相続放棄のやり方。家庭裁判所の手続きを自分でする時と専門家に依頼する時の違いは?

公開日:2023年2月7日|更新日:2023年2月20日

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「相続放棄の手続き」は家庭裁判所に必要書類を提出し、相続放棄照会書(回答書)の確認などを経て、家庭裁判所に受理されてようやく完了します。しかし、相続放棄手続きの期限は相続開始から3か月以内と短め。さらに、家庭裁判所への提出書類にある細かな規定、必要書類の収集などを、自分の力だけでクリアするのは難しいかもしれません。

こちらの記事では、相続放棄の基礎知識や注意点を紹介した後に、専門家に任せるときと自分で手続きをするときの必要書類・手続き・費用の違いについて解説します。

相続放棄の基礎知識

まずは相続放棄の定義などの基礎知識や、相続放棄を活用した方がよいケースについて解説します。

相続放棄とは、死亡した人の財産を相続しないこと

「相続放棄」とは、遺産相続が起こった時に、相続人が死亡した人の財産や権利を一切相続しない(放棄する)ことを指します。相続人は「相続放棄」で相続権を放棄することで、すべての相続財産について承継することを拒否できます。ここでいう「すべての相続財産」とは、預貯金などの「プラスの財産」や借金などの「マイナスの財産」の2種類。

「相続放棄」することで相続人が得られるメリットは、「相続人同士の遺産分割協議や、相続財産の継承で発生する相続税」などを、相続人が考慮する必要がなくなることだといえます。

相続放棄を検討した方が良いケース

マイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合、つまり、借金などを背負わなくて済む場合は、相続放棄を検討してもよい代表的なケースだといえます。

さらに、相続財産の管理が大変な場合や、遺産相続時において遺産分割協議に参加したくない場合も、相続放棄を選択する基準の1つと捉えて問題ないです。

遺産相続の注意点は、死亡した人の負債(借金など)といった「マイナスの財産」だけでなく債務も継承してしまうこと。もし、死亡した人が誰かの連帯保証人になっていた場合、その義務さえも継承することになってしまうため、事前に死亡した人の財産調査をしておく必要があるでしょう。

「相続放棄」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄の知っておきたい6つの注意点

相続放棄の知っておきたい6つの注意点

相続放棄の手続きをするうえで知っておきたい注意点を解説します。相続放棄の手続きにおける注意点は、次の6種類です。

  1. 生前に相続放棄はできない
  2. 相続放棄は撤回ができない
  3. 相続順位に影響を与えることがある
  4. 代襲相続が発生しなくなる
  5. 債権者に相続放棄の報告をする
  6. 全員が相続放棄すると管理の手間暇がかかる

相続放棄の手続きをする際の注意点について、順番に見ていきましょう。

1. 生前に相続放棄はできない

相続開始前、つまりその人の生前に「相続放棄の申述手続き」を行っても、家庭裁判所に受理されることはありません。たとえ、医師から親の死期が近いなどと宣告されていても、相続放棄の申述手続きは受理されません。あくまでも、相続開始を知った日から3か月以内の期限である「熟慮期間」までに申述手続きを行う必要があります。

2. 相続放棄は撤回ができない

相続放棄は、家庭裁判所に一度受理される(認められる)と撤回ができません。たとえば、死亡後の財産調査で、死亡した人が実は莫大な財産を所有していたと明らかになるケースも想定されます。相続放棄の申述を行う前に、必ず財産調査を実施し、プラスの財産とマイナスの財産を把握することがポイントです。

3. 相続順位に影響を与えることがある

遺産相続時における「相続放棄」は相続順位に影響を与える可能性が十分にあります。親族・家族構成によっては法定相続人が変わるためです。たとえば、法定相続人に死亡した人の兄、妻、子どもがいたとします。本来なら、相続人は第1順位である妻と子どもです。ところが、妻と子どもが相続放棄すると、死亡した人の兄の相続順位が繰り上がり、兄が法定相続人になるため、相続放棄は他の法定相続人に影響を与えるといえます。したがって、相続放棄するときは、法定相続人同士で、事前に話し合っておくことが大切なのです。

