公正証書遺言の基本。メリット・デメリット、作成の流れ、費用、必要書類とは?

公開日:2022年6月29日|更新日:2023年1月4日

公正証書遺言の基本。メリット・デメリット、作成の流れ、費用、必要書類とは?_サムネイル

。専門家によって作成され、公的機関に保管される「公正証書遺言」は、3種類ある遺言方法の中でも、とくに信頼性の高いものとして利用されることが多いようです。こちらの記事では、相続トラブルをできるだけ抑えて遺産を渡したい、または遺産をもらいたいと考えている方に向けて、公正証書遺言の基礎知識・メリットなどをわかりやすく解説します。

《基本》公正証書遺言とは?

公正証書遺言の基礎知識について解説します。公正証書遺言とは、簡潔にいうと、遺言を作成する人(遺言者)が公証人に依頼して、公正証書として作成してもらった遺言のこと。

公正証書遺言をしっかりと理解するために、関連して登場してくる「公証人」と「公正証書」について解説していきたいと思います。

公証人・公正証書とは?

公証人は、公証事務という仕事を行う法律の専門知識に長けた公務員のような人。高度な法的知識と豊富な法律関連の実務経験を有しており、法務局の管轄する役所である「公証役場」にて公証事務を行います。公証人の主な公証事務は「公正証書の作成」「認証の付与」「確定日付の付与」の3種類です。

「公正証書」とは、個人などからの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する「公文書」。公正証書は公正の効力が生じ、極めて高い証拠力を持つようになります。

ちなみに、公証人は国家公務員法からみると公務員ではありません。しかし、刑法の文書偽造罪等や国家賠償法で規定されている公務員に該当すると解釈されているため、“ 実質的 ”な公務員と位置づけられています。

参考:日本公証人連合会「1 遺言」、法務省「公証制度について

公正証書遺言とは、有効性・安全性に優れた遺言

前述の通り、公正証書遺言とは、遺言者本人が依頼して公証人に作成してもらった遺言のことで、遺言を公正証書として残します

2021年の公正証書遺言の作成件数は、約10万6000件と発表されており、過去10年間の統計を見ると年間8万件から11万件の間を推移している状況です。

「公正証書遺言」の作成方法は、証人(立会人)2名の前で遺言者の話した内容を公証人が聞き取り、その内容を証人に間違いないか確認しながら、法律的に有効になるように整理して作成されます。

そもそも遺言書は、遺言者による単独の法律行為であるため、形式不備で無効になる可能性もありますが、「公正証書遺言」はこのように公証人の前で助言などを受けながら作成されます。

そのため、形式の不備で無効になる可能性が極めて低い遺言方法であるといえます。

また、厳重なシステムの下、法務局管轄の公証役場にて公正証書遺言は保管されるため、改ざんや紛失の心配がほとんどありません。したがって、遺言としての有効性や保管場所の安全性が、他の遺言方法よりも高いことが公正証書遺言のメリットだといえます。

参考:日本公証人連合会「1 遺言

公正証書遺言以外の遺言方法とは?

遺言書の形式は、公正証書遺言以外にも2種類が存在しています。その2種類とは、自筆証書遺言と秘密証書遺言です。自筆証書遺言と秘密証書遺言の特徴をおさえ、比較することで公正証書遺言への理解をさらに深めましょう。

自筆証書遺言:費用をかけずに単独で作成する遺言

自筆証書遺言とは、財産目録を除き、遺言者本人が自分の手で書いた遺言を指します。他の形式と比較すると、自筆証書遺言はあまり費用や手間が掛からないため、一番簡単に作成できることがメリット。

ただし、自筆証書遺言は専門家のチェックを通さないため、書き間違えや様式不備で無効になる恐れがゼロではありません。さらに、法務局管轄の「自筆証書遺言書保管制度」を利用しない場合、遺言者の自宅で保管されるため、遺言書の改ざん・偽造・紛失の恐れがあることもデメリットとして挙げられます。

「自筆証書遺言」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

秘密証書遺言:存在だけを公証役場で証明してもらう遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしながらも、その存在だけを公証役場で証明してもらう遺言を指します。遺言書の偽造や改ざんの恐れを低く抑え、公証役場には遺言を作成したという記録だけが残ります

遺言書の存在を証明できるため、亡くなった後に遺言書が見つけてもらえないことや、国に遺産が帰属されてしまうなどの恐れを防げます。なお、秘密証書遺言は、遺言書本文を含めて自筆である必要がありません。パソコンや第三者による代筆によって作成しても問題ありません。

