被相続人とは?相続人との関係性や相続方法などを徹底解説

公開日:2024年12月18日

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相続について調べると「被相続人」という言葉が出てきます。相続人は聞きなれていても被相続人がよくわからないという方も多いでしょう。希望の相続を実現させるためには、被相続人や相続人・相続方法について理解しておくことが大切です。この記事では、被相続人の意味・法定相続人とその順位・相続の意志を反映させる方法などについて解説します。

被相続人とは

被相続人とは、財産を遺して亡くなった人です。一般的には故人とも呼ばれますが、相続手続きにおいては被相続人と呼びます。一方、被相続人の財産を相続する人が「相続人」です。

たとえば、夫が亡くなり妻と子どもが財産を相続する場合、夫が被相続人、妻と子どもが相続人となります。

また、財産を相続する人を指す言葉としては、「相続人」以外に「推定相続人」「法定相続人」もありますが、それぞれ異なるので意味を理解しておくことが重要です。それぞれの違いは次のようになります。

  • 推定相続人:被相続人が存命中の現時点で相続人と推定される人
  • 法定相続人:法的に相続権を有している人
  • 相続人:実際に財産を相続する人

推定相続人は将来相続人になると推測される人を指し、この段階において被相続人は生存しているので相続は開始されていません。相続開始時点で法律上の相続権を有している人が法定相続人です。そして、実際に財産を相続する人を相続人と呼びます。

仮に、夫が存命中に妻と子ども2人がいる場合、夫の推定相続人は妻と子ども2人です。家族構成が変わらずに夫が亡くなると、法定相続人はそのまま妻と子ども2人になります。ただし、子どものうち1人が相続放棄した場合、相続人は妻と子ども1人になるのです。

このように、推定相続人と法定相続人・相続人はイコールにならないケースがあるので注意しましょう。

被相続人の遺産を相続する方法

被相続人の遺産は相続人に引き継がれます。しかし、どのように相続が決まるかは状況によって異なり、主に以下の4つに分かれます。

  • 遺言
  • 法定相続
  • 遺産分割協議
  • 遺産分割調停・審判

遺言

遺言とは遺産の相続についての故人の意思表示であり、それを書面にしたものを遺言書と呼びます。遺言は、相続においてもっとも優先される方法です。そのため、相続が開始したらまずは遺言書の有無を確認する必要があります。

また、遺言はさらに以下の3種類に分かれます。

  • 自筆証書遺言:被相続人が自分で作成した遺言
  • 公正証書遺言:被相続人が公証人に依頼して作成した遺言
  • 秘密証書遺言:被相続人が自分で作成し公証人に存在のみ証明してもらった遺言

公正証書遺言と自筆証書遺言の中でも自筆証書遺言書保管制度を利用したものは、家庭裁判所に提出して、相続人立会いのもとで遺言書の内容を確認する検認なしで開封できます。それ以外の遺言書は発見しても家庭裁判所の検認手続きがなければ、勝手に開封できないので注意しましょう。

「遺言」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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法定相続

法定相続とは、民法で規定された相続人・相続の割合に従って相続する方法です。民法では、相続権のある人を「法定相続人」、相続人が相続できる割合を「法定相続分」として定めています。法定相続人が法定相続分でそのまま相続する方法が法定相続です。

遺言書のない相続では、法定相続か次に紹介する遺産分割協議で相続の仕方を決めることになります。法定相続人の範囲や法定相続分については、後ほど解説するので参考にしてください。

遺産分割協議

遺言書がなく法定相続とは異なる相続をしたい場合に必要になるのが、遺産分割協議です。遺産分割協議では、相続人全員の話し合いにより遺産分割の方法を決めていきます。また、遺言書があっても遺言書に記載のない遺産がある場合も、その財産を法定相続で分けないのであれば遺産分割協議が必要です。

遺産分割協議で相続人全員の合意が得られれば合意に従って相続することになり、合意内容は遺産分割協議書として書面で作成します。

なお、遺産分割協議は相続人のうち誰か1人でも合意しなければ成立しません。遺産分割協議に期限はないため合意するまで話し合うことも可能ですが、いつまでも遺産を分割できない状況が続きます。

また、相続税の支払い期限は相続開始から10か月であるので、それまでに相続を決めなければならないケースもあるでしょう。遺産分割協議がなかなか成立しない場合、次の遺産分割調停・審判を検討することになります。

