株式の生前贈与は相続税対策に有効?贈与方法や贈与税の計算方法、注意点を解説

公開日:2025年4月4日

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「株式を生前贈与すると相続税対策につながるのか?」と疑問に感じていませんか。結論からいうと、贈与方法によっては相続税対策に効果的です。本記事では、株式の生前贈与が効果的である理由や贈与方法、贈与税の計算方法について詳しく解説します。事前に知っておきたい注意点もご紹介しているため、株式の生前贈与を検討している方はぜひ参考にしてください。

株式の生前贈与は相続税対策に効果的

株式の生前贈与は、相続税対策に効果があります。相続税対策に効果的である理由として、下記の3つが挙げられます。

  • 相続発生時に相続税が高額になるリスクを回避できる
  • 将来の相続財産を減らすことができる
  • 小分けにしやすく柔軟な生前贈与ができる

詳しく確認しましょう。

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相続発生時に相続税が高額になるリスクを回避できる

株式を現在の株価で生前贈与しておけば、将来の株価高騰のリスクを回避できます。そもそも、株価は常に変動するものです。相続発生時に株価が上昇していると、その分相続税が高くなる恐れがあります。

現在の株価で生前贈与しておけば、現在の金銭的価値に対して課税されることになります。今後、株価が上昇する可能性がある場合は、生前贈与が相続税対策として効果的といえるでしょう。

将来の相続財産を減らすことができる

将来の相続財産を減らすことにつながり、結果的に相続税対策に役立ちます。

株式投資をしていると、配当金を受け取れる場合があります。1年あたり・1銘柄あたりの配当金は少ないとしても、複数の銘柄を保有していたり、長い期間保有していたりすると、大きな金額を受け取ることになる場合もあるでしょう。

将来、これらの配当金は相続税の課税対象となります。そこで、あらかじめ株式を生前贈与しておけば、配当金も贈与を受けた人のものになります。

結果的に将来の相続財産を目減りさせられるため、相続税対策に有効です。

小分けにしやすく柔軟な生前贈与ができる

株式は1株から贈与することができ、小分けにしやすいため柔軟な生前贈与が実現できます。たとえば、複数人の子どもや孫に均等に分け与えることや、相続税対策として複数年に分けて贈与することが可能です。

土地や建物など、物理的に分けることのできない財産は複数人に対して贈与することが難しいです。もちろん、共有持分という形で分割できますが、複数人で共有している不動産を売却・処分する際には全員の合意が必要となり、現実的ではありません。

また、高額な財産を生前贈与すると将来の相続財産を減らすことには役立ちますが、高額な贈与税が発生します。比較すると相続で財産を引き継いだ方が負担する税金が低かったということはよく聞く話です。

その点、株式は柔軟に小分けできるため、生前贈与に向いている財産といえるでしょう。

株式を生前贈与する方法

株式を生前贈与する方法は、上場株式か非上場株式かによって異なります。

それぞれの生前贈与の方法について詳しく確認しましょう。

上場株式を生前贈与する方法

贈与したい株式が上場株式である場合、株式を保有している証券会社での手続きが必要です。大まかな手続きの流れは、下記の通りです。

  1. 証券会社に株式の生前贈与をしたい旨を伝える
  2. 証券会社から指定される依頼書と贈与契約書を提出する

必要書類や贈与にあたっての実務的な手続きについては、証券会社によって異なります。一度、株式を保有している証券会社に詳しく確認するようにしましょう。

非上場株式を生前贈与する方法

贈与したい株式が非上場株式である場合、贈与者自身で手続きを進めなければなりません。

多くのケースにおいて、非上場株式を生前贈与する目的は事業承継です。そのため、ここではオーナーが後継者に自社株を贈与するときの手続きの流れを解説します。

自社株を生前贈与する手続きの流れは、下記の通りです。

  1. 贈与契約書を作成する
  2. 譲渡承認申請をする
  3. 取締役会を開く
  4. 名義変更手続きをする
  5. 「法人税申告書の別表二」の記載内容を変更する

一人社長の株式会社であっても、自由に自社株を贈与できないよう定款で定められている場合がほとんどです。そのため、定款で定められている内容に従って承認申請や取締役会を開く必要があります。

また、事業承継による自社株の生前贈与でなくても、非上場株の贈与の流れはおおよそ同じです。ただ、株式に譲渡制限がかけられているケースが多いため、会社から譲渡承認を得なければなりません。