4. 代襲相続ができなくなる

相続放棄をすると、自分の子どもや孫などの直系卑属に相続権が継承される「代襲相続」が発生しなくなります。これは、遺産相続のときに相続人が相続放棄をしてしまうと、相続放棄した人は「初めから相続人ではなかった」として相続人の地位を失ってしまうためです。つまり、遺産相続時における相続放棄の影響力は、自分以外にも、自分の子どもや孫などの直系卑属にも及ぶということです。

5. 債権者に相続放棄の報告する

死亡した人に借金などがある場合、その債権者への連絡をした方がよいでしょう。相続人に借金などの返済義務はなくなりますが、債権者への借金はそのまま残ります。債権者は相続人が相続放棄をしたことさえ知らないため、相続放棄した旨を伝えておきましょう。

さらに、正式に相続放棄が完了したら「相続放棄申述受理通知書」のコピーを債権者に郵送しておくと、トラブルを避けることに有効だといえます。ちなみに、債権者への報告は司法書士や弁護士が代わりに対応してもらえますので、専門家に相談し、代行依頼を検討してもよいでしょう。

6. 全員が相続放棄すると管理の手間暇がかかる

遺産相続時に相続人全員が相続放棄しても、死亡した人の相続財産について管理する義務は残ります。死亡した人の相続財産における、不動産や預貯金などの財産の権利、借金などの債務を承継する必要はなくなります。しかし、財産が一定の管理下に置かれるように、相続人は家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申述をしなければなりません。(民法940条)

相続人全員で相続放棄すれば、財産は最終的に国に帰属しますが、すぐに帰属されるわけではありません。国に帰属するまでの期間は、相続財産管理人が相続放棄された財産管理を担います。相続人は、相続財産管理人が選任されるまでの相続財産の管理を行う義務があり、さらに、場合によっては相続財産管理人への報酬「予納金」といった費用の支払いが発生することがあります。

遺産相続時に相続人全員が相続放棄する場合は、相続財産管理人の選任の手間や、予納金などの費用について、相続人全員で話し合った方がよいでしょう。

相続放棄の手続きは専門家任せ? 自分でやる? 判断について

相続放棄の手続きを、司法書士や弁護士などの専門家に任せるべきか、それとも自分たちだけで行うべきか、判断に迷うことがありますね? 専門家に依頼するのか、自分で行うのか、どちらが適しているのか具体的なパターンを交えて解説します。

司法書士や弁護士に相談・依頼した方がよい3パターン

遺産相続時における相続放棄は、期限内に家庭裁判所への申述手続きが受理されれば、追加で必要となる対処や費用は発生しません。しかし、場合によっては、司法書士や弁護士などの専門家に依頼しないと解決が難しいケースもあります。解決が望めそうな司法書士や弁護士に相談・依頼した方がよいパターンは次の3つが考えられます。

  1. 相続放棄の期限「3か月以内」に間に合わない
  2. 借金の有無など死亡した人の相続財産が把握できない
  3. 相続人全員が相続放棄して、相続財産管理人の選任する

上記の3パターンについて順番に解説していきます。

<1. 相続放棄の期限「3か月以内」に間に合わない>

遺産相続時に相続放棄をしたかったのに、「相続開始を知った日から3か月以内」に申述手続きが完了しなかった、または間に合わなさそうな場合は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼した方がよいでしょう。司法書士や弁護士といった専門家に依頼した方が、家庭裁判所に受理されやすくなるような「上申書」の作成が期待でき、相続放棄が成立しやすくなるメリットがあるためです。

そもそも、相続放棄は原則として「相続開始を知った日から3か月以内」に申述手続きを行う必要があります。そのため、3か月を過ぎてしまうと申述手続きが家庭裁判所に受理されず、相続財産を「単純承認」したとみなされるため、相続放棄は難しくなるといえるでしょう。

しかし、期限に間に合わなかった事情を考慮して、家庭裁判所が相続放棄を例外的に認めるケースがあります。たとえば、「相続を承認した後に借金の存在を初めて知った」などの場合です。

