生前贈与と相続はどっちが得?相続税と贈与税の比較、贈与の特例を解説します

公開日:2022年12月23日|更新日:2023年1月11日

専門家
監修
新村貢一(税理士)

新村貢一(税理士)

税理士にいむら会計事務所

「生前贈与と相続だと税金が安くなるのはどっち」と悩んだことはありませんか? 終活などを考える際に、大切な家族のために、少しでも税金を安く抑えて、自分の財産を継承させたいと思う方も多いはずです。

そこでこちらの記事では、生前贈与の基本から、生前贈与と遺産相続を税率面で比較、さらに節税対策につながる生前贈与のパターンを解説していきます。

生前贈与でかかる贈与税とは何?

「生前贈与」は贈与の一種。他には、一定の債務を負担させることを条件にした「負担付贈与」、死亡したときに効力が発生する「死因贈与」などがあります。生前贈与にかかる税金は、贈与税だけではありません。たとえば不動産の場合は、後述の通り不動産取得税、登録免許税も併せて納税する必要があります。

「生前贈与」は、財産を贈る人が生きている状態で、かつ「無償」で別の個人に与える行為であり、「贈与」が本来持つ意味とほぼ同じだといえます。

贈与の種類について、詳しく見ていきましょう。

前提:贈与とは、無償かつ相手の合意ありで成立する

「贈与」とは、簡単に言えば、自分のお金やモノといった財産を他人にあげる契約行為です。その行為にかかる税金が贈与税であり、課税対象者はもらった側です。財産を贈る個人を「贈与者」、財産を受け取る個人を「受贈者」と呼び、定義しています。

贈与の成立条件は、自分(贈与者)の財産を相手(受贈者)に「無償」であげる行為に対して、相手(受贈者)が「合意(受諾)」すること。すなわち、お互いの意思が合致していないと成立しないということです。

なお、個人から個人へお金や財産が移る行為は「贈与」ですが、法人から個人の場合は異なり「所得」に分類されます。

さらに、似たような言葉で「譲渡」があります。こちらは対価を受け取る「有償」でもって不動産などの財産を譲り渡す行為です。したがって、贈与は「無償譲渡」と言い換えることもできます。

参考:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合

生前贈与でかかる税金は相続税ではなく「贈与税」

贈与税と相続税の違いについて解説します。
贈与税と相続税は課税対象の範囲が異なります。贈与税は贈与された財産のみですが、相続税は被相続人の財産すべてに対して課税されます。

「贈与」は、贈る側(贈与者)と受け取る側(受贈者)の間で、どれくらい財産を取得するのかという「合意」が両者の間で成立しています。

一方で「相続」は、贈る側(被相続人)と受け取る側(相続人)の合意が成立していません。相続とは、亡くなった人の財産を法定相続人などが引き継ぐ行為で、死亡すると自然発生します。また、仮に被相続人が遺言により相続人に遺産の相続分を指定しても、相続が放棄されたり、相続人同士が納得いかずに協議分割などで受け取る側の遺産割合が変動したりするのが特徴です。

贈与相続
課税対象贈与された財産のみ財産すべて
相手の合意ありなし
受け取る相手自由に選択可能
(法定相続人以外でもOK)
法定相続人に取得する
権利が発生する

さらに受け取る相手と受け取る財産金額に絞れば、「贈与」と「相続」は以下の通りに言い換えられます。

「贈与」は「受け取る相手と、相手がいくら受け取るか」がすでに確定している。一方で、「相続」は「受け取る相手と、相手がいくら受け取るか」が未確定で変わる可能性があるということです。

両者の合意、個人から個人へ財産が既に移動が成立しているかがポイントです。

贈与税にも非課税枠があり、節税効果が期待できる!

