被相続人の口座が凍結されているか確認する方法とは?対処法や注意点を解説

公開日:2025年1月29日

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被相続人名義の口座は、被相続人の死亡がわかると凍結されます。しかし、凍結したことは相続人に通知されないため、ある日突然凍結されていることに気づくケースが少なくありません。口座が凍結されると引き出しや引き落としができなくなるため、注意が必要です。この記事では、口座凍結を確認する方法や凍結のタイミング・注意点などについて解説します。

被相続人の口座が凍結されているか確認する方法

口座が凍結されると入出金や引き落としができなくなります。公共料金の引き落とし口座になっていると支払いができなくなるなど不都合が生じやすいので注意が必要です。

被相続人名義の口座が凍結されているかを確認する方法としては、以下の4つが挙げられます。

  • ATMによる残高証明
  • 口座に入金・振り込み
  • 預金の引き出し
  • 金融機関に聞く

ATMによる残高証明

口座の凍結を確認する簡単な方法がATMによる残高証明です。口座が凍結されている場合、ATMで残高照会すると「お取り扱いできません」という旨がアナウンスされます。

口座に入金・振り込み

口座が凍結されると、その口座への入金・振り込みができなくなります。被相続人の口座に入金や振り込みをしてみて取引できるか確認すると、凍結状況が把握できるでしょう。

預金の引き出し

凍結した口座は引き出しできないため、引き出してみる方法もあります。しかし、預金の引き出しは基本的にはおすすめできません。もし、凍結されていない場合、実際にお金を引き出してしまうことになります。お金を引き出したことで他の相続人から遺産の使い込みを疑われてしまう恐れがあるでしょう。

また、相続放棄を検討している場合、預金の引き出しが単純承認とみなされると相続放棄できなくなってしまいます。

被相続人名義の口座からお金を引き出すとデメリットが大きいため、避ける方が無難です。凍結しているかの確認は、基本的にこの方法以外で検討するようにしましょう。

金融機関に聞く

金融機関の窓口で問い合わせると凍結しているかを教えてくれます。ただし、まだ凍結されていない場合、問い合わせをきっかけに被相続人の死亡の事実が金融機関に伝わり凍結される可能性がある点に注意が必要です。凍結されると困る場合は、他の方法での確認を検討するとよいでしょう。

なお、電話での確認では教えてくれない金融機関も少なくありません。金融機関に聞く場合は、窓口を利用するようにしましょう。

金融機関が口座凍結を行うタイミング

死亡した人の口座をそのままにしていると、遺産の使い込みなどの相続トラブルが生じる恐れがあります。金融機関はそうしたトラブルを避け、相続財産を守るために口座を凍結します。

とはいえ、被相続人が死亡すれば自動的に口座が凍結されるわけではありません。凍結されるのは、金融機関が被相続人の死亡の事実を知った時です。ただし、役場が死亡届を金融機関に伝えることはなく、金融機関の間で情報共有されているわけでもないため、金融機関ごとに凍結されるタイミングは異なってきます。

金融機関が死亡の事実を知るきっかけとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 家族や相続人が金融機関に知らせた
  • 金融機関がお悔やみ欄や葬儀の案内などで亡くなったことを知った

家族や相続人が金融機関に知らせた

「使い込みを防ぐため」や「死亡したから連絡しないと」といった理由で、家族の誰かが金融機関に死亡した旨を連絡するケースがあります。

また、相続人が残高証明書を取得したことで死亡の事実が把握されるケースもあります。残高証明書とは、被相続人の死亡時点の口座の残高を証明する書類です。

遺産分割協議を行うためには相続財産を正確に把握する必要があり、残高証明書が必要になるケースがあります。残高証明書の発行時には被相続人の死亡を伝える必要があるため、発行手続きで死亡したことがわかってしまうのです。

金融機関がお悔やみ欄や葬儀の案内などで亡くなったことを知った

新聞に掲載されているお悔やみ欄や行員が葬儀に呼ばれていた、たまたま地域の回覧板や葬儀の案内・掲示板などで知るケースです。お悔やみ欄などで亡くなったことを知るケースでは、金融機関側から相続人や親族に死亡の事実を確認する連絡が来ることもあります。

口座凍結をされたらどうすればよい?

