相続税の時効は、原則5年です。そう聞くと「5年経てば相続税を払わなくてよい」と考えるかもしれませんが、現実に時効が成立することはほとんどありません。本記事では、相続税の時効の考え方や税逃れができない理由について詳しく解説します。
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相続税の時効とは
相続税には時効が存在します。時効までの期間は、除斥期間と呼ばれ、原則申告期限から5年です。しかし、悪意があると認められると、この除斥期間が7年に延長されます。除斥期間中に税務署から相続税の請求があった場合には、その時点で時効という考え方は成立しなくなります。
ここからは、相続税の時効について解説していきます。
時効の数え方(起算日)
相続税の時効は、相続税の申告期限日を起算日として考えます。相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月後です。
例えば、被相続人の死亡日が2月1日で同日に被相続人の死亡を知った場合、相続税の申告期限は被相続人の死亡日の翌日から10か月後の12月2日です。
さらに、相続税の時効は原則申告期限から5年のため、この場合における相続税の時効は5年後の12月2日となります。
時効5年と7年の違い
相続税の時効は、原則申告期限から5年です。相続税の申告期限は相続発生の翌日から10か月後ですが、そこからさらに5年経過すると相続税の時効が成立します。この5年の期間を「除斥期間」といいます。
しかし、悪意のある相続人であるとみなされると、除斥期間が5年から7年に延長されます。悪意のある相続人とは、意図的に相続税をごまかそうとした人と、相続税の申告を適切に行わなかった人のことです。
悪意の相続人とみなされる行為は、下記の通りです。
- 相続税の納付義務があると知っていたのに払っていなかった
- 遺産分割がまとまらず申告期限に間に合わなかった
- 申告期限を忘れて申告・納付をしていなかった
- 申告後に新たな遺産が発見されたにもかかわらず申告しなおさなかった
相続税の時効は実質成立しない
相続税が高額で納付できないからといって、時効の成立を待つことは現実的ではありません。なぜなら、除斥期間に税務署から相続税の納付が求められると税務署から指摘があった場合、時効という概念がなくなるためです。
ここでは、なぜ税務署が申告漏れに気づくことができるのかについて、下記のポイントごとに詳しく解説します。
- 税務署は被相続人の財産を把握している
- 相続税の税務調査や簡易接触は多く実施されている
順番に確認しましょう。
税務署は被相続人の財産を把握している
税務署は、お金の流れや不動産の名義変更の有無などを把握しています。当然、税務署は被相続人の生前の納税情報を管理しており、おおよその財産状況も把握しています。
被相続人が亡くなると、その事実が税務署に通知されるため、相続発生の事実や相続発生時点での遺産総額も把握できるというわけです。
つまり、相続税が発生するかどうか、相続税の金額がどの程度になるのかが税務署で目処が立っているため、申告がない場合や申告された額に差異がある場合には税務調査が実施されます。
当然、名義預金やタンス預金も見破られているため、漏れなく申告しなければペナルティの対象となります。たとえ「知らなかった」「わざとではなかった」としても、悪意の相続人とみなされる可能性は否定できません。
相続税の税務調査や簡易接触は多く実施されている
相続税にかかわる税務調査や簡易接触は、普段から多く実施されています。
国税庁が発表している被相続人の数(相続が発生した件数)と、相続税の実地調査の件数を下記にまとめました。
<2022年(令和4年)度>
- 被相続人の数:156万9,050人
- 課税対象被相続人の数:15万0,858人
- 実施調査の件数:8,196件
- 申告漏れなどの非違件数:7,036件
参照:令和4年分相続税の申告事績の概要|国税庁/令和4事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁
この数値を見ると、相続税の課税対象となる相続発生件数のうち、5.4%以上の割合で税務調査が行われています。さらに、税務調査が行われたうちの85.8%が非違、つまり不正であったことがわかります。
さらに、簡易接触が行われた件数についても下記のように国税庁が発表しています。
<2022年(令和4年)度>
- 簡易な接触件数:1万5,004件
- 申告漏れなどの非違件数:3,685件
簡易接触とは、書面や電話、来署依頼による面接などによって納税者に対して、自発的な申告や申告漏れ・計算間違いなどの修正を要請することです。
この数値を見ると、相続税の課税対象となる相続発生件数のうち、9.9%以上の割合で簡易な接触が行われています。
相続税に関するペナルティ
税務調査や簡易接触によって、申告漏れや相続税の未納が発覚すると、加算税や延滞税などのペナルティが課せられます。最悪の場合、財産が差し押さえられてしまう場合もあるため、かならず期限までに納付しましょう。
期限までに納付しない場合に課税される税金の種類は、下記の通りです。
| 税金の種類 | 概要 |
|---|---|
| 無申告加算税 | 正当な理由なく、期限までに申告をしていなかった場合に課される |
| 過少申告加算税 | 期限までに申告をしていても、自覚なしに実際よりも過少の申告をしていた場合に課される |
| 重加算税 | 自覚がありながらも、遺産の隠ぺいや虚偽の申告をした場合に課される |
| 延滞税 | 正しく申告していても、期限内に納税を行わなかった場合に課される |
申告と納付を期限内に行わなかった場合、無申告加算税と延滞税の両方が課されるため注意しましょう。無申告加算税は、自主的に申告したときと、指摘後に申告したときとで税率が大きく変わります。
また、期限までに納税しなかった場合に課される延滞税は、納付期限の翌日から納付した日までの日数に応じて利息として課されるため、税額がどんどん増えていきます。
そのため、期限を過ぎたあとであっても、できるだけ早く申告と納付を行うようにしましょう。
さらに、相続税を滞納し続けると、国税庁に財産を差し押さえられる恐れがあります。
相続税滞納による財産差し押さえまでの流れは、下記の通りです。