さらに、株券を発行していない会社の株式を生前贈与するときには、贈与契約書などの法務書類に不備があるとトラブルに発展する恐れがあります。法務書類を正しく作成し、紛失しないように保管しましょう。

株式の生前贈与で発生する贈与税の計算方法

株式の生前贈与で発生する贈与税の額を導き出すには、下記の順番で計算していきます。

  1. 株式評価額を算出する
  2. 株式評価額から贈与税の基礎控除を差し引く
  3. 決められた税率を乗じる

そもそも、株式の相続税評価額が基礎控除を超えていなければ、贈与税は発生しません。ここでは、株式評価額の算出方法と贈与税の基礎控除について詳しく解説します。

株式評価額の算出方法

贈与税を計算する際、株式評価額を求める必要があります。株式評価額は、上場株式か非上場株式かによって算出方法が異なります。それぞれ確認しましょう。

上場株式の場合

上場株式を生前贈与した場合、株式評価額は下記のうち最も低い価格を採用します。

  • 贈与日の最終価格
  • 贈与月の最終価格の平均額
  • 贈与月の前月の最終価格の平均額
  • 贈与月の前々月の最終価格の平均額

値動きを読むことは難しいですが、株価が上昇傾向の際に生前贈与したとしても前々月まで遡って、平均額が最も低い株価で贈与税の額を計算することが可能です。

そのため、上昇傾向にある株価ほど早く生前贈与することで、節税対策に有効となります。

非上場株式の場合

非上場株式を生前贈与した場合の株式評価額の計算方法は、複数あります。経営権の有無や会社規模によって、4つの評価方法のなかから適切な方法が適用されます。

評価方法経営権の有無会社規模
類似業種比準方式経営権を支配している大会社
併用方式中会社
純資産価額方式小会社
配当還元方式経営権を支配していない

それぞれの評価方法は非常に複雑であるため、贈与者や贈与を受けた人が計算することは難しいです。

そのため、非上場株式を生前贈与する際は、税理士に相談して贈与税を計算してもらうことをおすすめします。

贈与税の基礎控除

つづいて、贈与税の基礎控除を確認しましょう。贈与税には、下記のように2つの課税方法があります。

  • 暦年贈与:1年間に贈与されたすべての財産の総額に応じて課税される方式
  • 相続時精算課税制度:相続するときに贈与財産を相続財産と合算して相続税が課税される方式

それぞれの基礎控除額について、詳しく確認しましょう。

暦年贈与の場合

暦年贈与の1年あたりの基礎控除額は110万円です。1月1日から12月31日までの期間に受けた贈与の額が110万円におさまっている場合、その年の贈与税は発生しません。

たとえば、父から50万円、母から30万円の贈与があった場合、合算すると80万円です。基礎控除の110万円を超えていないため贈与税は課税されません。

一方、父から100万円、母から50万円の贈与があった場合は、合算150万円です。基礎控除の110万円を超えているため、150万円から110万円を差し引いた金額の40万円の部分に贈与税が課税されます。

相続時精算課税制度の場合

相続時精算課税制度を活用した贈与の場合、毎年110万円の基礎控除枠と特定の方からの受けた贈与の合算から差し引ける2500万円の特別控除枠があります。

たとえば、父から息子へ10年間500万円分の生前贈与をしたとしましょう。500万円から110万円を差し引いた390万円を10年分合算すると3900万円になります。

3900万円から2500万円の特別控除を差し引いた1400万円に対して課税されます。2500万円を超える贈与に対する贈与税の率は、一律20%です。

さらに、相続時精算課税制度を使って贈与された財産は、贈与者の相続発生のタイミングで相続財産に加算して相続税を計算します。

また、相続時精算課税制度を利用するには、下記のすべての要件を満たす必要があります。

  • 贈与者が60歳以上の父母や祖父母などの受贈者の直系尊属である
  • 受贈者が18歳以上の子どもや孫などの贈与者の直系卑属である
  • 初年度に相続時精算課税選択届出書を税務署に提出する

相続時精算課税制度は、令和6年1月1日から制度の見直しがされていて複雑な仕組みになっています。正しい知識をもって贈与税を計算・申告するためには、税理士に相談することをおすすめします。

株式の生前贈与で気を付けるべきポイント

株式の生前贈与で気を付けるべきポイントのイメージ

株式の生前贈与をするときに気を付けるべきポイントを5つご紹介します。

  • 株価が低いときに贈与する
  • 暦年贈与と相続時精算課税制度どちらが適しているか検討する
  • 贈与を受けない相続人とのトラブルに注意する
  • 株式を取得した際の資料を保管しておく
  • 非上場株式の場合は特例を活用できる

