親など自分の身近な人が亡くなると、多くの死亡手続きの対応をしたりしなければなりません。
しかし、いざ各種手続きをするとなったとき、どの手続きから始めればよいかわからない方も多いことでしょう。
こちらの記事では、死亡した際の基本的な手続きを時系列の流れで解説します。「死亡手続きのチェックリスト」も付いているので、印刷して活用できます。
目次
【チェックリスト】死亡した後の基本的な手続き一覧
死亡日当日から、遺族が行うべき死亡手続きを時系列に沿って紹介していきます。
すべての手続きをまとめたのが下記の2枚の画像です。
上記の画像をダウンロードをして、活用できる【死亡した後の基本的な手続きチェックリスト】もご用意しました。
印刷をしてチェックリストとしても使用することもできます。
【当日】死亡診断書の取得・葬儀手続き
死亡日当日にやることは次の通りです。
- 死亡診断書の取得
- 葬儀会社の決定
- 退院手続きと遺体の搬送
- 葬儀会社とお通夜・お葬式の打ち合わせ
- 近親者への連絡
上記について、順番に解説していきます。
死亡診断書・死体検案書の取得
死亡の事実を証明する「死亡診断書」は、故人が病院で亡くなった場合、その病院の医師や主治医が発行してくれます。一方で、自宅(実家)で亡くなった場合は、「死亡診断書」を発行してもらうのはかかりつけ医。「かかりつけ医」とは、訪問診療を日頃から行っているなど、患者にとって身近で頼りになる医師を指します。かかりつけ医に実家まで来てもらい、「死亡診断書」を発行してもらい、取得しましょう。
かかりつけ医がいない場合は、警察に連絡して事件性がないことを証明してもらいます。このとき発行されるのは「死体検案書」。「死体検案書」は、死亡診断書とほぼ同じ内容ですが、病院のように医師が容態の経過を把握しているかどうかの違いがあります。容態の経過を把握していない場合に、死因や死亡時刻などを検案し死亡の事実を医学的に証明します。
病気以外が死因である場合も同様の手順を取ります。まずは警察に連絡し、死亡診断書の代わりに「死体検案書」を発行してもらい、取得する流れです。遺体を目にしたときに、取り乱さないように警察に連絡し、その後も冷静に対応することに注意しましょう。
なお、「死亡診断書」と「死体検案書」は、この後の手続きで必要になる場面が多いです。死亡診断書がないと、火葬や納骨などの手続きができません。原本を手続きに提出すると返却されない場合もあるため、コピーを複数保管しておくと安心です。
葬儀会社の決定
遺体の搬送からお葬式の手配・進行を依頼する葬儀会社を決めます。
故人が特定の葬儀会社の会員となり葬儀費用を積み立てている場合や、事前に葬儀の準備を進めている場合もあります。エンディングノート・郵便物・故人の記録などを確認しましょう。あらかじめ故人の生前中に葬儀の意向を話し合っておくと、その後の手配もよりスムーズに進められます。
特定の葬儀会社が決まっていない場合は、後でトラブルにならないように家族や親族と相談したうえで、葬儀会社を決めることをオススメします。あるいは、病院が葬儀会社を紹介してくれることもあるので、紹介先の葬儀会社を利用するのも問題ありません。葬儀費用は葬儀会社や葬儀規模によって異なるので、費用や対応・評判など総合的に判断して葬儀会社を選びましょう。
退院手続きと遺体の搬送
葬儀会社が決まれば、葬儀会社が病院や実家から安置所に遺体を搬送します。一般的に、病院の安置所を利用できるのは数時間ほど。その後は、実家や葬儀会社の安置所への搬送になります。実家などの搬送と同時に、退院手続きや医療の支払いも行う流れになります。当然この段階でも費用が発生するので、誰が払うのかを決定しておくとトラブルになりにくいでしょう。
葬儀会社とお葬式の打ち合わせ
葬儀会社の担当者と葬儀について内容・日程などの打ち合わせを進めます。主な打ち合わせ内容は次の通りです。
- 遺体の搬送・安置・納棺
- 霊柩車(れいきゅうしゃ)・移動用車両の手配
- 喪主や受付などの役割
- お葬式の形式・参加人数(規模)
- 料理・供花・供物の手配
- お葬式時の配布する香典返しの手配故人の関係者や職場への連絡
