長期間相続登記等がされていないことの通知が法務局から届いたらどうすればいい?対処法を解説

公開日:2023年12月18日

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ある日「長期間相続登記等がされていないことの通知」が法務局から届いて、詐欺ではないかと不安に感じている人もいるでしょう。結論をいえば詐欺ではなく適切な対応が必要な通知ですが、どう対応すればいいのか分からない人も少なくありません。

そこで、今回は「長期間相続登記等がされていないことの通知」について、内容や対応・注意点まで分かりやすく解説します。

長期間相続登記等がされていないことの通知とは

「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」とは、法務局が相続登記を促すために送る通知のことです。

これが送られたということは、あなたが相続登記されていない土地の相続人であることを示しています。

相続登記を促す旨の通知

不動産を相続した場合、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する相続登記が必要です。しかし、相続登記に義務はなく長年登記せずに放置されている不動産も少なくありません。

長期間登記を放置された不動産は相続人と連絡が付かないなどで所有者不明となり、そのままでは公共事業や街づくりに影響が出てしまいます。現在の日本では、そのような所有者不明の土地が増えているという問題を抱えている現状があります。

この所有者不明土地問題の解決の一手として、平成30年から国では所有者の死後30年以上相続登記されていない土地を調べて相続登記を促す事業が行われています。

この事業では、30年以上相続登記されていない土地の法定相続人を法に基づいて調査し、法定相続人の一覧図を法務局に提出します。調査が完了した土地は「長期相続登記等未了土地」として登記され、法定相続人に「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」が送られてくるのです。

記載内容

通知には、次のような内容が記載されています。

  • 長期間相続登記されていない土地の相続人であること
  • 土地を特定するための情報
  • 現在の登記上の所有者
  • 法定相続人情報の作成番後番号

30年以上相続登記されていない場合に通知されるため、登記上の所有者として記載されている人は、祖父母よりもさらに古い親族や叔父・叔母など縁の遠い親族の可能性もあります。また、法定相続人情報の作成番号とは、法務局が調べて登記簿に備え付けた法定相続人の情報の番号です。

この番号をもとに法務局で法定相続人情報を調べられますが、通知自体に法定相続人全員の情報が記載されているわけではありません。

よく分からない親族の名前や土地の情報が記載されていると、詐欺なのではと疑う人もいるでしょう。通知自体は、国の事業の一環で送られてくるので詐欺の恐れはありません。

この通知で記載されている内容は、あくまで相続登記を促す旨のみで、金銭の振り込みを要求することは一切ありません。ただし、通知書をまねた詐欺がないとは言い切れません。

通知の内容に「金銭の振込」の旨が記載されている場合は、詐欺であるため注意が必要です。

なぜ自分に通知される?

通知されたということは、あなたが土地の法定相続人ということです。

「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」は、法定相続人に通知されます。しかし、法定相続人全員に通知されるわけではなく、法定相続人のうち任意の1人に通知されます。

任意の1人は、土地に住んでいる、土地の近くに住んでいるなど一定の基準で選ばれます。つまり、法定相続人の中で土地に関わりが一番深い相続人が自分だったということと言えるでしょう。

通知が届いたらどうすればよい?放置するとどうなる?

通知が届いた場合、次のような対応が検討できます。

  • 相続登記する
  • 相続放棄する
  • 放置する

相続登記する

相続登記を促す旨の通知ですので、相続登記するのが一番です。ただし、自分の一存だけで相続登記は進められません。

まずは、法定相続人で遺産分割協議を行い、相続が決まった人が相続登記する必要があります。

相続登記は、令和6年4月1日から義務化されました。登記せずに3年間が経過すると10万円以下の過料という罰則が課せられます。これは、令和6年4月1日以前の相続も対象となるので、相続登記していない場合は速やかな登記が必要です。

特に、長期間登記されていない土地の場合、相続人が増えて権利関係が複雑になります。相続登記手続きに不安がある人は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

通知後の相続登記手続きについては、後ほど詳しく解説するので参考にしてください。

相続放棄する

土地を相続する気がないのであれば、相続放棄という手段も検討できます。

ただし、相続放棄できる期間は「相続があることを知った日から3か月以内」です。通知が来てはじめて相続があることを知った場合は相続放棄できる可能性がありますが、期限を超えてしまっている可能性もあります。

期限が超えていても事情によっては相続放棄できる可能性もあるので、諦めずにまずは専門家に相談してみるとよいでしょう。

放置する

通知には強制力はないため、放置したからといって罰則はありません。

相続登記には手間もコストも掛かるので、手続きを面倒に感じる人もいるでしょう。しかし、先述したように令和6年4月1日から相続登記義が義務化されました。

今はとりあえず放置していても、令和6年4月1日から3年以内には手続きしなくてはいけないため、早めに相続登記しておくことをおすすめします。特に、登記せずに放置する期間が長くなるほど権利が複雑化して、手間もコストも余計にかかってしまう恐れもあります。

