準確定申告の必要書類は数が多い!各書類のフォーマット・書き方・注意点を紹介

公開日:2024年10月9日

【準確定申告の必要書類まとめ】期限や申告の方法、注意点をご紹介_サムネイル

亡くなった方の所得について、相続人が代わりに確定申告することを準確定申告と呼びます。通常の確定申告に比べて、準確定申告には収集・作成しなければならない必要書類が数多くあります。本記事では、準確定申告の必要書類について詳しく解説します。電子申告をする場合の必要書類や、書類の準備における注意点についても説明しているため参考にしてください。

準確定申告とは

準確定申告とは、本来亡くなった方がしなければならない確定申告を相続人が代理で行う手続きです。確定申告をする義務を相続人が引き継ぐこととなるため、相続人が被相続人の収入についてを国税庁に申告する必要があります。

準確定申告について理解を深めるために、下記の順番に詳しく確認しましょう。

  • 準確定申告が必要なケース
  • 準確定申告の期限
  • 準確定申告の方法と流れ

詳しく解説します。

準確定申告が必要なケース

相続が発生したからといって、必ずしも準確定申告をしなければならないとは限りません。準確定申告が必要なケースは、被相続人の亡くなった年の1月1日から死亡日までに収入があった方に限定されます。

会社員であれば事業所側で年末調整をしてもらえますが、2000万円以上の給与所得がある方や副業をしていた方などは確定申告する必要があります。

具体的には、下記のように亡くなった方が通常の確定申告をする義務のある場合に準確定申告が必要です。

  • 事業所得・不動産所得がある方
  • 2000万円以上の給与所得がある方
  • 複数の事業者から給与所得がある方
  • 公的年金による収入が400万円以上ある方
  • 給与・退職金以外で20万円以上の収入がある方
  • 土地・建物を売却して譲渡所得を得た方
  • 株式などを売却して源泉徴収されていない方など

また、上記に当てはまらない方であっても、医療費控除や寄付控除などを受けられる方や退社によって年末調整がされない方などは、準確定申告によって還付金が受けられる場合があります。

準確定申告の期限

準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。

通常、相続人は被相続人の死亡日を知っていると考えられているため、「相続の開始を知った日」を「被相続人の死亡日」として期限が定められるケースが多いです。

もちろん、疎遠で連絡をとっていなかった場合や順位の高い相続人が相続放棄したことで自身が相続人となった場合は、「被相続人の死亡を知った日」や「自身が相続人となったことを知った日」が起算日となります。

準確定申告の方法

準確定申告を行うには、主に3つの方法があります。

  • 税務署に持参または郵送
  • e-Taxでの電子申告
  • 税理士に依頼

税務署に持参または郵送する場合、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出する必要があります。e-Taxであればどこからでも申告できますが、マイナンバーカードを利用した電子証明書が必要です。

亡くなった方に不動産所得や事業所得があった場合や、税知識に不安のある場合は、税理士に依頼すると複雑な税計算から申告までお任せ出来るため依頼を検討することをおすすめします。

また、相続人が2人以上いる場合、1つにまとめて申告する方法と各相続人が申告する方法の2つから選ぶ必要があります。

1つにまとめて申告するときは、相続人の中から代表者を選び、連署で手続きを行います。申告書や付表に相続人全員の署名が必要です。一方、各相続人が個別に申告するときは、どのような手続きを行ったのか情報共有をしながら手続きを進めていかなければなりません。

バラバラに申告すると情報が混乱して異なる内容で申告してしまう恐れがあるため、できるだけ1つにまとめて連署で提出することをおすすめします。

準確定申告の流れ

準確定申告を行う際の流れは、下記の通りです。

  1. 相続人代表者を決定する
  2. 代表者に申告を委任する委任状を作成する
  3. 必要書類を収集する
  4. 申告書類を作成する
  5. 申告書類を税務署に提出する

代表者1人を選出してまとめて申告する場合でも、委任状の作成や、準確定申告書・付表への署名押印などの作業が発生します。できるだけ相続人全員が集まるときに準確定申告の準備を進めておきましょう。

準確定申告の必要書類と書き方

準確定申告の必要書類と書き方のイメージ

準確定申告を行う際に必要な書類は、下記の通りです。

  • 所得税及び復興特別所得税の準確定申告書
  • 死亡した人の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
  • 死亡した人の源泉徴収票
  • 死亡した人の控除証明書
  • 死亡した人の医療費等の領収書
  • 委任状
  • 準確定申告の確認書
  • マイナンバー・本人確認書類
  • その他追加書類(所得の種類等によって変わる)

