付かない

遺産分割協議で合意できない

遺産分割協議では、相続人全員で相続割合について話し合います。とはいえ、絶縁した親族が入ると冷静な話し合いが難しいケースも多いものです。

  • 絶縁した親族に遺産を渡したくない
  • 絶縁した親族が一方的に財産の割合を主張する
  • 遺産分割協議に参加してくれない

絶縁した親族が財産を取得することに納得できない相続人と絶縁しても財産の取得を主張する人とで揉めるケースは、珍しくありません。また、連絡が取れても親族に会うのが嫌で遺産分割協議に参加してくれない可能性もあります。

遺産分割協議で話し合いが進まないと、いつまでも相続を進めることができません。

連絡を取りたくない

仲が悪い相手に、わざわざ自分から連絡を取るのが嫌な方も多いでしょう。連絡を取りたくない・会って話したくないと、遺産分割協議に進めないケースもあります。

そもそも連絡が付かない

絶縁して数年過ぎており連絡先が分からないというケースもあります。

連絡先どころか安否すらも分からないということも珍しくありません。しかし、連絡の取れない人であっても相続権がある以上、遺産分割協議に参加してもらわなければなりません。

絶縁した親族と相続トラブル・揉め事になってしまった場合の対処法

絶縁した親族との相続トラブルの対処法として、よくあるトラブルごとに具体的に解説していきます。

遺産分割協議で合意できない

絶縁した親族と他の相続人とで意見が割れて話し合いが進まない場合、次のような対処法があります。

  • 不動産は共有相続を避けて代償分割などする
  • 配偶者居住権を設定する
  • 遺産分割調停や審判を行う
  • 弁護士に依頼する

不動産は共有相続を避けて代償分割などする

相続財産に不動産が含まれると分割の仕方で揉めやすくなります。不動産の分割で揉めて合意できない場合、とりあえず共有相続で進めようとするケースもありますが、おすすめできません。

不動産を共有名義にすると、ただでさえ将来売却や活用が難しくなります。とくに、絶縁した親族と共有状態にすると、その後意思を確認しにくくなりより活用は困難になるでしょう。不動産で揉めている場合は、次のような相続方法を検討することをおすすめします。

  • 代償分割
  • 換価交換

相続人の誰か1人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う代償分割。不動産を売却して売却金を分割する換価交換であれば、現金で分割できるので揉めにくくなります。

ただし、不動産の評価額や売却額で揉める可能性もあるので、金額については慎重に進めるようにしましょう。

配偶者居住権を設定する

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が引き続き家に住み続ける権利のことです。被相続人が所有している実家が遺産分割の対象となると、配偶者が住む家を失う恐れがあります。

仮に、配偶者が実家を相続できた場合でも、他の現預金を相続できないことで生活費に困る可能性もあるでしょう。そのような事態を防ぐために設けられた制度が、配偶者居住権です。配偶者居住権を設定することで、配偶者は被相続人の所有する家に無償で住み続けることができます。

配偶者居住権を設定した家は、配偶者と所有者で建物の価値を分散するため配偶者は金銭の相続もしやすくなり、生活費を確保することも可能です。絶縁した親族の主張で、配偶者の住む家がなくなる恐れがあるなら、配偶者居住権を設定して生活を守れるようにするとよいでしょう。

「配偶者居住権」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺産分割調停や審判を行う

相続人間の話し合いで合意できない場合、家庭裁判所に調停を申し立てて話し合いを進めていきます。調停でも解決できない場合は、審判に移行し分割方法が決められます。

「相続調停」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

弁護士に依頼する

当事者同士では冷静に話し合いができない場合、弁護士に介入を依頼することをおすすめします。弁護士であれば、法的に正しい知識を持ち冷静に話し合いを進めることが可能です。

直接相手と話したくない場合でも、弁護士なら交渉を代理で進めてくれます。また、仮に遺産分割調停や審判に進む場合でも、弁護士に依頼しておくことでサポートしてくれます。

連絡を取りたくない

連絡を取りたくない・会いたくない相手であっても、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。ただし、必ずしも直接会って話をしないといけないわけではありません。

遺産分割協議は、電話やメール・LINEなどで連絡を取り合うことでも成立します。できるだけ負担のかからない手段で早い段階で連絡を取るとよいでしょう。絶縁した親族と良好な関係の別の親族がいるなら、間に入ってもらう方法もあります。

