法定相続情報証明制度とは?制度を利用した方がよいケースや制度のメリット・デメリットを解説します

公開日:2024年8月28日|更新日:2026年8月19日

法定相続情報証明制度とは?メリット・デメリットや手続きの流れ_サムネイル

相続関係の手続きには様々な書類が必要ですが、中でも戸籍謄本は必要な範囲と部数を揃えるのに一定の期間と費用がかかるため、大きな負担になってしまうことがあります。

そのような負担の軽減につながるのが、法定相続情報証明制度です。本制度を利用することで、戸籍収集にかかる手間や費用を削減し、相続の手続きの負担を大幅に減らすことができます。

そこで、法定相続情報証明制度の利用方法や、どのような場面で役に立つのかを本記事で解説します。無駄な手間を減らし、相続の手続きを円滑に進めたい方は、ぜひ参考にしてください。

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法定相続情報証明制度とは?

法定相続情報証明制度とは、登記官から認証を受けた相続関係一覧図の写しの交付を受けられる制度です。

相続が発生すると、相続登記の申請や、金融機関における預貯金の解約手続き・名義変更手続きなどの際に、戸籍謄本の提出を求められる場合があります。従来は、相続手続きごとに出生から亡くなるまでの連続した戸籍謄本を収集し、各機関へ提出する必要がありました。

しかし、このやり方では、提出した戸籍謄本の返却を待つまで他の手続きを進めることができなかったり、複数の戸籍謄本を取得するための費用が都度発生したりするなど、時間的・経済的な負担が生じていました。

法定相続情報証明制度は、このような相続手続きにおける時間的・経済的負担を軽減することを目的として創設された制度です。

法定相続情報一覧図で相続人を証明できる

法定相続情報証明制度は、各種の相続手続きにおいて、戸籍謄本に代わって法定相続情報一覧図を利用できるようにするための制度です。

本制度を利用するにあたっては、相続人と被相続人の関係がわかる戸除籍謄本を収集して法定相続情報一覧図を作成し、申出書とともに法務局へ提出する必要があります。この法定相続情報一覧図とは、戸籍の記載からわかる被相続人と法定相続人を一覧にした図のことを言います。

法定相続情報証明制度の申出ができるのは、法定相続人です。また、法定相続人の法定代理人や親族のほか、相続手続きで関与することの多い弁護士・司法書士・税理士などを代理人として、申出を行うこともできます。

法定相続情報一覧図が法務局で認証されると、登記官の認証が付いた法定相続情報一覧図の写しが交付され、相続登記や金融機関での預貯金の解約・名義変更などの手続きにおいて、戸籍謄本の束の代わりとして提出できます。

一覧図の写しが利用できる手続きの範囲

法定相続情報一覧図の写しは、相続登記や銀行口座や証券口座の名義変更、相続税の申告などの手続きにおいて、相続関係を証明する戸籍書類一式の代わりとして利用できます。

法務局で行う相続登記の申請手続きでは、申請書に法定相続情報番号を記載することで一覧図の写しの添付を省略することも可能です。

申請費用と交付までの期間

申出から法定相続情報一覧図の写しが交付されるまでには、おおよそ1週間程度かかります。もっとも、交付までの期間は法務局や申請時期によって異なり、早い場合には翌日に交付されるようなこともあるようです。

また、申出時に提出する戸籍謄本は、自分で収集しなければならないため、戸籍謄本の収集にかかる時間も考慮する必要があります。しかし、2024年(令和6年)3月1日からはじまった広域交付制度により、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書を請求できるようになりました。そのため、以前よりは遠方の市区町村の戸籍を収集する手間は大きく省けるようになりました。

申出日の翌年から5年間は何度でも再発行できる

法定相続情報一覧図は、法務局で申出日の翌年から起算して5年間保管されるので、5年の間は一覧図の写しの交付を受けることができます。また、一度保管が完了すれば保管期間中は無料で交付を受けられます。

ただし、再交付を申し出ることができるのは申出人に限られ、ほかの相続人が再交付を希望する場合は申出人からの委任が必要です。

保管期限の5年経過したらどうなるか?