葬儀会社の打ち合わせは、死亡後すぐに始まるため、通常よりも冷静な判断ができない場合もあります。葬儀会社の勧めるままのプランで執り行うと、高額な費用が請求されるというケースもあるようです。そのため、葬儀内容や費用などについて、詳細に説明してくれる担当者をしっかりと選び、トラブルに発展しないように注意しましょう。
故人の遺体は必ず安置しておく必要があります。というのも、火葬または埋葬は、死後24時間以上経過してから行うと法律で規定されているためです。お葬式の日程にも影響します。ちなみに、「葬式」とは、お通夜(通夜式)・葬儀(葬儀式)・告別式・火葬などの一連の流れを指す言葉です。
近親者への連絡
必要に応じて家族や親族、実家付近でお世話になった人などに訃報を伝えます。葬儀などの具体的な日程が決定する前でも取り急ぎ亡くなったことを伝えておくと、相手も詳しい日程が決まった後の対応がしやすくなるでしょう。
【2日目】死亡届の提出・お通夜の執行など
死亡日から2日目に行う手続きは、「死亡届の提出」や「火葬許可証の申請」です。お通夜は一般的に、死亡日の翌日に行います。ただし、火葬場のスケジュール、親族の日程、友引・大安・仏滅などの「六曜」などが影響して、翌日にお通夜を執り行わないケースもあります。
火葬などが行われる葬儀の前日準備に位置する2日目。必要となる書類提出を中心に解説していきます。
死亡届の提出
「死亡届」とは、人が亡くなったことを役所に通知するための書類。死亡届は死亡診断書(死体検案書)と一緒の用紙にまとめて記載されています。A3サイズの届出書類の左半分が「死亡届」、右半分が「死亡診断書(死体検案書)」という具合です。
死亡届を提出できる人は、原則として故人の親族・同居人などの「届出人」。しかし、死亡届を届出人が記載して、使者(届出人以外の人、つまり代理人)が窓口に提出しても問題ありません。本人が死亡しているため委任状は取得する必要はありません。病院から死亡診断書(死体検案書)を受け取り、死亡の事実を知った日から「7日以内」に、次の3か所のうちいずれかを管轄する市区町村役場に死亡届を提出しましょう。
- 故人が亡くなった場所(死亡地)
- 故人の戸籍が登録されている土地(本籍地)
- 届出人の住民票が登録されている土地(住所地)
上記の届出地に該当しない市区町村役場の窓口での死亡届は受理されません。とくに、故人の住所地は、届出地に該当しないので注意しましょう。死亡届を市区町村役場に提出し、故人の住民票・戸籍謄本・除籍謄本を取得します。なお、死亡を知った日から7日以内に提出しないと、5万円以下の過料に課せられることがあるので注意しなければなりません。
なお、葬儀会社との打合せの際に、死亡診断書(死体検案書)を葬儀会社に渡しておけば、「死亡届の提出」と「火葬埋許可の申請」を葬儀会社が代行して提出してくれることがあります。注意点として、葬儀会社に提出すると原本が手元に残らないため、死亡診断書と死亡届の写しを保管しておくことを忘れないようにしましょう。
火葬許可証の取得
「火葬許可証(埋火葬許可証)」とは、故人の遺体を火葬するために必要な公的証明書類。人が死亡した後、「死亡届」と「死亡診断書(死体検案書)」を市区町村役場に提出する際にあわせて、「火葬許可証申請書」の手続きを行うと「火葬許可証」が発行され、取得できます。「火葬許可証申請書」に、故人の本籍地・現住所・火葬場などを確認し必要事項を記入しましょう。
死亡届の提出期限はその人の死亡後、その事実を知った日から7日以内ですが、火葬許可証には提出期限が設けられていません。ただ、葬儀の日に火葬するのが日本の葬祭における通例であるため、死亡届と同時に提出することが多いです。
「火葬許可証」の役割は、故人の遺体を火葬するだけではありません。火葬場から返された後、墓地・霊園に納骨する際にも「火葬許可証」は必要になるので、しっかりと保管しておきましょう。火葬許可証の提出の流れを整理すると、まずは、故人の遺体を火葬するときに葬儀会社(火葬場の管理事務所)。その次に、墓地や霊園に提出するという流れです。
前述の通り、葬儀会社が死亡届の提出と火葬許可証の申請を代行してくれることがあるので、確認・相談してみるとよいでしょう。なお、日本の法律上、故人の遺体を必ず火葬にする義務があるわけではありません。そのため、東京都や大阪府などの都市圏のように土葬が禁止されている区域を除き、宗教上などの理由で土葬が認められる地域もあります。