「遺産分割協議書」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺産分割調停・審判

遺産分割調停とは、家庭裁判所に申し立て裁判所の協力を得ながら遺産分割方法を決める手続きです。裁判所の調停員が中立の立場で相続人から話を聞き、解決方法のアドバイスや提案を行ってくれます。

遺産分割調停でも合意できない場合は、自動的に遺産分割審判に移行します。審判では、相続人の意見や資料をもとに裁判所が判断を下すので、判断に従って相続することになります。

最終的に遺産分割審判まで進むことで相続の仕方は決まりますが、調停・審判が必要になると時間も手間もコストも掛かってきます。また、調停・審判ともなると相続人間の関係性が悪化することも考えられるでしょう。できるだけ遺産分割協議で合意を得られるようにすることが大切です。

「遺産分割調停」や「遺産分割審判」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

法定相続人の範囲と優先順位、相続割合

相続においては、法定相続人の範囲や順位・相続割合についても理解しておくことが重要です。ここでは、法定相続人の範囲・順位・相続割合を解説します。

法定相続人の範囲

法定相続人は、被相続人の配偶者と被相続人と血のつながりがある血族に限られます。また、すべての血族が法定相続人になれるわけではなく以下の範囲に限定されています。

  • <配偶者>夫・妻
  • <直系卑属>子ども・孫・ひ孫など
  • <直系尊属>父母・祖父母・曾祖父母など
  • <傍系血族>兄弟姉妹・姪甥
法定相続人の範囲のイメージ

なお、配偶者とは法律上の婚姻関係のある人を指すため、離婚した人や事実婚・パートナーは配偶者とみなされません。また、子どもには実子以外にも養子・胎児も含まれます。再婚で相手に連れ子がいる場合、連れ子のままでは相続権はありませんが、養子縁組して養子になることで相続権を得ることが可能です。

「法定相続人」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

法定相続人の優先順位

法定相続人になれる範囲の人がすべて相続人になるわけではありません。法定相続人には順位があり、順位が上位の人が相続人になります。

相続できる人の順位は以下の通りです。

相続順位法定相続人
常に相続人配偶者
第1順位<直系卑属>子ども・孫・ひ孫など
第2順位<直系尊属>父母・祖父母・曾祖父母など
第3順位<傍系血族>兄弟姉妹・姪・甥

配偶者は常に相続人となります。さらに、配偶者以外で順位がもっとも高い人が相続人です。同順位で複数人いる場合はその全員が相続人となり、高順位の人が相続人になった場合はそれより下位の人は相続人にはなれません。

たとえば、死亡した夫に妻と子ども・両親がいるケースでは、妻と順位の高い子どもが相続人となり、両親は相続人になれないのです。

また、高順位の人が死亡している場合でも下位の順位の人より代襲相続が優先されます。代襲相続とは、本来相続権のある人が亡くなった場合、その人の子どもや孫が相続権を引き継ぐことです。

仮に、上記の例で子どもが死亡していても、子どもの子(被相続人の孫)がいる場合は、子どもの子が代襲相続で相続人となり、両親は相続人になれないのです。代襲相続は、直系尊属・直系卑属では複数回認められていますが、傍系血族では一回限り(姪・甥まで)という点には注意しましょう。

相続できる遺産の割合

相続できる遺産の割合は、誰が相続人になるかによって以下のように異なります。

相続人の組み合わせ法定相続分
配偶者と子ども配偶者:2分の1
子ども:2分の1
配偶者と父母配偶者:3分の2
父母:3分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1

相続順位の同順位で複数人相続人がいる場合は、法定相続分を人数で公平に分けます。たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、それぞれの相続割合は以下のとおりです。

  • 配偶者:2分の1
  • 子ども2人:4分の1ずつ(2分の1を2人で分ける)

また、相続人が配偶者のみや子どものみと単独のケースでは、その人がすべて相続します。

遺言以外で被相続人の意思を反映させる方法

遺言以外で被相続人の意思を反映させる方法のイメージ

遺言は被相続人の相続の希望を反映させる有効的な手段です。しかし、遺言を遺していても遺言内容が適切ではないなどで希望を反映できない・相続トラブルになってしまう恐れは十分あります。

遺言はあくまで死後に反映されるため、相続開始後にどのような状況になっても手出しできません。そのため、生前中にも相続の意志を反映させる方法を検討しておくことも大切です。

