相続税対策としてなにができる?生前贈与・不動産・保険を用いた対策と相続税の7つの控除

更新日:2023年1月4日|公開日:2022年6月30日

相続税対策

自分がなくなった後、財産を相続した家族に重くのしかかるのが「相続税」です。相続する財産によっては高額な相続税が課せられるため、残された家族の大きな負担となることがあります。相続税の負担を減らすためには、生前中から相続税対策をしておくことが重要です。この記事では、相続税の基本と代表的な相続税対策について分かりやすく解説していきます。

相続税とは

相続税を申告

相続税とは、被相続人(亡くなった人)の財産を取得した人に課せられる税金です。課税対象の相続財産のうち、基礎控除を超えた部分に相続税が課せられます。

相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算できます。仮に、法定相続人が配偶者と子供2人の場合、3000万円+600万円×3人=4800万円が基礎控除となり、4800万円を超えた部分に相続税が課せられるのです。

また、相続税の課税対象となる相続財産には、次のようなものが該当します。

  • 預貯金や貴金属・有価証券・不動産のような「本来の財産」
  • 生命保険や死亡退職金といった「みなし相続財産」
  • 亡くなるまでの3年以内に行った「贈与財産」

これらの「プラスの財産」から借金や未払い金と言った「マイナスの財産」を差し引いた額のうち基礎控除を超えた部分が相続税の対象となるのです。

相続開始後10ヵ月以内に納付

相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、亡くなった人の最後の住所地の管轄の税務署で確定申告して納税します。基本的には、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内となるでしょう。

納税方法は原則として現金一括です。現金一括での納税が難しい場合、延納や現物納付という方法もありますが、適用できる基準が厳しく手続きも煩雑になるのでおすすめできません。また、納税期限を超えてしまうと延滞税などのペナルティが課せられるので注意しましょう。

相続税は関係ないと思っていても、預金や土地などで相続財産が思っていた以上にあり相続税が課せられてしまうケースも珍しくありません。相続財産が高額になればなるだけ、相続人の相続税の負担も大きくなるものです。
しかし、相続税は生前に対策することで抑えられます。相続税についての知識をしっかりと身に付け適切に対策することで、残された家族の負担を削減できるでしょう。

以下では、相続税対策として代表的な方法を紹介していくので参考にしてみてください。

生前贈与を用いた代表的な相続税対策

生前贈与とは、生きているうちに個人の資産を別の個人に無償で渡すことを言います。贈与する側が「あげた」贈与される側が「もらった」と、意志表示することで生前贈与は成立します。生前贈与は、いつでも・だれでも・いくらでも財産を譲れるものです。亡くなる前に生前贈与を活用して、財産を減らしておくことで相続時に課税される財産が減少し相続税を抑えられます。

ただし、生前贈与の場合、贈与された側は贈与税が課税される点には注意が必要です。良かれと思って贈与しても、受け取った側が高額な贈与税に苦しむケースもあります。また、死亡前3年以内の贈与の場合は、贈与額が相続財産に含まれてしまう点にも注意が必要です。生前贈与する場合は、贈与税などを計算したうえで適切に贈与するようにしましょう。

生前贈与を活用した相続税対策としては、以下のような方法があります。

  • 暦年贈与
  • 相続時精算課税
  • 贈与税の非課税制度の利用

暦年贈与

暦年(1月1日〜12月31日)での贈与合計額に対して贈与税を支払う方法のことを暦年贈与と言います。暦年贈与での贈与税は、以下のように算出します。

暦年贈与の贈与税=(年間贈与額合計-基礎控除(110万円))×贈与税の税率

暦年贈与では、年間110万円の基礎控除を適用でき、控除額を超えた部分に贈与税が課せられます。そのため、年間の贈与額を控除範囲内で抑えることで、贈与税を課せられることなく相続財産を減少させられるのです。

仮に、孫5人にそれぞれ年間100万円を贈与すれば、贈与税を掛けることなく年間500万円財産を減らせられます。これを10年間続けていくことで合計5000万円の財産を、税金を掛けずに移せるのです。

ただし、暦年贈与は毎年同じ額を贈与し続けることで「定期贈与」と見なされ、贈与税が課せられてしまう可能性があるので注意しなければなりません。定期贈与とは、一定期間に渡って毎年一定の金額を贈与することです。100万円を10年に渡って贈与した場合、定期贈与と見なされることで「1000万円を受け取る権利の贈与」となり、贈与契約した最初の年に1000万円に対して贈与税が課せられます。