ただし、秘密証書遺言は自分で作成するため内容に不備があれば無効となることや、遺言者本人が保管するため紛失などの恐れがあることも注意点として挙げられます。

「遺言書の書き方」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

公正証書遺言のメリットとデメリット

メリット・デメリットを解説するイメージ

3種類ある遺言方法の中で公正証書遺言を選ぼうと思っていても、具体的な判断材料がないとなかなか難しいと思われます。

こちらの段落では、遺言方法を選ぶうえで役立つような、公正証書遺言の具体的なメリットとデメリットを詳しく解説します。

【6選】公正証書遺言のメリット

公正証書遺言の大きなメリットは、高度な法律知識を持つ「公証人」により遺言書を作成してもらえる安心感が挙げられます。もちろん、それ以外にもたくさんのメリットがあり、より具体的な例を交えて解説すると、次のような6つのメリットがあります。

  1. 遺言者の自筆が不要である
  2. 遺言の偽造・紛失の恐れが極めて低い
  3. 信頼性の高い遺言ができる
  4. 遺言の検認手続きが不要である
  5. 公証人が遺言者のもとに出張してくれる
  6. 検索システムで遺言の確認がしやすい

それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。

1. 遺言者の自筆が不要である

公正証書遺言では、遺言者の発言を公証人が聞き取って遺言書を作成します。そのため、遺言者本人が自筆で遺言書を作成する手間を省けるメリットがあります。

また、遺言者が遺言内容を伝える方法は口頭に限らず、口のきけない人のために自書による筆談でも可能。読み聞かせての遺言内容の確認作業では、耳の聞こえない人のために、通訳人による筆記でも対応しています。

遺言者の「署名」でも、遺言者の状態を考慮した柔軟な手続きで対応してくれます。遺言者の「署名」が難しい場合は、公証人が理由を付記し、公務上に用いる印鑑である「職印」を押印すれば、遺言者の署名の代わりとして法的に認められます。

このように体力低下・病気・障害などで手が不自由になったり、口がきけなくなったりした場合でも、公証人に依頼すれば遺言が作成できるというメリットがあります。

2. 遺言の偽造・紛失の恐れが極めて低い

公正証書遺言の保管に関しては、厳重な保管制度を敷いています。法務局管轄の公証役場に遺言書の原本が保管されるため、遺言が勝手に改ざんされたり、紛失する心配がほとんどありません。公正証書遺言の保存期間は、遺言者の死亡後50年、証書作成後140年または遺言者の生後170年間と規則で定められています。

万が一、震災などで原本・正本・謄本がすべて滅失しても復元できるように、公正証書遺言の原本を電子データとして二重保存しています。このように厳重な遺言書の保管制度が整っているのがメリットとして挙げられます。

3. 信頼性の高い遺言ができる

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言内容に対して専門家のチェックを行っていません。そもそも遺言を法的に有効にするためには、相続財産に関する複雑な内容を厳格な書式に則って作成する必要があります。そのため、遺言内容や書式に不備がある場合、その遺言は無効となってしまう恐れがあります。

公正証書遺言のメリットは、遺言書が公証人により公正証書として作成されることです。自筆証書遺言や秘密証書遺言と比較して、遺言書の内容が無効になる恐れは極めて低いため、遺言者は安心して遺言を作成できるといえます。

4. 遺言の検認手続きが不要である

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所による「検認」手続きが必要ですが、公正証書遺言は「検認」が不要です

「検認」とは、相続人に遺言の存在と内容を知らせ、遺言書の偽造・変造を防止する手続きのこと。相続人などが遺言書を発見した場合、基本的に遺言書を開封する前に家庭裁判所に申立てて「検認」を行う必要があります。

しかし、公正証書遺言だけは家庭裁判所の検認手続きが不要であるため、家庭裁判所に申立てを経ずに遺言書を開封できます。そのため、相続開始後に、速やかに遺言内容の執行などの次の相続手続きに移れるメリットがあります。

5. 公証人が遺言者のもとに出張してくれる

公正証書遺言の作成にあたって、遺言者が病気や高齢で体力が低下しているなどの理由で、公証役場に行くことが困難な場合には、公証人が遺言者のもとに出張してくれます

出張先は、遺言者の御自宅・老人ホーム・介護施設・病院など場所を問いません。このように遺言者の年齢や状況に考慮したサービスも提供してくれることが、公正証書遺言を作成することもメリットの1つだといえるでしょう。

