「お金を掛けずに、家族のために法的に有効な遺言書を書きたい」と考えている方は「自筆証書遺言」を検討してもよいでしょう。ドラマや映画の中で、登場人物が遺言書を書くシーンが出てくることもあるため、「遺言書のイメージ」として思い浮かべる人も多いかもしれません。
《基本》自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は、どのような特徴を持つ遺言なのでしょうか? 他の遺言方法や、法務局にて新たに開始された保管制度などを交えて、自筆証書遺言の特徴を徹底解説していきます。
自筆証書遺言は、費用が少なく手軽に書ける遺言
自筆証書遺言とは、財産目録を除き、遺言を書く「遺言者」本人が自分の手で書いた遺言のこと。自分で遺言書を一貫して作成するためほとんど費用が掛かりません。遺言を残そうとしている人の年齢が15歳以上に達しており、紙とペンがあれば作成できます。
ただし、法律に関する専門家のチェックを通さないため、書き間違えや必要要件を満たさず無効になる恐れがあります。さらに、遺言者の自宅で保管され、作成時に立ち会う証人もいないため、遺言書の紛失・改ざん・偽造の恐れがあることもデメリットとして挙げられます。
遺言書は自筆証書遺言以外にも2種類ある
遺言書の形式は、自筆証書遺言以外にも、公正証書遺言と秘密証書遺言という2種類の遺言が存在しています。自筆証書遺言への理解をさらに深めるために、公正証書遺言と秘密証書遺言の特徴を簡潔に解説します。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証役場にいる公証人に作成してもらう遺言のこと。
公証人とは、法律の専門知識に長けており、国の公務である公証事務を担当する人のことで、実質的に公務員とみなされています。遺言書を公正証書にすると、その遺言書は公正の効力が生じ、極めて高い証拠力を持つようになります。
公正証書遺言の作成方法は、証人(立会人)2名の前で遺言者の話した内容を公証人が聞き取り、その内容を証人に間違いないか確認しながら、法律的に要件を満たすように正しく作成されます。
そのため、形式が正確に要件を満たしておらず、無効になる可能性が極めて低くなるといえます。さらに、厳重なシステムの下、公証役場にて公正証書遺言は保管されるため、改ざんや紛失の心配がほとんどないというメリットもあります。
参考:日本公証人連合会「1 遺言」、法務省「公証制度について」
秘密証書遺言とは
秘密証書遺言とは、存在だけを公証役場で証明してもらい、遺言の内容を誰にも知られない遺言を指します。公証役場にいる公証人と、立ち会ってくれる証人2人の前で、封がされている自分の遺言書の存在を証明してもらい、公証役場に遺言を作成したという記録だけを残します。亡くなった後に遺言書を相続人に発見されないことや、遺産が国に帰属されてしまうなどのリスクを防げます。
秘密証書遺言の作成方法は、遺言書本文を含め、内容すべてが自筆である必要がありません。パソコンや第三者による代筆によって、作成されても問題ありません。
ただし、注意点として、内容や形式不備で要件が満たされず無効になる、または、遺言者本人が保管することによる紛失や、悪意のある第三者による改ざんのリスクが挙げられます。
自筆証書遺言用に新たな保管制度がスタート
自筆証書遺言を取り巻く環境は変化しています。2020年7月より、法務省管轄の「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしました。
自筆証書遺言書保管制度は、自筆証書遺言の原本と画像データを法務局に長期間にわたり保管できる制度。同制度を利用した場合と利用しない場合で、どのような違いがあるのかを下記の表にまとめました。
保管制度を… | ||
---|---|---|
利用しない | 利用する | |
保管場所 | 本人 | 法務局 |
遺言の内容を知る人 | 本人 | 本人と 法務局の職員 |
偽造や紛失のリスク | あり | なし |
検認の有無 | 必要 | 不要 |
保管申請手数料 | なし | 3900円 |
死亡時の通知 | なし | あり |
自筆証書遺言書保管制度が創設された背景として、相続人などに発見されなかったり、改ざんされたりする自筆証書遺言のデメリットを抑えることが挙げられます。同制度を活用すれば、保管場所が法務局になり、遺言書原本とその画像データが、適切に長期間保管されます。
