土地・家など不動産の名義変更は法務局へ!法務局でできる相続関連まとめ

公開日:2023年12月14日

専門家
監修
片野坂弘平(司法書士)

片野坂弘平(司法書士)

法務テーラー司法書士事務所

土地・家など不動産の名義変更は法務局へ!法務局でできる相続関連まとめ_サムネイル

不動産の名義変更(相続登記)をする際、法務局で手続きが完了します。しかし、法務局に行っても取得できない必要書類もあるため、注意が必要です。本記事では、不動産の名義変更において法務局でできることや、必要書類の収集場所について解説します。名義変更をしないリスクや、手続きの際の注意点も紹介しているため、参考にしてください。

不動産の名義変更(相続登記)は法務局でできる?

土地・一軒家・マンションなどの不動産の名義変更は、法務局で手続きできます。

不動産の所有者情報は法務局で管理されている登記簿に記載されており、誰でも閲覧できます。もちろん、相続や贈与、売買などで不動産の名義が変わった場合、勝手にデータベースへ情報が反映されることはありません。

そこで、名義変更の手続きを法務局で行います。不動産の名義変更の正式な手続き名は、「所有権移転登記」です。相続によって不動産の所有者が変わったときには、相続登記と呼ばれる手続きをします。

ほかにも、以下のようなケースに当てはまるのであれば、不動産の名義変更が必要です。

  • 売買
  • 贈与
  • 離婚による財産分与

手続きをするためには、事前に申請書を作成し、必要書類を収集しなければなりません。専門家に依頼することも可能ですが、自分で手続きすることもできます。これを本人申請と呼びます。

自分で登記する場合、法務局のサポートを受けることも可能です。ただし、書類収集や申請書の作成は自分で行わなければなりません。

「相続登記の手続き方法」「相続登記の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

不動産の名義変更に関して法務局でできること

不動産の名義変更に関して、ほかにも法務局でできることがあります。

法務局への無料相談登記に関する無料相談全般。
ただし、管轄内の不動産の相談しか受け付けてもらえない場合がある。
専門家への無料相談登記申請書の作成や必要書類の確認、登録免許税の計算など、具体的なサポートに関する専門家への無料相談。
相続人申告登記の申請令和6年4月1日からスタートする、不動産の相続人が自分であることを申し出るための手続き。
土地国庫帰属制度の申請相続した土地の所有権を国に戻すための手続き。

自分で名義変更をしようか考えている方は、積極的に無料相談を活用しましょう。

相続人申告登記」や「土地国庫帰属制度」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

不動産の名義変更(相続登記)の必要書類は法務局で全て収集可能?

不動産の名義変更に必要な書類は、法務局ですべて収集できません。法務局で手に入るものと、それ以外の場所で手に入れるものに分けて解説します。

法務局で集める

法務局で集められる書類は、以下の通りです。

書類名申請できる法務局
登記簿謄本すべての法務局
公式サイトからオンライン申請も可)
登記申請書すべての法務局
公式サイトから該当する様式のダウンロードも可)
相続関係説明図(法定相続情報一覧図)以下のいずれかを管轄する法務局で可能
・被相続人の死亡時の本籍地
・被相続人の最後の住所地
・申出人の住所地
・被相続人名義の不動産の所在地

登記簿謄本や法定相続情報一覧図は、郵送による交付にも対応しています。

参照:法定相続情報証明制度の具体的な手続について|法務局主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例|法務局

法務局以外で集める

上記以外の書類は、以下の場所で収集しましょう。

書類名取得方法
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式被相続人の本籍地の市区町村役場(死亡時)
被相続人の住民票の除票または戸籍の(除)附票被相続人が最後に住んでいた住所地の市区町村役場
相続人の戸籍謄本住所地の市区町村役場※コンビニ交付対応
相続人の住民票または戸籍の附票本籍地の市区町村役場※コンビニ交付対応
相続人の印鑑証明書住所地の市区町村役場※コンビニ交付対応
固定資産評価証明書または名寄帳市区町村役場や市税事務所(都税事務所)

いずれの書類も、直接窓口で請求する方法と郵送請求する方法があります。あなたにとって最適な方法で請求しましょう。

また、マイナンバーカードを使って全国のコンビニエンスストアで発行できる書類もあります。ただし、対応しているかどうかは市区町村によって異なるため、注意しましょう。

参照:コンビニ交付|総務省本籍地の戸籍証明書取得方法|コンビニ交付

どこの法務局で手続きできる?

名義変更したい不動産の所在地を管轄する法務局でのみ申請が可能です。法務局は全国にありますが、管轄外の法務局に申請しても受け付けてもらえないため注意しましょう。

管轄の法務局は、法務局のホームページから検索できます。

また、手続きは窓口以外でも受付可能です。申請書や必要書類を収集し、郵送やオンラインでも受け付けてもらえます。自宅から遠方の不動産について手続きしたい方や、窓口の開いている平日の昼間に時間が取れない方は、郵送やオンラインでの申請を活用しましょう。

相続登記(不動産の名義変更)をしないとどうなる?

