エンディングノートとは?書くべき理由とまとめておくべき項目まとめ

公開日:2022年6月20日|更新日:2023年1月4日

「エンディングノートの書き方を知りたい」と、どのような内容を書き込むべきか悩んでいませんか。実はエンディングノートの書き方に決まりはありません。遺言書と異なり、記したい内容をすべて書き込めます。そもそもエンディングノートは、自分らしい生き方を実現したり自分の遺志を家族に実現してもらったりするために作成するものです。あなたの希望が分かれば、「できるだけ故人の遺志に沿いたい」という家族の意思決定の助けになります。今回はエンディングノートに書きたい項目とその理由、書き終わったあとにやるべきことを紹介します。書き込むべき項目を押さえながら、家族へのメッセージなども記して自分なりのエンディングノートを作成しましょう。

エンディングノートとは

エンディングノートとは、いつか迎える死に備えて自身の情報や希望、想いを記しておくノートのことです。有価証券や不動産などの財産情報や友人知人の連絡先、葬儀の希望などを書いておけば、残された家族はエンディングノートの内容に沿って行動できます。

ただし、エンディングノートに法的拘束力はありません。相続に関しての希望をエンディングノートに書き込む人もいます。しかし、原則として法的な効力が発生しないため必ず実現するものではないことを覚えておきましょう。

自分の死後に法的拘束力を持たせられる書類は遺言書です。遺言書なら、相続に関する自分の意志を法的拘束力として残せます。

遺言書とエンディングノートの違いは以下の表のとおりです。

エンディングノート 遺言書
法的な効力 ×
書き方 自由 要式に沿う必要がある
内容 自由
相続以外の内容でもOK
相続に関する内容
費用 数千円台で以内 数百円~数万円と幅がある
確認する時期 原則自由のため生前でもOK 家庭裁判所の検認を経る必要がある

エンディングノートでも自筆証書遺言としての体裁が整っていれば、遺言書として扱われる可能性はありますが、体裁が整っていなければ基本的に法的効力はありません。

また、遺言書と違ってエンディングノートに書き込む内容は自由です。そのため、家系図や家族へのメッセージなどを思いのままに書き込めます。

エンディングノートは、残された家族が事務や相続の手続きで困らないようにサポートする役割として注目されがちです。しかし、書き方次第で家族へ最後のメッセージを伝えるアイテムとしても使えます。

記入する項目のピックアップの判断を自分で行い、自由に書き込むことが負担に感じるなら市販のエンディングノートを購入しましょう。市販のエンディングノートはあらかじめ書くべき内容が決まっているため、項目に沿って書き込めば完成します。

エンディングノートを書くべき理由

エンディングノートを書くべき理由は、以下の3つです。

  1. 生前整理の一種
  2. 残された家族の形見
  3. やるべきことの発見

エンディングノートは生前整理の一種といえます。生前整理とは、生きているあいだに自身の資産や所有品を整理して不要な品を処分して身軽にしておくことです。

エンディングノートで書き込むべき内容のひとつに、資産情報や使用中のサービスIDやパスポートなどの自身の情報をわかりやすくまとめておくことが挙げられます。自身の情報をわかりやすくまとめるために、身の回りを整理しつつ資産情報や契約書類の内容や置き場などを整理することから始めることが多いです。

身の回りを整理する段階で、すでに使っていない月額払いや年払いのサービスや休眠口座が見つかることもあるでしょう。使っていないサービスを今後も使う可能性は低いです。必要最低限のサービスだけ残して後はすべて解約し、身軽な状態にしておきましょう。

また、書く内容次第でエンディングノートは形見になります。なぜなら、家族との思い出やメッセージ、自分史と一緒にその当時の気持ちを書いておけば、死後もメッセージは残り続けるからです。

さらに、家族への想いや自分史などをエンディングノートに書き込むにあたり、人生の振り返りを行います。人生の振り返りをきっかけに、いつかやりたかったことが見つかったり思い出したりするかもしれません。エンディングノートの作成は人生の清算を行うだけでなく、これからの人生をどう歩むかをあらためて考えるきっかけにもなるのです。

このように、自分にまつわる情報をひとつのノートにすべてまとめられることがエンディングノートを作成するメリットです。情報や要望、メッセージを集約させることで、残された家族の実務的にも精神的にも負担を軽減できます。

エンディングノートに書くとよい項目

エンディングノートに書くとよい項目を確認しましょう。自分でエンディングノートを作成しようにも「何を書けばいいのか分からず手を付けていないまま」という人もいるかもしれません。

手始めに、手続きに必要な情報はすべてエンディングノートにまとめておくことを意識すると、書くべき内容が見えてきます。

具体的な内容は、以下の7つです。

  1. 自分の個人情報
  2. 医療・介護についての希望
  3. IDやパスワードの情報
  4. 葬儀に関する希望
  5. 所有資産のリスト
  6. 死亡時に連絡すべき一覧
  7. 遺言書について
  8. その他