法定相続情報一覧図の保管期間は申出日の翌年から起算して5年間であるため、5年を経過したら法定相続情報一覧図の写しは再発行できなくなります。そのため、複数の一覧図が必要な場合は、保管期間中にあとから必要になる分も受け取っておき、保管しておくとよいでしょう。

保管期間の5年を経過すると一覧図の写しは再交付を受けることができず、再度戸籍の収集から一覧図の作成・申出手続きをやり直すことになります。

法定相続情報証明制度を申請する流れ

法定相続情報証明制度の手続きの流れ・必要書類のイメージ

法定相続情報証明制度を申請する際は、必要書類を集めたうえで法定相続情報一覧図を作成し、申出書とともに法務局へ提出します。

ここから申請の流れを具体的に解説していくので、申出を行う場合には下記の流れに沿って進めてください。

必要な書類を準備する

法定相続情報証明制度を利用するには、まず必要書類を揃えたうえで法定相続情報一覧図を作成し、申出書とともに一覧図を法務局へ提出します。

被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となるときなどは、法定相続人の確認のために被相続人の親等に係る戸除籍謄本などが必要になる場合があります。申出人の氏名・住所を確認できる公的書類としては、運転免許証の表裏両面の写し、マイナンバーカード表面の写し、住民票の写しなどが該当します。

法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載するかどうかは任意ですが、記載する場合には各相続人の住所を証明する各相続人の住民票記載事項証明書が必要です。この書類は、各相続人の住民票の写しや印鑑証明書、戸籍の附票でも代用が可能です。

また、代理人が申出を行う場合は、その権限を証明するため委任状や戸籍謄本、身分証明書の提出が求められます。

被相続人の戸籍の附票は、被相続人の住民票の除票が市区町村において廃棄されて用意できない場合などに、住民票の除票に代わる資料として提出が必要です。

法定相続情報一覧図を作成する

法定相続情報一覧図は、被相続人及び戸籍の記載から判明する法定相続人を整理し、被相続人との関係がわかるように一覧化します。

法定相続情報一覧図の書式は法務局の公式サイトからダウンロードでき、記載例も用意されているので、参考にしながら作成することができます。記載例では相続関係を線で示し、氏名・生年月日・続柄などを縦に記載する形式で書かれているため、基本的にはこの記載例に合わせて作成すれば問題ありません。

作成にあたってはA4縦の用紙を使用し、一覧図の下部には認証文が付されるため下から約5cm程度の余白を確保します。文字はパソコンで入力するか、黒色インクや黒色ボールペンで明瞭に記載しましょう。

被相続人の最後の本籍や、相続人の住所の記載は任意ですが、記載する場合には住民票の写しの提出が必要です。記載しない場合は住所欄を設ける必要はありません。

記載事項の詳細については、法務局の記載例を参照しながら作成しましょう。

参考:主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例│法務局

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書に記入する

法定相続情報一覧図を作成したら、「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記入し、法務局へ提出します。

申出書の書式は、法務局の公式サイトからダウンロードできます。

申出書には申出年月日を記入し、黒枠内の事項を漏れなく記載します。郵送で申出を行う場合は、法務局に書類が到着した日が申出年月日として取り扱われます。

被相続人の表示欄には、被相続人の氏名、最後の住所、生年月日及び死亡年月日を記入します。申出人の表示欄には、申出人の住所、氏名、連絡先及び被相続人との続柄を記載します。

代理人が申出を行う場合は代理人の住所、氏名及び連絡先を記入し、法定代理人か委任による代理人かを選択します。

また、「利用目的」欄では、一覧図の写しを使用する手続きとして、「不動産登記」「預貯金の払戻し」「相続税の申告」等の該当項目にチェックを入れ、必要に応じて「その他」欄に具体的な利用目的を記入します。