定期贈与と見なされないために、贈与する際は次のように点に気を付けるとよいでしょう。

  • 贈与する時期や金額を毎年変更する
  • 毎年贈与契約書を作成する

相続時精算課税

生前贈与の方法としては、「相続時精算課税」という方法も選択できます。相続時精算課税では、贈与額合計から2500万円を控除できるので、まとまった額を贈与する場合に適しています。

相続時精算課税の贈与税=(贈与合計額-2500万円)×税率(20%)

相続時精算課税では、贈与額が2500万円を超えた部分に一律で20%税率で贈与税が課せられます。仮に7500万円を贈与した場合、5000万円×20%=1000万円の贈与税が課せられるのです。相続時精算課税制度では、贈与財産は相続時に相続財産として加算される点には注意が必要です。

例えば、先述の例の場合、相続時に7500万円を相続財産として加算して相続税を算出します。算出した相続税から、すでに納めた1000万円の贈与税分を差し引いた額を相続税として納めるのです。

ただし、相続時精算課税は暦年課税との併用ができず、一度選択すると暦年課税に戻すこともできません。しかし、父親からは暦年課税、母親からは相続時精算課税と贈与者ごとに選択することも可能です。

贈与税の非課税制度の利用

生前贈与の場合、さまざまな非課税枠や特例が設けられているので、活用することで贈与税を抑えて財産を減らすことが可能です。生前贈与で利用できる非課税枠や特例には、次のようなものがあります。

  • 教育資金贈与で1500万円を非課税
  • 配偶者への居住用不動産または不動産取得資金の贈与の特例(おしどり贈与)で2000万円が非課税
  • 結婚、子育て資金贈与で1500万円を非課税

それぞれ適用できる条件が異なっているので、事前に適用条件を調べたうえで上手に活用するとよいでしょう。

不動産・住居にまつわる代表的な相続税対策

不動産や居住用住宅も相続財産として相続税が課せられます。しかし、不動産を活用することで相続税を抑えることも可能です。不動産を活用した代表的な相続税対策としては、次のようなことが挙げられます。

  • 現金の不動産転化
  • 小規模宅地等の特例
  • 土地活用で節税
  • 地積規模の大きな宅地評価

現金の不動産転化

現金のまま所有するのではなく、現金で不動産を購入することで相続税対策する方法は代表的な方法と言えます。
動産投資する人の相続税対策としてもよく用いられている方法です。

相続税は、相続財産の評価額に対して課税されます。現金の場合評価額が金額そのままであるのに対し、不動産の評価額は時価の80%程と言う特徴があるのです。例えば、1億円の財産の場合、現金であれば1億円に対して課税されます。

一方、不動産は評価額である8000万円程に対しての課税となるため、差額分相続税を抑えることになるのです。このように、現金で財産を所有するのではなく、不動産として所有することで相続財産を抑えられるでしょう。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たすことで相続時に土地の評価額を大きく減額できる特例です。土地を相続した場合、高額な相続税が課せられてしまうとそこに住み続けることや事業を続けることが難しくなる可能性があります。そのような事態を防ぐために、条件を満たすことで最大80%評価額を下げられるのです。本来3000万円の評価額の土地であっても、最大600万円までと大きく評価額を下げられるため大きな節税効果が見込めます。

小規模宅地等の特例を使える土地の種類と減額率は以下の通りです。

土地の種類 適用面積 減額率
特定居住用宅地(住んでいたい土地) 330㎡まで 80%
特定事業用宅地(事業を行っていた土地) 400㎡まで 80%
貸付事業用宅地等(賃貸していた土地) 200㎡まで 50%

適用条件は土地の種類や利用状況・相続人によって異なるので、事前に確認することが大切です。

土地活用で節税

更地を所有して言う場合、アパートやマンションといった賃貸住宅を建設することで土地の相続税評価額を下げることが可能です。土地の評価額は更地で所有するよりも、建物を建てることで評価額を下げられるという特徴があります。また、第三者に貸し出すことで評価額をさらに下げられるのです。

貸家が建っている土地の場合、相続税評価額は以下の計算で求められます。

評価額=自用地の価額-(自用地の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借地権割合は地域によって異なります。借家権割合は全国一律30%で、賃貸割合は稼働率のことを指します。仮に、自用地の評価額が1億円、借地権割合60%、賃貸割合80%の場合で計算しています。