預けた遺言書を閲覧する場合も手数料が発生し、モニターによる遺言書画像の閲覧は1400円、原本の閲覧は1700円が発生します。
自筆証書遺言書保管制度の利用状況を見てみると、遺言書の保管申請は、2020年7月の開始以来で計4万7700件、2022年だけで見ると年間1万6800件でした。「自宅よりも安心できる場所に保管したい。死亡したら、通知が相続人に届くようにしたい」と考えているのであれば、自筆証書遺言書保管制度の利用を検討してもよいでしょう。
ただし、自筆証書遺言書保管制度を利用する上での注意点もあります。同制度を使用しても、自筆証書遺言として、遺言内容が無効になってしまうリスクは変わらないということ。
同制度の申請時、遺言書の形式については、要件を満たしているか遺言書保管官のチェックを受けられます。しかし、遺言内容が要件を満たすかまではチェックされません。したがって、遺言内容の法的有効性を高めたいのであれば、弁護士などの専門家に遺言内容の要件の確認を依頼するか、公正証書遺言で作成することをオススメします。
弁護士などの専門家に依頼する前に、初回までは無料相談ができる事務所もあります。こうした事務所をうまく活用して、要件を満たす有効な遺言書を作成するように心掛けましょう。
出典:法務省「12 法令・関連情報・リンク集」、「自筆証書遺言書保管制度のご案内」、「01 遺言書保管制度とは?」
「遺言書の書き方」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
自筆証書遺言のメリットとデメリット
3種類ある遺言方法の中でも、とくに手軽に始められる「自筆証書遺言」には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか? こちらの段落にて、徹底解説していきます。
【3選】自筆証書遺言のメリット
まずは自筆証書遺言について、こちらの3つのメリットを解説します。
- 自分1人で手軽に書ける
- 費用がほとんどかからない
- 遺言書の内容とその存在を秘密にできる
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
1. 自分1人で手軽に書ける
自筆証書遺言のメリットは、遺言者が単独で作成できる身近な遺言方法であるということ。紙とペンがあれば作成可能で、書き方や要件に注意していれば、費用や手間を掛けずに何度でも書き直しができます。
公正証書遺言では、必要な準備をしてから公証役場に出向き、遺言者の発言を公証人が聞き取って遺言書を作成します。秘密証書遺言でも、存在を証明して記録に残すために公証役場に行かなければなりません。
自筆証書遺言では、公正証書遺言と秘密証書遺言で発生するこうした公証役場での手続きや費用が発生しないため、単独で手軽に遺言書を作成できるメリットがあるといえます。
2. 費用がほとんどかからない
遺言書を作成するにあたって、遺言書本人が費用を負担することはほとんどありません。
公正証書遺言と秘密証書遺言は、ともに公証人への手数料が発生します。それぞれの費用相場を見ると、公正証書遺言は2~5万円程度、秘密証書遺言は一律1万1000円です。
自筆証書遺言のメリットは、公正証書遺言と秘密証書遺言で発生するようなこうした手数料を気にする必要がないことだといえます。ただし、先ほど説明した「自筆証書遺言書保管制度」を利用すると、申請手数料などが発生するので注意しましょう。
3. 遺言書の内容とその存在を秘密にできる
自分が死亡するまで、誰にも遺言書の存在と内容を知られたくない場合に、自筆証書遺言は有効な遺言方法の1つだといえます。
公証証書遺言では公証人と証人2人に存在とその内容を、秘密証書遺言では公証人と証人2人に存在を確認してもらいます。遺言書の内容と存在を秘密にしておきたいと考えているならば、自筆証書遺言の仕組みにメリットを感じることでしょう。
【4選】自筆証書遺言のデメリット
自筆証書遺言のデメリットを解説します。遺言を手軽に作成できる自筆証書遺言だからこそ、次のような4つのデメリットがあるといえるでしょう。
- 自分で書く手間がかかる
- 無効になる場合もある
- 死後に発見されない、内容を偽造される恐れがある
- 相続人が検認手続きをする必要がある
それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
1. 自分で書く手間がかかる
自筆証書遺言は、財産目録を除き、文字通り自分で書かなければなりません。自分で一言一句間違えないように、要件を満たすように書くことを面倒に感じるかもしれません。また、体力低下・病気・障害などで手が不自由になると作成自体が難しくなります。