お通夜の執行
お通夜(通夜式)とは、故人の家族や親族を中心に親しかった友人などが実家などに集まり、故人を偲びながら故人と一緒に最期の夜を過ごす儀式です。現在のお通夜の所要時間は2時間ほど。本来は、一晩中(つまり、“夜通し”)行っていたことが、お通夜の語源とも言われています。
一般的な葬儀のスケジュールを見ると、死亡日の翌日にお通夜が行われ、その次の日に葬儀・告別式、そして火葬が行われるという流れ。お通夜は、仏教であれば僧侶による読経や焼香などが一般的に行われます。故人の遺族がお通夜振る舞いと呼ばれる料理を参列者にもてなします。
お通夜は故人のために多くの人が実家付近の施設に一堂に会する儀式です。そのため、滞りなくお通夜を進めるために、葬儀会社と次の項目を確認しておくとよいでしょう。
- 喪主や受付係などの当日の役割
- 席次・祭花壇・飲食の手配
- 弔電の管理
喪主は、遺族の代表者。葬儀会社との打合せに参加し、お通夜の進行役です。また、故人の生前の人柄や故人の人生を、参列した人に伝える上でとても重要な役割を担います。受付の役割は、弔問客が会場に来た際に、香典を受け取ったり、行先に迷わないように案内したりします。
会場の座席の順序を決める「席次」では、血縁関係が近い順番に座席が並びます。さらに、故人が会社でお世話になった人や親交が深かった人にも、席が用意されています。祭花壇の順番も同様に、お世話になった人が会場の中心に配置するなどの対応が求められます。祭花壇・座席の順番を間違えて、弔問客に対して失礼にならないようにくれぐれも注意しましょう。
弔電(ちょうでん)はお通夜や葬儀に参列できない場合に、故人への哀悼の意を込めて送られる電報を指します。訃報を聞いて、高齢や病気を理由に参列したくてもできない人の弔電が送られてきます。式の中で紹介されることもあるため、誰からの弔電が送られてきたかを確認し管理しておきましょう。
【3日目】葬儀と火葬
死亡してから3日目は、葬儀と火葬がメインになります。そのため、葬儀と火葬に関わる手続きである「火葬執行済が押印された火葬許可証」と「埋葬許可証」について、まずは解説。さらに、葬儀と一緒に行われることのある「初七日法要」についてもあわせて解説します。
葬儀(告別式)の執行
葬儀(葬儀式)とは、故人の冥福を祈り、故人を葬るための儀式です。実家付近の施設でお通夜が行われた日の翌日の昼に3時間程度かけて行われます。お通夜と同様に、葬儀会社の担当者と段取りを確認しながら、喪主や受付の方が中心となり葬儀を行います。
最近の傾向として、実家付近の施設にて葬儀と告別式を同日にまとめて行われる流れが多いようです。「葬儀(葬儀式)」は冥福を祈る宗教儀式、一方で、「告別式」は弔電の読み上げ棺(ひつぎ)に花を入れるなど社会的儀式。このように異なる目的であるため、葬儀と告別式は別々に行われていましたが、現在は時間短縮のために一緒の日に行われるケースが多いです。
火葬の執行
葬儀や告別式が終わると、遺族はタクシーなど移動用車両に乗って、故人の遺体と喪主はともに霊柩車で火葬場に移動します。火葬場に送り出す「出棺(しゅっかん)」の儀式を終えると、棺は遺族に見守られながら故人の遺体は火葬されます。このとき、喪主は必ず「火葬許可証」を火葬場に持参し、提出しましょう。火葬は基本的に葬儀と同じ日に執り行われます。
ちなみに、遺体が火葬されることを「荼毘(だび)に付す」と表現することもあります。
火葬執行済が押印された火葬許可証の取得
故人の遺体が火葬されると、火葬が済んだことを証明するために火葬許可証に「火葬執行済」が押印されます。「火葬執行済が押印された火葬許可証」は「埋葬許可証」として転用が可能になります。「火葬執行済みの火葬許可証」は、納骨の際に墓地や霊園などの管理者に提出するための必要書類となるので必ず取得し、保管しておきましょう。
一般的に、「火葬執行済が押印された火葬許可証」は遺骨と一緒に喪主に返還されます。四十九日法要などに合わせて「納骨」は行われることが多いので、それまで遺族は大切に「埋葬許可証(押印済みの火葬許可証)」を保管しましょう。紛失の心配があれば、コピーを取っておくのも1つの手。万が一、紛失してしまった場合は、火葬許可証を発行してから5年以内であれば、市区町村役場で再発行が可能です。