その場合、やむを得ない事情が書かれた「上申書」を作成し、「相続放棄申述書」とともに家庭裁判所に提出する手続きを踏みます。相続放棄の上申書は、申述書同様に、受理されるように記載する必要のある書類。依頼費用は発生してしまうデメリットはありますが、一度で相続放棄が家庭裁判所に受理されるように、問題を解決してくそうな司法書士や弁護士などの専門家に無料相談・依頼した方が確実であるといえます。

<2. 借金の有無など死亡した人の相続財産が把握できない>

遺産相続時に、相続放棄をするかどうかを判断するためには、「財産調査」が必須です。借金などのマイナスの財産と、預貯金や不動産などのプラスの財産といった相続財産の全体像が把握しきれないときは、問題を解決してそうな司法書士や弁護士などの専門家に依頼した方がよいでしょう。

相続放棄はマイナスの財産がプラスの財産より多いときに、活用されることが多いです。遺産相続時の手段は、相続放棄だけでなく、単純承認や限定承認も相続人には残されています。そのため、マイナスとプラスの相続財産の全体像がわからないときは、無理に相続放棄を選び、その手続きを進めるべきではないでしょう。

遺産相続が発生したときに財産調査をすることで、預貯金・不動産・有価証券だけでなく、借金・ローンなど当初想定していなかった財産が判明することがあります。自分で財産調査すると時間がかかり、財産の確認が漏れてしまう場合も多いので、司法書士や弁護士など専門家に無料相談してもいいといえます。

<3. 相続人全員が相続放棄して、相続財産管理人の選任する>

相続人全員が相続放棄した場合、相続財産管理人の選任が必要となることがあります。その相続財産管理人を選任するために申し立てる際の必要書類を作成する際に、力強い味方になるのが司法書士や弁護士などの専門家。

相続放棄により、法定相続人は相続財産の権利と義務を継承せずに済みます。しかしながら、法定相続人には、相続財産に対する「一定の管理義務」は残り続けます。相続財産が国に帰属するまでの期間、相続財産管理人が相続放棄者に代わって管理義務を負うのです。

「相続財産管理人選任申立書」の際に必要となる戸籍謄本などの書類は、多ければ10種類程度に及びます。そのため、専門家に依頼せずに、煩雑な必要書類の準備・作成の手続きを行うのは難しいかもしれません。したがって、相続人全員が相続放棄をした場合、相続管理人を選任する申立書を作成するときに、司法書士や弁護士などの専門家に無料相談や依頼をした方がよいといえるでしょう。

参考:最高裁判所「相続財産管理人の選任

自分で相続放棄をしてもいい2つのケース

専門家に相談すると当然、費用が発生してしまいます。自分で行えば、相続放棄の手続きで発生する必要最低限の費用に抑えられるのがメリットです。自分で相続放棄を完了させてもよいと考えられる2つのケースは次の通りです。

  1. 遺産相続時の財産調査が容易に把握できる
  2. 相続人同士で揉めていない

上記のケースについて順番に解説していきます。

<1. 遺産相続時の財産調査が容易に把握できる>

死亡した人が財産目録を作成しているなど相続財産が明らかであれば、自分で相続放棄の手続きをしても問題ないといえるでしょう。遺産相続における財産調査は、綿密に行う必要があるため、取りこぼしがあると取り返しのつかないことがあります。マイナスとプラスの財産を比較、または相続したくない決定的な理由を明確にして、慎重に相続放棄の手続きの判断を行うべきだといえます。

遺産相続時に財産調査を行う際の注意点として、最近はネット銀行が普及し、相続財産がデジタル化されていること。パソコンやスマホの中身までも確認する必要があり、相続放棄の手続きを行う流れの中で、こうした大変な作業を伴うことがあると想定しておくべきでしょう。

<2. 相続人同士で揉めていない>

相続人同士の仲が良い、揉めていない場合は、相続放棄を自分で行っても問題ないといえます。遺産相続時に相続人同士の仲が良くないと、それぞれが相続財産をわざと隠していたり、借金などのマイナスの財産などについて意見が衝突したりする可能性がゼロではありません。そのため、相続人同士の間柄も、相続放棄を自分で行うかどうかの判断材料に入れておいてもよいでしょう。