2. 無効になる場合もある
自筆証書遺言は、遺言内容や形式に対して法律の専門家のチェックを行っていません。遺言を法的に有効にするためには、相続財産に関する複雑な内容を厳格な書式に則って作成する必要があります。したがって、遺言内容や書式や要件に不備がある場合、その遺言は無効となってしまう恐れがあります。
3. 死後に発見されない、内容を偽造される恐れがある
自筆証書遺言は、基本的に遺言者本人が管理し、保管する必要があるものです。
たとえば、身近な保管場所だと自宅が選ばれるケースが多いです。その場合、紛失したり、相続人が保管場所を忘れたりすることが考えられます。遺言書の偽造や改ざんの危険性も同様です。悪意のある相続人が、遺言書の内容を書き換えてしまう危険性もゼロではありません。
このように自筆証書遺言では、遺言書を書いても死後発見されない、または遺言書の偽造や改ざんという恐れが付きまとってしまいます。そのため、安全に遺言書を保管できる場所を確保し、その場所を信頼できる人に連絡しておくことが肝要です。
それでも不安が残るのであれば、前述した「自筆証書遺言書保管制度」の利用を検討してみましょう。法務省の管轄する安全な保管場所に原本と画像データが保存され、さらに遺言者の死亡後に相続人に通知が届くため、先の懸念点が払拭されるはずです。
自筆証書遺言のデメリットを補える「自筆証書遺言書保管制度」の利用を念頭に置きつつ、自筆証書遺言を作成することをオススメします。
4. 相続人が検認手続きをする必要がある
自筆証書遺言は、死後相続人に発見されて開封される前に、家庭裁判所による「検認」手続きが必要です。「検認」とは、相続人に遺言の存在と内容を知らせて、遺言書の偽造・変造を防止する手続きを指します。
相続人などが自筆証書遺言を発見した場合、基本的に遺言書を開封する前に家庭裁判所に申し立てて「検認」を行いましょう。収入印紙代や郵便切手代、検認済証明書の交付手数料など、あわせて数千円程度が検認費用が発生します。
相続手続きをする際に、勝手に遺言を開封した、または検認の手続きを行わずに遺言書の執行をした場合は、5万円以下の過料に処せられることがあるので注意してください。
自筆証書遺言では、相続開始後にこうした家庭裁判所での手続きが発生してしまうというデメリットが挙げられます。
自筆証書遺言の作成方法の流れ
自筆証書遺言の作成方法の流れを解説します。自筆証書遺言にも所定のルールが定められているため、その形式や要件に従って相続人・相続財産の配分について書かなければなりません。自筆証書遺言の作成方法は、大まかに次のように4つのステップに分けられます。
- 必要となる書類を用意する
- 財産目録を作成する
- 遺産分割の内容を考える
- 遺言者本人の自筆で遺言書の全文を書く
自筆証書遺言を作成するまでの4つのステップについて解説していきます。
1. 必要となる書類を用意する
自筆証書遺言書保管制度を利用する場合を除き、自筆証書遺言を作成するにあたり必要となる書類は、法律でとくに指定されていません。しかし、遺言者が所有する財産について、その財産価額を確認・証明できる書類が実質的に必要になると想定されます。
不動産関係書類をはじめ、主に以下のような書類が必要となるでしょう。
- 登記簿謄本など(不動産関係の書類)
- 証券会社の残高証明書など(有価証券関係の書類)
- 各銀行の残高証明書など(預貯金関係の書類)
- ゴルフ会員権の証書
- 生命保険証書
- 絵画や骨董品などの明細書
不動産関係の書類とは、権利等の物件を特定できるものを指し、「登記簿謄本」以外に「固定資産税評価証明書」「売買契約書」が該当します。
預貯金の関係書類では「各銀行の残高証明書」以外に、「貯金通帳」の写しや、ネット銀行であれば「残高確認ページ」などです。
保有している株式が未上場である場合、市場価格が分かりません。無料相談を活用しつつ、税理士といった専門家に依頼して、保有する株の評価をしてもらいましょう。
2. 財産目録を作成する
遺言書だけでは、遺産に関する情報としては不十分です。遺言書とあわせて「財産目録」を作成して一緒に添付する必要があります。「財産目録」とは、遺言者の所有する資産・負債の区分・種類について一覧にしたリスト。
2019年の法改正で、添付される財産目録の作成方法だけは、手書きである必要がなくなり、ワープロやパソコンが認められるようになりました。さらに、財産目の書き方に関しては、遺言者本人による作成である必要もなくなったため、家族や第三者により作成も可能です。