埋葬許可証の取得
埋葬許可証は、火葬後の遺骨を墓や納骨堂に埋葬するための公的証明書類。ほとんどのケースで「火葬執行済が押印された火葬許可証」が埋葬許可証としての役割を担うため、場合によっては「埋葬許可証」が必要になると認識しておくとよいでしょう。
埋葬許可証と「火葬執行済が押印された火葬許可証」はまったく同じ書類ではなく、厳密には異なる書類です。火葬許可証と埋葬許可証は「埋火葬許可証」として1枚の用紙にまとまっています。「火葬」か「埋葬」かどちらかにチェックを入れて必要事項を記入して使用してください。
このとき、「火葬執行済の印」が押されているかの違いはありますが、「火葬許可証」であれば火葬許可証と埋葬許可証の両方の機能を兼ね備えます。一方で、「埋葬許可証」として使用すると、埋葬許可証だけの機能しかなく、火葬許可証として役割を担うことはありません。現代の日本では、火葬にして納骨した状態で埋葬するケースがほとんどですが、宗教上の理由で土葬する際などには留意しておいた方がよいでしょう。
初七日法要の執行
「初七日(しょなのか/しょなぬか)」とは、故人が無事にあの世にたどり着けるように遺族で祈りを捧げる法要で、故人が亡くなってから7日目に行われます。最近では参列者などへの配慮から7日目ではなく、葬儀が執行された同日の葬儀が終わった後に、初七日を済ませることが多いようです。
【4~7日目】葬儀の後処理
実家付近の施設で行われた通夜・葬儀・火葬などお葬式が一段落したら「葬儀費用」の精算をします。なお、故人が会社員だった場合は、必要な手続きが1つ増えます。
【5日以内】健康保険の停止手続き
故人が会社員だった場合、勤務先の社会保険に加入していることになります。そのため、故人が亡くなると、故人が加入していた「健康保険被保険者証(いわゆる、保険証)」の返還と、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」の資格喪失届を提出しなければなりません。
健康保険に関しては健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)に、厚生年金に関しては会社経由で年金事務所に届け出を行いましょう。基本的に、故人の勤務先の指示に従えば、手続きは滞りなく進みます。また、健康保険の手続き期限は、死亡後から5日以内です。
もし、遺族が故人の健康保険の扶養に入っていた場合、その遺族の保険証が使用できなくなります。自らが国民健康保険に加入するか、他の家族が加入する健康保険の扶養に入りましょう。
葬儀代支払い・領収書の取得
「葬儀費用」の主な内訳は、次の通りです。
- 葬儀一式費用(霊柩車などの車両関係費用・火葬費用・祭壇費・運営管理費など)
- 飲食接待費用(通夜料理・告別料理・会葬返礼品など)
- 寺院関係費用(読経料・戒名料・お布施など)
葬儀費用は、葬儀から約1週間後に葬儀会社から請求書が発行されます。支払い忘れが起きないように、遺族は請求書をもらったタイミングで葬儀代を支払ってもよいでしょう。葬儀代を支払った後に葬儀会社から領収書(明細書)を受け取り、大切に保管しておいてください。
葬儀費用は葬祭費支給制度の対象となっており、申請する際にこのときの受け取った領収書が必須となります。地域によって異なりますが、葬祭費支給制度での支給額は5~7万円のところが多いです。お葬式の規模にもよりますが、葬儀費用総額の相場は100~200万円ほどといわれています。
葬祭費支給制度は、2年以内に遺族本人が申請しないと支給されません。葬儀費用はとても大きな出費ですので、少しでもカバーできるように申請用の領収書を大切に保管しましょう。
参考:国税庁「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」
【14日以内】保険・年金などの手続き
親などの親族が亡くなってから7日間は、実家付近で行われたお葬式を無事に終わらせるための手続きや行動が中心でした。7日目を過ぎるとお葬式に関する手続きがほぼなくなるため、遺族たちは徐々に行政手続きや遺産相続のための行動に移ります。