遺産分割協議後の書類への署名・押印や、その後の相続手続きなどは専門家に依頼すれば最後まで接触せずにスムーズに相続を進めることも可能です。一切連絡を取りたくないという場合は、最初の段階から弁護士に依頼しておくことをおすすめします。

そもそも連絡が付かない

連絡が付かない・所在が分からないという場合、次のような方法が検討できます。

  • 所在調査
  • 不在者財産管理人の選任
  • 失踪宣告の申し立て

所在調査

まずは、所在を調査しましょう。代表的な所在調査としては、住民票や戸籍附票の取得があります。ただし、海外に転居している場合は詳細な住所が分からない可能性があります。

絶縁した親族との関係性によっては戸籍の取得ができない場合もあるので注意しましょう。自分で探すことが難しい場合は、探偵などに依頼する方法もあります。

不在者財産管理人の選任

どうしても所在が分からない場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらう方法があります。不在者財産管理人とは、所在が分からない人の財産を管理する人のことです。

不在者財産管理人を選定してもらえば、管理人が絶縁した親族に代わって遺産分割協議に参加でき、分割手続きを進められます。

失踪宣告の申し立て

失踪宣告とは、長期間安否が分からない人を法的に死亡したとみなせる制度です。

  • 行方不明・生死不明で7年以上経過している
  • 飛行機事故など緊急的な危機で1年以上行方不明である

上記の条件に該当すれば、行方不明者の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てることで手続きできます。

相続放棄という選択肢も

絶縁した親族に相続放棄を提案するという方法もあります。相続放棄してもらえば、はじめから相続人でなかったことになるので他の相続人で遺産分割を進めることが可能です。

反対に、そもそも相続したい財産がないという場合は、自分で相続放棄してしまえば絶縁した親族と相続で関わることはありません。ただし、相続放棄は相続を知った日から3か月以内に申請する必要がある点には注意しましょう。

また、相続放棄後に相続したい財産があるから放棄を取り消すことはできないため、相続放棄は慎重に判断することが大切です。

「相続放棄」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

絶縁した親族と相続トラブル・揉め事にならないために生前にできる対策

絶縁した親族と相続トラブルが発生すると、それまでの仲の悪さも加わりトラブルが深刻化して解決が難しくなります。生前中から相続トラブルが起きないように、対策しておくことが大切です。

ここでは、生前中にできる対策として下記の4つを紹介します。

  • 遺言書を作成しておく
  • 生前贈与しておく
  • 遺留分を放棄してもらう
  • 相続廃除を申し立ててもらう

遺言書を作成しておく

親の生前中に遺言書を作成しておくことで、相続時に遺産分割協議をせずに遺産分割を進められます。絶縁した人に多くの財産を渡したくない場合は、次のような内容で遺言を作成してもらうことになります。

  • 絶縁した人を考慮して相続割合を指定してもらう
  • 第三者に遺贈してもらう
  • 寄与分を明確に記載しておく

遺言書があれば絶縁した親族とも連絡を取り合う必要がないので、トラブルを避けて相続しやすくなるでしょう。

ただし、次の点には注意が必要です。

  • 公正証書遺言で作成する
  • 遺留分に注意する
  • 遺言書は被相続人の意志で作成する

遺言書の無効が主張されないように、公正証書遺言で作成することをおすすめします。また、遺言書で絶縁した人の相続分を0にする旨を遺しても、遺留分があれば遺留分侵害額請求される恐れがあります。遺留分には配慮して遺言書を作成するようにしましょう。

親に遺言書の作成を提案はできますが、実際に遺言書を作成する・内容をどうするかは親自身が決めることです。親の意志を無視して遺言書を作成してもらうと、トラブルに発展する恐れもあるので注意しましょう。

生前贈与しておく

生前贈与で事前に財産を取得しておくことで、絶縁した人が相続する財産を減らすことも可能です。ただし、相続人が生前贈与をうけると特別受益に該当する可能性があります。

また、生前贈与の仕方によっては贈与税が課せられる可能性もあるので、生前贈与の仕方は慎重に判断しましょう。

遺留分を放棄してもらう

遺留分の放棄とは、相続人が遺留分の権利を手放すことをいいます。遺留分を放棄してもらうことで、遺言で相続割合に偏りがあっても遺留分請求のトラブルを避けやすくなります。