相続放棄の手続きを行うときの流れ

「相続放棄」をするためには、「相続開始を知った日から3か月以内の期限(熟慮期間)」「家庭裁判所」で申述手続きを行う必要があります。期間に「初日」を算入しないため、4月1日に相続開始を知った場合、起算日は4月2日、期限となる日は7月1日となります。なお、申述先は「死亡した人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。

相続放棄を専門家に依頼した場合

司法書士や弁護士などの専門家に代理申請の依頼をする場合の、相続放棄手続きの流れを解説します。相続放棄の手続きを行うときの流れは、次のような9ステップに分けられます。

  1. 専門家にメールや電話で無料相談を行う
  2. 専門家の提案と見積を確認する
  3. 専門家に必要書類の収集・相続人調査をしてもらう
  4. 専門家が作成した「申述書」に、署名と捺印をする
  5. 専門家が家庭裁判所へ申し立てる
  6. 依頼主に家庭裁判所から「照会書」が届く
  7. 「照会書」に回答し、家庭裁判所へ返送する
  8. 依頼主に「受理通知書」が届く
  9. 「相続放棄申述受理証明書」の請求する

ステップ3の「専門家に必要書類の収集取得・相続人調査をしてもらう」では、専門家によっては、1つのサービスではなく別々のサービスとして分けていることがありますので、依頼した専門家に確認を取りましょう。

ステップ4の「相続放棄申述書の作成と家庭裁判所への申し立て」の際には、依頼主の署名捺印(しょめいなついん)をする必要があります。ステップ6の「家庭裁判所から照会書が届く」までの期間は、申し立て手続きが完了してから1~2週間程度です。

ステップ6以降は、依頼先が司法書士と弁護士で、相続放棄の手続きが異なる点について解説します。司法書士に依頼している場合、司法書士はあくまでも書類作成の代行までが担当範囲であるため、依頼主本人に家庭裁判所からの通知が直接届く流れになります。そのため、依頼主が直接家庭裁判所とやりとりをする必要があります。

一方で、弁護士の方が本人に代わりに対応できる業務範囲(代理権)は司法書士よりも広いため、裁判所からのやりとりまでも代行してもらえることがあります。したがって、弁護士に依頼すると、家庭裁判所からの通知は依頼主ではなく、弁護士に届きます。さらに債権者への対応も可能であり、相続放棄が認められなかったときは弁護士にその通知が届き、期限内に不服申立(即時抗告)手続きも可能です。

司法書士と弁護士で、代行できる業務範囲をまとめると以下の通りです。

ケースについて司法書士弁護士
相続放棄の相談
必要書類の収集
相続放棄申述書や上申書など
必要書類の作成

(本人の署名捺印が必要)
作成した必要書類の提出×
家庭裁判所からの届く
照会書への回答作成と返送

(助言は可能。本人の署名捺印が必要)
家庭裁判所からの受領通知や連絡×
債権者への相続放棄の報告
訴訟への対応
(相続放棄が認められない
ときの不服申立)

(※1)

(※1:認定司法書士であれば、簡易裁判所が管轄する民事訴訟で、負債額が140万円以下であれば相談・交渉が対応可能)

ステップ9の「相続放棄申述受理証明書の請求」は、債権者への通知を行うときなど必要に応じて行うため必須ではありません。

前述した相続放棄の手続きを行うときの流れは、弁護士か司法書士かで担当できる範囲の違いがあるため、若干変わる可能性があることが注意点として挙げられます。余計な費用が発生しないように、自分のケースを解決してくそうな専門家を選び、無料相談や代行依頼することが大切です。

相続放棄を自分で行う場合

司法書士や弁護士などの専門家の力を頼らずに自分で相続放棄する際の、基本的な相続放棄の手続きを行うときの流れは、次のような7ステップに分けられます。

  1. 相続放棄に必要な費用・書類を準備する
  2. 申述先の家庭裁判所を調べる
  3. 「申述書」を作成する
  4. 家庭裁判所に申し立てる
  5. 家庭裁判所から「照会書」が届く
  6. 「照会書」に回答し、返送する
  7. 相続放棄申述受理通知書が届く