遺言以外で被相続人の相続の意志を反映させる方法としては、以下の6つが検討できます。

  • 生前贈与
  • 家族信託
  • 養子縁組
  • 生命保険
  • 認知
  • 相続廃除

それぞれ見ていきましょう。

生前贈与

生前贈与とは、被相続人の生前中に財産を贈与する方法です。生前贈与は相続人に限らず誰にでも贈与でき、さらに生前中に行うので自分の意志で贈与を決められます。また、生前贈与は適切に行えば相続税対策としても有効です。

ただし、贈与の額によっては贈与税が課せられる恐れがあります。さらに、相続開始直前7年以内の贈与は相続税の対象となるので注意が必要です。相続対策として贈与を検討している場合は、専門家に相談しながら贈与を受ける人の負担が少なくなるように配慮することが大切です。

「生前贈与」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

家族信託

家族信託とは、自分の財産を家族などの受託者に管理してもらう制度です。家族信託は認知症で財産を管理できなくなった時に備えられるだけでなく、死亡後の財産の管理方法についても指定できます。

家族信託で契約した財産の継承については、遺言書よりも優先され、また継承者の次の継承者まで指定できるのでより希望に沿った相続の実現が可能です。

「家族信託」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

家族信託についてお困りの方へ_専門家をさがす

養子縁組

孫や子どもの配偶者・事実婚の子どもには相続権がないため、財産を相続させられません。孫や子どもの配偶者・婚姻関係のない女性との子どもに財産を相続させたい場合、養子縁組という方法を検討するとよいでしょう。養子縁組で養子になることで、実子と相続順位が同じになり相続権を得られます。

また、養子縁組で法定相続人の人数が増えると相続税の基礎控除の額も増えるため、相続税対策としても有効です。ただし、基礎控除で計算に含まれる養子の人数には限りがあるので、養子を増やせばいいというわけではありません。養子が相続することで実子とのトラブルに発展する恐れがある点にも配慮が必要です。

「養子縁組の相続トラブル」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

生命保険

財産を受け継ぎたい人を生命保険の死亡保険金の受取人に指定することで、まとまったお金を残すことが可能です。生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産となるため、遺産分割の対象ではありません。そのため、死亡保険金は相続人以外や相続放棄した人でも受け取ることが可能です。

たとえば、家を配偶者に相続させる代わりに、死亡保険金を子どもに遺し相続放棄してもらうという方法もあるでしょう。また、死亡保険金には相続税の非課税枠もあるので、相続税対策としても有効です。

ただし、受取人・被保険者・契約者の関係によっては、相続税ではなく所得税や贈与税の対象となる可能性もあるので、注意しましょう。

認知

婚姻関係のない男女の間の子ども(非嫡出子)には、相続権がありません。非嫡出子は母親との親子関係が生じているので母親の相続権は有しますが、父親の相続権は認められないのです。ただし、父親が認知することで非嫡出子にも実子同様の相続権が認められます。

とはいえ、非嫡出子の相続はトラブルになりやすいため、専門家に相談のうえ適切な方法を選ぶことをおすすめします。

「非嫡出子の相続権」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続廃除

相続廃除とは、被相続人の生前中に家庭裁判所に認めてもらい相続人から相続権を剥奪する手続きです。被相続人に対する暴力や虐待・侮辱などで相続廃除が認められる可能性があります。相続放棄は相続人の意志で行うため被相続人や他の相続人にはどうすることもできません。一方、相続廃除は被相続人の意志で生前中に手続きし、剥奪された相続人は相続できなくなります。

どうしても相続放棄してもらいたい人がいる場合は、相続廃除を検討するのも1つの手です。ただし、相続廃除は簡単には認められません。「仲が悪いから」といった理由では認められないので注意しましょう。

相続では被相続人や相続人の意味を理解しておくことが重要

被相続人とは財産を遺して死亡した人で、相続人はその財産を受け取る人です。相続発生後は遺言や法定相続分・遺産分割協議で相続が決まるため、自分の相続の意志を反映させるためには相続人や相続の方法を理解し適切に意思表示しておくことが重要です。

また、生前中にも相続の意志を反映できる方法もあるので、あわせて検討するとよいでしょう。相続トラブルを起こさず、より希望の相続を実現させたいなら、専門家に相談しながら遺言などを検討することが大切です。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て平成30年よりライターとして独立。令和2年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識などわかりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年12月18日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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