主な公的手続きは「受給停止・変更届・資格喪失届」などです。各種手続きに期限が設定されていますが、とくに罰則などはありません。しかし、期限までに請求手続きなどを済ませておくことをオススメします。
【10/14日以内】年金受給停止の手続き
故人が年金受給者であれば、遺族は年金の受給停止手続きを行う必要があります。「受給権者死亡届(報告書)」の提出を、故人の住民票を管轄する年金事務所または年金相談センターで行いましょう。
年金の受給停止手続きに必要となる主な添付書類は次の通りです。
- 故人の年金証書
- 戸籍謄本(除籍謄本)または住民票除票
必要書類に関しては、戸籍謄本や住民票除票に限らず、「死亡の事実を明らかにする書類」であれば問題ありません。したがって、「死亡診断書(死体検案書)の写しまたは死亡届の記載事項証明書」でも手続きが可能です。
また、年金受給手続きの期限は、故人が厚生年金か国民年金のどちらに加入していたかで、次の通りに分けられます。
- 厚生年金:死亡日から10日以内
- 国民年金:死亡日から14日以内
ただし、日本年金機構に故人の個人番号(マイナンバー)が登録されている場合、原則として、「年金受給権者死亡届」の提出を省略できます。
参考:日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
【14日以内】世帯主変更届の提出
故人が世帯主であった場合は、故人が亡くなった日から14日以内に「世帯主変更届」を市区町村役場に提出しましょう。正当な理由がなく提出しなかった場合は、5万円以下の罰金に課せられることがあります。ただ、一般的には死亡届を提出する際に世帯主変更届を同時に提出するケースが多いようです。
例外として、世帯主変更届を提出する必要がないケースは次の通りです。
- 残された世帯員が1人のみ
- 残された世帯員が15歳未満の子どもと、その親権者
また、世帯主変更届の手続きで必要となる書類は次の通りです。しっかり確認し、忘れずに持参しましょう。
- 届出人(世帯員)の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・住民基本台帳カードなど)
- 国民健康保険被保険者証(※加入している場合のみ全員分)
【14日以内】国民健康保険の資格喪失手続き
故人が国民健康保険に加入していた場合は、「国民健康保険資格喪失届」を市区町村役場に提出しましょう。故人が75歳以上の場合は「後期高齢者医療資格喪失届」を提出します。どちらの喪失届を提出する際であっても、健康保険証も忘れずに同時に返還します。なお、資格喪失届の手続き期限は、故人が亡くなった日から14日以内です。
【14日以内】介護保険の資格喪失届の提出
故人が介護保険の被保険者であった場合、遺族は「介護保険資格喪失届」の手続きを行わなければなりません。介護保険制度とは、平成12年に新設された介護を必要とする高齢者を支えるための制度。一定の年齢条件・要件を満たすと被保険者として加入する必要があります。
提出するかどうかのポイントは、「受給要件を満たしている」かどうかです。たとえば、40歳以上65歳未満の会社員でも、要介護・要支援認定されていなければ、「介護保険資格喪失届」の提出は不要ということです。
「介護保険資格喪失届」の提出期限は、故人が亡くなってから14日以内で、介護被保険者証も同時に返還しなければいけません。介護保険の資格喪失において、必要となる書類は次の通りです。
- 介護保険の資格喪失届
- 介護保険被保険者証
なお、「介護保険資格喪失届」は、故人の住民票がある市区町村役場サイトからダウンロードするか、直接役所へ行って入手できます。
【14日以降】年金・生命保険・税金関係手続き
故人が亡くなってから14日経過した後にも、遺族の対応が必要な公的手続きがあります。手続きの中心になるのは、給付金の受取など公的手続き。年金・生命保険金(死亡保険金)・死亡退職金の受取、そして葬祭費・埋葬料などの自分から請求手続きをしないと給付されないものがほとんど。各種給付金について必要書類や期限を中心に解説していきます。
年金の給付:遺族年金・未支給年金など