6. 検索システムで遺言の確認がしやすい

1989年以降に作成された公正証書遺言は、遺言情報管理システムに登録されています。遺言情報管理システムとは、いわば「遺言書の検索システム」のようなもの。遺言の効力が発生した後、相続人などは全国の公証役場に問い合わせて、死亡した人の公正証書遺言をしたかどうか確認できます。

遺言検索システムで管理されている情報は、「作成した公証役場名・公証人名・遺言者名・作成年月日」の4つ。遠方に住んでおり直接出向くのが難しい場合は、最寄りの公証役場で手続きして、遠隔地の公証役場に保管されている遺言書の謄本を請求できます。

【3選】公正証書遺言のデメリット

遺言に対して安心感や信頼性を得られる公正証書遺言にも、デメリットはあります。利用する前に理解しておきたい3つのデメリットは、次の通りです。

  1. 他の遺言方法よりも費用が高くなる
  2. 証人2名以上を手配する必要がある
  3. 遺言の内容を秘密にできない

それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。

1. 他の遺言方法よりも費用が高くなる

公正証書遺言の作成費用は、公証人手数料令という政令で定められています。公証人手数料は、遺言の目的である財産の価額に応じて決定され、その費用相場は2~5万円程度といわれています。

そのため、遺産の財産価額が高い場合、自筆証書遺言と秘密証書遺言の費用と比較すると、総じて高くなってしまうデメリットがあります。

また、公証人が遺言者のもとへ出張してもらう場合は、手数料が本来の目的価額の1.5倍になり、交通費の実費も加算されます。最後に注意点を付け加えると、遺言の訂正や撤回を公証役場で行う場合にも、別途費用が発生することが挙げられます。

2. 証人2名以上を手配する必要がある

公正証書遺言を作成するためには、証人(立会人)2名以上を手配する必要があります。なお、「証人2名 “以上”」と法律で規定されていますが、実際は「2名」で行われることがほとんどのようです。

証人を手配する方法は、遺言者側で行うか、公証役場で紹介してもらうかの2通りがあります。遺言者側が手配する場合、証人(立会人)になるための条件として、次に該当する者は証人に選べません。

  • 未成年者
  • 相続人になる予定の人(推定相続人)
  • 遺贈を受ける者(受遺者)
  • 推定相続人および受遺者の配偶者および直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人

上記のように証人(立会人)になれない人のことを「欠格者」と呼びます。もしも、欠格者が証人になってしまった場合、その公正証書遺言は無効になってしまうので、注意が必要です。

    公証役場で紹介してもらう場合は、証人(立会人)の紹介手数料が発生します。その費用は公証役場で異なりますが、おおむね証人1人あたり1万円程度といわれています。証人を用意する手間や費用が必ず発生してしまうのは、公正証書遺言のデメリットだといえるでしょう。

    3. 遺言の内容を秘密にできない

    公正証書遺言では、証人2名の前で公証人が遺言者から口頭で伝えられた遺言を聞き取り、公正証書に記載します。

    原本が完成した後に、さらに遺言内容に間違いがないか確認するために、その内容を遺言者と証人2名に公証人が読み聞かせるか、または閲覧させます。したがって、必然的に遺言内容が、自分以外の人に知られてしまうというデメリットがあります。

    しかし、公証人と証人には守秘義務や秘密保持義務が課せられているため、遺言内容が漏れる心配はないと考えられます。

    参考:日本公証人連合会「Q6.公正証書遺言の秘密保持について、説明してください。」、「公正証書」、「2 遺言

    公正証書遺言の作成の流れ

    作成の流れのタイムラインイメージ

    公正証書遺言の作成の流れを解説します。公正証書遺言の作成の流れは、次のように7つのステップに分けられます。

    1. おおまかな遺言内容を整理しておく
    2. 必要書類を準備する
    3. 証人2名を手配する
    4. 公証人との事前打ち合わせ・相談を行う
    5. 遺言作成の日程や場所を決める
    6. 《当日》遺言書の作成を行う
    7. 《当日》公正証書遺言の完成、費用の支払い

    遺言書の作成が完了するまでの日数は約1か月といわれています。

    公正証書遺言の作成の流れで遺言者が理解しておきたいことは、遺言書を作成する当日までに何を準備すべきかということ。公正証書遺言を作成するまでの7つのステップについて、解説していきます。