贈与の基本や、贈与と相続の違いを説明してきました。
生前贈与における贈与税について見ていきます。生前贈与で贈与した金額すべてに対して贈与税が発生するわけではなく、一定の金額までなら税金が発生しない基礎控除額、すなわち「非課税枠」があります。

生前贈与における贈与税には課税方式が2つあり、基礎控除額(非課税枠)の金額上限や条件も異なります。
課税方式の違いについて見ていきます。

2つの課税制度:暦年課税・相続時精算課税制度

生前贈与における贈与税の課税制度は、「暦年(れきねん)課税制度」「相続時精算課税制度」の2種類があります。

これら制度で、実質的に非課税枠となる「基礎控除額」は以下の通りです。

  • 「暦年課税制度」110万円
  • 「相続時精算課税制度」2500万円(※1組に対して)

それぞれの課税方法を見ていきます。

「暦年課税制度」は、1年間に贈与された財産の合計金額に応じて課税されます。1年の区切り方は1月1日から12月31日までの期間(暦年)であり、4月1日から翌年3月31日までの年度区切りではありません。

110万円の非課税枠は受贈者に対してです。仮に、父と母から贈与を受けても非課税枠は110万円のままであり、倍の220万円(=110万円×2)にはなりません。ちなみに、「暦年課税制度」は、相続が発生したときに相続税総額からすでに納税した贈与税分を精算(控除)できます。

「相続時精算課税制度」は、相続税と贈与税が一緒になった制度で、文字通り相続するときに贈与財産の精算を行います。特定の期間が定められておらず、1組の贈与者と受贈者に適用が可能なのが、相続時精算課税制度のメリットだといえます。

贈与者の対象は、60歳以上の父母や祖父母。一方で、受贈者は18歳以上の子どもと孫なので、贈与者と受贈者での関係が決められています。

例を挙げますと、子どもが両親から相続時精算課税制度を受ける場合は、父と子ども・母と子どもという組み合わせがあるため、2回適用を受けることができます。すなわち、この場合は最大5000万円(=2500万円×2)までが非課税枠になるという大きなメリットがあります。

「相続時精算課税制度」では、相続税の対象となる財産が、生前贈与財産(贈与時の価額)と相続財産を合算した価額です。土地・家・マンションなどの不動産だけでなく現金や証券も対象財産になります。

大きな節税効果が期待できそうな相続時精算課税制度ですが、3つのデメリットがあります。

  1. 一度でも相続時精算課税制度を適用すると「暦年課税制度」が使えなくなる
  2. 「小規模宅地の特例」が適用できなくなる
  3. 贈与税の申告が必要になる

1つ目は、相続時精算課税制度を利用した後は、その1組の贈与者と受贈者において暦年課税贈与(非課税枠である110万円)が一生使えなくなります。暦年課税制度から相続時精算課税制度への変更は可能ですが、逆に相続時精算課税制度から暦年課税制度への変更は不可能です。

2つ目は、「小規模宅地等の特例」は、一定の要件を満たす場合その土地の相続税評価額を最大で80%減額できる制度。この特例が適用される対象は相続した土地のみであり、生前贈与した土地には認められません。

3つ目は、暦年贈与だと基礎控除額110万円以下であれば申告する必要がありません。相続時精算課税制度は、たとえ非課税枠以内に収まり贈与税が0円だったとしても、制度を使用した時点で申告する必要があります。

「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の基礎控除額だけでなく、メリットとデメリットを知ったうえで選択するようにしましょう。

贈与税の計算方法

生前贈与における贈与税の計算方法を解説していきます。

贈与税の基本的な計算式を解説します

「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の計算方法について、順番に見ていきましょう。「暦年課税制度」における贈与税の計算式はこちらです。

<贈与税の計算式(暦年課税制度)>

  • 課税対象金額=1年間で贈与された財産価額の合計-110万円
  • 贈与税額=課税対象金額×税率-控除額

さらに、「暦年課税制度」は贈与者と受贈者の関係、受贈者の年齢などによって贈与財産が「一般贈与財産」「特例贈与財産」に区分されます。

<特例贈与財産>(特例税率)

  • 贈与者:祖父母や父母などの受贈者の直系尊属
  • 受贈者:養子を含む子どもや孫などの直系卑属
  • 受贈者の年齢:18歳(※)以上

<一般贈与財産>(一般税率)
上記の特例贈与財産に該当しないもの

<一例>

  • 夫婦間(配偶者同士)・兄弟間など
  • 受贈者の年齢が18歳(※)未満の子どもや孫など

(※)…その年の1月1日時点での年齢。令和4年(2022年)3月31日以前は20歳。

特例税率か一般税率に区分される1つのポイントとして、受贈者が子どもであった場合の年齢が挙げられます。

贈与者が祖父母や両親などの直系尊属で同じでも、受贈者である子どもや孫の年齢18歳未満かそれ以上かで区分が異なるため、「18歳」が1つの「ボーダーライン」だといえます。