相続した不動産の名義を被相続人のままにしておくと、さまざまなリスクを引き起こす原因になりかねません。

具体的には、以下のような事態を引き起こすでしょう。

  • 自分の不動産の権利を対外的に主張できない
  • 不動産を担保に銀行融資が受けられない
  • 他の相続人が法定相続通りの持分で名義変更してしまう
  • 第三者に乗っ取られるリスクがある

このように、公的に不動産の所有権を主張できないため、トラブルに巻き込まれやすくなります。相続することが決まったら、早めに手続きを済ませましょう。

相続登記の義務化がスタート

令和6年4月1日より、相続によって取得した不動産の相続登記が義務化がされました。

相続登記の期限は、相続によって不動産の所有権を取得したと知ってから3年以内です。遺産分割協議によって不動産を取得した場合には、遺産分割協議成立から3年以内です。

もし、正当な理由なしに期限内に不動産の名義変更を行わなかった場合、10万円以下の過料が科せられます。

もちろん、不動産の相続登記の義務化は、令和6年4月1日以前の相続で取得した不動産も対象です。今まで名義変更せずに放置していた不動産についても過料の対象となるため、早めに名義変更の手続きを済ませましょう。

「相続登記」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

参照:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~|法務省

不動産の名義変更をするうえでの注意点は?

不動産名義変更での注意点は?のイメージ

不動産の名義変更における注意点は、3つあります。

  • 目的によって必要書類や申請書の種類が異なる
  • 登録免許税以外の税金が掛かる場合がある
  • 名義を誰にするかでもめる場合がある

手続きする前に確認し、あとから慌てないよう注意しましょう。

目的によって必要書類や申請書の種類が異なる

相続・贈与・売買・財産分与など、名義変更の目的によって必要書類や申請書の種類が異なる点に注意しましょう。

たとえば、相続登記であれば遺産分割協議書や遺言書、売買による名義変更なら売買契約書や代金の領収書の提出を求められる場合もあります。必要書類の中には、すぐに準備できないものもあります。

法務局へ申請する前に、どの申請書を作成すべきか、どの書類の提出が必要なのか確認しておきましょう。

登録免許税以外の税金が掛かる場合がある

不動産の名義変更の際に発生する登録免許税以外にも、不動産の名義変更によって他の税金が発生する場合があります。

名義変更によって発生する税金の種類は、以下の通りです。

発生するケース税金の種類納税義務者
相続相続税相続人
贈与贈与税、不動産取得税受贈者
売買譲渡所得税不動産の売主

さらに、新たに不動産の所有者となった人は、毎年固定資産税を支払うこととなるため、あわせて理解しておきましょう。

名義を誰にするかでもめる場合がある

相続によって被相続人から相続人へ名義変更をする際、誰の名義にするかで揉める場合があります。

相続人が複数人いる場合、1人の単独名義にすることも、2人以上の共同名義にすることも可能です。相続人全員が納得すれば、どのような持分でも名義変更できます。

しかし、できれば不動産の名義は単独名義にしておきましょう。なぜなら、権利関係がシンプルになり、利用も管理も1人の事情で判断できるからです。共同名義の不動産の処分をする場合、名義人全員の同意が必要です。そのため、売却したいと思っても、意思決定が遅れてしまいます。

トラブルを避けるためにも、相続人1人の単独名義で名義変更することをおすすめします。

不動産の名義変更のほかに法務局でできること

法務局でできることは、不動産の名義変更のほかにも複数あります。ここでは、相続に関する手続きについて、ご紹介します。

  • 自筆証書遺言書保管制度
  • 法定相続情報証明制度

それぞれ確認しましょう。

自筆証書遺言書保管制度

自筆証書遺言書保管制度とは、自分で書いた自筆証遺言書を法務局に預けて画像データ化して保存する制度です。自筆証書遺言書保管制度を活用するメリットは、以下の通りです。

  • 遺言書の形式ルールをチェックしてもらえる
  • 法務局で管理されるため紛失のリスクがない
  • 偽造・書き換えを防止できる
  • 死亡すると遺言書の存在が指定した人に知らされる
  • 相続人は検認不要で遺言書を開封できる

自筆証書遺言書には紛失や見つけてもらえないといったリスクがありますが、自筆証書遺言書保管制度を活用すればこれらのリスクをカバーできます。

参照:自筆証書遺言書保管制度について|法務局

法定相続情報証明制度

法定相続情報証明制度とは、相続人を特定できる戸籍謄本と相続関係一覧表を法務局に提出し、一覧図に登記官の認証文を付けてもらう制度です。各相続手続きにおいて法定相続情報一覧図を提出すれば、法定相続人であると証明できます。

具体的には、以下のような相続手続きにおいて活用できます。

  • 不動産の相続登記
  • 相続税の申告
  • 金融機関における口座の解約

本来であれば、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めて相続人を確定させなければなりませんでした。しかし、法定相続情報証明制度を活用すれば、1枚の一覧図の写しで代用できるため、手続きのたびに膨大な書類を提出する必要がありません。

申請後5年間は何度でも再発行できるため、あとから必要な手続きが発覚した際にも活用できます。

参照:「法定相続情報証明制度」について|法務局

不動産の名義変更は法務局か専門家に相談しよう

不動産の名義変更は法務局でできます。自分で申請書を作成し、必要書類を集めて申請することも可能です。

しかし、申請書作成や必要書類の収集には、多大な時間と労力がかかります。不動産の名義変更のプロである司法書士であれば代理申請ができるため、法務局や市区町村役場に出向くことなく、すべての作業をお任せできます。

時間に余裕のない方や、手続きに不安がある方は、司法書士に依頼しましょう。

【プロフィール】

昭和62年千葉県生まれ。法務テーラー司法書士事務所代表。司法書士事務所、司法書士法人に所属し、平成27年4月司法書士法人の役員として勤務。その後、令和5年6月に法務テーラー司法書士事務所を開業し、相続に特化した事務所として相続に関する幅広い業務に対応。特に家族信託・遺言・任意後見などの生前対策に力を入れている。

【所属】

札幌司法書士会:第966号
簡裁訴訟代理等認定番号:第1101273号
一般社団法人 家族信託普及協会

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年12月14日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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