【遺産相続】兄弟間でトラブルが起こる原因と避けるためのポイント

公開日:2023年9月26日|更新日:2023年11月24日

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「疎遠だった兄弟が急に出てきて一方的に主張して話を聞いてくれない…」

どんなに仲の良い兄弟であっても相続が関わるとトラブルになる可能性があり、仲が良くなければなおさらトラブルになりやすいものです。

そこで、この記事では兄弟間の相続トラブルの原因や対処法・トラブルを避ける方法などを分かりやすく解説します。

兄弟が相続人になるケースと遺産相続の割合

兄弟が相続人になるケースは、大きく次の2つがあります。

  • 親の遺産を子である兄弟が相続するケース
  • 被相続人の兄弟が相続するケース

親の遺産を子である兄弟が分割し合うケースは多いでしょう。

この場合は、「被相続人の配偶者と子(兄弟)」で分割するパターンと、「配偶者が亡くなっており子(兄弟)のみ」で分割するパターンがあります。配偶者が生存している場合、配偶者が遺産の2分の1を相続し残りを兄弟で分割します。配偶者が亡くなっている場合は、子のみで遺産を分割するのです。

一方、被相続人の兄弟が相続するケースは多くはありません。故人にとって兄弟は近しい存在ではありますが、相続人としてみた場合遠い存在でもあります。

そもそも、法定相続人は次のように定められています。

  • 常に相続人:配偶者
  • 相続第1順位:子
  • 相続第2順位:親や祖父母など
  • 相続第3順位:兄弟姉妹

配偶者は常に相続人となります。

さらに配偶者以外の人から相続順位の高い順位の人が相続人となるのです。順位の高い人が相続人となる場合、その下の順位の人は相続人にはなれません。

例えば、配偶者と子が相続人となる場合は、親は相続人になれないのです。

また、子には代襲相続が認められているため、相続時に子が死亡している場合でも子の子供(被相続人の孫)がいる場合は、孫が相続人となり親は相続人になれません。このように相続人になれる順位が決まっているため、兄弟が相続人になれるケースは多くはないのです。

兄弟が相続人になれる代表的なケースには、次のようなパターンがあります。

  • 被相続人に親・祖父母・子(孫)がいないパターン
  • 被相続人に配偶者・親・祖父母・子(孫)がいないパターン
  • 兄弟以外が相続放棄したパターン
  • 兄弟を相続人にした遺言書があるパターン

それぞれ相続できる割合が異なってくるので、相続割合を含めて詳しくみていきましょう。

被相続人に親・祖父母・子(孫)がいないパターン

  • 相続人:配偶者と兄弟
  • 相続割合:配偶者3/4、兄弟1/4

被相続人に配偶者がいても子や孫がおらず、さらに両親・祖父母が他界している場合は、配偶者と兄弟が相続人となります。この場合遺産は、配偶者が4分の3、兄弟が4分の1で按分することになるのです。

仮に兄弟が複数いる場合は、4分の1を人数で分割することになります。

被相続人に配偶者・親・祖父母・子(孫)がいないパターン

  • 相続人:兄弟のみ
  • 相続割合:兄弟のみですべて

配偶者がおらず子(孫)がいない場合、親(祖父母)が相続人となりますが、親(祖父母)が他界していれば兄弟のみが相続人となるのです。

この場合は、兄弟で遺産をすべて相続することになり、兄弟の人数に応じて分割します。

兄弟以外が相続放棄したパターン

  • 相続人:兄弟のみ
  • 相続割合:兄弟のみですべて

被相続人に配偶者、または子など兄弟よりも相続順位が上の人がいる場合でも、兄弟以外のすべての相続人が相続放棄すれば兄弟が相続人となります。

相続放棄の場合、相続人は一から相続人でなかったとされるので代襲相続も発生しません。

そのため、例え子の子供(孫)がいる場合でも、子が相続放棄すれば孫が相続することはできないのです。兄弟以外の人がすべて相続放棄し兄弟が相続する場合は、すべての遺産を兄弟の人数で分割することになります。

ただし、すべての人が相続放棄するのは借金が多額など放棄するだけの理由があるので、安易に相続するのはおすすめできません。

兄弟を相続人にした遺言書があるパターン

  • 相続人:兄弟を含め遺言書で指定された人
  • 相続割合:遺言書の相続指定に応じる(遺留分は除く)

遺言書は法定相続分よりも優先されます。

そのため、遺言書で兄弟に相続させる旨を残している場合は、遺言書の内容に沿って兄弟が相続できます。ただし、法定相続人には遺留分が認められています。

遺留分とは遺族の生活を守るために必要最低限認められる相続のことです。たとえ遺言書がある場合でも、他の相続人がいる状況であれば遺留分を侵害して相続することはできません。