課税対象金額に対する税率と控除額は以下の通りです。課税対象金額によって税率が段階的に変化する超過累進課税率です。

【表】課税対象金額に対する税率と控除額

引用:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

「相続時精算課税制度」は、2500万円の特別控除が適用されます。基礎控除額である2500万円を特別控除した後の課税対象金額によって、税率が変化することはありません。したがって、贈与額より2500万円を超えた金額分に対して一律20%の「贈与税」が課税されます。

<贈与税の計算式(相続時精算課税制度)>

  • 贈与税額=(贈与額-2500万円)×20%

「親子間の贈与税」ついて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

贈与税と相続税の比較

贈与税と相続税を具体的な数字を用いて比較していきましょう。

前提として、贈与税と相続税の課税対象範囲を確認します。
贈与税は贈与したその財産のみ、相続税は被相続人がかつて所有していた家や土地、自動車や現金など財産すべて(相続財産)に対して課税されます。

税率でみる贈与税と相続税の違い

不動産を贈与、または相続したときを例に見てみます。
不動産を生前贈与した際にかかる税金は、贈与税だけでなく「不動産取得税・登録免許税」の3つが課税されます。

「登録免許税」は相続や譲渡などで取得した不動産などの公的な登記手続きの際に、「不動産取得税」は土地や家屋の購入や贈与などで不動産を取得した際に発生する税金です。

贈与されたとき(贈与税)と相続されたとき(相続税)とで、それぞれ税率が異なります。「登録免許税」は贈与税だと2.0%、相続税だと0.4%です。つまり、納税額に5倍の差が生じるということです。

「不動産取得税」については、贈与時だと原則4.0%(住宅用の場合などは3%)、相続時(法定相続人が相続人の場合)だと発生しません。

参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」、東京主税局「不動産取得税

次に、相続税と贈与税(特例税率)に関して金額区分ごとの税率と控除額を比較します。

【表】相続税と贈与税(特例税率)に関して金額区分ごとの税率と控除額を比較

引用:国税庁「No.4155 相続税の税率」、東京主税局「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

税率だけみると、4500万円以下までなら贈与税の方が高く、4500万円超であれば逆転し相続税の方が税率が高いように感じます。

たとえば、相手に1000万円を取得させたときに、支払う税額を比較してみましょう。

  • 贈与税額:210万円(=1000万円×30%-90万円)
  • 相続税額:100万円(=1000万円×10%)

支払う税額に110万円の差が生じ、「贈与税>相続税」になります。
また、先の計算から贈与税にかかる実際の税率は21%(=210÷1000)だとわかります。したがって、表に記載されている税率だけでなく控除額を考慮してから、贈与税と相続税を比較しないと実際に負担する税率(実効税率)とならないので注意しましょう。

また、贈与税の基礎控除額110万円以下なら節税に効果的です。相続税で不動産などの財産を相手に取得させた方が節税効果が見込めると考えられます。

(※ただし、相続税の計算上、上記の相続税の法定相続分に応じた取得金額と、実際に負担する相続税額にはズレが生じることがあります)

「相続税の計算方法」について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

このような人は注意! 贈与税の方が高くなる

贈与税が高くなり結果的に損してしまうのは、所有する財産の評価額が贈与時よりも相続時の方が安くなってしまうときです。
つまり、財産の価値がこれから「下落する」のであれば相続税が、「上昇する」のであれば贈与税が適しています。

生前贈与をした方がよい具体的なケースは以下のような状況が考えられます。

  • 所有する家(自宅)などの不動産価値が今後上昇する
  • マンションなどの賃貸経営の収入が安定している

節税対策を行う上で、今後の評価額がどうなるかをしっかりと見極めましょう。

したがって、すべての財産ではなく所有する土地、建物、マンションなどの不動産を見たとき、将来的に確実に値上がりすると見込まれる場合は、早めに贈与しておくことで節税効果が期待できるといえます。