土地や建物といった不動産に関する固定資産税評価証明書、金融機関の残高証明書のコピーを財産目録として使用することが認められています。
財産目録の書き方における注意点は、各ページに遺言者本人の署名捺印を必ず行うこと。各ページに署名捺印を行う以外に、財産目録の形式や要件など書き方に関する指定はとくにありません。相続人が相続税申告などで困らないように、見やすさに配慮しつつ自由な書式・書き方で財産目録を正確に作成しましょう。
参考:法務省「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」
3. 遺産分割の内容を考える
遺言で財産を渡したい相手と、その遺産配分を考えます。遺言書を作成すれば、配偶者や子どもなどの法律で定められている相続人である「法定相続人」以外にも、自分の遺産を指定して相続させることができます。また、遺贈先は個人はもちろんのこと、慈善団体・NPO法人・介護施設などの団体でも問題ありません。
ただし、遺産分割の内容を考える際の注意点として挙げられるのが「遺留分」。法定相続人には、最低限受け取れる遺産の割合である「遺留分」という権利が法律で保障されています。そのため、遺産相続でトラブルにならないためにも、相続人になる予定者の「遺留分」を侵害しないように、遺言書の書き方に配慮した方がよいといえます。
4. 遺言者本人の自筆で遺言書の全文を書く
要件を満たすように、用意した紙に全文を自筆で書きましょう。書き方について、縦書き・横書きの指定はありません。自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、紙はA4サイズと指定されていますが、利用しない場合は紙の種類やサイズに指定はありません。
遺言書の作成日付を明記し、署名捺印を行うため印鑑が必要になります。また、自筆で書くため、文字を書き間違えてしまうこともあるかと思います。その際は、見本などを参考にしながら、所定のルールに従って訂正しましょう。
「遺言書の書き方」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
《7選》自筆証書遺言を作成する際の注意点
自筆証書遺言を作成するときの注意点を解説します。書式の要件以外にも作成時の注意点を理解していないと、相続トラブルの原因になったり、過料というペナルティを支払わなければならなかったり、最悪のケースだと遺言が無効となってしまうケースも。
自筆証書遺言を作成するときの注意点は、こちらの7つが挙げられます。
- ビデオレターなど音声・動画で代用しない
- 複数人による共同遺言を作成しない
- 認知症など判断能力が不十分な状態で作らない
- 遺言書が複数ある場合は古い方が無効になる
- 遺産分割についてあいまいな表現をしない
- 遺留分を考慮した内容にしていない
- 検認を受ける前に勝手に開封しない
上記の7つの注意点について、ポイントを押さえつつ詳しく解説します。
1. ビデオレターなど音声・動画で代用しない
これまで解説した通り、遺言の形式は基本的に法律で書面で残すことが定められています。そのため、スマートフォンやボイスレコーダーなどで録画した音声や動画は、そもそも遺言としての要件を満たさず、法的効力を持たないため、無効となります。
ただし、亡くなった人の表情や想いが動画や音声を通して、相続人に伝えられると想定されるため一定の効果は期待できます。したがって、あくまでも遺言書を要件を満たして作成した上で、遺言書では伝わらない遺言者の想いや感情を、相続人に伝えたい場合はビデオレターなどを作成してもよいでしょう。
2. 複数人による共同遺言を作成しない
遺言書は1人につき、1つしか認められていません。民法975条で「共同遺言の禁止」と定められているため、2名以上が同一の遺言を遺すことが禁止されています。
たとえば、夫婦が共同して形式通りに遺言書を作成したとしても、その遺言は要件を満たさないため、無効になります。したがって、複数人でまとめて連名で遺言を作るのでなく、1人につき1つの遺言書を、要件を満たすように別々に作成するようにしてください。
3. 認知症など判断能力が不十分な状態で作らない
遺言書は、遺言者の本人に「遺言能力」がある前提で作成されるものです。「遺言能力」とは、遺言者本人が遺言内容や遺言の結果を弁識(理解)できる判断能力のこと。したがって、本人の遺言能力がないにもかかわらず、作成された遺言書は無効となります。