- 滞納している納税者に督促状が届く
- 連帯納付義務にもとづいて他の相続人に督促状が届く
- 差し押さえの手続きに移行し、差押予告通知書が届く
- 差押調書が届き、差し押さえが実行される
差し押さえられた財産を換金しても相続税が支払えない場合、連帯納付義務者である他の相続人の財産が差し押さえられる可能性があります。他の相続人との関係悪化につながるため、期限内に相続税を納付するようにしましょう。
「相続税に関するペナルティ」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続税の時効と合わせて知っておきたいこと

相続税の時効と合わせて知っておきたいことは、下記の通りです。
- 申告漏れに気づいたらすぐに申告する
- 自分で申告をした場合は税務調査をされる可能性が高い
- 相続税などの税金の時効には更新・中断という概念はない
- 贈与税の時効(除斥期間)は6年
申告漏れに気づいたらすぐに申告する
相続税の申告漏れに気づいたら、できるだけ早く申告するようにしましょう。
なぜなら、自主申告か税務署の指摘による申告かによって無申告課税の税率が変わるからです。延滞税に関しても、日数が経過するにつれ税額が高くなっていきます。
期限までに申告・納付していないときに課せられる無申告課税と延滞税の税率は、下記の通りです。
<無申告加算税の税率>
- 申告期限から1か月以内に自主的に申告した場合:免除
- 税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合:5%
- 税務調査の事前通知後に申告した場合:10〜20%
<延滞税の税率※>
- 納付期限の翌日から2か月間:2.4%
- 納付期限の翌日から2か月を経過した日以降:8.7%
※2024年(令和6年)1月1日~12月31日の延滞税の税率です。銀行の新規の短期貸出約定平均金利によって変動します。
申告期限から1か月以内に自主的に申告すれば、無申告加算税が課されることはありません。しかし、1か月が経過したあとは、税務調査の事前通知前に自主的に申告したかどうかで大きく税率が変わります。
また、申告後に新たな遺産が出てきた場合や、税額の計算ミスに気づいた場合にも、早めに修正申告を行いましょう。本来より少ない相続税の金額を申告している場合にも、自覚がない場合には過少申告加算税、自覚がある場合には重加算税がそれぞれ課されます。
<過少申告加算税の税率>
- 税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合:免除
- 税務調査の事前通知を受け、税務調査の前に自主的に申告した場合:5〜10%
- 税務調査の事前通知を受け、税務調査の後に申告した場合:10〜15%
<重加算税の税率>
- 過少申告に対するもの:35%
- 無申告に対するもの:40%
自分で申告をした場合は税務調査をされる可能性が高い
自分で相続税の申告をした場合、税務調査をされる可能性が高まります。税理士ではなく納税者自身が申告したというだけで、不備や漏れが疑われやすいです。
相続税の申告書には、税理士の署名・押印をする欄があり、税理士が作成したかどうかがすぐにわかります。また、税理士に依頼した場合でも、相続税を得意としている税理士かどうかもチェックされるポイントです。
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相続税などの税金の時効には更新・中断という概念はない
例えば、借金の返済を求める訴訟で判決が確定したときや、債務者が借金の存在を認めて支払う意思を示したときなどには、その時点を起点として時効までの期間をリセットすることとなります。これを時効の更新・中断といいます。
しかし、相続税を含めた税金の除斥期間(実質的な時効)には、更新・中断の概念はなく、途中で起算日が変わることや期間が引き延ばされることはありません。
起算日である申告期限から5年または7年が経過し、その間に税務署から更正や決定がなされなければ、税務署は相続税の納付を求めることはできなくなります。
一方、税務署がこの除斥期間内に更正や決定を行った場合には、そこから新たに「国税徴収権の消滅時効(原則5年)」という別の時効期間がスタートすることになります。
したがって、期間内に処分が下された時点で、国は引き続き税金を徴収する権利を得ることになります。
贈与税の時効(除斥期間)は6年
相続税と同様に、贈与税にも時効が存在します。贈与税の時効は、原則6年です。ただし、脱税目的で贈与があった事実を隠ぺいするなど、故意に申告しなかった場合には7年に延長されます。
除斥期間の起算日は、贈与税の申告期限の翌日からです。贈与を受けた日ではないため注意しましょう。
そもそも贈与は、贈与する人と贈与を受ける人の双方の合意がなければ成立しません。つまり、一方的に財産を移転させようとしていた場合には受ける人の意思がないため、贈与は成立していないと考える必要があります。
贈与のつもりがあったとしても贈与の事実はないため、時効も発生しません。たとえば、300万円を息子の名義で預金していたとして、贈与はなかったとみなされると300万円は親の財産と判断されます。
贈与契約が成立しないまま相続が発生すると、親の遺産とみなされて相続税の課税対象となる点に注意しましょう。
相続税の時効が成立することはほとんどない
相続税には5年または7年の時効がありますが、相続税の時効が成立することはほとんどないと考えておきましょう。なぜなら、税務署は被相続人の財産状況や、周辺のお金の動き、不動産の名義変更の有無について把握しているためです。
時効を迎えるまでの期間である除斥期間中に税務署から相続税を請求されれば、その時点で時効という考え方は成立しなくなります。相続税の申告・納付を適正に行わなければ、悪意の相続人とみなされて無申告加算税や延滞税などの重いペナルティが課されてしまいます。
わざとでなかったにしても、申告期限を守らないことには対しては、相当のペナルティが発生します。このような事態に陥らないためにも、相続税を申告する際には相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。期限内に正しい申告を行うために、税理士の力を借りましょう。

