「終活を始めたいけど、何をすればいいんだろう?」と、どこから手を付けて良いか分からずに困っていませんか。終活でやるべきことは、以下の2つに大きく分類できます。『自身の死後に家族が困らないようにすること』と『これからの生き方の方針を決めること』しかし、終活を始めようとしたものの、何をどうすればいいのか分からずに月日が過ぎてしまうことは珍しくありません。今回の記事では、終活でやるべきこととその理由を解説します。スムーズに終活を行って、心配事のない充実した日々を送りましょう。
終活とは?終活をおこなう前に意識しておくこと
終活とは、人生を終えるための活動のことです。
人生を終えるための活動には、以下の2種類があります。
- 家族が困らないように準備をしておく
- 今後の生き方について方向性を定める
自分の意識がなくなったときや死後にどうしてほしいかの意思表示をすることで、家族が困ったりトラブルに発展したりしないようにフォローできます。
家族の死は何度も経験するものではないため、残された家族は手探り状態で葬式の手続きや相続を行わなければなりません。なかでも、大きな財産をやりとりする相続で手際よく進めることは至難の業です。
一方で、これからの人生を充実させることも終活で考えたい事柄です。今後の生き方についての方向性を定めることで、自分のやりたいことが明確になります。元気なうちにやりたいことを満喫すれば、「納得のいく人生を歩んだ」と心から思えるでしょう。
終活は、家族に迷惑をかけないための活動でもあり、この先悔いのない人生を送るための活動でもあるのです。
自分の死後に家族が迷わない配慮は先に済ましておく
終活で最初に手を付けるべきポイントは、自分の死後に家族が困らないようにすることです。自分の死によって家族に苦労をかけないための終活は、以下の5つのステップで行います。
- まずはエンディングノートから
- 資産を整理し相続について決めておく
- 遺言書を書く
- 葬儀やお墓に関する考えを書いておく
- 生前整理をしっかりやっておく
順番に確認しましょう。
まずはエンディングノートから
終活を始めるなら、最初にエンディングノートを書きましょう。エンディングノートとは、自分の情報や想いを書き留めておくノートのことです。
具体的には、以下のような内容を書き込みます。
- 自分の死を伝える人のリスト
- 希望する葬式スタイル
- 自分の財産の一覧
残された家族が手探り状態で事務作業を行うことは大変です。そこで、エンディングノートに整理された情報や希望事項があれば事務手続きの手助けになります。
資産を整理し相続について決めておく
自分の資産の棚卸しをして、相続について決めましょう。なかには「預貯金は微々たる金額だから必要ない」と考えている人もいるかもしれません。しかし、現金化しづらい不動産だけが残ったとしても、相続トラブルの火種になり得ます。
なぜなら、以下の問題が出てくるからです。
- 残された不動産を誰が管理するのか?
- 不動産を相続しなかった人の法定相続分のお金はどう支払うのか?