評価額=1億円-(1憶円×60%×30%×80%)=8560万円

このように賃貸物件を建設することで評価額を下げ、相続税を抑えられるのです。また、賃貸物件を運営すれば家賃収入を得られるため、残された家族の収入源にもできます。ただし、賃貸経営は空室リスクなどもあるため収支計画やリスク対策をしっかりと立てたうえで検討する必要があります。

地積規模の大きな宅地評価

広い土地は利用方法が限られてくるため広大な土地は相続税評価額を下げられるのです。この規定を「地積規模の大きな宅地の評価」といい、三大都市圏では500㎡以上それ以外の地域では1,000㎡以上の土地を有している場合で適用できる可能性があります。この特例を適用することで、相続税評価額が20%程減額されるのです。

地積規模のおおきな宅地評価を適用するには、市街化調整区域内の土地でないことなど条件が決められているので、事前に確認するようにしましょう。

保険を用いた代表的な相続税対策

生命保険を利用して相続税対策する方法もあります。近年は相続税対策として、高齢でも加入できる生命保険も増えているので検討してみるとよいでしょう。生命保険を用いた相続税対策としては、次のような方法があります。

  • 生命保険の非課税枠
  • 生前贈与と生命保険の組み合わせ

生命保険の非課税枠

相続発生後に支払われる生命保険には、相続税の非課税枠があります。

生命保険の非課税枠=500万円×法定相続人の人数

例えば、法定相続人が配偶者と子供3人の場合、非課税枠は500万円×4人=2000万円となるのです。この非課税枠でおさまる範囲内の保険に加入することも相続税対策として有効と言えるでしょう。

ただし、生命保険は、契約者や受取人などの設定によって課せられる税金が異なります。仮に、父親が死亡した場合での生命保険に課せられる税金を確認してみましょう。

契約者
(お金を払う人)
被保険者
(保険の対象者)
受取人
(保険金を受け取る人)
相続内容 税金の種類
父親 父親 母親 死亡保険金 相続税
父親 母親 父親 保険の権利 相続税
母親 父親 母親 死亡保険金 所得税
母親 父親 子供 死亡保険金 贈与税

父親が契約者の場合、父親が死亡したことで母親が受け取る保険金は相続税の対象です。また、父親が契約者で非保険人が母親の場合、父親の死亡によって母親は保険の権利を相続したとみなされます。一方、父親が保険の対象であっても、契約者が父親ではない場合は受取人=契約者の場合は所得税、受取人と契約者が異なる場合は、贈与税が課せられるのです。

発生する税金が所得税や贈与税の場合、生命保険の非課税枠が適用できません。

生命保険は、保険金を受け取ることで相続税納税資金や遺族の生活費用を確保できるというメリットもあるものです。受け取った場合に、誰にどのような税金が課せられるのかまで考えて、保険の加入を検討するとよいでしょう。

生前贈与と生命保険の組み合わせ

生前贈与の場合、贈与後は贈与財産を受け取った側が自由に利用できるようにする必要があります。口座に毎年贈与したとしても、その口座の通帳やキャッシュカードを受け取った側に渡さない場合は名義預金と見なされ、相続財産の対象となってしまうのです。贈与する子や孫が未成年の場合や、預金のあることを知らせずに自立してほしい場合などで、子や孫に知らせずに生前贈与しているようなケースは、名義預金に該当するので注意しましょう。

とはいえ、口座に振り込むと相手が無駄遣いしてしまわないか心配と言う方もいるでしょう。そのような場合には、生前贈与したお金で生命保険に加入してもらうという方法も選択できます。

例えば、父親が子に年間100万円を生前贈与した場合、その100万円で「契約者が子・被保険者が父・受取人が子」と言う契約で生命保険に加入するのです。生命保険に加入させることで、贈与したお金の無駄遣いを防げるでしょう。また、万が一の場合には、保険料が子供に支払われるというメリットもあるのです。

ちなみにこの場合、生命保険料が子に支払われると、子の一時所得として所得税が課せられます。

相続税が控除される7つの制度も

相続税には、さまざまな控除があります。控除を活用することで、相続税から一定額を差し引けるため、相続税額を抑えることにつながります。

相続税控除としては、次の7つがあります。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 贈与税額控除
  • 未成年控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税控除

基礎控除

基礎控除は、相続財産から必ず差し引ける金額です。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の人数)