仮に、配偶者と子がいる状況で遺言書で兄弟のみにすべて相続させるとあっても、配偶者や子は遺留分を侵害された部分を兄弟に請求できるのです。

兄弟が相続人となる遺産相続でよくあるトラブル・原因

ここでは、兄弟が相続人となる場合によくあるトラブルとその原因をみていきましょう。

相続財産の評価で意見不一致で遺産分割協議がまとまらない

遺言のない相続の場合、遺産分割協議で遺産分割方法を決めることになります。

分割する遺産が現預金のように、評価額が分かりやすく分割しやすいものであれば問題ないでしょう。しかし、遺産に不動産など評価しにくい物が含まれるとトラブルに発展しやすくなります。

遺産を受け取る側からすれば、自分が相続する遺産の評価額が低い方がより多くの遺産を受け取れるので有利になるものです。反対に、その遺産を受けとらない人にとっては、その評価額を高くする方が自分に有利になります。

そのため、相続財産の評価で意見が一致せずに遺産分割協議が進まない場合があるのです。また、生前贈与があった場合などでは相続財産が明確にできずに、相続割合でトラブルに発展する可能性があります。

話し合いの場が持てない

遺産分割協議では、相続人全員による合意が必要です。

そもそも話し合いに参加しない人がいれば協議を進めることができません。兄弟間で仲が悪い場合などで話し合いの場が持てずに相続を進められないトラブルもあります。

また、被相続人の離婚や事実婚などで、自分が知らない兄弟が後から判明するという場合もあるのです。法定相続人に該当する人が後から判明した場合は、遺産分割協議をやり直す必要があります。

ひとりが遺産を独占しようとするなど

兄弟の誰かひとりが法定相続分を超えた相続を主張しトラブルに発展するケースも珍しくありません。遺産の独占や法定相続分を超えた相続の主張をされる原因としては、次の様なことが挙げられます。

  • 相続人間に力関係がある
  • 被相続人の介護や同居を誰かがしていた

相続人間の力関係が強い場合、力の強い方が一方的に遺産分割を進めるケースは珍しくありません。また、介護や同居を理由により多くの遺産の相続を主張するケースもあるでしょう。

兄弟間での相続トラブルを事前に防ぐためには

兄弟間でトラブルが解消したイメージ

兄弟間で相続トラブルが発生すると解決が難しくなるばかりか、関係性も悪化してしまう恐れがあります。できるだけ相続トラブルを発生させないためには、事前の対策が重要です。

兄弟間での相続トラブルを事前に防ぐ対策として、次のようなことを意識しておくとよいでしょう。

  • 遺言書を作成する
  • 公平な遺産分割方法を理解する
  • 生命保険を活用する
  • 生前対策をする
  • 専門家を活用する
  • 兄弟間でコミュニケーションを取る

遺言書を作成する

トラブルを防ぐには相続について遺言書を作成しておくことが有効です。

誰がどの財産を相続するのかを明確にしておけば、遺産分割で揉めることを防ぎやすくなります。また、遺産がどれくらいあるのかが明確になっていることもトラブルを避けやすくなるのです。

相続時に遺産の調査からスタートすると、思ったよりも遺産が少ない場合誰かが隠したのではという疑心暗鬼からトラブルに発展しやすくなります。
遺産が分かっているだけでも、トラブルになる原因を取り除くことにつながるので遺産の目録を作成しておくようにしましょう。ただし、遺言書を作成する場合は、遺留分に注意し遺言書の効力にも注意が必要です。

遺言書の作成時には弁護士に相談することで、後々のトラブルを避けやすくなるでしょう。

公平な遺産分割方法を理解する

相続には法的に決められていることも多くあります。相続の基礎知識がないまま遺産分割を進めていると、トラブルに発展しやすくなります。

特に、次のような点は押さえておくことが大切です。

  • 法定相続人
  • 相続割合
  • 遺言書の効力
  • 遺留分
  • 寄与分

誰がどれ位の遺産を相続できるかは基本として押さえておく必要があります。

「兄弟だから自分が相続人だと思っていた」というケースは珍しくありません。また、相続財産には遺留分があり、遺言書を作成する場合は遺留分を侵害しないように配慮する必要もあります。

ただし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分のない兄弟姉妹では相続財産が一切もらえないケースは多く、そのことからトラブルに発展する可能性も高くなるのです。