口座が凍結されると預金の引き出しや引き落としができなくなってしまいます。そのまま放置していても口座凍結が解除されることはないため、凍結された口座によっては支払いや生活費で困るといった事態にもなりかねません。

口座が凍結された場合、以下のような対処を行いましょう。

  • 公共料金やクレジットカードの引き落とし先を変更する
  • 凍結解除の手続きをする
  • 払い戻し制度を活用する

公共料金やクレジットカードの引き落とし先を変更する

口座が凍結され引き落としがストップすると、公共料金やクレジットカードの支払いに支障がでます。支払いがストップしたまま放置してしまうと延滞料金が発生するだけでなく、ライフラインや利用するサービスが止められてしまう恐れがあるので注意が必要です。そのため、各公共料金やサービスなどの引き落とし先の変更手続きを早めに行うようにしましょう。

凍結解除の手続きをする

口座の凍結は、相続人が手続きすることで解除できます。

凍結解除の大まかな手続きの流れは、以下のとおりです。

  • 必要書類の収集
  • 銀行に必要書類を提出
  • 凍結解除

主な必要書類としては相続届や相続人の戸籍謄本・遺言書・遺産分割協議書などが挙げられますが、相続のケースや金融機関によって異なります。また、解除の手続きは必要書類提出後2~3週間ほどと時間がかかる点にも注意しましょう。

なお、凍結を解除したからといって被相続人名義のままで預金を使用するわけではありません。基本的には「口座を解約して預金を払い戻してもらう」「被相続人から相続人に名義を変更する」のいずれかの手続きを行います。

金融機関によっては、名義変更できずに払い戻しだけというケースもあるので、あらかじめ必要書類や手続きについて確認しておくとよいでしょう。

口座凍結の解除手続きは、司法書士などの専門家に委任することが可能です。専門家であれば、他の相続手続きもあわせて依頼することができるので検討してみるとよいでしょう。

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払い戻し制度を活用する

払い戻し制度とは、相続手続き前に葬儀代や生活費などで現金が必要になったときに、被相続人名義の口座から払い戻しを受けられる制度です。

以下の2種類の方法があります。

  • 家庭裁判所で手続きする
  • 金融機関で手続きする

家庭裁判所で手続きした場合、払い戻しできる金額に上限はなく認めてもらった額の払い戻しを受けられます。一方、金融機関で手続きした場合、1つの金融機関につき150万円が上限となり、さらに以下の計算で算出した額までの払い戻しとなります。

    払い戻し額:死亡した人の預金残高×1/3×払い戻しを求める相続人の法定相続分

たとえば、預金残高が600万円、相続人が配偶者と子どものケースで配偶者が払い戻しを請求した場合、「600万円×1/3×1/2=100万円」となります。また、1つの金融機関に複数口座を持っている場合でも、上限は150万円です。

預金の払い戻し制度は、他の相続人の同意がなくても単独で申請できます。さらに、上記の方法以外として相続人全員の同意書で引き出すことも可能です。

このように、被相続人の預金は正しい手続きを踏むことで引き出すことができます。凍結されていないからといって勝手に引き出すとデメリットが大きいので、きちんとした手続きで引き出すようにしましょう。

口座凍結の確認に関する注意点・知っておきたいこと

被相続人の口座凍結を確認する際、正しい知識がないと相続トラブルや凍結確認ができないなどといった恐れもあります。トラブルなくスムーズに口座凍結の確認ができるように、以下の注意点を理解しておきましょう。

凍結されていない場合は相続トラブルに注意

口座凍結確認で凍結されていないことがわかった場合でも注意が必要です。凍結されていない口座はキャッシュカードや通帳で簡単に引き出せてしまうため、相続人の誰かが勝手に引き出してしまう恐れがあります。

実際には必要な生活費や葬儀代のための引き出しだとしても、他の相続人から「遺産の使い込みでは」と相続トラブルになる恐れもあるでしょう。仮に、キャッシュカードや通帳を預かるのが自分であると、他の相続人からあらぬ疑いをかけられることも考えられます。

金融機関へ電話しても凍結の有無は教えてくれない

口座が凍結されているかは金融機関に確認すればわかりますが、基本的に電話での問い合わせでは教えてくれません。金融機関で確認する場合は窓口を利用するようにしましょう。