さらに、「必要な写しの通数・交付方法」欄では、取得を希望する一覧図の写しの通数を記入するとともに、「窓口で受取」又は「郵送」のいずれかの交付方法を選択します。なお、郵送による交付を希望する場合は、返信用封筒及び郵便切手を同封する必要があります。

申出先の登記所の欄では、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産所在地のいずれかを管轄する登記所の中から1つを選択し、その下の欄に登記所名を記入します。

参考:法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書│法務局

法務局で申請する

必要書類及び法定相続情報一覧図を準備したら、「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の申出先の登記所の欄に記入した管轄の法務局へ申出を行います。提出後、登記官が戸籍関係書類や一覧図の内容を確認し、不備がなければ認証が行われます。

認証が完了すると、登記官の認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。法定相続情報一覧図の写しは相続登記だけでなく、銀行口座の名義変更や預貯金の払戻し、有価証券の相続手続きなど、各種の相続手続きにおいて戸籍謄本の代わりとして利用できます。

交付された一覧図は、法務局において申出日の翌年から起算して5年間保管され、保管期間内であれば申出人は再交付を申し出ることができます。再交付を受ける際は、申出人の本人確認書類の提示が必要です。

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法定相続情報証明制度を利用したほうがよい状況

法定相続情報証明制度は、戸籍の収集や一覧図の作成といった手間がかかる点に留意が必要です。しかし、これらの手間を踏まえても、複数の機関で相続手続きを行う必要がある場合には、制度を利用するメリットが大きいといえるでしょう。

法定相続情報証明制度を利用するメリットが大きいのは、複数の機関で相続手続きを行う必要がある場合です。以下では法定相続情報証明制度を利用したほうがよい状況について解説していくので、本制度を利用すべきかどうかを判断するうえで参考にしてください。

複数の相続手続きがある場合

戸籍謄本が必要な相続手続きが複数ある場合には、法定相続情報証明制度を利用するメリットが大きいといえます。

それぞれの機関で戸籍謄本の提出を求められる場合がありますが、法定相続情報証明制度を利用すれば法定相続情報一覧図の写しの交付を必要な分だけ用意し、戸籍謄本の代わりに提出できます。そのため、法定相続情報証明制度を利用することで戸籍謄本を収集する手間を大幅に削減できます。

戸籍の束を毎回収集したくない場合

相続手続きにおいて、戸籍謄本は相続人と被相続人の関係を証明するために用いられますが、被相続人や相続人が転籍や婚姻などを繰り返していると必要な戸籍の数が増え、収集に手間がかかります。

法定相続情報証明制度を利用すれば、一度作成した法定相続情報一覧図の写しを何度でも発行できるため、毎回戸籍謄本を収集して提出したり、管理する必要がなくなります。そのため、戸籍の束を毎回収集したくない場合や管理をしたくない場合には、法定相続情報証明制度を利用するメリットが高いと言えます。

法定相続情報証明制度を利用しなくてもよい場合

法定相続情報証明制度は相続手続きの負担軽減に役立ちますが、一覧図の作成や申出には一定の手間がかかります。そのため、相続手続きの手間が少ない場合には、制度を利用することで生じる準備の手間がメリットを上回ってしまうこともあります。

場合によっては法定相続情報証明制度の利用がかえって手間になる場合もあるため、法定相続情報証明制度を利用しなくてよい場合についても理解しておきましょう。

相続手続きが1か所で済む

相続で必要となる手続きが1か所で済む場合、あるいは数が少ない場合などは、法定相続情報証明制度の利用価値は低いといえます。例えば、相続財産が1つの銀行口座の預金のみである場合や、相続財産が持ち家しかないような場合です。

このような場合では、法定相続情報一覧図の作成や申請の手間を考慮すると、かえって相続人の負担になり、相続手続き自体より大変になってしまうので、本末転倒になります。

もっとも、あとから複数の機関へ提出する必要があるとわかる場合もあります。その場合に備えとして、法定相続情報証明制度の利用を検討しておくとよいでしょう。

法定相続情報一覧図を作る手間が相続手続きに勝るとき

法定相続情報証明制度を利用するには、申出人が自ら法定相続情報一覧図を作成し、必要書類とともに法務局へ申出を行う必要があります。

法定相続情報一覧図の作成にあたっては、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、相続関係を確認したうえで、関係図としてまとめる作業が求められます。これらの準備には一定の時間と手間がかかるため、相続手続きを1回行うのと同程度、あるいはそれ以上の負担となる場合もあるでしょう。

