市街化調整区域とは?概要や相続すべきかどうかをわかりやすく解説

公開日:2022年6月16日

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「市街化調整区域と見かけるけどどういう意味だろう」と気になっていませんか。市街化調整区域とは、開発制限をかけられた土地のことです。開発制限された土地でも、自治体から許可が下りれば家を建てることができますが、様々な注意点があります。今回は、自身が相続する土地が市街化調整区域だった場合に相続すべきかについて解説します。

市街化調整区域とは?

市街化調整区域とは、開発や建築行為を抑制する区域のことです。

自由に開発や建築が進められてしまうと、必要以上に道路や公園といった公共施設の増設をしなくてはならないため、莫大な財源を要します。また、開発によって農地や近隣の山林などが、破壊されてしまう恐れがあり、環境保全の観点からも、計画的に都市を作る必要がありました。

中心的な市街地とその周辺地域を計画的に整備、開発、保全をしていく区域を都市計画区域といいます。

都市計画ではルールに基づいて開発や建築などを制限することで、無秩序に街が広がらないようにしているのです。

具体的には、都市計画区域を以下の2つに区分しています。

  • 市街化区域
  • 市街化調整区域

それぞれの違いや市街化区域の特徴について見ていきましょう。

市街化区域と市街化調整区域の違い

市街化区域と市街化調整区域の違いは、開発や建築を推し進める地域かどうかです。

それぞれの定義について確認しましょう。

市街化区域

市街化区域に当てはまる地域は、以下の通りです。

  • すでに市街地を形成している区域
  • 10年以内に優先的に市街化すべき区域

市街化区域は積極的に開発することを目的とした地域のため、インフラが整っており便利な街を形成します。

市街化調整区域

市街化調整区域に当てはまる地域はこのようなエリアです。

  • 市街化を抑制しなくてはならない区域

市街化を抑制して自然を保護し、無秩序な開発を広げないための地域です。開発することを制限されているため、田園地帯や自然が多いエリアといえます。

都市計画において市街化区域と市街化調整区域を指定することで、積極的に土地開発を行っていくべき地域と、土地開発を抑制すべき地域を明確に区分けしているのです。

このように、市街化区域と市街化調整区域に区分することを線引きといいます。

2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。※引用:都市計画法|第7条(区域区分)

市街化調整区域の特徴

市街化調整区域の特徴は、以下の3つです。

  • 土地の価格が安い
  • 自然豊かで静かな環境
  • 生活利便施設が近くにない

開発制限されている市街化調整区域だと、建て替えや建築が制限されているためリーズナブルな価格で取引されている土地が多く見られます。土地評価額が低いため、固定資産税も安い傾向です。

市街化区域である限り、商業施設やビルなどの開発は抑制されるため、ビルの多い市街化区域と比べて自然豊かで静かな環境が維持されることでしょう。

ですが、スーパーや病院などの生活便利施設は近くにありませんので、場所によっては市街化区域まで出向く必要があります。

  • 土地の価格が安い
  • 自然豊かで静かな環境
  • 生活利便施設が近くにない

開発制限されている市街化調整区域だと、建て替えや建築が制限されているためリーズナブルな価格で取引されている土地が多く見られます。土地評価額が低いため、固定資産税も安い傾向です。