相続人は、ステップ1からステップ3までの流れを、熟慮期間内に完了させる必要があります。ステップ3の「相続放棄の申述先」は、死亡した人が最後に住んでいた区域を管轄する家庭裁判所です。市区町村役場や、国税庁ではありませんので注意しましょう。ステップ4で、家庭裁判所からの照会書の内容を忘れずに確認しましょう。

相続放棄の手続きを自分で行う際の一番のデメリットは、ステップ1の「戸籍謄本などの必要書類の収集」でしょう。財産調査に加えて、すべての必要書類を期限までに自分で用意する必要があるため、大変で面倒だと感じるかもしれません。死亡した人と相続人との関係によって、必要書類が戸籍謄本の関連では3~6種類に及ぶ場合があります。

ステップ6「照会書への回答」についても、専門家の助言や意見なしに自分たちだけで、正確に回答しなければならないのもデメリットといえるでしょう。

司法書士や弁護士に依頼すれば、こうした面倒な必要書類の取り寄せも代行してもらえるメリットがあります。まずは、問題を解決してくれそうな司法書士や弁護士に無料相談して、相続放棄の手続きを自分で行うか判断しましょう。

参考:最高裁判所「相続の放棄の申述

相続放棄の手続きにおける必要書類

相続放棄の手続きで必要となる書類を解説します。司法書士や弁護士などの専門家に依頼するときと、自分で相続放棄の手続きを行うときで、準備する書類がどのように違うのかを解説していきます。

相続放棄を専門家に依頼するケース

司法書士や弁護士などの専門家に代理申請の依頼をする際の、主な必要書類は次の通りです。

  • 委任状
  • 本人確認書類

最低限必要なのは、代理人となる司法書士や弁護士などの専門家への委任状です。本人確認書類を提出することもあります。依頼した専門家のサービス内容にもよりますが、相続放棄の手続きを代行してもらう場合、各種戸籍謄本を自分で取得せずに済むことが多いようです。後述の「自分で相続放棄の手続きを行う」場合と比較して、準備する必要書類がかなり削減できるのがメリットだといえます。

相続放棄を自分で行うケース

司法書士や弁護士などの専門家に依頼せずに、自分で相続放棄の手続きをするケースについて考えます。書類には2種類あり、すべての相続人が共通して必要となる書類。もう一つが死亡した人と相続人の関係によって必要となる書類です。

まず、すべての相続人に共通して必要な書類は次の2種類です。

  1. 死亡した人の住民票除票、または戸籍附票
  2. 相続放棄する人(申述人)の戸籍謄本

次に、上記の2種類の書類に加えて、死亡した人と相続人の関係ごとに必要となる書類は以下の通りです。

死亡した人と
相続人(申述者)の関係
必要となる書類
配偶者・死亡した人の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
<第1順位相続人>
子ども、
またはその代襲者(孫・ひ孫など)
(直系卑属)
・死亡した人の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

※【申述人が代襲相続人(孫・ひ孫など)の場合】
被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

<第2順位相続人>
父母・祖父母など
(直系尊属)
・死亡した人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

※【死亡した人の子ども(およびその代襲者)で死亡した人がいる場合】
その子ども(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

※【死亡した人の直系尊属に死亡した人がいる場合(相続人より下の代の直系尊属のみが対象)】
その直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

<第3順位相続人>
死亡した人の兄弟姉妹および、
その代襲者(おいめい)
・死亡した人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

・死亡した人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

※【死亡した人の子ども(およびその代襲者)で死亡した人がいる場合】
その子ども(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

※【申述人が、代襲相続人(おいめい)の場合】
被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

相続人が配偶者であれば、基本的に3つの書類だけで済むと考えられます。一方で、第1順位相続人から第3順位相続人までにおいては、ケースに応じて必要書類が追加になることがあります。

たとえば、相続人(申述人)が代襲相続人だった場合、本来相続人になるはずだった人(被代襲者)の死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本をそろえる必要があります。順位が下がるにつれて、「その上の相続順位の人がいない」ということを証明するための戸籍謄本が必要となるため、1つずつ必要書類が増えていくイメージです。

司法書士や弁護士などの専門家に依頼しない場合は、大変な作業が待ち構えています。戸籍謄本がある市町村役場のある現地まで行って必要書類を取得、または郵送などの手配を、期限までに自分たちで行わなければなりません。相続放棄の手続きを自分で行うときのメリットとデメリットを比較・判断し、問題を解決してくそうな司法書士や弁護士に無料相談を考えるのもよいでしょう。

参考:最高裁判所「相続の放棄の申述

相続放棄に必要な費用はどのくらい?