生前贈与を行う際の3つの注意点

節税対策として、生前贈与を行う際の注意点を3つ解説します。

  1. 死亡する3年以内(※1)の贈与財産は相続税になる
  2. 贈与契約書を残す
  3. 受贈者が財産を自由に使える

1つ目は、贈与者の死亡する3年以内に贈与された財産は相続税の対象となってしまうということ。死亡時に相続人が相続する財産で「課税対象財産」として加算され、相続税が課税されます。死亡する3年以内(※1)の贈与を加算する規定を、「生前贈与加算」と言います。

2つ目は、「贈与契約書」を贈与する度に結び、書面として証拠を残しておくことです。暦年贈与を行う際に、特に留意したいのが「定期贈与」と税務署にみなされないこと。

「1000万円を一括ではなく毎年100万円ずつ贈与すれば、基礎控除以下であるため贈与税は発生しない」と考える方もいらっしゃると思います。しかし、毎年の贈与を「予め取り決めていた(契約があった)」とみなされると、定期贈与と判断されることがあります。その場合、贈与総額1000万円が贈与税の課税対象にされてしまいます(※2)

「贈与契約書」は、贈与者と受贈者の間で「毎年の贈与ではなく、あくまでも1回限りの贈与として交わされた契約である」と立証する有効な手段になります。その際は、日時を記載したり、毎年金額を変更したり、記録を残すために銀行口座に振込したりする必要もあります。

3つ目が、贈与された受贈者が財産を所有・管理し、自由に使える状態であること。
税務上において贈与であると認められる条件として、贈与を受けた側(受贈者)が、贈与財産を管理して、自由に処分できる状態であることが挙げられます。たとえば、名義は子どもだが実質的に母親が預金口座を管理しているケースでは、生前贈与と認められないことがあります。

(※1)2023年度の税制改正により、加算期間が3年から「7年」に変更される可能性があります。参考:自民党「令和5年度税制改正大綱」、
(※2)参考:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合

3つの特例パターン別の贈与税

住宅資金(マイホーム)、結婚・子育て、入学金などの教育のための資金の贈与について、非課税になる特例

住宅資金(マイホーム)、結婚・子育て、入学金などの教育のための資金の贈与について、非課税になる特例を3つのパターンで解説します。

元気なうちにこちらの3つの特例制度を忘れずに活用し、相続財産への節税対策につなげることができます。

生前贈与された資金の目的や流れが第三者から見ても明確にするために領収書などを証明として残すようにしましょう。

生前贈与パターン1:住宅資金として

「住宅取得等資金贈与における非課税の特例」は、マイホーム購入などを検討している際に、自分の両親や祖父母といった直系尊属から住宅資金の援助(贈与)を受けたときに、適用できる非課税制度です。

住宅資金の贈与における非課税枠は、省エネ等住宅の場合は1000万円まで、それ以外の住宅の場合は500万円までです。贈与を受けた人(受贈者)ごとに適用されます。

なお、税制改正の影響により、「住宅資金を贈与した時期」が令和4年(2022年)1月1日以前か、以後かによって、非課税枠が変わりますので注意が必要です。

<主な要件>

  • 非課税限度額:1000万円(省エネ等住宅)、500万円(左記以外の住宅)
  • 贈与者:父母・祖父母など(直系尊属)
  • 受贈者:贈与者の直系卑属で、18歳以上(年齢は贈与を受けた年の1月1日において)

参考:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

生前贈与パターン2:教育資金として

「教育資金贈与における一括贈与の特例」は、自分の両親や祖父母といった直系尊属から教育資金の援助(贈与)を受けたときに、適用できる非課税制度です。

教育資金の非課税枠は、幼稚園や大学などの学校に支払う場合は1500万円まで、学習塾やピアノ教室といった学校以外の場合は500万円までです。

ただし、この特例を受けるためには、金融機関に教育資金口座を開設して、その取り扱い金融機関を経由して「教育資金非課税申告書」を提出する必要があります。なお、税務署での手続きは不要です。

<主な要件>

  • 非課税限度額:1500万円(学校)、500万円(学校以外)
  • 贈与者:父母・祖父母など(直系尊属)
  • 受贈者:贈与者の直系卑属で30歳未満。前年分の所得が1000万円以下