市街化区域である限り、商業施設やビルなどの開発は抑制されるため、ビルの多い市街化区域と比べて自然豊かで静かな環境が維持されることでしょう。

ですが、スーパーや病院などの生活便利施設は近くにありませんので、場所によっては市街化区域まで出向く必要があります。

市街化調整区域に家を建てたい場合

開発制限されている市街化地域でも、条件を満たせば家を建てることは可能です。ただし、条件を満たしたうえで自治体から開発や建築の許可を得る必要があります。

開発許可とは、土地の区画形質の変更をするための許可のことです。農地から宅地への変更といった用途を変更するときに必要になります。

建築許可とは、すでに土地の区画形質の変更のなされた土地に対し、建築を認めることです。

市街化調整区域で家を建てるときに必要な知識を以下の順番で確認しましょう。

  1. 家を建てるときの流れ
  2. 家を建てられる条件
  3. 家を建てられる例

市街化調整区域で家を建てるときの流れ

市街化調整区域に家を建築するときは、まず自治体に事前相談をして、都市計画法第34条の立地基準に適合する建築物かどうか自治体からの判断を待ちます。

建築可能の判断が出たあとは、土地の状況に応じて以下の許可手続を行います。

  • 開発行為が伴う…開発許可手続
  • 開発行為無し…建築許可手続
  • 許可不要…法適合の証明手続

つまり、開発許可手続さえ行えば、市街化調整区域に家を建てられるというわけではありません。事前相談により「建ててもよい」という判断が出たあとに、それぞれの土地に応じた手続が必要です。

そのため、家を建てるときは最初から宅地になっている土地を探すことをおすすめします。

市街化調整区域に家を建てれる条件

市街化調整区域で家を建てるには、基本的に都市計画法34条に該当する場合かつ自治体からの許可が必要です。

都市計画法34条に該当する代表的なケースは、以下の通りです。

  • 市街化区域と一体的な日常生活圏を構成している場所
  • 区域区分がされる前から土地を所有していた場合の分家住宅

市街化区域に近く50以上の建物がある地域だと、市街化調整区域でも家を建てられる可能性があります。

市街化調整区域に線引きされる前から土地を所有している場合、本家から分家して家を建てる必要があれば可能です。

十一 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの※引用:都市計画法|第34条11号(開発許可の基準)

十三 区域区分に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更して市街化調整区域が拡張された際、自己の居住若しくは業務の用に供する建築物を建築し、又は自己の業務の用に供する第一種特定工作物を建設する目的で土地又は土地の利用に関する所有権以外の権利を有していた者で、当該都市計画の決定又は変更の日から起算して六月以内に国土交通省令で定める事項を都道府県知事に届け出たものが、当該目的に従つて、当該土地に関する権利の行使として行う開発行為(政令で定める期間内に行うものに限る。)※引用:都市計画法|第34条13号(開発許可の基準)

ただし、法律上の要件を満たしていても実際に家を建てられるかどうかは、自治体の裁量によるところが大きいとされています。市街化調整区域に家を建てようと考えている場合には、事前に自治体と相談しましょう。

例外として、デベロッパーが開発・建築許可を受けて仕入れた分譲地や、一定の条件を満たした農業従事者であれば、開発許可がなくても家を建てることが可能です。

市街化調整区域で家を建てられる例

市街化調整区域で家を建てられる例を見ていきましょう。

  • デベロッパーが開発許可を取得した土地
  • 分家のための住宅建築

デベロッパーが開発・建築許可を受けて分譲地の販売を行っている場合、比較的スムーズに家を建てられるケースが多いとされています。下水道やインターネット回線といったインフラもすでに整っていることが多く、細かな手続を減らすことができるでしょう。

分家のための住宅建築の場合、以下のケースだと家を建てられます。

AさんとAさんの子どもであるBさんは、市街化調整区域に指定される前から、代々その場所に住んでいました。
Bさんは、家の近くで就職をしていましたが結婚するにあたって、市街化調整区域にある家を出て、新しく家を建てることになりました。
Aさんは市街化区域に土地を持っておらず、市街化調整区域内の土地をBさんに贈与しています。

このケースで必要な要件は、以下の通りです。

  • 本家世帯主の子もしくは兄弟姉妹(養子は不可)
  • 既婚者もしくは結婚予定者
  • 適正な通勤距離
  • 市街化区域内に分家する適当な土地を持っていない
  • 分家する者が相続又は贈与により取得する土地

分家住宅を建築するときは自治体との事前相談が必要です。自治体によって細かな点で要件が異なることもあるため、連携をとりながら進めましょう。

自治体によって必要な申請書類は異なりますが、分家申請地の公図の写しや本家と分家の関係を明示できる家系図、本家世帯の住民票といった書類を求めるところもあります。

市街化調整区域で家を建てるときの注意点

市街化調整区域で家を建てるときの注意点を確認しましょう。

家を建てるときの注意点は、以下の5つです。

  • 土地の地目の確認
  • 建て替えや増築でも許可が必要
  • 助成金を受けられない可能性
  • 住宅ローンの利用は難しい
  • 行政サービスを受けられない可能性