それぞれの書類の詳細や書き方について詳しく確認しましょう。

所得税及び復興特別所得税の準確定申告書

所得税及び復興特別所得税の確定申告書(確定申告書)は、通常の確定申告書と同じフォーマットを使って作成します。確定申告書のフォーマットは、国税庁からダウンロードできます。

記載方法も、通常の確定申告時と同様です。ただし、下記について書き加える必要があります。

  • 申告書の表題の「確定申告書」を「準確定申告書」に修正する
  • 申告書の第1表の上部空白部分に被相続人の死亡年月日を記載する
  • 相続人が1人の場合、申告書の第1表の上部空白部分に相続人の氏名・個人番号を記載する
  • 氏名欄や住所欄に「被相続人」と記載して被相続人の情報を記載する

確定申告書の記載例についても、国税庁にて公開されています。

確認しながら、確定申告書を作成しましょう。

死亡した人の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表

相続人が複数人いる場合、「死亡した者の_年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」の提出が必要です。

付表のフォーマットは、国税庁からダウンロードできます。

付表には、死亡した方の情報や相続人全員の情報を記載する必要があります。

死亡した人の源泉徴収票

準確定申告書を提出するときに、添付または提示する書類の1つに源泉徴収票があります。給与や事業所得、特別口座での株取引があった場合などに、源泉徴収票が必要です。

  • 給与所得・事業所得の源泉徴収票
  • 公的年金等の源泉徴収票
  • 特定口座年間取引報告書

給与所得・事業所得の源泉徴収票は、給与や報酬を振り込む事業主に依頼して発行してもらいましょう。公的年金等の源泉徴収票は、相続人が死亡届を提出すると日本年金機構から自動的に送付されます。

また、特定口座年間取引報告書は被相続人の口座が閉鎖されてからでないと発行されないケースがあります。早めに証券会社に問い合わせ、相続手続きを行いましょう。

死亡した人の控除証明書

社会保険料や生命保険料などは所得から控除されるため、控除証明書が必要です。具体的には、下記のような控除証明書を準備しましょう。

  • 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
  • 生命保険料の控除証明書
  • 地震保険料の控除証明書
  • 寄付金控除証明書

本来であれば1年間分の控除証明書が支払い主宛てに自動で送付されます。しかし、申告期限に間に合わないため、それぞれの発行元へ相続発生の事実を伝え、控除証明書の発行方法について確認しましょう。

死亡した人の医療費等の領収書

診察や入院、訪問看護などにかかった費用は、医療費控除あるいはセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)のいずれかによって控除が受けられます。

控除を受ける場合、医療費や薬代などの領収書を集め、医療費控除の明細書あるいはセルフメディケーション税制の明細書を作成して申告書に添付しましょう。

それぞれのフォーマットは、国税庁からダウンロードできます。

領収書を税務署に提出する必要はありませんが、申告期限から5年が経過するまでは保管しなければなりません。

委任状

2人以上の相続人がいるとき、代表者がまとめて準確定申告をする場合に委任状が必要です。準確定申告書用の委任状のフォーマットは、国税庁からダウンロードできます。

被相続人の住所・氏名や受任者(相続人代表者)の住所・氏名・電話番号、還付金受け取りの銀行情報を記載します。また、委任者の欄には相続人全員の住所・氏名を記載しましょう。

準確定申告の確認書

相続人が複数人いる場合にe-Taxによる電子申告にて準確定申告を行う場合、相続人代表者に申告を委託する旨を記載した確認書を提出しなければなりません。確認書のフォーマットは、国税庁からダウンロードできます。

被相続人と相続人代表者の情報を記載したうえで、相続人代表者以外の相続人の氏名・住所に加えて確定申告によって負担する所得税の税額を記載します。

直接税務署に届け出る場合や郵送する場合には不要な書類です。

マイナンバー・本人確認書類

準確定申告書を提出する際、相続人のマイナンバーや本人確認書類の添付または提示が求められます。

下記の通り、マイナンバーカードを所持しているかどうかで必要な書類が異なります。

<マイナンバーカードを所持している場合>

  • マイナンバーカードの裏表面の写し

<マイナンバーカードを所持していない場合>

  • 通知カードと運転免許証やパスポートなどの身分証明ができる書類

忘れると申告書や添付書類の提出を受け付けてもらえないため、気をつけましょう。

その他追加書類(所得の種類等によって変わる)

亡くなった方が個人事業や不動産賃貸によって収入を得ていた場合、下記の書類の提出も求められます。

<青色申告承認申請書を提出している場合>

  • 青色申告決算書

<白色で確定申告している場合>

  • 収支内訳書

準確定申告においても、青色申告決算書や収支内訳書の作成方法は通常の確定申告と同様です。ただし、被相続人に会計知識や税知識がない場合、税理士に依頼することをおすすめします。