遺族は、それぞれの条件によって年金や一時金を受け取れます。各種年金・一時金と申請期限は次の通りです。
- 遺族年金:死亡日の翌日から5年以内
- 未支給年金:死亡日の翌日から5年以内
- 死亡一時金:死亡日の翌日から2年以内
- 寡婦年金(かふねんきん):死亡日の翌日から5年以内
請求手続きができる遺族は、故人の配偶者や子どもなどで、なおかつ生計を同一にしていた者です。また、上記の年金・一時金の請求手続きにおける、共通する主な必要書類は次の通りです。
- 故人の年金証書
- 戸籍謄本、または法定相続情報一覧図の写しなど(故人と請求者の続柄が確認できる書類)
- 故人の住民票の除票
- 請求者の世帯に所属する全員分の住民票の写し(故人と請求者が同一の生計だったことを証明する書類)
- 金融機関の通帳(年金の受取先)
- 死亡診断書(死体検案書等)の写しまたは死亡届の記載事項証明書(※遺族年金のみ必要)
上記の書類に漏れがないか確認し、請求先である年金事務所・年金相談センター・市区町村役場に行き、請求手続きを行いましょう。
遺族年金の請求
故人に18歳未満の子どもや、障がいのある20歳未満の子どもがいる場合は「遺族基礎年金」、故人が厚生年金に加入していた場合は「遺族厚生年金」が支給されます。したがって、子どもの条件を満たす遺族は請求手続きを行えば「遺族厚生年金」を受給できます。
参考:日本年金機構「遺族基礎年金を受けられるとき」「遺族厚生年金を受けられるとき」
未支給年金の請求
公的年金の支給方法は、8月に6月分と7月分というように、偶数月に過去2か月分をまとめて支給する形を採っています。年金は受給者が死亡した月の分まで支給されるため、年金の停止手続きをそのまま進めてしまうと、死亡した月の年金が支給されないという事態が起こりえるのです。
そうならないために、年金事務所・年金相談センター・市区町村役場などで、本来支給されるはずだった「未支給年金」の請求手続きをする必要があります。年金受給者の亡くなった月が、偶数月か奇数月かで未支給年金として請求する月数も変動します。
参考:日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
死亡一時金/寡婦年金の請求
故人が自営業などの第1号被保険者であり遺族基礎年金をもらえない場合、遺族は「死亡一時金」か「寡婦年金」のどちらかを受け取れます。
「死亡一時金」は、故人が第1号被保険者として保険料を36月以上納めた場合に、その保険料を納めた月数に応じて遺族に支給されます。「寡婦年金」は、国民年金の第1号被保険者として、保険料を納めていた夫が亡くなったときに、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して支給されます。
「死亡一時金」の方が申請期限が短いので、「死亡一時金」にあわせて2年以内に「死亡一時金」か「寡婦年金」のどちらを受け取るかを決めて、請求手続きを行いましょう。
その他給付:生命保険や死亡保険金の受取・団体信用生命保険の加入確認など
故人がなくなった際に、年金以外でも条件を満たしていれば、給付金や保険金などを受け取ることができます。年金以外の給付における、請求手続きの申請・受取期限は次の通りです。
- 雇用保険受給資格者証の返還:死亡日の翌日から6か月以内
- 未支給失業等給付:死亡日の翌日から1か月以内
- 団体信用生命保険の加入確認:死亡日の翌日から3年以内
- 生命保険金の受取:死亡日の翌日から3年以内
- 葬祭費・埋葬費の請求:死亡日の翌日から2年以内
- 死亡退職金の受取:申請・受取期限はない
上記を順番に解説していきます。
未支給失業保険給付の申請・雇用保険受給資格者証の返還
「雇用保険受給資格者証」とは、失業手当を受け取れる資格を証明する書類です。故人が雇用保険を受給していた場合、故人と生計を同じくしていた遺族は、故人の死亡前日までの基本手当(未支給失業等給付)を受け取れます。死亡日の翌日から6か月以内に故人が雇用保険を受給していたハローワークに請求手続きをする必要があります。
「未支給失業等給付」を受け取る際の主な必要書類は次の通りです。
- 死亡診断書
- 戸籍謄本
- 住民票記載事項証明書
- 失業認定申告書