土地の地目の確認

市街化調整区域の土地を購入するときは必ず地目を確認しましょう。

地目とは、土地の用途を表す名称のことです。宅地以外の山林や原野といった土地なら、宅地に変更するために形質の変更の開発許可を得なくてはなりません。

仮に畑や田といった農地だった場合、開発許可のほかに農地転用許可を受ける必要があります。

土地を購入するときは地目が宅地になっていることを確認し、建築許可を得られるか自治体に相談しましょう。

建て替えや増築でも許可が必要

市街化調整区域の中古住宅を購入して建て替えや増築、リノベーションを行うときは建築許可を受けなくてはなりません。つまり、基本的に建て替えや増築を行う場合でも、自治体からの許可を得る必要があるということです。

建て替えや増築を行う場合、多くの自治体が「適法に建築されていること」が申請時の条件とされているため、購入や贈与、相続を受ける前にどのように建てられた物件なのか確認しましょう。

ここでいう適法な建築の代表例は以下の通りです。

  • 線引き前に新築された建築物
  • 線引き後に許可不要の取扱いで新築された建築物
  • 線引き後に許可を受けて
  • 新築された建築物

また、自治体によって一定の条件を満たせば、増築や改築なら都市計画法に基づく許可を受けずに行える場合もあります。住んでいる自治体の要件を確認しましょう。

助成金を受けられない可能性

自治体によっては、地域活性化を目的とした定住促進の制度として、住環境の改善における助成金や補助金の制度が設けられていることがあります。
ですが、その制度を利用するためには「市街化区域」であることが条件に挙げられることが多いため、インフラ整備の追い付いていない場所に家を建てる場合、助成金を受けられない可能性があります。基本的にインフラ整備は自己負担と考えておきましょう。

また、下水道や都市ガスを利用できない地域だと、浄化槽やプロパンガスになるかもしれません。

住宅ローンの利用は難しい

市街化調整区域だと住宅ローンが通りにくい傾向にあります。開発しづらい市街化調整区域だと土地の価格が低くなり、担保評価も同様に低くなるためです。

土地の担保評価が低いと住宅ローンの担保ができないため、融資されづらいと言われています。

ただし、誰でも家を建てることができる土地として建築許可を得られた場合は、市街化区域と同様のローンを受けられるかもしれません。

行政サービスを受けられない可能性

市街化調整区域は、市街化を目的としていない地域のため、人口減によってコンパクトシティ化を推し進めることになった場合、十分な行政サービスを受けられなくなる可能性があります。

相続や贈与が発生する可能性がある場合には、その土地が市街化区域の近くのエリアや、市街化区域に編入される見込みのある土地であるかを、事前にしっかりと確認しておきましょう。

市街化調整区域の家を買いたい場合

市街化調整区域の家を購入するには、以下の2つの方法があります。

  • 専門の仲介業者へ依頼する
  • 個人間で売買する

それぞれ確認しましょう。

専門の仲介業者へ依頼する

市街化調整区域の物件を多く扱っている仲介会社に依頼しましょう。

一般的な不動産屋だと、市街化調整区域の土地売買を敬遠する可能性があります。市街化調整区域のみを取り扱う専門業者なら、独自に培ってきたノウハウがあるため、売買がスムーズです。

ただし、分譲販売と銘打っていても宅地分譲ではないケースもあるため、購入前に自治体の開発調整課で確認しましょう。

また、市街化調整区域の建売住宅を購入するのもひとつの方法です。この場合、デベロッパーが市街化区域に変更されることを見越しているケースも少なくありません。

個人間で売買する

市街化調整区域の土地を個人間で売買することは、法律的に可能です。ただし、確認すべき事項が増えたり、大きなトラブルに発展しやすかったりすることからおすすめしません。