相続放棄は被相続人の死後にしかできないのに対し、遺留分放棄は被相続人の生前中・死後どちらでも可能です。しかし、遺留分放棄を提案することはできても実際に放棄手続きをするかは、本人の意思によります。強制的に手続きされることはできないので、注意しましょう。

相続廃除を申し立ててもらう

親に絶縁した親族の相続廃除を申し立ててもらう方法もあります。相続廃除とは、被相続人が家庭裁判所に申し立てることで相続から廃除して相続権を失わせることです。

しかし、相続廃除は絶縁したという理由で認められることはほぼありません。相続廃除が認められるのは、長年虐待を受けた・重大な侮辱を受けた・著しい非行があるなどが認められる必要があります。

申し立てを行っても受理される可能性はあまり高くない点には注意しましょう。また、相続廃除手続きができるのは被相続人のみなので、被相続人の死後に相続人から申し立てることはできません。

絶縁した親族との相続トラブルでの注意点

絶縁した親族との相続トラブルでの注意点のイメージ

ここでは、絶縁した親族との相続トラブルでの注意点として下記の5つを解説します。

  • 話し合いは冷静に行う
  • 遺産を勝手に処分しない
  • 絶縁した親族に相続欠格事由があれば相続権はない
  • 生死不明から7年後には相続権利がなくなる
  • 相続トラブルで絶縁してしまうケースもある

話し合いは冷静に行う

絶縁した親族と話し合いが必要になれば、感情を抑えて話し合うのが難しいこともあるでしょう。しかし、感情的に話していても遺産分割は進められません。

遺産分割協議時には、相続が決まる一時だけと割り切ってできるだけ冷静に話し合うことが大切です。どうしても冷静になれないという場合は、弁護士に相談して介入してもらうことをおすすめします。

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遺産を勝手に処分しない

遺産分割を終えていない遺産は共有状態です。絶縁した親族が相手でも、連絡なしに勝手に処分してしまうとトラブルになります。

貯金を引き出す・不動産を勝手に売却するなど絶縁した親族を除いて処分を進めないようにしましょう。

絶縁した親族に相続欠格事由があれば相続権はない

相続欠格事由とは、相続人の資格が剥奪される制度です。遺言書の偽造や被相続人への脅迫・被相続人や他の相続人を死亡させたなどが欠格事由となり、該当する人は手続きなしで相続権を失います。

絶縁した親族がそもそも相続欠格事由に該当する場合は、相続に関わることはないので事前に確認するようにしましょう。

生死不明から7年後には相続権利がなくなる

先述したように、7年間行方不明で生死の確認ができない場合、失踪宣告されることで法律上死亡したとみなされ相続権が亡くなります。

失踪宣告を申し立てできるのは、相続人や配偶者など一定の利害関係者のみです。ただし、失踪宣告後に生存が判明すると、相続財産の返還などが必要になり対処が複雑になる恐れがあります。

失踪宣告を検討する場合は、警察署や弁護士に相談して手続きを行うようにしましょう。

相続トラブルで絶縁してしまうケースもある

今は仲が良く絶縁とは関係ない親族でも、相続トラブルが原因で絶縁してしまうケースも少なくありません。相続手続き中に絶縁状態になると、手続きを進めるのが難しくなります。

また、父親の相続後に絶縁してしまうと、母親の相続発生時に連絡が取れないなどでトラブルになる可能性もあるでしょう。

絶縁していない相続でも、相続トラブルが起きる可能性は十分にあります。ことさら絶縁状態の人がいる相続時には慎重な対応が必要です。相続トラブルが予測されるのであれば、早い段階で弁護士に相談して進めることをおすすめします。

絶縁した親族がいる相続は弁護士に相談を

絶縁した親族が法定相続人の場合、絶縁に関わらず相続権があるので遺産分割協議への参加を呼びかける必要があります。しかし、絶縁した親族と話し合うのは容易ではなく、話し合いが難航する・そもそも連絡が取れないなどでトラブルになりやすいものです。

とはいえ、遺言がなければ遺産分割協議を行わなければ相続を進めることはできません。絶縁した親族と連絡を取りたくないといったケースや、トラブルになってしまったのであれば、早い段階で弁護士に相談するとよいでしょう。

また、生前中に対策することで相続時のトラブルを避けやすくなります。弁護士であれば、絶縁した親族への相続を含めて円満な相続のサポートをしてくれるので、相談を検討してみてください。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年4月24日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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