詳しく確認し、贈与したあとに後悔しないようにしましょう。

株価が低いときに贈与する

株価が低いタイミングで生前贈与すると、節税効果が高まります。なぜなら、株式に対して発生する贈与税は、贈与時点における株式の評価額で変わるからです。

上場株式であれば、贈与する月の前々月まで遡って最終価格の平均額を評価額として採用することが可能です。市場で値動きを確認しながら、株価が上昇傾向になったときに贈与すれば、贈与税を軽減させられます。

ただし、非上場株式の評価額の計算はとても複雑で、会社の状況や受贈者が経営権を持っているかどうかによって適切な計算方法が異なります。贈与者や受贈者の当事者が生前贈与のタイミングを見極めることは難しいため、事業承継や相続・生前贈与に詳しい税理士に相談しましょう。

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暦年贈与と相続時精算課税制度どちらが適しているか検討する

暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらの方法で株式を生前贈与すべきか、しっかり検討しましょう。

原則的な考えとしては、少しずつ長期間にわたって贈与したいなら暦年贈与、短期間に多額の贈与をしたいなら相続時精算課税制度が効果的です。株式は小分けで贈与できる財産であるため、暦年贈与が適していると考えられることが一般的です。

ただし、暦年贈与で株式を生前贈与する場合には、下記の点に注意しましょう。

  • 毎年贈与契約書を作成する
  • 贈与するタイミングや金額を変えて定期贈与とみなされないようにする
  • 相続開始前3~7年以内に行われた生前贈与は相続税の課税対象となる場合がある

より高い節税効果を求める場合や低いリスクで生前贈与したい場合は、相続や生前贈与に強い税理士に相談することをおすすめします。

贈与を受けない相続人とのトラブルに注意する

家族や親族がいるなか、特定の方にのみ株式を生前贈与すると、不公平に感じる人と贈与を受けた人との間でトラブルが生じる可能性があります。

トラブルを引き起こさないためには、下記のような対策が有効です。

  • 贈与する株式と同等価値の財産を生前贈与する
  • 話し合いの場を設けて、なぜその人に株式を譲りたいか説明する

万が一、他の相続人が不公平に感じたまま相続が発生すると、特別受益の持ち戻しや遺留分侵害額請求に発展することも否定できません。

このように、節税対策だけでなく、家族や親族の心情にも寄り添わなければトラブルに発展する可能性があります。相続人同士のトラブルを未然に防ぐために、生前贈与について弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

株式を取得した際の資料を保管しておく

贈与者が株式を取得した際の資料を保管しておき、贈与のタイミングで受贈者にも渡しましょう。

なぜなら、贈与によって取得した株式を売却するときに、譲渡所得税の計算で取得費を知っておく必要があるからです。この取得費は、贈与者がその株式を取得したときの価格を引き継ぐことができます。

もし、取得したときの資料がないと取得価格が不明となり、株式の売却金額の5%相当を概算取得費として計算しなければなりません。この場合、高額な譲渡所得税の負担が発生する可能性があります。

受贈者が将来株式を売却するときのために、株式を取得したときの資料と贈与契約書を一緒に保管するよう伝えましょう。

非上場株式の場合は特例を活用できる

非上場株式を生前贈与する場合、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例」を活用できる可能性があります。

非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例とは、中小企業の経営者が後継者へ自社株を贈与するときに発生する贈与税を猶予および免除してもらえる制度です。

対象の贈与税はすべて猶予され、先代の経営者が死亡したり、さらに次の世代へ事業承継をしたりすれば、全額免除されます。

節税効果が大きいため、事業承継の目的に自社株を生前贈与するのであれば、制度が利用できるかどうかについて税理士に相談することをおすすめします。

株式の生前贈与は相続税対策に有効

株式は、相続税対策として生前贈与に適している財産です。分割しやすく、柔軟な対策ができる点がメリットです。

ただし、贈与の方法やタイミングによっては相続税の負担が大きくなる場合や、相続税対策につながらない場合もあります。そのため、株式の生前贈与をする前に贈与税と相続税の両方を考慮してシミュレーションを行うことが大切です。

生前贈与をしたあとに税負担が大きくなったり、相続人同士のトラブルに発展したりしないよう、あらかじめ相続や生前贈与に強い専門家に相談することをおすすめします。

記事の著者紹介

安持まい(ライター)

【プロフィール】

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て平成30年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年4月4日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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