基礎控除の額は、法定相続人の人数によって変わってきます。また、法定相続人が相続放棄した場合でも、放棄がなかったものとして人数に含まれます。例えば、相続人が配偶者と子供3人で、子供のうち1人が相続放棄した場合であっても、法定相続人は4人として基礎控除額を算出するのです。

配偶者控除

配偶者が法定相続人となる場合、配偶者控除を利用できます。配偶者控除を適用することで、1億6000万円または法定相続分相当が非課税となるのです。配偶者控除を適用できる条件には以下のようなことがあります。

  • 戸籍上の配偶者であること
  • 相続税の確定申告をすること
  • 相続税申告期限内に遺産分割が完了している
  • 相続税申告から3年以内

配偶者控除を利用する場合、相続税は発生しませんが確定申告が必要です。

ただし、配偶者控除を利用すると二次相続時に子どもの相続税が高額になる可能性があるので注意しなければなりません。配偶者控除を利用することで、配偶者の相続税額を抑えられますが、その分配偶者の死後に配偶者の財産が加算され高額な相続財産になる場合があります。また、二次相続では配偶者控除を適用できず、基礎控除も法定相続人が1名減っているため控除額も少なくなる可能性があるのです。

このようなことから、二次相続時に子どもの負担が大きくなる可能性があるため、配偶者控除は慎重に検討する必要があります。

贈与税額控除

被相続人が死亡するまでの3年以内に贈与した財産は、相続税の対象となります。しかし、この時すでに納めた贈与税を相続税から控除できるのです。

未成年控除

法定相続人が未成年の場合、年齢に応じた額を控除できます。

未成年控除額=10万円×(成人年齢-相続開始時の年齢)

なお、2022年4月の民法改正によって成人年齢が18歳に引き下げられたため、2022年4月1日以後の相続では、成人年齢を18歳として算出します。

障害者控除

法定相続人に一定の障害がある場合、障害の程度に応じて控除を適用できます。

  • 一般障害:控除額10万円
  • 特別障害:控除額20万円

上記の金額を、85歳に達するまでの年数で乗じた額が控除可能です。

相次相続控除

相次相続とは、短い期間で相次いで相続が発生することを言います。相次相続控除では、相続開始後10年以内に相次相続が発生した場合、2回目以降の相続税額から一定額を控除できる制度です。仮に、父親の死亡により相続税を納め(一次相続)10年以内に母親も死亡し相続が発生した場合(二次相続)二次相続時の相続税は一次相続時の相続税額の一定額を控除できます。

外国税控除

相続で海外の資産を相続した場合、その財産に対して所在国で相続税に相当する税金を課せられている場合に、二重課税を緩和するため課せられた税額分を控除できます。

相続控除以外で活用できる相続税対策

相続控除以外で活用できる相続税対策として、相続税の非課税財産の購入が挙げられます。基本的に被相続人の財産は、すべて相続税の対象です。しかし、例外的に課税対象とならない財産もあり「非課税財産」と呼びます。

非課税財産は、具体的に以下のようなものがあります。

墓地や墓石・霊廟・仏壇・位牌などの祭祀財産

墓地などを一式購入すると、地域によっても異なりますが数百万程掛かることもあります。生前にこれらの非課税財産を購入することで、相続時の財産の減少ができ、相続税対策となるのです。

ただし、次の点には注意が必要です。

  • 相続開始後の購入は対象とならない
  • 代金が未払いの場合は債務控除に含まれない
  • 骨董として価値のある物は非課税財産として認められない

相続開始後の購入は対象とならない

生前にお墓を購入した場合、非課税財産となり購入額分資産を減少できます。しかし、相続開始後に相続人がお墓を購入した場合は、その費用を相続財産から控除できないのです。相続税対策としてお墓を購入するなら、生前のうちに購入しておくようにしましょう。

代金が未払いの場合は債務控除に含まれない

債務控除とは、相続財産を計算する際に借金などの債務を差し引くことをいいます。税金の未払いなどがある場合は債務控除として財産から差し引けますが、お墓の購入の未払いについては債務控除に含まれないので注意が必要です。

お墓は高額になるためローンを組んで購入する方も多いでしょう。そのローンが未払いの場合、債務控除が適用できないので、購入するのであれば現金一括か早めにローンを完済できるようにしておく必要があります。