    1. おおまかな遺言内容を整理しておく

    公証人に相談する前に、自分の財産を「誰に、どれくらい相続させたいか」をあらかじめ整理しておきましょう。このときに遺言書の内容を執行してもらう「遺言執行者」を決めておくのも1つの手。ただし、遺言執行者を指定しておく際は本人の同意を得ておくと、遺言書に関連する手続きもスムーズになります。

    相続人が最低限受け取れる遺産割合である「遺留分」も、遺言書の原案段階で考慮しておくと、相続人同士の相続トラブルを防止することにつながります。

    遺言書の内容は、メモ(原案)程度でも問題ありません。遺言書のメモだけでなく、現預金・不動産・株式・その他権利などに関する財産目録や一覧表を作り、リスト化しておくとさらに便利です。

    2. 必要書類を準備する

    公正証書遺言の作成には、遺言者本人の3か月以内に発行された「印鑑証明書」や「戸籍謄本」など7種類程度が必要となります。(※必要書類の詳細は「公正証書遺言で必要となる書類」の段落にて後述)

    なお、遺言内容や遺言者の事情に応じて、追加で書類が必要となる場合もあるため、最寄りの公証役場に確認しましょう。

    3. 証人2名を手配する

    証人2名は、公正証書遺言を作成する当日間近に手配するのではなく、公証人に相談するタイミングでそろえていることが望ましいようです。遺言に関するメモ(原案)や必要書類と同じく、相談する際に提出された証人予定者の氏名・住所・生年月日・職業を基に、証人として問題ないか確認するためです。

    遺言者側で証人(立会人)を手配する場合、次に該当する者(欠格者)を選ばないように気を付けましょう。

    • 未成年者
    • 相続人になる予定の人(推定相続人)
    • 遺贈を受ける者(受遺者)
    • 推定相続人の配偶者および直系血族
    • 受遺者の配偶者および直系血族
    • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人

    遺言者本人が証人を手配できない場合は、公証役場に相談することをオススメします。

      4. 公証人との事前打ち合わせ・相談を行う

      公証人に遺言の相談を依頼する際には、相続内容に関するメモ(原案)を提出しましょう。同じタイミングで、必要書類や証人(立会人)となる予定の人のメモを一緒に提出するとよりスムーズに進むはずです。

      提出方法は直接公証役場に持参する方法の他にも、メール、ファックス、郵送なども対応しています。公証人は、提出されたメモ(原案)および必要資料に基づき、公正証書遺言の案を作成し、メールなどで遺言者に提示してくれます。

      遺言者は、公証人が考案したその公正証書遺言の案について、修正したい箇所を指摘すれば、公証人がそれに従って修正を行います。こうしたやり取りを経て、遺言書の内容を法的に問題のない形式で作成して、確定していきます。

      打合せの回数は平均して1~2回。予約を取った上で、公証人と遺言者との打合せは電話または公証役場にて行われるようです。なお、相談の段階では費用はかからず、無料です。

      5. 遺言作成の日程や場所を決める

      公正証書遺言の内容が確定すると、公証人と遺言者等との間で打合せを行った上で、遺言書を作成する日時と場所を決めます。

      基本的に、遺言者が証人2名とともに公証役場に行って遺言書を作成します。ただし、健康上などの理由で遺言者が公証役場に出向くことが難しい場合は、公証人に手数料を払うことで遺言者の自宅、病室などでも行うことも可能です。

      6.《当日》遺言書の作成を行う

      身分証明書などで遺言者の本人確認などを終えたら、遺言の趣旨を公証人に伝えます。このとき、遺言書の内容に誤りがあれば変更することもあります。

      最後に、遺言者および証人(立会人)が、公証人の筆記した遺言内容が正確であることを承認して、公正証書遺言の原本に署名し、押印がなされます。最後に、公証人も公正証書遺言の原本に署名し、職印を捺印することで「公正証書遺言」が完成します

      なお、遺言者が公正証書遺言に署名できない状態であれば、公証人が理由を付記し、職印を押印すれば、遺言者の署名の代わりとして法的に認められます。

      7.《当日》公正証書遺言の完成、費用の支払い

      公正証書遺言は、遺言書の「原本」とその写しである「正本」、「謄本」の3通が作成されます。遺言書の原本は公証役場にて厳重に保管され、正本と謄本が遺言者に渡されます。なお、3通はそれぞれ同じ執行力を持ちます。その場で、公正証書遺言の作成費用を公証人に支払い精算して手続きは完了します。