また、一覧図を作成するためには戸籍謄本の収集が必要となるため、制度を利用したとしても戸籍収集の手間そのものを省略できるわけではありません。

そのため、相続手続きが1か所のみで完結する場合や、事前に戸籍の準備ができている場合には、法定相続情報証明制度を利用するための準備作業がかえって追加の負担となり、本来の手続きを進めるうえで本末転倒となる可能性があります。

法定相続情報証明制度の利用が、相続手続きそのものの負担を上回ってしまわないように、制度の利用が本当に必要かどうかを事前に見極めることが重要です。

法定相続情報証明制度の注意点

法定相続情報証明制度は、戸籍謄本の提出に代わる証明書として相続手続きの負担を軽減できる便利な制度ですが、利用にあたってはいくつか注意すべき点もあります。制度の内容を正しく理解し、状況に合わせて利用を検討しましょう。

法定相続情報一覧図を作るのに手間と知識が必要

法定相続情報証明制度を利用するためには、申出人自身が法定相続情報一覧図を作成する必要があるため、一覧図を作るのに手間がかかる場合もあります。

法定相続情報一覧図は、被相続人及び戸籍の記載から判明する法定相続人を整理し、被相続人との関係がわかる一覧図です。法定相続情報一覧図の作成にあたっては戸籍謄本の内容を正確に読み取り、相続関係を誤りなく反映させなければならないため、戸籍の読み方や一覧図の作成方法を正確に理解しなければなりません。

そのため、戸籍に関する知識がまったくない人にとっては法定相続情報一覧図の作成が難しく感じる場合もあるでしょう。

法定相続情報一覧図を利用できない金融機関もある

法定相続情報一覧図の写しは、相続登記や金融機関の手続きなど様々な相続手続きに利用できますが、どこの機関でもかならず受付けてもらえるわけではありません。一部の地方銀行や小規模な金融機関などによっては、戸籍謄本の提出を求められる場合もあります。

そのため、法定相続情報証明制度を利用する場合は、提出先に法定相続情報一覧図の写しが認められるかどうかを確認しておくことが重要です。

法定相続情報証明制度を活用して相続手続きをスムーズに進めよう

法定相続情報証明制度は、戸籍謄本の束を複数の機関へ提出する手間を省き、相続手続きを効率的に進めるための制度です。法務局で認証を受けた法定相続情報一覧図の写しを取得すれば、相続登記や金融機関での名義変更や預貯金の払戻し、有価証券の相続手続きなど様々な場面で戸籍謄本の代わりとして利用できます。

もっとも、制度を利用するためには事前に戸籍の内容をもとに法定相続情報一覧図を作成する必要があり、状況によっては一覧図の作成に一定の手間がかかる場合もあります。

また、提出先の機関によっては法定相続情報一覧図の写しが受け付けられないこともあるため、提出先の機関が一覧図の写しによる手続きに対応しているかどうかなどを、事前に確認しておくことが重要です。

 

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記事の著者紹介

金田直也(ライター)

【プロフィール】

法律×マーケティングの専門家。司法試験予備試験一次合格後、二次試験最終順位は受験者総数の上位約5%。法律ライター歴5年、執筆記事1,000本以上、弁護士への取材100件以上の豊富な実績を持つ。東証マザーズ上場企業(売上高約20億円)、業界トップクラスの大手弁護士ポータルサイト運営企業をはじめ、多様なクライアントと3年以上の長期継続契約を維持。法律知識×弁護士実務への理解×コピーライティングスキルの総合力で、弁護士事務所をはじめ士業の集客・受任数増加に貢献。

【資格】

司法試験予備試験一次合格

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年8月28日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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