基本的な知識のないまま相続を進めていると、誰かが多くもらいすぎたりもらえなかったりで問題になる可能性があります。

基本的なことを理解して公平に分割することで相続トラブルを避けやすくなるでしょう。

生命保険を活用する

死亡保険は受け取った金額が受取人の財産となるため、遺産分割の対象とはなりません。

また、遺留分請求の対象にもなりません。そのため、相続時に受け取る額が少ない人や受け取れない人を死亡保険の受取人に指定することで、相続での不公平感を減らすことにつながります。

ただし、死亡保険金は相続税の対象とはなる点には注意しましょう。

生前対策をする

生前贈与を活用することで、生前中に財産を公平に分割でき相続時のトラブルを防ぎやすくなります。

生前中であれば、自分の意志を反映して希望する相手に財産を渡すことも可能です。また、生前贈与をしておけば相続時の財産を減らせられ、トラブルだけでなく相続税の対策ともなるでしょう。

専門家を活用する

遺言書の作成や公平な遺産分割などは、専門家の知識を得ながら進めることをおすすめします。

相続に関してはある程度法的な知識がなければ、トラブルに発展しやすいものです。また、自分でどんなにしっかり対策したと思っていても、相続が絡むとどんなことがトラブルになるかは予測し切れません。

専門家の力を借りながら相続対策を進めることで、トラブルなくスムーズな相続を目指せるでしょう。

兄弟間でコミュニケーションを取る

兄弟で相続トラブルに発展しやすいのは、もともと仲が悪くコミュニケーションが取れないことも原因です。

また、仲が良かった兄弟でも、相続についてのコミュニケーションがとれていないとトラブルになりやすいでしょう。相続に関する情報はしっかりと兄弟間で共有しておくことが大切です。

誰かひとりが勝手に進めようとするとトラブルになりやすいため、相続の進め方や現状など兄弟間で小まめに情報を共有するようにしましょう。

兄弟間で相続トラブルになってしまったら

もし兄弟間で相続トラブルになった場合、次のような対処方法が考えられます。

  • 相続人全員で話し合う
  • 専門家に相談する

まずは、兄弟を含めた相続人全員で冷静に話し合うようにしましょう。

しかし、当事者同士で話し合っても意見の食い違いや感情が高ぶってしまい解決できない可能性が高くなります。解決が難しいと感じたら、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
「時間が経てば解決する」と思っていても、相続には相続放棄や相続税など期限がある手続きも多くのんびり待っていることはできません。また、お金が絡む問題は時間だけでは解決できないことも多いでしょう。

法的な知識を持つ第三者が間に入ることで、冷静に判断できトラブル解決に進みやすいものです。

兄弟で相続をする際の注意点・知っておきたいこと

兄弟で相続する場合の注意点として、以下のことは事前に理解しておくことが大切です。

  • 兄弟姉妹で相続する場合は相続税は20%増になる(相続税の2割加算)
  • 兄弟姉妹は遺留分が無い
  • 兄弟姉妹の代襲相続は1代のみ
  • 戸籍謄本の収集に手間がかかる

兄弟姉妹が相続する場合、配偶者や子が相続する場合よりも相続税が多くなる点に注意しましょう。例えば、相続税が1000万円の場合、兄弟姉妹は1200万円が課税されるのです。

兄弟姉妹は遺留分がないため、他の人が相続人の場合一切相続できない点にも注意が必要です。

また、代襲相続も兄弟姉妹は1代(兄弟姉妹の子まで)しか認められていません。兄弟姉妹が相続する場合、相続人の特定のための戸籍謄本の量が膨大になる可能性があり、手間や時間もかかるため早めに用意しておく必要があります。

このように兄弟姉妹の相続は、配偶者や子の相続とは異なり、手続きや税制面で不利になる点には注意しましょう。

相続で兄弟間トラブルにならないよう事前に対策しておこう!

兄弟の相続についてよくあるトラブルやトラブルの予防方法などをお伝えしました。

被相続人の兄弟が相続人になるケースは多くはありません。しかし、兄弟が絡んで相続トラブルになるケースは多いので、兄弟の相続について理解しておくことが大切です。

兄弟で相続トラブルに発展すると、収拾が難しく関係も悪化してしまいます。できるだけ事前に対策してスムーズな相続ができるようにしておくようにしましょう。

また、すでに相続トラブルに発展しているなら、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。事前・事後であれ相続トラブル対策を進めるなら、法的なプロに相談するのが望ましいです。

相続問題に詳しい専門家なら、円満な相続のサポートができるでしょう。

著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。【資格】宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年9月26日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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