もし、自分の親が認知症になってしまい、十分な判断能力(遺言能力)に欠けているような状態であるならば、自筆証書遺言よりも公正証書遺言による遺言作成を検討してみてはいかがでしょうか。
公正証書遺言は、公証人により遺言が作成され、さらに立会い人として証人が2名以上つくため、遺言内容の有効性が自筆証書遺言よりも高くなります。
「公正証書遺言」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
また、認知症や意思能力に不安がある方は「成年後見制度」や「家族信託」という制度の活用を、検討してもよいかもしれません。
「成年後見制度」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「家族信託」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
4. 遺言書が複数ある場合は古い方が無効になる
自筆証書遺言は、遺言者自身が保管するため、遺言書の管理が行き届いていないこともあります。そのため、過去にすでに遺言書を作成したにもかかわらず、うっかり新しい遺言書を作成してしまうことがあります。
こうなると同じ遺言者の遺言書が、2通存在してしまうことになります。2通の内容が抵触(矛盾)している場合、どちらの内容に従って遺産相続すべきか、相続人は混乱してしまうでしょう。
この場合は、形式にかかわらず作成日付が新しい遺言書が有効になり、古い方が無効になります。たとえば、遺言書を2通発見したときに、新しい方が「自筆証書遺言」で、古い方が「公正証書遺言」であった場合、新しい遺言書である「自筆証書遺言」の内容が有効になります。
自筆証書遺言は何度も作り直しがきく遺言方法であるため、こうした事態を招いてしまうことがあります。したがって、遺産相続時に問題が起きないように、遺言者は遺言書をしっかりと保管・管理しておく必要があるといえるでしょう。
5. 遺産分割についてあいまいな表現を避ける
たとえば「あとは任せる」などの相続人や財産が具体的に特定できない、あいまいな表現で書かれた遺言内容だと、相続トラブルの原因になりかねないので避けた方がよいでしょう。
こうなると、遺産相続について相続人同士で、遺産分割協議書を作成しなければならなくなり、相続手続きの負担も増えてしまいます。
財産目録を活用しつつ、「誰に・どれを・どのくらい」遺贈するのかをしっかりと明記するように遺言書の書き方に気を付けましょう。
6. 遺留分を考慮した内容にしていない
遺産相続では、遺言書があれば基本的に遺言書の内容に従って相続が行われます。しかし、すでに解説した通り、遺言書の内容が相続人の「遺留分」を侵害する内容であった場合は、その内容通りに相続されずトラブルに発展する可能性があります。
遺留分を侵害された相続人が、遺留分を放棄しない場合、自分の相続するはずだった遺産を請求するために、他の相続人に対して裁判を起こすでしょう。相続人が複数いる場合、相続人同士の相続トラブルにならないように、遺言書は遺留分を考慮した遺言書にしておくとよいでしょう。
「遺留分」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
7. 検認を受ける前に勝手に開封しない
自筆証書遺言は、家庭裁判所による「検認」手続きが必要であるため、遺言書を発見してもすぐに開封してはいけません。遺産相続時、相続人は早く遺言書の中身を確認したいでしょうが、はやる気持ちを抑えましょう。
家庭裁判所による検認手続きを踏まずに、遺言を開封したり、遺言書の内容を執行をしたりした場合は、5万円以下の過料に処せられることがあるので、くれぐれも注意してください。
手軽で身近に始められるのが自筆証書遺言
ここまで自筆証書遺言の基礎知識や、実践的な知識について解説してきました。
相続がひとたび発生してしまうと「遺産額の大きい、小さいに関わらずもめてしまった」という声も聞かれています。他にも「故人の遺言書があると、相続人同士で仲が悪くても腹を立てずに話し合いにも臨める」という声もあったため、遺産相続時における遺言書の存在はとても大きいといえます。
自筆証書遺言は他の遺言方法と異なり、1人でも作成できるためすぐに書き始められます。「転ばぬ先の杖」ということわざがあるように、遺産を渡す側ともらう側で相談しながら、手遅れになる前に遺言書の作成を、一度検討してもよいのではないでしょうか。