準確定申告で医療費控除はできる?還付金を受ける方法や注意点を解説

公開日:2025年3月13日

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準確定申告において医療費控除が使えるのか気になっていませんか。通常の確定申告と同じように、準確定申告においても被相続人が亡くなった当日までに支払った医療費については医療費控除の対象となります。本記事では、準確定申告と医療費控除の関係や、準確定申告を行う手順、注意点について詳しく解説します。医療費控除の考え方を理解し、準確定申告に備えましょう。

準確定申告と医療費控除

準確定申告において、亡くなった方の医療費控除ができる可能性があります。ただし、すべての医療費が対象となるのではなく、医療費請求のタイミングや内容によって判断されます。

ここでは、準確定申告と医療費控除の基礎知識について、詳しく解説します。

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準確定申告とは

準確定申告とは、本来亡くなった方がしなければならない確定申告を相続人が代理で行う手続きです。申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内が原則とされています。

本来、確定申告は収入のあった本人が期限までに行わなければならない手続きです。しかし、本人が亡くなった場合、確定申告の義務が相続人へ引き継がれます。

準確定申告は、相続発生時に必ずしもしなければならない手続きではありません。準確定申告が必要なケースの例は、下記の通りです。

  • 48万円以上の事業所得・不動産所得がある方
  • 2000万円以上の給与所得がある方
  • 公的年金による収入が400万円以上ある方
  • 給与・退職金以外で20万円以上の収入がある方
  • 土地・建物を売却して譲渡所得を得た方

上記のように、亡くなった方が通常の確定申告をする必要がある場合、準確定申告も必要です。

医療費控除とは

医療費控除とは、本人や配偶者、扶養している家族などの医療費が一定金額を超えたときに所得税を軽減できる制度です。医療費控除は確定申告をしなければ受けることができません。

しかし、本人が亡くなってしまうと確定申告ができないため、準確定申告において医療費控除を受けることができます。医療費が高額だった場合、医療費控除によって所得税の還付が受けられる場合があります。

準確定申告の期限は、原則亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内ですが、還付申告であれば限を過ぎていても申請が可能です。還付申告の期限は、亡くなった年の翌年から5年以内です。

ただし、準確定申告によって納税が発生する場合には、申告期限を過ぎると延滞税や無申告加算税などのペナルティが課せられる恐れがあるため注意しましょう。

準確定申告で医療費控除を受けられる金額

準確定申告をすると、どれほどの医療費控除が受けられるのか気になりますよね。ここからは、下記のポイントごとに医療費控除の金額について詳しく解説します。

  • 準確定申告の医療費控除の範囲
  • 医療費控除の計算方法

詳しく確認し、医療費控除の額を計算してみましょう。

準確定申告の医療費控除の範囲

準確定申告の医療費控除の範囲は、被相続人が死亡日までに負担した医療費のみに限定されます。

亡くなった日の当日に支払った医療費は準確定申告の対象です。一方、死亡日の翌日に支払った医療費は亡くなった方の医療費で亡くなった方の財産から支出したとしても、医療費控除に含まれません。

また、亡くなった方の医療費を同居の家族が支払っている場合、亡くなった方の準確定申告ではなく、医療費を負担した家族の確定申告において医療費控除が受けられます。亡くなる当日や亡くなったあとに支払った医療費も対象です。

ただし、別居している相続人が医療費を負担した場合は、その相続人の確定申告で医療費控除は受けられないため注意しましょう。

ここからは、医療費控除の対象となる費目と対象になるか個別の判断が必要な費目について詳しく解説します。

医療費控除の対象となる費目

医療費控除の対象となる費目の例は、下記の通りです。

  • 治療の診察費用
  • 治療に必要な医薬品の費用
  • 病院における入院費用
  • 診察・治療のための交通費
  • 介護老人保健施設への介護費や居住費、食費など
  • 指定介護老人福祉施設への介護費や居住費、食費などの費用の2分の1
  • おむつ使用証明書がある場合のおむつ代

ただし、診察・治療に行った際の交通費には、自家用車の駐車料金やガソリン代は含まれません。

医療費控除の対象となるか個別の判断が必要な費目

医療費控除の対象となるか個別の判断が必要な費目の例は、下記の通りです。

  • おむつ代
  • 入院の差額ベッド代
  • 死亡診断書の取得にかかる費用

通常、おむつは医療費控除の対象ではありません。しかし、6か月以上寝たきりになった場合など、医師の判断によっておむつが必要だとされるときには医療費控除の対象となります。この場合、医師が発行するおむつ使用証明書を医療費控除の明細書に添付しなければなりません。

また、入院の差額ベッド代は、入院患者の希望によって個室などを選んだ際に発生する費用です。そのため、原則医療費控除の対象ではありません。しかし、医療行為のために個室にしなければならない事情があるなど、医療行為や病院都合で差額ベッド代が発生する場合には医療費控除の対象となります。

さらに、死亡診断書の取得にかかる費用は、治療行為のために発生する費用ではないため医療費控除の対象にならないことが原則です。ただし、相続税法上の債務控除として扱うことが認められており、相続税の申告時に遺産総額から差し引くことが可能です。

医療費控除の計算方法

医療費控除は、原則10万円を超える医療費を支払った場合にのみ控除を受けることが可能です。医療費控除額の計算式は、下記の通りです。

    控除額=支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円

ただし、所得合計額が200万円未満の場合、10万円ではなく所得の5%が差し引かれます。所得合計額が200万円未満の場合の医療費控除額の計算式は、下記の通りです。

    控除額=支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-(所得合計×5%)