また、故人が雇用保険を受給していた場合、故人が雇用保険を受給していたハローワークに受給資格者証の返還もあわせて行いましょう。提出期限は、死亡日の翌日から1か月以内です。雇用保険受給資格者証の返還の際に必要となる書類は次の通りです。
- 雇用保険受給資格者証
- 故人の死亡の事実が分かる書類(死亡診断書または死体検案書)
- 住民票
参考:厚生労働省「亡くなった前日までの失業給付を 受け取ることができます」
「未支給失業等給付」の請求と「雇用保険受給資格者証」の返還はどちらも、請求先(変換先)がハローワークです。必要書類を確認のうえ請求手続きを行いましょう。
団体信用生命保険の加入確認
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンを組む際に加入する保険で、ローン返済中に契約者が死亡したり、高度障害を負ったりした場合に、保険金でローンの残債を返済する仕組みです。団体信用生命保険に加入することで、遺された家族はローンの返済をすることなく、自宅(実家)にそのまま住み続けることができます。ローン返済中に亡くなった場合、3年以内に加入の有無を確認して必要な手続きを進めましょう。
生命保険金の受取
故人が生命保険に加入していた場合、受取人は生命保険会社に連絡をして保険金受け取りの請求手続きをしましょう。まずは、生命保険の保険証券や契約内容のお知らせに記載されている契約内容を確認しましょう。
契約内容に記載されている「契約者」「被保険者」「保険金受取人」の内、「保険金受取人」が、実際に生命保険金(死亡保険金)を受け取るための請求手続きをする人です。死亡診断書の写しなどの必要書類とともに請求しましょう。連絡先は保険証券に記載されている保険会社、または代理店を通じて行われます。
保険会社ごとに若干の違いはありますが、保険会社に提出する主な必要書類は次の通りです。
- 死亡保険金請求書
- 保険証券
- 受取人の本人確認書類
- 受取人の戸籍謄本
- 受取人の印鑑証明書
- 故人(被保険者)の戸籍謄本
- 死亡診断書(死体検案書)
なお、生命保険金(死亡保険金)は受取人の「固有財産」となりますので、受取人が単独で申請をして受け取ることが可能です。したがって、財産について他の相続人に許可を取得する必要はありません。受取期限は3年以内ですが、生命保険金(死亡保険金)が振り込みまで2~3か月かかるケースもあるので、早めに請求手続きすることをオススメします。
葬祭費・埋葬料の給付手続き
お葬式を主催した喪主などは葬祭費・埋葬費の請求ができます。名称の違いについては、国民健康保険・後期高齢者医療制度から受け取れる給付金を「葬祭費」、健康保険(協会けんぽ)など社会保険から受け取る給付金を「埋葬料」と呼んでいるためです。すなわち、故人がどの保険制度に加入していたかで、名称が違うものの同じ目的の給付金を受け取れると考えてもらって問題ありません。
葬祭費・埋葬費は3〜5万円で、故人が加入していた保険組合や自治体によって受取人や金額が異なります。申請期限は2年以内ですので、健康保険の資格喪失手続きと一緒のタイミングで申請しておくとスムーズに請求手続きできます。葬祭費・埋葬費は自分から申請しないと受け取れませんので、忘れずに申請しましょう。申請の際に、必要となる主な書類は次の通りです。
- 健康保険埋葬料(費)支給申請書
- 故人の健康保険証
- 火葬許可証(埋葬許可証)または死亡診断書の写し
- 葬儀会社から発行された領収書
請求先は故人の加入していた社会保険事務所、または健康保険組合です。代理申請を行うときには委任状が必要になります。
死亡退職金の受取
死亡退職金とは、本来は退職時に受け取るはずだったが、労働者の死亡により支給されることになった退職金のこと。通常の退職金との違いは、受取人が労働者本人か遺族であるかという点です。受取期限や申請期限はとくにありませんが、3年以内に受け取ると相続財産に、3年経過後に受け取ると一時所得に死亡退職金が分類されます。
死亡退職金の受取人が退職金規定で指定されている場合は、故人の相続財産に含まれず、生命保険金(死亡保険金)同様に受取人の「固有財産」になります。一方で、受取人が指定されていない場合は、故人の「相続財産」となり遺産分割の対象になり、受取人の「固有財産」にはなりません。故人が退職金制度のある企業に勤めていない場合は、死亡退職金について考慮する必要はないでしょう。
