相続放棄すれば親の借金は返済しなくていい?対処方法や注意点を知っておこう

公開日:2023年11月22日

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「親が借金を残して亡くなってしまった場合、相続放棄した方がよいのだろうか」とお悩みではありませんか。亡くなった方が残した借金であっても、相続人が相続放棄すれば借金を返済する必要はありません。

しかし、いくつか注意しなければ相続人の間でトラブルに発展したり、相続放棄できなくなったりする場合があります。

本記事では、親に借金があるときの対処法や相続放棄するときの注意点について解説します。親に借金があって心配な方や、親に借金があったと発覚したばかりの方は、解決に向けてぜひ参考にしてください。

親の借金は子どもが返す義務はある?

親子関係があっても、生前であれば子どもに親の借金を支払う義務はありません。同居していたり、親に金銭的な援助をしていたりしても、返済義務はないため安心してください。

しかし、親が死亡すると子どもに借金返済の義務が発生するかもしれません。なぜなら、親が死亡して相続が発生すると、借金を含む相続財産を子どもが相続する可能性があるためです。

ただし、相続自体を拒否することも可能です。相続には、以下の3つの種類があり、相続人ごとに選択できます。

単純承認亡くなった方の相続財産を無条件ですべて相続する
相続放棄相続人としての権利を放棄し、亡くなった方の相続財産の継承をすべて拒否する
限定承認相続によって得たプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産も引き継ぐ

相続財産に多額の借金が含まれているのであれば、相続放棄をして対処するほうがよいケースもあります。

ただし、借金だけを相続放棄することはできません。なぜなら相続放棄の手続きをすると、「もともと相続人ではなかった」として扱われるからです。そのため、家や土地、預貯金などだけを相続することはできません。

一方、限定承認であればプラスの相続財産の範囲内で借金を相続できます。たとえば、1000万円のプラスの財産と1800万円のマイナスの財産(借金)があるとき、1000万円までを相続し、残りの800万円は相続しなくて済みます。債権者も、相続人に請求することはできません。

もし、プラスの財産がマイナスの財産を上回っている場合、借金をすべて引き継いで返済し、プラスの差額は財産として相続できます。

「限定承認」「相続放棄」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄した親の借金は消える?

相続放棄をしても、借金自体は消えません。1人の相続人が相続放棄をすると、他の相続人に借金が相続されます。

もし、相続人全員が相続放棄した場合、連帯保証人が支払い義務を負うこととなります。もし、借金をした人の子どもが連帯保証人になっていた場合、相続放棄によって連帯保証人の立場を放棄することはできません。

相続人全員が相続放棄をし、連帯保証人がいない場合、相続財産管理人が選出されて手続きを行ってくれます。相続財産管理人は亡くなった方の財産を調査し、家や土地を換金して債権者に配当します。

債権者への返済後も残っているプラスの財産があれば、国庫へ帰属するための手続きがなされます。

「借金の相続」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

親の借金額を確認する方法

なんとなく親が借金していることを知っていたとしても、具体的な借金額を子どもが知らされていないケースは少なくありません。親の借金額を確認する方法は、借金した先ごとに異なります。

  • 銀行からの借金
  • クレジット会社・消費者金融からの借金
  • 貸金業・保証会社などからの借金

ここでは、親が亡くなった場合に子どもが相続人として借金額を確認する方法をお伝えします。生前であれば、親自身が同様の団体に情報開示を求めることで借金額がわかります。

どこでどれほどの借金をしているかもわからない場合は、3つの方法でそれぞれ情報照会しましょう。「借金がない」とわかれば、安心できます。

それでは、3つのケースの確認方法をみていきましょう。

銀行からの借金

銀行から借金をしている場合、全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センター(KSC)で照会しましょう。以下のような金融機関が加盟しています。

  • メガバンク
  • 地方銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合
  • ネット銀行
  • 信託銀行

情報の開示は、相続人に限られます。登録情報開示申込書や相続人であることを証明する書類などを郵送し、情報照会を求めましょう。1週間から10日程度で回答が届きます。

また、開示手数料として1124〜1200円の本人開示手続き利用券を同封する必要があります。詳しい手続きの流れは、全国銀行個人信用情報センターの「郵送による開示手続」を確認しましょう。

参照:法定相続人による開示のお手続きについて|一般社団法人全国銀行協会

クレジット会社・消費者金融からの借金

クレジット会社・消費者金融から借金をしている場合、信用情報機関(CIC)で借入内容やショッピングの利用状況を照会しましょう。

情報の開示は、相続人に限られます。信用情報開示申込書や相続人であることを証明する書類などを郵送し、情報照会を求めましょう。

また、開示手数料として1650〜2255円の開示利用券を同封する必要があります。詳しい手続きの流れは、信用情報機関の「郵送で開示する」から確認しましょう。

参照:郵送による法定相続人開示(死亡開示)の申込手続きにあたって|信用情報機関

貸金業・保証会社などからの借金

貸金業・保証会社などから借金をしている場合、日本信用情報機関(JICC)で照会しましょう。

情報の開示は、二親等以内の血族や相続人に認められています。通常、郵送・窓口で受け付けていますが、2023年10月時点では窓口における開示手続きを休止中です。信用情報開示申込書や相続人であることを証明する書類を郵送しましょう。

