あの大物芸能人も!?今話題の「卒婚」とは。相続への影響は?

公開日:2023年6月19日|更新日:2023年7月4日

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近年、新たな婚姻形態として話題の卒婚。夫婦間の関係性の話なので、夫婦でのみ同意が取れていれば好きにして良いでしょと考えている方も多いと思います。

しかし、配偶者が亡くなっていざ相続という時においては思わぬトラブルが発生することもあります。今回は、相続プラス編集部が卒婚の相続における影響を調査しました。

卒婚とは?

「卒婚」とは、文字通り「結婚・婚姻から卒業する」ことを指す新たな造語です。離婚とは違い法律上の婚姻関係を継続しつつ、お互いの生活に干渉しない新しい夫婦関係の形として杉山由美子さんが2004年に『卒婚のススメ』にて提唱しました。

似た言葉に「仮面夫婦」というものがありますが、仮面夫婦は愛情はもう無いけれど世間体のために婚姻関係を維持しているのに対し、卒婚はお互いを尊重しながら婚姻関係を持続している点で大きく違いがあります。

程度はそれぞれの家庭によって様々で、今まで通り同居をしつつ家事・食事はそれぞれで行うようにする夫婦もいれば、完全に別居し生活も財布も別という夫婦もいるようです。

一見すると奇抜な手法かもしれませんが、意外と多くの夫婦が卒婚を選ぶメリットを見つけ、熟年夫婦を中心に人気が高まっています。

卒婚の流れは芸能界でも

芸能界でも卒婚する夫婦は増えてきており、今後もさらに増えていくことが予想されます。実際、おしどり夫婦として有名だった加山雄三さんと妻で元女優の松本めぐみさんは2014年に卒婚を宣言しており、アメリカと日本でそれぞれ生活されていたようです。(※1)

また、宣言まではしないものの事実上の卒婚と言われている夫婦も昨今では多く報道されています。

(※1)現在、加山雄三さん松本めぐみさんは、加山さんの病気をきっかけに再び同居されているようです

卒婚した場合の相続

相続のイメージ

卒婚によって結婚生活を終えたカップルが実際に亡くなった場合、その後の相続はどうなるのでしょうか?

法律上の相続関係は卒婚しても変わらない

結論、卒婚した場合でも、法定相続関係はそのままのため、配偶者は相続人として財産を相続することができ、遺族年金も受給可能です。

もちろん通常の相続と同様、被相続人は遺言書によって遺産の渡し先を事前に指定することも可能ですし、相続人は遺産が不要であれば相続放棄することも可能です。

法定相続を行った際の配偶者の相続順位・割合はこちらで詳しく解説しています。

また、離婚を選択した場合、財産分与や年金分割請求などの様々な手続きを事前に行わなければなりませんが、卒婚はそのような必要もありません。

これらの点は「離婚」と比較すると大きなメリットであり、卒婚を選択する夫婦が増えている所以でもあるかと思います。

卒婚ならではの相続トラブルも

しかし法的には普通の結婚と変わらないとは言え、やはりまだ卒婚は一般的ではないためトラブルが発生することもあります。

長期間離れて暮らすうちに愛が冷めてしまった

卒婚では、離婚のように愛が無くなった結果ではなく、お互いを尊重しているけれどそれぞれの生活を優先した結果別居などの選択をします。

しかし、時間の経過と共にパートナーへの気持ちが冷めてしまうなんてことも起こり得ます。その場合、法的には配偶者は相続する権利はあるけれど「配偶者には相続させたくない」「相続分は最小限にしたい」など遺産の分配においてトラブルに発展することがあります。

生前同様お墓も別にしたい

死後のお墓も生前同様夫婦別にしたい、自分は配偶者とではなく親・兄弟など血のつながった家族とのお墓に入りたいと希望する方もいます。

そのことを事前に夫婦で話合った上で、お互いのお墓を既に用意している・家族の理解も得ているなど準備をしていれば問題ありませんが、配偶者の死後にそのことを初めて知った場合、残された配偶者・子ども・相手の家族などと意見が対立してしまうこともあります。

子どもとの遺産分割で揉める

夫婦同意の上順調に卒婚生活を送れたとしても、配偶者の死後に自分の子どもと相続の配分で揉めるケースもあります。

例えば、妻は生前に介護が必要で長年その子どもが面倒を見ていた場合は、子どもから見ると父親は母の面倒も見ずに自分の好きなことをしているダメな親と映る場合もあるでしょう。そのような場合、なんで母の面倒も見ない父親に遺産を相続させなければならないのかという不満が子どもから噴出しても不思議ではありません。

卒婚は相続も見据えて行う

上記のようなトラブルに見舞われないためにも、卒婚を行う際は先の事も見据えた事前準備が大事になります。

具体的には、①契約書・遺言書を作成する ➁家族(子ども・自分の親兄弟)の理解を得る の2つが重要です。

①契約書・遺言書を作成する

卒婚する際に契約書を締結する夫婦は一定数いますが、終活・相続についてまで記載しているケースは多くありません。

卒婚後の生活費をどうするか・将来の介護は誰がするか・期間など卒婚中の内容だけでなく、お墓や葬儀をどうするのか・遺産相続の割合など死後についても契約書に盛り込むことで、夫婦間で死後の内容まで同意できていたことの証明になります。さらには遺言書という形で公正証書を作成する事で、夫婦間だけでなく公的にも認められた書類になりますので、親族間のトラブル防止にも役立ちます。

遺言についてこちらで詳しく解説しています。

➁家族(子ども・自分の親兄弟)の理解を得る

夫婦間で同意できていたとしても卒婚自体はまだまだ一般的ではありませんので、先ほど挙げた例のように死後に相続割合や葬儀・お墓について親族で揉めることがあります。

契約書・遺言書などの書面を残すことで死後の手続きをその内容どおりに進められたとしても、親族の理解がない状態で進めてはその後の関係性にも影響が出てくる可能性があります。

書面の作成と合わせて関係者にも説明し理解してもらうことで、相続後の関係を良好に保つことができるでしょう。

卒婚にはまだまだ課題も多い

卒婚はまだ法的に認められている制度ではなく、一部の特定のカップルによって実践されている婚姻形態であり、明確なルールもありません。

相続においても通常の婚姻関係よりトラブルになる可能性も高いと思われますし、卒婚の当事者だけでなく親族も含めた関係者全員が納得して卒婚を認められるような制度整備が必要だと思います。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年6月19日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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