個人間で売買するときは、契約書を必ず作成しましょう。親族や親しい友人との取引だと、口約束で色々な取り決めを行う人が多い傾向にあります。口約束で物事を進めてしまうと、トラブルが起きたときの証拠がないため、埒が明かない状態になりかねません。

また、土地の地目や開発許可や建築許可が下りるのかといった確認も必要です。

市街化調整区域の家を売りたい場合

市街化調整区域の家を売るときの流れは、以下の通りです。

  1. 行政調査の実施
  2. 買い取り業者の問い合わせ
  3. 仲介業へ依頼
  4. 売買条件の決定
  5. 売買契約の締結

順番に見ていきましょう。

行政調査の実施

まず、売却予定の物件がどのように建築されたのか確かめるために、行政調査を行います。不動産屋へ査定を依頼した場合、不動産屋が自治体へ確認することも少なくありません。

買取業者へ問い合わせ

行政調査が完了したら、買取業者に買取価格について問い合わせしましょう。市街化調整区域の売却は難しいケースも見られるため、通常の売却価格よりも2割ほど差し引いた額になることが多いとされています。

不動産屋が購入することになれば、仲介手数料は不要です。また、買主が不動産屋のため、比較的早めに売却できるでしょう。

仲介業へ依頼

仲介業者へ依頼するなら、市街化調整区域に特化した業者をおすすめします。なぜなら、取扱いに慣れており、売却へのノウハウを持っているからです。

ひとつの会社に売却を任せる専任媒介契約だと、買主を積極的に探してくれるでしょう。多くの会社に売却を任せる一般媒介だと、後回しにされる可能性は否めません。

売買条件の決定

取引する会社が決まったら、売買条件を決定しましょう。譲渡利益よりも早めの売却を狙うなら、市街化調整区域に精通している業者や有識者のアドバイスを取り入れることをおすすめします。

売買契約の締結

買い手が見つかったら、売買契約の締結を行います。重要事項の説明を聞いてから手付金を受け取りましょう。

市街化調整区域と相続 〜相続すべきか?〜

「市街化調整区域の土地や家を相続すべきか?」の問いに対しては、それぞれの家庭事情によるものの、一般的には相続しておくことをおすすめします。

理由は以下の3つです。

  • 市街化調整区域の物件だけを相続放棄できない
  • 市街化区域に変わる可能性がある
  • 貸し出せる可能性がある

市街化調整区域の物件だけを放棄することはできないため、相続放棄する場合には、預貯金なども相続放棄しなくてはなりません。被相続人(亡くなった人)に借金がある場合は話が変わってきますが、プラスの財産があるなら、相続しておくことをおすすめします。市街化調整区域は固定資産税を安く抑えられるため、維持費は一般的な土地よりもリーズナブルとされています。場所にもよりますが、市街化区域に変わる可能性がある土地の場合、変更となったタイミングで売却や自分で家を建てることが可能です。

市街化調整区域の土地を活用する方法はゼロではありません。市街地に近い場所なら、家庭菜園や駐車場として貸し出せます。離れた場所なら、機材の設置スペースとして貸し出すこともできるでしょう。

市街化調整区域の物件を保有するメリット・デメリットは、それぞれの家庭や地域によって変わります。
ただし、それぞれの家庭の事情によって相続すべきかの判断は変わります。相続で悩むことがあるなら弁護士に相談しましょう。

まとめ

市街化調整区域とは、自治体の許可なしで建物を建てられないエリアのことです。

ただし、一律にすべての土地で建ててはいけないということではありません。デベロッパーが開発・建築許可を得た土地なら比較的スムーズに家を建てることができます。

市街化調整区域の物件を相続するか悩んだときは、相続財産の額や土地を上手く活用できる道筋ができそうか総合的に考えて判断しましょう。

市街化調整区域に家を建てようと考えているなら、あらかじめ自治体と相談してから行動することをおすすめします。

規制の多い市街化調整区域の理解を深めて、賢く土地を活用しましょう。

記事の著者紹介

相続プラス編集部

【プロフィール】

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月16日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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