また、開示手数料として、1000〜1600円の支払いも必要です。詳しい手続きの流れは、信用情報機関の「二親等以内の血族 法定相続人等による開示」から確認しましょう。

参照:二親等以内の血族 法定相続人等による開示|株式会社日本信用情報機構

親に借金がある場合の対処法

親に借金がある場合の対処法のイメージ

親に借金がある場合、返済義務を回避したいものです。ここでは、返済義務を負わないためにできる対処法について解説します。

しかし、親が生きているか亡くなっているかによって、対処法は異なります。それぞれの対処法を確認しましょう。

親が生前の場合

繰り返しになりますが、親が生きているのであれば、親子関係を理由に子どもが親の借金を背負う必要性は発生しません。

返済義務を回避するために、以下のポイントを押さえましょう。

  • 親の借金の保証人・連帯保証人には絶対にならない
  • 債権者からの催促を断る
  • 親に債務整理をすすめる

順番に解説します。

親の借金の保証人・連帯保証人には絶対にならない

保証人や連帯保証人になることは「自分が借金していることと同じ」と捉え、親の借金の保証人や連帯保証人には絶対にならないようにしましょう。

親が返済期日に間に合わなかったり、巨額の借金を抱えたりすると、「期日を伸ばすから子どもを保証人にしてほしい」と債権者から言われる場合があります。この時点で、債権者は「親からの回収は難しいから子どもに返済させよう」と考えているかもしれません。

もし、親が自己破産したり死亡したりした場合、連帯保証人に債務が移ります。相続放棄したとしても保証人や連帯保証人の立場は残るため、借金返済から逃れられません。

親から頼まれても、安易に保証人や連帯保証人にならないよう注意しましょう。

債権者からの催促を断る

「親の借金だから子どもが返済して当然」と、債権者から親の借金を肩代わりするよう催促されてもきっぱりと断りましょう。親の借金を子どもが背負う義務は一切ありません。

返済義務のない人に返済を強いる行為は、強要罪や脅迫罪の罪に問われる可能性があります。きっぱりと断ってもしつこい対応をされるのであれば、警察に相談しましょう。

親に債務整理をすすめる

借金の返済目処が立たないのであれば、借金をしている本人に債権整理をすすめましょう。

債権整理とは、弁護士や司法書士を代理人として立てて借金について解決するための手続きです。一時的に債権者からの催促や取り立てをストップさせられます。

債権整理には、以下の3つの方法があります。

任意整理債権者と交渉し、利息を減額させて借金額を減らす手続き
自己破産借金返済を免除するための裁判所における手続き
個人再生一定額を返済したうえで、残りの借金を免除するための裁判所における手続き

いずれの方法にもメリット・デメリットがあります。どの手続きを行うべきかは状況によって異なるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談して検討しましょう。

相続放棄でお困りの方へ_専門家をさがす

親が亡くなっている場合

親が亡くなっている場合、相続放棄・限定承認を検討しましょう。相続放棄・限定承認は、相続が発生した事実を知ってから3か月以内に手続きしなければなりません。

相続放棄・限定承認の手続きが完了すると撤回することはできないため、十分な検討が必要です。そのために、徹底的に相続財産の調査を行いましょう。

プラスの財産は預貯金や所有している不動産から確認できます。自宅にある通帳や固定資産税の納税通知書を確認しましょう。一方、マイナスの財産である借金は、各信用情報機関へ照会すれば確認できます。

すべての相続財産を確認したうえで、相続放棄・限定承認の手続きをすべきか判断しましょう。

相続放棄ができないときはどうする?