      参考:日本公証人連合会「Q4.公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか。

      公正証書遺言の作成費用

      公正証書遺言の作成費用を解説します。公正証書遺言の費用相場は2~5万円程度のようです。公正証書遺言で発生する費用の内訳は、次の6つに分けられます。

      1. 相続する財産価額に応じた手数料
      2. 遺言加算
      3. 必要書類の取得費用
      4. 追加発行の手数料
      5. 出張依頼の費用
      6. 証人(立会人)への費用
      7. 《番外編》専門家に作成依頼したときの費用

      上記の6つについて、ポイントを押さえつつ詳しく解説します。とくに(1)~(3)については、必ず発生する費用なのでしっかり理解しておきましょう。

      1. 相続する財産価額に応じた手数料

      1つ目が「相続する財産価額に応じた手数料」。公正証書遺言の作成費用は遺産を目的とする財産価額によって以下の通りに、手数料が変動します。

      目的の価額手数料
      100万円以下5000円
      100万円超~200万円以下7000円
      200万円超~500万円以下1万1000円
      500万円超~1000万円以下1万7000円
      1000万円超~3000万円以下2万3000円
      3000万円超~5000万円以下2万9000円
      5000万円超~1億円以下4万3000円
      1億円超~3億円以下4万3000円に
      超過額5000万円までごとに
      1万3000円を加算した額
      3億円超~10億円以下9万5000円に
      超過額5000万円までごとに
      1万1000円を加算した額
      10億円超24万9000円に
      超過額5000万円までごとに
      8000円を加算した額

      引用:日本公証人連合会「Q7.公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらい掛かるのですか。

      たとえば、財産価格が100万円以下だと5000円、100万円超200万円以下だと7000円という具合に、手数料は段階的に変動します。なお、相続人が複数いる場合、各相続人に割り当てられた財産価額に応じた手数料が発生します。

      2. 遺言加算

      2つ目が「遺言加算」。遺産を目的とする財産価額が1億円以下の場合、上記の基準表によって算出された手数料額に1万1000円が加算されます。これを「遺言加算」と呼びます。

      たとえば財産価額が120万円だとしたら、手数料7000円に遺言加算1万1000円が加算されるため、手数料合計が1万8000円となります。

      3. 必要書類の取得費用

      3つ目が「必要書類の取得費用」。公正証書遺言を作成する際には、必要書類を市区町村生役場などで取得しなければなりません。印鑑証明書・住民票・戸籍謄本または除籍謄本・登記事項証明書などの書類を取り寄せましょう。

      必要書類の取得費用を見てみると、印鑑証明書や住民票が1通300円程度、戸籍謄本と除籍謄本はそれぞれ1通450円と750円、登記事項証明書が土地・建物1つにつき600円です。したがって、合計で数千円程度が必要書類を取得するのに掛かるでしょう。

      4. 追加発行の手数料

      4つ目が「追加発行の手数料」。通常の場合、公正証書遺言は「原本・正本・謄本」を各1部作成します。公証役場に保管される「原本」は、交付される枚数が4枚(法務省令で定める横書きの証書では3枚)を超えるとき、1枚ごとに250円の手数料が加算されます。

      また、「正本・謄本」の交付も同様に、1枚につき250円の手数料が必要となります。各種相続手続きで、追加で必要となるときは念のために留意しておきましょう。

      5. 出張依頼の費用

      5つ目が「出張依頼の費用」。遺言者が、病気などを理由に公証役場に出向けない場合、公証人が遺言者のもとに出張してくれます。病院・自宅・老人ホーム・介護施設など出張先は基本的に問いません。1つ目で紹介した「相続する財産価額」の手数料に50%が加算されるほか、さらに、「公証人の日当(2万円程度)」と現地までの「交通費」が発生します。

      6. 証人(立会人)への費用

      6つ目が「証人(立会人)への費用」。遺言者自身で証人を手配できれば問題ありませんが、公証役場で紹介してもらう場合は1人につき1万円程度の紹介手数料が掛かります。

      7. 《番外編》専門家に作成依頼したときの費用

      「できれば手間暇を掛けずに、最小限の労力で遺言書を安心して作成したい」と考えている人もいるでしょう。

      そんな方のために番外編として、弁護士・司法書士・行政書士といった専門家に公正証書遺言の作成依頼をしたときの費用を簡潔に解説します。

      専門家に依頼すると、場合によっては必要書類の収集代行や、さらに専門家を遺言執行者として指定することもできます。そのため、相続手続きにかかる時間の節約というメリットが期待できます。