相続トラブルはお金持ちの人だけの問題ではなく、誰でも直面する問題です。早めに不動産や有価証券、保険などを含んだ資産の洗い出しをして、相続について考えをまとめておきましょう。
遺言書を書く
相続について考えがまとまったら、遺言書を作成して法的拘束力のある書類として残しましょう。家族以外の人へ財産を譲りたい場合や相続で事業を分割されたくない場合に遺言書は有効です。
遺言書には、以下の3種類の種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
挑戦しやすい遺言は自筆証書遺言です。自筆証書遺言は、自分で全文・日付・氏名を書いて判子を押せば完成します。ただし、要式に不備があった場合、遺言の効力は法律上認められないため慎重に作成しましょう。
公正証書遺言は、公証役場に出向いて自分の意志を公証人が書面に残す遺言方法です。公証人が作成し公証人役場で保管するため、確実な遺言書を作成できます。デメリットは費用と手間がかかることです。
秘密証書遺言は、遺言内容を亡くなるまで秘密にしたいときに使われます。公証人が遺言内容を確認することはないので、要式に不備が残る可能性を考慮しなくてはいけません。
また、どの遺言書でも生きている限りいつでも自由に撤回できます。自分に合った方式で遺言書を作成しましょう。
葬儀やお墓に関する考えを書いておく
葬式やお墓に関する考えをエンディングノートに書きましょう。なぜなら、葬式やお墓に対する考え方は、親の世代と子どもの世代で全く異なることがあるからです。また、親族間でも考え方が全然違うことがきっかけで、トラブルに発展することも珍しくありません。
たとえば、自分と家族はセレモニーホールによる家族葬、墓じまいして永代供養にしようと考えていたとします。しかし、ほかの親族は家で盛大に葬式をあげて代々のお墓に入るものだと考えているかもしれません。
この場合、残された家族は親族の意見とぶつかることになります。エンディングノートに自分の意志を残しておけば不要なトラブルを回避できる可能性が高いです。要望がある場合、詳しく書き込んでおきましょう。
生前整理をしっかりやっておく
生前整理とは、生きているあいだに財産や所有物を整理し、不要なものを処分することです。 意外と時間を費やすので、体力のあるうちに少しずつ生前整理を行いましょう。
重要書類から優先的に行えば、体調が急変した場合でも、家族がスムーズに事務手続きを行えます。重要書類だけでなく不用品などの断捨離を行うことで、残された家族による遺品整理がラクになります。
生前整理はとても労力と時間のかかる行為です。早いうちから取り組んで地道に整理しながら、シンプルかつ身軽な生活を送りましょう。
今後の人生の方向性を決める
死後のことばかりでなく、今後の人生をどのように風に過ごしたいのか自分に問いかけ、まとめることも終活です。人生の方向性を定め、「どう生きたいか」を明確にしましょう。
方向性を定めるときは、健康(医療や介護)・お金・生き方の3つの観点から考えるとスムーズに考えがまとまります。
医療や介護について
医療や介護についてどのような対応をしてほしいのか明確にし、意思疎通ができなくなっても家族によって希望通りの行動をしてもらえるように形に残しておきましょう。
たとえば、現代の医学では回復の見込みのない病状で終末期になった場合、人工呼吸や胃ろうなどで延命する選択肢があります。延命をせずに人間としての尊厳を保ったまま死を迎えるには、自分の意志を明確にしておくとよいでしょう。
また、介護が必要になったときに、自宅か施設のどちらで過ごしたいかをあらかじめ決めておくと、家族の意思決定や手続きがスムーズです。事前にそれぞれの介護方法でどの程度家族に負担がかかるのかを調べておくと、介護する家族の同意を得られやすくなります。
医療や介護については、しっかり下調べを行ったうえで結論を出しましょう。また、自分の出した結論が誰にでもわかるように、エンディングノートなどで形に残しておくことが大切です。
資産をどのように使うかを考える
今後、自分の資産をどのように活用するのか計画を立てましょう。やみくもに資産を切り崩してしまうと、いざというときに「お金が足りない」という事態になりかねません。かといって、慎ましく生活しすぎて生きる喜びを得られないのも考えものです。自分らしい生き方をまっとうするために、計画的な資産の切り崩しを行いましょう。
資産の使い道について計画を立てるときは、以下のステップを参考にしてください。
- 生活費で毎月・毎年いくら必要なのか算出する
- 必要な生活費を平均寿命プラス5年で見積もってよけておく
- 医療や介護が必要になったときのお金を算出する
- 医療や介護期間を多めに見積もって必要な介護費用をよけておく
- 残った資産を算出してどのように使うのか考える
まず、現在の生活費を明らかにするところから始めましょう。長生きしたときに備えて、平均寿命よりも多めの年数で見積もっておくとお金の心配をせずに暮らせます。