それぞれの内容ごとに、どのような情報を記入すべきか見ていきましょう。

自分の個人情報

自身の個人情報は、あらゆる事務手続きで必要になるため書いておきましょう。正確な情報が書かれていればスムーズに手続きを進められます。

<個人情報で記入すべき項目>

  • 氏名
  • 生年月日
  • 血液型
  • 住所・電話番号
  • 本籍
  • 免許証やパスポート、保険証などの保管場所
  • 家族構成
  • 職歴
  • 好きな食べ物・嫌いな食べ物
  • 趣味・特技

意外と家族でも把握できていない項目があるため正しい情報を記入しましょう。 好みの食事や職歴なども書いておけば介護が必要になったときの食事で役立ちます。

医療・介護についての希望

意思疎通を図れなくなったときのために医療・介護についての希望を書きましょう。ここでは延命治療や臓器提供の有無などの希望もまとめておくことをおすすめします。

<医療・介護で記入すべき項目>

  • 在宅介護か介護施設かの希望内容
  • アレルギーの有無
  • 病歴や持病の有無
  • 延命治療の有無
  • 臓器提供の希望

最期まで自分らしい生き方を求めるなら、希望する医療や介護の内容を詳しく書き込むことが大切です。

IDやパスワードの情報

使用しているサービスのログインIDやパスワードの情報をエンディングノートにまとめましょう。

<IDやパスワードの情報で記入すべき項目>

  • サービス名
  • IDとパスワード
  • 引き落とし口座やクレジットカード

SNSや通販サイトのログイン情報などをまとめておくことで、死後の退会手続きが簡単にできます。

葬儀に関する希望

葬儀やお墓に関する希望を詳しく書いておけば、家族と親族の意見の違いによるトラブルを回避できます。

<葬儀に関する希望で記入すべき項目>

  • 希望する遺影の写真の指定
  • 葬儀の形(家族葬など)
  • 遺骨やお墓の扱い(墓じまいや永代供養など)
  • お墓の継承者
  • 費用について

葬儀やお墓にまつわる価値観が多様化しているため、自分の希望を明確にして書き込むことが重要です。特に、墓じまいや永代供養をする予定なら、その旨をしっかり書きましょう。

所有資産のリスト

所有資産をリスト化して、ひとつのページにまとめましょう。どんな資産を所有しているのか正確にリスト化することで、相続手続きに関する負担を軽減できます。

<所有資産で記入すべき項目>

  • 預貯金の金融機関名や暗証番号
  • 有価証券の内容や証券会社名
  • 不動産の登記簿謄本などの詳細
  • 貴金属や美術品などの資産
  • 加入保険の種類と契約内容
  • 年金の内容
  • ローンの内容や金額
  • 貸しているお金の金額や相手
  • 印鑑や通帳などの保管場所

住宅ローンや貸しているお金も相続の対象となるため、負債や貸金もリストアップしてください。印鑑や通帳、各種契約書などの保管場所も記入しておくと、必要になったときに探さずに見つけられるためスムーズに手続き作業へ移れるでしょう。

死亡時に連絡すべき一覧

自分が死んだときに連絡をしてほしい人の一覧を作成しましょう。

<連絡先の作成で記入すべき項目>

  • 氏名
  • 電話番号や住所などの連絡先
  • 自分との関係

連絡先と一緒に関係性も記しておけば、誰に連絡してほしいのか把握できるため訃報の連絡がしやすくなります。

余力があるなら家系図を書いておくと、相続手続きのときに役立つでしょう。

その他

自分の死後に伝えたいことがあれば記入しましょう。たとえば、ペットを飼っているなら、かかりつけの病院や予防接種の情報、ペットを託す相手の名前を書いておくと安心です。形見分けしてほしいアイテムがあるなら、エンディングノートにまとめましょう。

余裕があれば、家族一人ひとりへのメッセージを書くことをおすすめします。事務的なエンディングノートが愛の込もったメッセージノートに変身するため、家族にとって大切な形見となるはずです。

エンディングノートを書き終わったら…

エンディングノートを書き終えたら、信頼できる親族2~3人にエンディングノートの存在と保管場所を伝えましょう。なぜなら、エンディングノートが発見されなければあまり意味がないからです。

しかし、個人情報や財産の詳細なデータが書き込まれているため、大っぴらにエンディングノートの存在を伝えるわけにはいきません。信頼のおける子どもや兄弟など2〜3人にエンディングノートの保管場所を伝えましょう。

また、エンディングノートは存命中に何度でも書き足すことができます。書きたい内容が浮かんだら随時書き込んでいき、内容を充実させましょう。

とくに、家系図や自分史を少しずつ書いていけば、残された家族がエンディングノートを見返したときに、あなたのことをより身近に思い出せるはずです。

おわりに

エンディングノートの書き方は本来自由です。ただ、事務や相続などの手続きは残された家族にとって大きな負担になるため、まずは個人情報や財産のリストをわかりやすくまとめることをおすすめします。

死後のことだけでなく、介護や医療に関する希望も書いておくことで、意思疎通ができなくなったときでも自分らしい生き方を貫けるでしょう。また、自分の人生を振り返りながら作成するため、今後の生き方ややりたいことが明確になることも期待できます。

実際のところ、財産のリスト化や契約書類の保管場所の明記など労力のかかる作業は多いです。生前整理の一種として少しずつ取り組んで、家族への最後の想いとしてエンディングノートを作成しましょう。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月20日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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