      弁護士における公正証書遺言の「作成手数料」は、全体の80%が10~20万円程度です。さらに遺言書の作成だけでなく遺言執行者にも指定されている場合、手数料総額は全体のほぼ半数が20~40万円程度となっています。

      その他の専門家についても見ていきましょう。司法書士では、公正証書遺言にかかる作成手数料の平均が6万円程度(関東地区)です。

      行政書士では、公正証書遺言だけの報酬統計がないため、他の自筆証書遺言などを含んだ「遺言書の作成手数料」を参考として紹介します。「遺言書の作成手数料」は平均が6.8万円程度ですが、一番多い費用は5万円です。(※1)

      専門家への相談料は1時間あたり5000円~1万円が相場ですが、初回に限り無料相談を実施している事務所もあるため、気になる方は当サイトで一度探してみるとよいでしょう。

      (※1)出典:日本弁護士連合会「市民のための弁護士報酬の目安」、日本司法書士連合会「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」、日本行政書士連合会「報酬額の統計

      公正証書遺言で必要となる書類

      公正証書遺言を作成するには、どのような書類を準備すればよいのでしょうか? 公正証書遺言の作成には、次のような必要書類をそろえましょう。

      • 印鑑登録証明書
      • 戸籍謄本や除籍謄本(遺言者と相続人との続柄が分かるもの)
      • 住民票(※相続人以外の人に遺贈する場合)
      • 登記事項証明書(※不動産相続の場合)
      • 固定資産評価証明書(※不動産相続の場合)
      • 預貯金通帳またはその通帳のコピー
      • 証人(立会人)の予定者に関するメモ

      「印鑑登録証明書」は3か月以内に発行されたものに限るため、期限切れにならないように早く取得し過ぎないように気を付けましょう。印鑑登録をしておらず、印鑑証明書がない場合は、運転免許証・パスポート(旅券)・マイナンバーカード(個人番号カード)・身体障害者手帳などを本人確認書類として使用可能です。

      「住民票」は、遺言者の財産を相続人以外の人に遺贈する場合に必要です。住民票以外では、手紙、ハガキその他住所の記載のあるものでも問題ありません。法人に遺贈する場合には、その法人の「登記事項証明書」または「代表者事項証明書(登記簿謄本)」を取得しましょう。

      不動産を相続させたい場合に必要となるのは、「登記事項証明書」「固定資産評価証明書」の2種類です。「固定資産評価証明書」に関しては、「固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書」でも問題ありません。

      「証人(立会人)の予定者に関するメモ」は、証人2名を遺言者が手配する場合に、証人予定者の氏名、住所、生年月日および職業をメモしたものが必要です。

      このように必要書類は遺言内容によって異なり、他にも資料が必要となる場合もあります。公証人への相談時の打合せがスムーズに進めるためにも、事前に公証役場に確認することをオススメします。

      参考:日本公証人連合会「Q3.公正証書遺言をするには、どのような資料を準備すればよいでしょうか?

      信頼性の高い遺言がいいなら公正証書遺言を

      ここまで公正証書遺言の基礎知識や、実践的な知識について解説してきました。

      家族の仲が必ずよいとも限らないため、ひとたび相続が発生してしまうと、遺産をめぐって相続人同士の相続トラブルが起きてしまうことがあります。「財産を隠し持っているのではないか?」と、相続発生時に財産目録や遺言書がなかったせいで、他の相続人に疑いの目を向けられる苦い経験をしてしまった人もいるようです。

      したがって、遺言を渡す側は自力で遺言を遺せなくなる前に、遺産をもらう側は遺言書を書いてもらうのを後回しにして相続トラブルにならないように、遺言書の作成を早めに検討することをオススメします。

      高い信頼性を誇る「公正証書遺言」を利用すれば、こうした相続トラブルを回避できる可能性は上がります。しっかりと遺産を渡す、または遺産をもらうための一つの手段として公正証書遺言を利用してみてはいかがでしょうか。

      「遺言」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

      記事の著者紹介

      相続プラス編集部

      【プロフィール】

      相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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      本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月29日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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