骨董として価値のある物は非課税財産として認められない

非課税となる祭祀財産は金額に上限はありません。
しかし、社会通念上著しく高額な祭祀財産は、非課税財産と見なされない可能性があるので注意しましょう。純金製や骨董的な価値のある墓石などは、非課税非ならない可能性が高くなります。また、投資目的として所有している場合も非課税とはならないので注意しましょう。

墓地用地を利用せずに空き地のままである場合や、檀家・お寺に貸している場合も非課税財産と見なされない場合があります。祭祀財産であればすべて非課税と言うわけではない点に注意が必要です。

基礎控除を増やす

相続税を計算するうえで必ず差し引ける基礎控除は、法定相続人の人数によって変わってきます。法定相続人が多ければ、その分控除額も大きくなるため、法定相続人を増やすという方法も検討できるでしょう。

法定相続人は誰でもなれるわけではなく、相続人になれる人の範囲は以下のように決められています。

  • 常に相続人:配偶者
  • 第1順位:子どもと子供の代襲相続人
  • 第2順位:親・祖父母
  • 第3順位:兄弟姉妹とその代襲相続人

被相続人の配偶者は常に法定相続人となります。

基本的なイメージは、「配偶者+相続順位の最も高い人」が法定相続人となります。相続順位は上記のように定められており、上位の人がいる場合は下位の人は法定相続人になれません。例えば、配偶者と子供・親がいる場合、法定相続人は配偶者と子供となり、親は相続人になれないのです。この場合、子供が1人と4人では基礎控除の額も大きく変わってきます。

  • 法定相続人(配偶者+子供1人)=3000万円+600万円×2人=4200万円
  • 法定相続人(配偶者+子供4人)=3000万円+600万円×5人=6000万円

このように、法定相続人が多ければその分控除額を増やせるのです。法定相続人を増やす方法として「養子縁組」があります。仮に孫と養子縁組すれば、その孫は「子」と見なされるため、本来相続人ではない孫であっても法定相続人になれるのです。

養子縁組によって法定相続人を増やすことで、基礎控除額を増やせるだけでなく相続人に課せられる相続税の税率を下げられる可能性もあるでしょう。生命保険の非課税枠も法定相続人が増える頃で広がるため、より節税効果も見込めます。孫と養子縁組した場合であれば、本来直接相続できない孫に財産を相続させることも可能です。ただし、基礎控除枠を増やすためといってたくさん養子縁組しても意味はないので、注意しましょう。

法定相続人に含められる養子の人数には以下のような制限があります。

  • 実子がいる場合は1人まで
  • 実子がいない場合は2人まで

制税対策のみを目的とした養子縁組の場合、税務署に否認される可能性もあるでしょう。また、本来相続人ではない人が養子縁組で相続することで、親族間で相続トラブルに発展するケースも珍しくありません。養子縁組する場合は、他の相続人に了承を得るなど対策したうえで検討するようにしましょう。

財産の寄付

財産を特定の団体に寄付することで、寄付した金額に対して相続税が非課税になります。寄付金控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 相続税の申告期限までに手続きを完了する
  • 相続財産をそのままの形で寄付する
  • 寄付先として認めらえている団体や組織であること

相続財産を寄付することで、条件を満たせば所得税・住民税の減額の期待できるでしょう。ただし、寄付すれば当たり前ですがその分相続財産が減少します。寄付金控除で減税するよりも、そのまま相続して相続税を支払ったほうが手元に残るお金が多い場合もあるので注意が必要です。

また、寄付金控除は寄付先や期限が決められており、寄付の手続きや相続税の確定申告も必要になるため、手続きが煩雑になります。寄付先の選定や手続きなどは一度税理士など専門家に相談して進めることをおすすめします。

まとめ

相続税対策の代表的な方法を紹介しました。相続税が課せられると残された家族に大きな負担となる可能性があるので、生前のうちに相続税対策を進めておくことが重要です。しかし、相続税対策にもさまざまな方法があり、個人の事情や残したい額などによって選ぶべき方法は異なります。

また、相続税対策では相続税をトータルで考えるだけでなく親族トラブル対策や法的な手続きなど、やるべきことが多岐に渡ります。間違った相続税対策をしてしまうと、税金の負担が増えることや相続財産が必要以上に減少してしまう可能性もあるものです。

相続税対策を検討しているなら、一度専門家に相談したうえで最適な方法で進めていくことをおすすめします。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報をわかりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月30日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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