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e-Taxによる電子申告の場合の必要書類

令和2年1月6日以降に提出される令和2年度分以降の準確定申告は、e-Taxの活用が認められるようになりました。e-Taxによる電子申告をする場合に必要な書類は、下記の通りです。

  • 所得税及び復興特別所得税の準確定申告書
  • 死亡した人の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
  • 準確定申告の確認書
  • 委任状
  • 医療費控除の明細書・セルフメディケーション税制の明細書(控除を受けたい場合)
  • 青色申告決算書(青色申告承認申請書を提出している場合)
  • 収支内訳書(白色で確定申告している場合)

電子申告をする場合、書類はPDF形式のイメージデータまたはCSV形式のファイルをe-Taxソフトに組み込んで提出します。ただし青色申告決算書や収支内訳書など電子データ(SML形式またはXBRL形式)によって提出できる添付書類は、イメージデータによる提出ができません。

また、e-Taxで電子申告をする場合、相続人代表者の利用者識別番号(半角16桁の番号)と電子証明書の添付が必要です。

利用者識別番号を持っていない場合は、e-Taxの公式サイトやマイナポータルから取得しましょう。電子証明書は、マイナンバーカードとICカードリーダライタを活用して添付することが可能です。

参照:添付書類のイメージデータを送信する|e-Tax国税電子申告・納税システムご利用の流れ|e-Tax国税電子申告・納税システム

準確定申告の必要書類についての注意点

準確定申告の必要書類についての注意点は、主に4つあります。

  • 相続人が複数いるときは相続人全員の協力が必要
  • 早めに取り掛かる必要がある
  • 確定申告書等作成コーナーから申告はできない
  • 専門家への依頼を積極的に検討する

通常の確定申告とは異なる点が多いため、あらかじめ確認しておきましょう。

相続人が複数いるときは相続人全員の協力が必要

2人以上の相続人がいる場合、相続人全員で協力して準確定申告しなければなりません。書類作成や収集、提出は相続人代表者に任せられますが、書類作成において相続人全員の署名や押印が必要となるためです。

また、相続人ごとに同様の準確定申告をすることもできます。しかし、情報共有をしながら同じ内容の申告をしなければならないため、手間と労力がかかってしまいます。よほどの事情がない限りは相続人代表者を決め、全員で協力しながら申告の手続きを進めましょう。

早めに取り掛かる必要がある

準確定申告の準備にかけられる期間は4か月しかないため、できるだけ早めに書類作成や収集の準備を始めましょう。

通常の確定申告は自身の書類を作成・取得するだけで問題ありませんが、準確定申告は亡くなった方の書類を集めたり、他の相続人の協力しながら書類を作成したりする必要があります。思っている以上に時間がかかるため、早期から取り掛かりましょう。

また、期限内に申告できなければ、ペナルティとして延滞税や無申告課税が課税される場合があります。本来受けられたはずの還付金が返ってこない場合もあるため、注意しましょう。

確定申告書等作成コーナーから申告はできない

準確定申告は、国税庁の公式サイトに設置されている確定申告書等作成コーナーからできません。確定申告書等作成コーナーでは、準確定申告書の作成ができないため注意しましょう。電子申告したい場合は、e-Taxソフトを使う必要があります。

平成30年度における税制改正において、令和2年分以降の確定申告における青色申告特別控除65万円を受けるための要件の1つに、「e-Taxによる電子申告を行う」または「電子帳簿を保存する」ことが加えられました。

亡くなった方が青色申告承認申請書を提出している場合、青色申告特別控除を受けるためにはe-Tax申告が必要なため覚えておきましょう。

参照:所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について|国税庁

専門家への依頼を積極的に検討する

少しでも準確定申告に不安を感じるのであれば、専門家への依頼を積極的に検討しましょう。準確定申告では準備しなければならない必要書類が多いため、その分時間と労力がかかります。

相続に詳しい税理士に依頼すれば、準確定申告と相続税の申告をまとめて依頼できます。必要書類の収集や作成はもちろん、提出や事後の対応までお任せできるため、相続人は他の相続手続きに集中できます。

税理士の力を借り、スムーズに準確定申告を終えましょう。

準確定申告の必要書類の収集・作成は大変

準確定申告は、通常の確定申告と比べて必要な書類が多く、準備に時間と労力がかかります。亡くなった方についての確定申告を行わなければならず、通常の確定申告をした経験がある方であっても戸惑ったり不安を感じたりするでしょう。

4か月という短い期間で、正しい税知識を身につけて手続きを進めることが難しいと感じる方は少なくありません。少しでも不安を感じるのであれば、早めに専門家に相談することをおすすめします。

記事の著者紹介

安持まい(ライター)

【プロフィール】

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年10月9日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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