令和5年の相続税が過去最高を更新、10人に1人が相続税申告の対象に

公開日:2025年1月29日

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国税局が令和5年分の相続税申告実績に関する資料を公表しました。被相続人の数、相続税の申告件数、相続税の金額いずれの数値も現行の相続税計算方法になってから過去最多を更新しており、相続税の影響は年々大きくなってきています。国税庁の資料から最新の相続税事情と検討すべき対策を読み解きます。

相続税の申告件数・金額ともに過去最多を更新

国税庁が令和5年分の相続税について、「申告実績の概要」「調査等の状況」を公表しました。この資料によると、亡くなった人である「被相続人数」、相続税の申告件数である「相続税の申告書の提出に係る被相続人数」のいずれも前年より増加しており、昭和42年以降では過去最多を更新しました。相続税の申告件数は前年比103.2%の15万5740件となっています。

相続税の総額は前年比107.4%の3兆53億円となっており、こちらも法改正により現行の相続税算出方法となった平成27年以降で過去最高を更新しました。被相続人1人あたりの相続税額は1930万円となっています。

参考:令和5年分相続税の申告事績の概要|国税庁

10%近い相続で相続税が発生、最多は東京都18.9%

被相続人の数に占める相続税申告件数である課税割合は9.9%となり、こちらも現行の相続税算出方法となってから過去最高を更新しました。

課税割合は平成27年以降8%台を推移していましたが、令和3年に9%台となり、今回の令和5年分の実績では10%に届こうかという数値になりました。これは、10人に1人が相続税の申告をしないといけない時代になりつつあることを意味します。

課税割合の9.9%は全国平均であり、その数値は都心部ほど高くなる傾向にあります。都道府県別の上位は以下の通りとなっています。

  1. 東京都:18.9%
  2. 愛知県:15.5%
  3. 神奈川県:14.9%

これらの都道府県は、課税割合が全国平均の9.9%を大きく上回っています。相続税が発生する可能性が高いものとして、生前対策を検討するのが良いと言えるでしょう。

相続財産は現金・預貯金が最多、有価証券も増加傾向

相続財産の種類を金額別にみると、最多は現金・預貯金(35.1%)となっており、土地(31.5%)、有価証券(17.1%)と続きます。令和2年までは土地が最多でしたが、令和3年から現金・預貯金が最多となり、以降も土地は減少傾向が続いています。

その一方で、有価証券は増加傾向が続いています。資産運用のニーズ増加や株価の上昇、NISAやiDeCoなどの新しい制度の拡充、インターネット証券の普及など、複数の要因が影響していると考えられ、この増加傾向は今後も続くと予想されます。こうした相続財産の変化も考慮した生前対策が、これからは必要になってくると言えるでしょう。

税務調査の件数も過去最多を更新

相続税の税務調査に関する数字も軒並み上昇しています。実際に調査を行った数である「実地調査」と、申告書に誤りの疑いなどが見つかった際に電話や文書で連絡する「簡易な接触」の件数は、いずれも現行の相続税算出方法になってから過去最多を更新しました。

実地調査は8556件行われ、そのうち84.2%の7200件に申告漏れなどの非違が見つかっています。非違には追徴税が課されることになり、その金額は実地調査1件あたり859万円にものぼりました。

簡易な接触は1万8781件行われ、そのうち27%の5079件に非違が見つかっています。簡易な接触1件あたりの追徴税は65万円となっています。

全体でみると、相続税の申告件数およそ15万件に対し、1万2000件以上の申告漏れが指摘されています。追徴税の金額の大きさからも、相続税が発生した際には漏れなく確実に申告することが重要だと言えるでしょう。

参考:令和5事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁

相続税の対象は今後も増加傾向と予想される

令和5年分の相続税に関する数字は、その多くが現行の制度下で過去最多を更新するものとなっています。この傾向は令和5年だけのものではなく、今後も続くものと予想されます。

相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。期限内に複雑な計算をして申告書類を提出しなければならず、申告内容に誤りがあれば追徴税を課される可能性もあります。

その一方で、相続税は生前から対策ができるものでもあるので、相続税の手続き・相続税対策の両面から専門家に相談することが重要です。相続プラスでは相続税に強い専門家を紹介していますので、ぜひお近くの専門家をさがして相続税のお悩みを相談してみてください。

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相続プラス編集部

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年1月29日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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