相続関連:準確定申告、相続税の申告納税など
故人が事業を営んでいた、または所得があった場合は、準確定申告を行う必要があります。さらに、遺産総額が基礎控除額を超えて、相続税が発生した場合にも同様に相続税の申告納税を行う必要があります。また、不動産の名義変更(相続登記)も令和6年から義務化されたため、あわせて押さえておきましょう。
「相続税」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「相続税の計算方法」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「相続登記」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
【14日以降】遺産相続に関する手続き
公的、税金関係手続き以外にも別途相続関連の手続きが必要です。たとえば、故人の遺言書の検認、相続人同士での遺産分割協議、そして相続人が相続放棄をした場合などの手続きです。下記のオススメ記事では、こうした相続手続きの流れを期限付きで解説しています。各種相続手続きについて、細かなステップを踏みながら行うと、間違えることなく相続手続きができると思います。
「相続の手続き」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
【期限はないがなるべく早く】各種サービスの変更・解約手続き
行政機関での必要な請求手続きが終わったら、故人と民間会社との諸契約の解約・名義変更手続きを行いましょう。なるべく早く解約・名義変更の手続きを完了させないと、その分使用料金を請求されてしまいます。
故人の銀行口座が凍結されてしまうと、公共料金や各種サービスの自動引き落としも停止します。最低限、こちらの項目を確認しましょう。
- 電気・水道・ガスの公共料金の見直し
- スマートフォン・固定電話の解約
- インターネット回線の解約
- 新聞・インターネット動画の定期購読の解除
- 公共放送・有料放送の受信契約の解除
- クレジットカードの解約
- 銀行口座の名義変更
【期限なし】その他の行政手続き
健康保険・年金以外で、故人の身分証明書に関する行政手続きも残されています。代表的な身分証明書とその返納先は、次の通りです。
- 運転免許証:警察署・運転免許センター
- パスポート:各都道府県の旅券事務所(パスポートセンター)
- シルバーパス:市区町村役場
運転免許証・パスポート・シルバーパスは、いずれも遺族による返納義務・返納しないことによる罰則などはありません。順番に内容を見ていきましょう。
運転免許証を返納しないでそのまま所有・保管していると、運転免許証が有効期限内であれば、免許証の更新通知書などが届きます。返納に必要な書類は、故人の死亡診断書の写し、戸籍謄本の写し、届出人の身分証明書、印鑑。免許証の保有者が亡くなっている場合、遺族が免許を返納する義務はありません。地域によっては、駐在所・交番といった警察署以外の場所でも返納手続きができます。
パスポートは名義人が死亡後に効力を失います。パスポートの返納で必要となる主な書類は、運転免許証などの本人確認書類、戸籍謄本・死亡診断書の写しといった死亡の事実が分かる書類です。故人が国外在住の場合は、最寄りの日本大使館、もしくは総領事館が返納先です。
シルバーパスとは、高齢者がバスなどの公共交通機関を、一定料金で何度も利用できる磁気カードのこと。「シニア向け交通費支援制度」とも呼ばれており、地域によって制度の呼称・対象年齢などに若干の違いはあるものの、制度の概要はほぼ同じです。手続き先は、故人の住所地の市区町村役場です。なお、シルバーパスを返還する際は、返還手数料が払い戻し金額から差し引かれることがありますので注意しましょう。
ちなみに、マイナンバーカード(通知カード)は死亡届を提出すると、自動的にマイナンバーカードも失効されるため行政手続きは不要です。マイナンバーカードの返納をしたい場合は、市区町村役場の窓口に行きましょう。