参考:国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

生前贈与パターン3:結婚・子育て資金として

「結婚・子育て資金における一括贈与の特例」は、自分の両親や祖父母といった直系尊属から結婚・資金の援助(贈与)を受けたときに、適用できる非課税制度です。

結婚・子育て資金の非課税枠は、子育て(妊娠・出産)に関する費用は1000万円まで、結婚に関する費用は300万円までです。

子育て費用は、不妊治療や妊婦健診の費用や産後ケア費用、子どもへの医療費、幼稚園などの保育料(ベビーシッター代を含む)が該当します。

結婚費用は、挙式費用や衣装代などの婚礼費用や家賃や敷金などの新居費用などが該当します。

この特例を受けるための条件は「教育資金贈与における一括贈与の特例」と同様です。
金融機関にて専用口座を開設して、その取り扱い金融機関を経由して「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出する必要があります。なお、税務署での手続きは不要です。

<主な要件>

  • 非課税限度額:1000万円(結婚・子育て両方)、300万円(結婚のみ)
  • 贈与者:父母・祖父母など(直系尊属)
  • 受贈者:贈与者の直系卑属で18歳以上50歳未満。前年分の所得が1000万円以下

参考:国税庁「No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

贈与税の申告方法

贈与税を申告する方法について解説します。

贈与税の申告・納税期間:翌年2月1日~3月15日

贈与税の申告・納税期間は、翌年2月1日から3月15日までの約1か月半の期間です。

たとえば、令和3年分(令和3年1月1日から令和3年12月31日まで)の贈与については、贈与税を申告・納税する期間は令和4年2月1日から3月15日までです。

なお、贈与税の申告漏れなどによる追徴課税は増加傾向にあります。令和元事務年度においては、実地調査1件当たりの追徴税額(231万円)が対前事務年度比128.2%と、実に3割近くも増加。定められた期間内に贈与税を申告・納税することを忘れないようにしましょう。

贈与税に関する申告書の受付・手続き先は、贈与を受けた人(受贈者)が所属している税務署。自分が届けるべき税務署が分からないときは、国税庁HPの「国税局・税務署を調べる」で調べることができます。
提出方法は、税務署の窓口だけでなく、郵送やインターネットからe-Tax(電子申告)でも可能です。

もし、「住宅取得資金の贈与」「贈与税の配偶者控除(おしどり控除)」などの特例を利用して納税額が0円になった場合は、納税は不要で申告のみになります。

参考・出典:国税庁「【贈与税の申告等】」、「令和元事務年度における相続税の調査等の状況

まとめ:贈与税の税率は高いが、特例でお得になることも

こちらの記事では生前贈与について贈与税と相続税を比較しながら、解説してきました。

贈与税の方が税率で見たら相続税より高いケースが多いですが、一方で教育資金の一括贈与などの特例を活用することで、相続税よりも高い節税効果が生み出せることが分かります。

ただ、一点注意しておきたいのが2023年度の税制改正です。「生前贈与加算」の期間がどのように変更されるかで、今後の相続財産の節税方法にも大きな影響を及ぼすため、確認しておく必要があるといえるでしょう。

相手に渡したい金額や目的に応じて、生前贈与するのかそれとも相続するのか、元気なうちに慎重に考える必要があります。

ときには税理士などの専門家のアドバイスを仰ぎながら、進めていくと効率的にかつ間違いなく財産を任意の相手に贈与できると思います。

記事の監修者紹介

新村貢一(税理士)

税理士にいむら会計事務所

【プロフィール】

昭和61年税理士登録。資産税を専門とするタクトコンサルティングなどを経て、平成4年ににいむら会計事務所を開業。翌年にコンサルティングを主体とする有限会社アスカ会計社を設立し、以来30年以上にわたり税務に関するプロフェッショナル集団として、お客様のあらゆる税務課題を解決しているベテラン税理士。納税者の利益を第一とする理念を掲げ、相続税の税務申告、節税対策を得意としていることが特徴。法人・個人問わず幅広い税務課題に対応している。著書多数。

【所属】

東京税理士会 麹町支部:第60361号
経営革新等支援機関(認定支援機関)
その他資格:AFP、登録政治資金監査人

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年12月23日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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