たとえば、所得額が180万円で医療費の支払いが25万円、保険による入院給付金が5万円だったときの医療費控除額は、下記のように計算します。

  • 控除額=25万円-5万円-(180万円×5%)=11万円

このとき、11万円の医療費控除が受けられます。

準確定申告で医療費控除を受ける方法

準確定申告で医療費控除を受ける方法のイメージ

準確定申告で医療費控除を受けるために知っておきたいことをまとめました。下記の順に、ポイントをおさえましょう。

  • 準確定申告の期限
  • 準確定申告の手順

詳しく解説します。

準確定申告の期限

まず、準確定申告の期限をしっかり守りましょう。準確定申告の期限は、原則、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内です。

所得税の支払いが発生するにもかかわらず、期限を守らない場合には延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生する恐れがあります。

準確定申告の手順

医療費控除を受けるための準確定申告の手順は、下記の通りです。

  1. 相続人の代表を決める
  2. 必要書類の準備・作成をする
  3. 申告書を提出する

詳しく確認しましょう。

相続人の代表を決める

相続人が2人以上いる場合、代表者を決めることをおすすめします。代表者を決めて連署で申告する場合、代表者に申告することに同意したことを示す委任状を作成します。

相続人それぞれが申告する方法もありますが、相続人ごとに必要書類を集めて申告書を作成しなければなりません。委任状も不要ですが、煩雑な手続きとなることを念頭において検討しましょう。

必要書類の準備・作成をする

申告書類を作成するには、必要書類を集めなければなりません。通常の確定申告と同様に、下記のような書類を集めましょう。

  • 亡くなった方の年金・給料の源泉徴収票
  • 生命保険料や小規模共済等掛金などの控除証明書
  • 医療費の領収書

書類が揃ったら、準確定申告書と医療費控除の明細書を作成します。医療費控除の明細書とは、医療費の支払いについての詳細をまとめた書類です。下記のような内容を詳細に記載する必要があります。

  • 医療を受けた方の氏名
  • 病院・薬局などの支払い先の名称
  • 医療費の区分
  • 支払った医療費の額
  • 支払った医療費のうち、生命保険などで補填された金額

明細書のすべての項目を埋めると、控除額の計算ができるようになっています。

申告書を提出する

準確定申告書や医療費控除の明細書などの作成が終わったら、必要書類と一緒に被相続人の最期の住所地を管轄する税務署に提出します。

窓口や郵送でも受付てもらえますが、e-Taxで提出する場合は医療費通知を添付することで医療費控除明細書の記入を省略することが可能です。

医療費通知を利用する場合は、下記の情報が必要です。

  • 被保険者等の氏名
  • 療養を受けた年月
  • 療養を受けた者
  • 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
  • 被保険者等が支払った医療費の額
  • 保険者等の名称

医療費通知は、年をまたいで医療費の明細が届きます。医療費控除の対象は、あくまでも準確定申告の対象となる期間に支払った医療費に限られるため、注意しましょう。

準確定申告で医療費控除を受ける際の注意点

準確定申告で医療費控除を受ける際に知っておきたい注意点は、下記の通りです。

  • 準確定申告の期限を過ぎていても医療費控除は受けられる
  • 準確定申告で控除した医療費は、相続税の債務控除の対象にならない
  • 還付金が発生しないこともある

詳しく確認しましょう。

準確定申告の期限を過ぎていても医療費控除は受けられる

準確定申告の期限を過ぎていても、医療費控除を受けられます。医療費控除を遡って受けられる期間は、被相続人が亡くなった年の翌年から5年以内です。

しかし、期限を過ぎてから準確定申告を行うと、無申告加算税や延滞税が発生するかもしれません。納税する必要がある場合には期限内に準確定申告を済ませましょう。

準確定申告で控除した医療費は、相続税の債務控除の対象にならない

準確定申告で控除した医療費は、相続税の債務控除の対象にはならないため注意しましょう。

亡くなった人から引き継いだ債務は、相続税を計算するにあたって遺産総額から差し引くことが可能です。これを相続税の債務控除と呼びます。

医療費控除と債務控除の見分け方は、支払ったタイミングです。被相続人の亡くなった当日において、すでに支払った費用は準確定申告における医療費控除、未払いの費用は相続税の債務控除の対象となります。

決して重複して申告しないよう気をつけてください。

還付金が発生しないこともある

準確定申告で医療費控除の適用をさせたからといって、かならずしも所得税の還付金が発生するわけではありません。あくまでも所得控除であるため、所得税を計算したときに源泉徴収が余分にされている場合などに還付金が受けられます。

むしろ、不足がある場合は所得税を納付する必要があります。

準確定申告で医療費控除を活用すれば所得控除を受けられる

被相続人が亡くなったあとに行う準確定申告において、医療費控除を活用できれば大きな節税につながる場合があります。準確定申告の必要がない場合でも、医療費控除を適用させるために準確定申告を行えば還付金が受け取れるかもしれません。

しかし、準確定申告における医療費控除は、支払いのタイミングや誰が医療費を支払ったのか、などチェックすべきポイントがたくさんあります。準確定申告においては医療費控除の明細書の作成も必要となり、作業量も増えてしまいます。

もし、準確定申告における医療費控除に関して少しでも不安がある場合は、税理士に相談しましょう。準確定申告だけでなく、相続税の申告をまとめて依頼できます。ぜひ専門家の力を借りて、スピーディーに申告を済ませてくださいね。

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記事の著者紹介

安持まい(ライター)

【プロフィール】

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て平成30年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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