相続財産のなかに未登記建物があるとき、遺産分割協議書をどのように作成すべきかお悩みではありませんか。結論から言うと、未登記建物も遺産分割協議書への記載が必要です。
本記事では、未登記建物があるときの遺産分割協議書の書き方や相続後の手続きについて解説します。未登記の建物を相続する予定の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
未登記建物も遺産分割協議書に記載する必要がある
相続をする際、相続財産のなかに未登記建物が含まれる場合があります。この場合、所有者が被相続人である情報が登記データに含まれていないため、「遺産分割協議書に書かなくてもよいのでは?」と考える方がいるかもしれません。
しかし、他の建物と同様に、未登記建物も遺産分割協議書に記載する必要があるため注意しましょう。なぜなら、未登記であっても実際に存在している「相続財産」だからです。
未登記建物について詳しく確認しましょう。
未登記建物とは
未登記建物とは、登記されていない建物のことです。
不動産の登記申請は義務付けされており、本来、不動産を取得してから1か月以内に登記しなければなりません。
以下のように不動産を取得した場合には、すみやかに登記申請を済ませましょう。
- 土地を購入するとき
- 建物を建てるとき
- 人から譲り受けたとき
しかし、稀に登記されていない建物も存在します。家を建てたあと手続きしないまま所有者が亡くなった場合や、家を増築した際に増築部分のみ登記されないままの場合などです。
もちろん、未登記のままでも建物を利用することは可能ですが、法的な手続きをする際に不都合が起きることは珍しくありません。
「未登記建物」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
未登記建物も相続財産になる
未登記建物であっても実際に存在しているため、被相続人の「相続財産」として扱います。つまり、財産目録に未登記建物も含まれることとなり、遺産分割協議書にも分割する遺産の1つとして記載しなければなりません。
ただし、登記されている建物と未登記建物では、遺産分割協議書への記載方法が異なります。次の章で、未登記建物がある場合の遺産分割協議書の書き方を詳しく確認しましょう。
未登記建物がある場合の遺産分割協議書の書き方
まず、未登記建物がある場合に作成する遺産分割協議書の例をご紹介します。
下記、不動産は長男・太郎が相続する。
<建物>
所在 :東京都文京区⚪︎丁目⚪︎番地⚪︎
家屋番号:未登記建物 平成⚪︎年建築
種類 :居宅
構造 :木造瓦葦平家
床面積 :1階 100.81㎡
2階 93.67㎡
(未登記建物につき、令和⚪︎年度固定資産記載事項証明参考)
登記済み建物との書き方の違いは、大きく2点あります。
- 家屋番号の書き方
- 建物情報の参考先
それぞれ詳しく解説します。
家屋番号の書き方
未登記建物には家屋番号がないため、「未登記建物」と記載します。
未登記建物を相続する旨を遺産分割協議書に記載することで、「誰が未登記建物を相続するのか」を明確にできます。もし、築年数がわかるのであれば併せて記載しましょう。
建物情報の参考先
所在・種類・構造・床面積などの建物情報は、固定資産税納税通知書や名寄帳などに記載されている内容を参考にして記載します。「未登記建物につき、令和⚪︎年度固定資産記載事項証明参考」と記載しておくと、第三者が見ても理解しやすく丁寧です。
法務局に登記されていなくても、不動産の所在を所轄する市区町村役場の資産税課は建物情報を管理しています。なぜなら、未登記であっても固定資産税の納税義務は発生するためです。
そのため、遺産分割協議書を作成する際には毎年送付される固定資産税納税通知書を参考にしましょう。見つからない場合、市区町村役場の資産税課に赴き、不動産の評価証明書を取得するか、名寄帳を閲覧するかで確認できます。
「遺産分割協議書」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
未登記建物を相続したらどうすればよい?
未登記建物を相続した場合、以下の2つのパターンに分けられます。
- すみやかに建物表題登記を行う
- 解体するなら家屋滅失届を提出する
それぞれ確認しましょう。
すみやかに建物表題登記を行う
未登記建物を相続したら、すみやかに建物表題登記を行いましょう。
すでに登記されている建物を相続した場合であれば、建物表題登記はすでにされているため新たに登記する必要はありません。所有者が変わるだけのため、「所有権移転登記」の申請を行うだけで相続手続きは完了します。
しかし、未登記建物の場合、建物情報が記載されている建物表題登記もされていない状態です。まずは建物表題登記を行って、建物が存在することを法務局に認めてもらいましょう。そのあと所有者情報が記載されている所有権保存登記を行います。
遺産分割協議で相続する人を決めた場合、遺産分割協議書の提出が求められます。
相続後も未登記のままで問題ない?
たしかに、登記しないままにしておくことも可能です。しかし、取得日から1か月以内に建物表題登記をしなければならないといった義務が発生し、怠った場合には10万円以下の過料に処すると定められています。
また、後述の通りデメリットも大きいため、「登記しない」という選択はしないでおきましょう。
それでも未登記のままにしておきたい場合は、市区町村役場に「固定資産(未登録家屋)所有者変更届」を提出する必要があります。この際にも、遺産分割協議で相続する人を決めた場合には遺産分割協議書の提出が求められます。
解体するなら家屋滅失届を提出する
相続後、すぐに解体する予定があるなら建物表題登記は不要です。登記事項証明書がなくても解体工事の契約はできます。
ただし、建物がなくなった事実をデータに反映させるために、市区町村役場に家屋滅失届を提出しなければなりません。提出しないと、解体後も固定資産税の納税通知が届いてしまうため注意しましょう。
未登記建物をそのままにしておくデメリット
相続した未登記建物をそのままにしておくデメリットは大きいです。
- 未登記建物は売買できない
- 未登記建物を担保に融資を受けられない
- 相続トラブルに発展するリスクがある
- 固定資産税の軽減措置を受けられない
登記していなければ、所有権を証明することができません。そのため、売買や融資において不利です。
また、建物が建っていることを公的に認められていない状態であるため、本来受けられる建物が建っている土地に対する固定資産税の軽減措置も受けることができません。
このように、未登記建物のままだとデメリットばかりのため、必ず登記を行いましょう。
建物表題登記・所有権保存登記は専門家に依頼しよう
未登記建物を相続した場合、すみやかな登記手続きが必要です。しかし、手続きには専門的な書類の提出が求められます。
そこで、遺産分割協議書の作成や登記手続きを専門家に依頼することをおすすめします。
依頼内容 | 依頼できる専門家 |
---|---|
遺産分割協議書の作成 | 行政書士・司法書士・弁護士 |
建物表題登記 | 土地家屋調査士 |
所有権保存登記 | 司法書士 |
未登記建物を相続すると、1か月以内に建物表題登記をしなければなりません。とくに、建物表題登記では専門的な図面作成が必要です。自分で行うことは現実的でないため、建物表題登記のプロである土地家屋調査士に依頼するとスムーズに手続きを進められます。
遺産分割協議書に未登記建物の記載は必須
未登記建物であっても被相続人が遺した財産には変わりないため、遺産分割協議書には記載が必要です。誰が相続したのかを明らかにしておくことで、相続トラブルを未然に防げます。
また、未登記建物を相続した場合、建物表題登記・所有権保存登記の手続きが必要です。この際、遺産分割協議書の提出を求められるため、正しい内容を記載しなければなりません。
馴染みのない相続・登記手続きは、「大変」「面倒」だと感じてしまうでしょう。スムーズに手続きを進めるためにも、積極的に専門家を頼ってください。作業の一部だけを依頼することも可能です。まずは相談して依頼すること・しないことを決めましょう。