遺産相続が発生したときに「相続放棄の手続き」にかかる費用は、司法書士や弁護士などの専門家と、自分で行った場合とではどのくらい差が生じるのでしょうか? それぞれの費用について比較できるように、わかりやすく解説します。

相続放棄を専門家に依頼するケース(5~10万円)

司法書士や弁護士といった専門家に依頼する場合、次のような費用が発生します。

  • 収入印紙代:800円
  • 郵便切手代:400円程度(※2)
  • 相続放棄する人の戸籍謄本:1通450円
  • 死亡した人の除籍謄本一式:1通750円
  • 死亡した人の住民票除票または戸籍附票:1通300円
  • 相談料:0円~5000円(60分あたり)
  • 相続放棄申述書作成費用:3000円~5000円
  • 代行手数料:2万円~3万円

相続放棄の代行手続きに掛かる費用は、依頼する専門家が司法書士か弁護士なのか、さらに依頼する事務所によっても変動します。相続放棄の代行手続きに掛かる費用相場は、司法書士だと5万円程度弁護士だと10万円程度ですが、依頼する事務所や訴訟問題に発展する場合などがあれば費用は変動します。また、相続放棄の期限である3か月を超えて依頼した場合は、上記に1万円〜2万円ほど追加されるのが一般的です。

(※2)管轄の家庭裁判所・市区町村役場の所在地による。
上記の費用は最低限かかる費用です。事情によっては資料の追加提出が必要となります。

相続放棄を自分で行うケース(5000円程度)

相続放棄を自分で手続きするのであれば、もっとも費用を掛けずに手続きできます。自分で手続きする場合に発生する主な費用は、次の通りです。

  • 収入印紙代:800円
  • 郵便切手代:400円程度(※3)
  • 相続放棄する人の戸籍謄本:1通450円
  • 死亡した人の除籍謄本一式:1通750円
  • 死亡した人の住民票除票または戸籍附票:1通300円

(※3)管轄の家庭裁判所・市区町村役場の所在地による。
上記の費用は最低限かかる費用です。事情によっては資料の追加提出が必要となります。

相続人(申述人)だけで相続放棄の手続きを行う場合、当然代行手数料は発生しません。相続放棄の手続きの準備費用は、相続人(申述人)1人につき、おおむね3000円〜5000円程度掛かるのが一般的です。相続放棄を同時に複数で行う場合などは、人数の書類発行費用などが追加されます。

ただし、相続人と死亡した人の間柄によっても必要となる書類が異なります。自治体によっても取得費用が異なります。相続放棄の手続きを自分で行う場合、財産調査にくわえて、こうした各種書類についても事前確認が必要となるデメリットがあることを認識しておきましょう。

相続放棄の手続きは専門家への代行も検討して判断

相続財産は必ずしもプラスになるわけではなく、明らかに借金などマイナスが多い場合は相続放棄という方法が効果的です。遺産相続における「相続放棄の手続き」を行う流れを見ると、3か月以内という期限があり、必要書類の準備、裁判所への申し立てなどで手間と時間がかかってしまうのが注意点であるといえるでしょう。

相続放棄の手続きは自分で手続きすることもできます。しかし、手間を掛けたくない人、遺産相続トラブルに巻き込まれそうな人は、司法書士や弁護士などの専門家へ無料相談・依頼してみましょう。相続放棄の手続きを自分で行うべきか、専門家に依頼すべきか、それぞれのメリットとデメリットを判断材料に検討することをオススメします。

記事の著者紹介

相続プラス編集部

【プロフィール】

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年2月7日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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