医療や介護で必要な費用は300万ほどあれば安心です。介護施設に入居予定なら、入居一時金も上乗せして計算してください。必要な資金の棚卸しが終わったら、自分の人生を彩ることを考えましょう。
旅行が趣味であれば予算はいくらで年に何回行くのか計画を立てると、資産の減少に不安を覚えることなく楽しめます。また、不動産のような分割しづらい資産の相続について、早いうちから専門家に相談しておくと、いざというときに安心です。
これからの生活について考える
どのような生活が理想なのかじっくり考えましょう。
たとえば、自分は地方に住んでいて子どもは都市部に出てしまっているとします。子どもから「近くで住むことも検討してみて」と言われたときに、現在の居住地に住み続けるのか近くに住んで子どもたちをサポートしながら過ごすのか、といった選択に迫られることがあります。
仮に現在住んでいる場所で生活を続けるなら、自宅のリフォームを考えなくてはいけないかもしれません。一方で、子どもたちの近くで生活するとなると、どのくらいの距離感で子どもたち家族と付き合うのか考えることになるでしょう。
今後、どのような生活を送りたいのか明確にすることで、先々で必要になりそうな費用や新たに考えるべき項目がハッキリします。また、自分のやりたいことをピックアップすることで、具体的にどのように行動すべきか見えてくるはずです。
終活にまつわるよくある悩み
終活にまつわる悩みは尽きません。そのなかでも、多くの人が悩む問題について確認しましょう。
終活で直面する、よくある悩みは以下の3つです。
- ペットについて
- 贈与したい場合について
- 認知症について
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ペットについて
おひとりさまでペットと一緒に暮らしていると「自分の死後、ペットはどうなるんだろう」と悩む人は少なくありません。死んだあとのペットの世話は、事前に親族か親しい友人などに相談してお願いしておきましょう。
親しい友人にペットを託すときはもちろん、親族に託す場合も双方でしっかり話し合いをしておくべきです。
なぜなら、「誰かがペットの面倒をみてくれるだろう」と誰にもお願いをしないままだと、自身の死後にペットの押し付け合いが始まるかもしれないからです。必ずペットを託したい相手と話し合って「責任をもって世話をする」という同意を取り付けましょう。
贈与したい場合について
相続にかかる税金を減らすために、生前贈与を検討している人もいるでしょう。生前贈与には3つのメリットがあります。
- 相続税や贈与税の節税ができる
- 贈る時期や相手を選べる
- 遺産争いを避けられる
控除を活用すれば、贈与しても非課税扱いになります。また、贈与する時期や相手を自由に選べるので、自分なりに納得感のあるお金の使い方をした実感を得られるでしょう。一方で、贈与するときに気を付けないとトラブルに直面することもあります。
贈与したときに巻き込まれがちなトラブルは以下の2つです。
- 節税が税務署に認められない
- 相続税の対象リスク
節税できる条件は細かいので、要件に合っていないと税務署に認められないケースがあります。たとえば、非課税金額内でも毎月同じ金額を贈与していると定期贈与として扱われ、課税対象になる可能性があります。
また、贈与から3年以内に死亡した場合、贈与税の対象です。贈与するときは税金発生リスクを考慮しながら計画的に行いましょう。
認知症について
認知症を発症し判断能力がないと判断されると、あらゆる意思表示が原則無効になります。たとえば、認知症になってからの遺言書の効力は原則認められません。また、認知症になった本人の銀行口座は凍結され、お金を引き出せなくなります。
なぜなら、善悪の判断のつかない状態で資産に関する判断を任せられないからです。そのため、認知症を発症するまえに、遺言書の作成や自分の口座の取扱いを決めておかなければなりません。
認知症を発症したあとも自分の口座を家族が使えるようにするには、家族信託という方法があります。家族信託とは、認知症による各サービスの凍結に備えて、財産管理の方法を家族間で決めておく仕組みのことです。
家族信託を利用すれば、資産の使い方も柔軟に決定できます。認知症になってからでは遅いため、なるべく早めに遺言書の作成や家族信託を活用しましょう。
おわりに
終活でやるべきことは、残りの人生をどう生きるかを明確にして、死後残された家族が困らないよう情報をまとめることです。
つい自分の死後についての終活に意識が向きがちですが、同じくらい今後の生き方を決めることも重要と言えます。優先順位をつけて決めていけば残された家族だけでなく自分自身も過ごしやすくなるので、早いうちから少しずつ取り組むことが終活のコツです。
終活で自分自身を見つめ直し、死後に希望することやこれからの生き方を明確にして、悔いのない人生を送りましょう。