ネット銀行の場合も確認方法は同様

近年はネット銀行に口座を所有している方も多いものです。ネット銀行も被相続人の死亡が確認されれば口座が凍結されます。口座が凍結されたかどうかは、前述した「残高照会」「入金」「金融機関での問い合わせ」と同じ方法で確認できます。確認方法がよくわからない場合などは、カスタマーサービスなどに問い合わせてみるとよいでしょう。

ネット銀行などのデジタル遺産は、相続人ではそもそも存在が把握できていないというケースも少なくありません。デジタル遺産の存在がわからず放置していると、遺産分割協議のやり直しや知らずに損失が発生するといった恐れもあるので注意しましょう。

被相続人のパソコンやスマホのデータ・アプリ、メール履歴、郵送物などから、ネット銀行の口座を有しているか調べることが大切です。デジタル遺産を含め被相続人の財産の把握が難しいという場合は、専門家に相談するとよいでしょう。

その他の理由で口座凍結されることも

口座の凍結は、被相続人の死亡のみが原因ではありません。死亡以外でも以下のような理由で凍結される可能性があります。

  • 名義人が認知症である
  • 口座が不正利用された
  • 政務整理の対象となった

口座凍結の理由によって、解除などの必要な手続きは異なってきます。

口座凍結されて困らないために生前に出来ること

口座凍結されて困らないために生前に出来ることのイメージ

口座の凍結では「凍結前にとりあえず引き出そうとして相続トラブルになる」「凍結されて生活費が足りなくなった」など不都合が生じやすくなります。口座が凍結されても残された家族や相続人が困らないように、生前中にできるだけ対策を講じておくことが大切です。

口座凍結の対策を理解して、準備しておくとよいでしょう。

取引がある金融機関の一覧を作成しておく

そもそも相続人が被相続人名義の口座をすべて把握できるとは限りません。とくに、近年取引のない口座やネット銀行の口座などは把握が難しいケースも多いものです。

相続人が把握していない口座から引き落としがあると、いつの間にか延滞料金が発生していたということにもなりかねないでしょう。また、遺産分割協議後に口座の存在が判明すると遺産分割協議のやり直しが必要になるなど、相続人の負担が増えてしまいます。

生前中に取引のある金融機関を一覧に残しておくことで、相続発生時に相続人がスムーズに手続きを行うことができます。

取引金融機関の数を絞る

口座凍結の確認や凍結解除手続き、相続手続きは金融機関ごとに行う必要があります。複数の金融機関に資産を持っていると、1つずつ手続きしていくのに時間がかかってしまうでしょう。また、長期間取引のない場合「休眠口座」とされてしまうと、払い戻しの手続きに時間がかかるだけでなく、口座の維持管理の手数料を徴収される恐れもあります。

一覧を作成する際には、不要な口座を解約するなど管理しやすいようにしておくことも大切です。

通帳や銀行印の保管場所を家族で共有しておく

口座の把握や金融機関の手続きを行おうとしても、通帳や銀行印の場所がわからず探すのに時間がかかるケースもあります。

相続発生後は、さまざまな手続きが発生し、中には期限が設けられている手続きも少なくありません。相続発生後の相続人の負担を減らせられるように、必要な情報の共有や整理を進めておくことが大切です。

手元に現金を確保しておく

口座にある預金を相続後に引き出そうとすると、手続きに時間がかかるだけでなくトラブルに発展する恐れがあります。とはいえ、生活費や葬儀費用・公共料金の支払いなど必要なお金もあるでしょう。ある程度の現金を預金としてではなく現金として手元に残しておくことで、相続人も安心といえます。

ただし、あまりに高額の現金を手元に残すと、相続トラブルや犯罪に巻き込まれるリスクもあります。現金で保管する場合は使用する人をあらかじめ決め、領収書を保管させるなど相続トラブル対策が必要です。

口座凍結で困ったら専門家に相談を

口座の名義人が死亡したことを金融機関が確認すると口座が凍結され、引き出しや引き落としができなくなります。引き落としできるライフラインが停止した・生活費が足りないとならないように、早めに凍結されているかを確認し対処することが大切です。

また、仮に凍結していない場合でも、被相続人名義の口座が使える状態では使い込みなどの相続トラブルに発展する恐れがあります。

凍結解除の手続きがわからないといったケースで、被相続人名義の口座で困った場合は専門家への相談をおすすめします。

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記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て平成30年よりライターとして独立。令和2年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識などわかりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年1月29日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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