以下のようなケースにあてはまるとき、相続放棄ができない可能性があります。

  • 被相続人の財産を使用・処分してしまった
  • 被相続人の借金を一部返済してしまった
  • 相続発生の事実を知ってから3か月以内に相続放棄の手続きをしなかった

これらの行為は「単純相続をする行為」だとみなされ、相続放棄の手続きをしても却下される恐れがあります。

また、以下のような場合にも相続放棄をしないといった判断をする相続人もいるでしょう。

  • 同居していた家・土地を相続放棄すると、住む場所がなくなる
  • 家業を継ぐために必要な不動産や資金を相続する必要がある

このように相続放棄ができない場合、債権整理を検討する必要があります。借金を相続しなければならない場合は、弁護士や司法書士に相談して解決に向けてのアドバイスをもらいましょう。

親の借金を相続放棄するときの注意点

親の借金を相続放棄する場合、以下のような注意点があることに留意しましょう。

  • 借金を相続放棄したくても生前はできない
  • 相続放棄したことを他の相続人に連絡する
  • 債権者に相続放棄したことを連絡する
  • 亡くなった方が連帯保証人だった場合連帯保証債務も相続財産に含まれる
  • 期限後に借金が発覚したときは相続放棄できる場合がある

5つの注意点について、詳しく確認しましょう。

借金を相続放棄したくても生前はできない

生前の相続放棄は法律で認められていないため、申請しても認められません。相続放棄できる期間は「相続が発生した事実を知ってから3か月の期間」です。

どうしても生前に対処しておきたいのであれば、遺留分放棄を検討しましょう。遺留分とは民法で定められている相続財産における相続人の取り分です。遺留分を放棄するためには、相続人が家庭裁判所に申し立てを行い、認めてもらう必要があります。

遺留分は相続人にとって大切な権利であるため、正当な遺留がなければ認められません。遺留分放棄の手続きを検討するなら、専門家に相談しましょう。

相続放棄したことを他の相続人に連絡する

1人が相続放棄したとしても借金は消滅しないため、他の相続人が相続することになります。

たとえば、1000万円の借金があり、配偶者・長男・次男の3人が相続人だったとしましょう。1/3ずつ返済しようと考えているなかで長男だけが相続放棄すると、配偶者と次男の2人だけで借金の返済義務を負うこととなります。

また、長男・次男が相続放棄した場合、次の順位の相続人に借金の返済義務が引き継がれます。債務者が変わったとしても通知されるわけではないため、相続放棄した人が連絡をしなければ、借金を相続した事実に気づくことができません。

いきなり借金を背負うはめになっていい気分になる人はいないでしょう。相続放棄する際は、あらかじめ連絡しておくとトラブルを避けられます。

債権者に相続放棄したことを連絡する

債権者に相続放棄をした事実を伝えなければなりません。連絡を入れた時点で、取り立てをやめてもらえる可能性が高いです。

ただし、なかには債権者が個人だったり、違法な貸金業者だったりすると、取り立てを続ける場合があります。異議申し立ての抗議をされても一円足りとも返済してはいけません。

なぜなら、少しでも返済してしまうと単純承認を認めたとしてみなされ、相続放棄できなくなる可能性が出てくるからです。

強い気持ちで「相続放棄をしたから返済義務はない」と伝えましょう。証拠を催促されたら、相続放棄完了後に通知される相続放棄申述受理通知書のコピーを郵送すると納得してもらえます。

亡くなった方が連帯保証人だった場合連帯保証債務も相続財産に含まれる

亡くなった方が友人や家族などの連帯保証人になっていた場合、原則的に連帯保証債務も相続人に引き継がれます。相続対象となるケースと相続対象外となるケースを見てみましょう。

<相続対象となるケース>

  • 金融機関からの借金における連帯保証人
  • 賃貸借契約における連帯保証人

<相続対象外となるケース>

  • 身元保証人
  • 限度額・期間の定めがない根保証

もちろん、相続対象となるケースであっても、相続放棄すれば連帯保証債務から逃れられます。

期限後に借金が発覚したときは相続放棄できる場合がある

相続放棄の期限が過ぎたあとから借金が発覚した場合、相続放棄できる場合があります。

本来、相続放棄は相続の発生を知ってから3か月以内に手続きを終えなければなりません。しかし、実際には借金の督促や取り立てが来てから初めて借金の事実が発覚するケースもあります。

このとき、借金の事実を知らなかったと証明できれば、借金の存在を知ったときから3か月間は相続放棄が可能です。しかし、知らなかった事実を証明することは非常に難しいです。

もし、あとから借金が発覚して相続放棄したいと考えているのであれば、専門家に相談することをおすすめします。

親の借金を理由に相続放棄するなら専門家に相談しよう

親の借金は、生前であれば子どもに返済する義務はありません。しかし、親が亡くなっても借金は消えず、相続財産として子どもに引き継がれます。

巨額な借金で返済しきれない場合、相続放棄を検討しましょう。相続放棄をすれば「もともと相続人でなかった」としてみなされるため、債権者からの催促を止められます。

しかし、相続放棄の手続きを一度完了させると撤回できません。そのため、慎重な判断が求められます。

親の借金の返済義務を回避したい方や、相続放棄を検討している方は、専門家に相談して対処法のアドバイスを受けましょう。適切な解決策を提案・サポートしてくれるはずです。

記事の著者紹介

安持まい(ライター)

【プロフィール】

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年11月22日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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