少しでも早い段階で専門家に相談しておくと、スムーズな登記ができるでしょう。

通知が届いた方が相続登記をする方法

通知が届いた方が相続登記をする方法のイメージ

ここでは、通知が届いた方が相続登記する方法を解説します。

基本的には普通の相続登記方法と変わらない

通知が届いた場合の相続登記も、基本的な手順は通常と変わりません。

大まかな相続登記までの流れは、次の通りです。

  1. 法定相続人の確認
  2. 遺産分割協議
  3. 相続登記

法定相続人が自分ひとりであれば、そのまま相続登記をしても問題ありません。

しかし、他に法定相続人がいる場合は遺産分割協議で相続の仕方を決める必要があります。まずは、法定相続人を確認しましょう。

通知が来た場合、法定相続人は法務局で調査してあるので戸籍を取得するなどの必要はありません。通知に記載されている法定相続人情報の作成番号を利用することで、法定相続人の情報を閲覧できます。

法定相続人が分かれば全員に連絡して遺産分割協議を行い、相続人を決めていきます。遺産分割協議で相続人に決まった人は、必要書類を揃えて相続登記を行いましょう。

「自分で相続登記をする場合」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

通知に記載の「法定相続人情報の作成番号」は登記原因証明情報の一部に代替できる

登記原因証明情報とは、登記の原因となる事実関係や権利変動を証明する書類です。

通常の相続時の場合、遺産分割協議書や相続関係説明図・相続関係者の戸籍謄本を登記原因証明情報として添付する必要があります。具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人全員の戸籍謄本が必要です。

しかし、戸籍関係の書類については通知に記載されている法定相続人情報の作成番号で代替可能です。ただし、遺産分割協議書などの一定の書類は必要になるので注意しましょう。

通知後の相続登記であれば、法定相続人の調査や戸籍関係書類の用意が通常よりもしやすい状態に整えられています。いずれ必ず相続登記は必要になるので、この機会に相続登記をしておくことをおすすめします。

注意点・知っておきたいこと

注意点・知っておきたいこととして、下記の5つが挙げられます。

  1. 通知は相続人の1人だけにされている
  2. 相続放棄後であっても通知が届くがある
  3. 取得した法定相続人情報は他の相続手続きでは使用できない
  4. 法定相続分以外の相続登記では遺産分割協議書が必要
  5. 共有での登記は避ける

通知は相続人の1人だけにされている

この通知は法定相続人のうち任意の1人に届きます。

他の法定相続人は相続登記が未完了という事実を知らない可能性があるので、注意しましょう。

相続放棄後であっても通知が届く場合がある

通知は戸籍に基づいて法定相続人を特定して送られます。

しかし、戸籍には相続放棄の有無は記載されていないため、相続放棄後であっても通知が届く可能性があるのです。もし、相続放棄後に通知が届いた場合は、その旨を通知に記載されている連絡先に伝えるとよいでしょう。

取得した法定相続人情報は他の相続手続きでは使用できない

法定相続人情報は相続登記の際には利用できますが、他の相続手続きでは利用できません。金融機関などで求められる法定相続人情報一覧図などは、別途作成する必要があるので注意しましょう。

法定相続分以外の相続登記では遺産分割協議書が必要

法定相続人情報作成番号は、戸籍関係などの書類の代替えにはなりますが、遺産分割協議書の代替えにはなりません。

遺言での相続・法定相続分での相続以外での相続登記手続きには、遺産分割協議が必要になるので遺産分割協議を行って協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書の作成は、形式に不備があると手続きに利用できないため司法書士など専門家への依頼をおすすめします。

共有での登記は避ける

土地は分割しにくい遺産であることから、法定相続人全員で名義を共有するケースもあります。しかし、共有名義にしてしまうと、売却や活用がしにくくなります。

さらに、次の相続が発生すると名義人が増えて権利関係も複雑になります。できるだけ共有名義は避けることをおすすめします。

通知が来たら速やかに相続登記を

「長期間相続登記などがされていないことへの通知」が来たということは、あなたが相続人である登記未完了の土地があるということです。

相続登記は、令和6年4月1日から義務化され、放置していると罰則を課せられます。

通知を利用して登記すれば、相続人の特定や戸籍関係書類の収集の手間を大幅に削減できるので、この機会に相続登記するとよいでしょう。しかし、長期間相続登記が放置されていると、相続人が多数いるなどで登記手続きが複雑になるケースもあります。

相続登記に不安がある方は、司法書士に依頼して早めに手続きできるようにしましょう。

著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。【資格】宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年12月18日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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