相続放棄の手続きの依頼先は弁護士?司法書士?業務範囲や費用の違いを解説

公開日:2024年6月7日

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「相続放棄の手続きを専門家に依頼したいけど、弁護士と司法書士のどちらに依頼すべきかわからない」とお悩みではありませんか。大きな違いは、依頼できる業務範囲と発生する費用です。状況によってどちらに依頼すべきか結論は変わります。本記事では、弁護士と司法書士の違いやそれぞれに依頼するメリット・デメリット、費用について詳しく解説します。

相続放棄の手続きは弁護士・司法書士に依頼可能

相続放棄の手続きをするにあたって、自分ですべて行うと時間と労力がかかってしまって大変です。そもそも相続放棄すべきかどうか悩んでいる方もいるでしょう。

このようなとき、頼りにできる専門家として弁護士と司法書士が挙げられます。

専門家に依頼するメリットや弁護士と司法書士の違いについて詳しく確認しましょう。

相続放棄の手続きを専門家に依頼するメリット

相続放棄の手続きは専門家に依頼しなくても、自分で必要書類を作成・収集して家庭裁判所に提出すれば完結できます。

しかし、相続放棄の手続きは、専門家に依頼することをおすすめします。理由は、以下の3つです。

  • 放棄手続きは一度しかできない
  • 手続きできる期間が短い
  • 書類収集や書類作成が手間

原則的に、放棄手続きは一度しかできません。

そもそも、正確に相続放棄をしたい理由を記載し、必要書類を提出すれば相続放棄を却下される可能性はごくわずかです。しかし、万が一却下されると、再度同じ手続きをすることはできません。即時抗告を行わなければならず、費用と時間がかかってしまいます。

また、相続放棄の期限は自身に相続が発生したと知った日から3か月間と、とても短い期間に手続きをしなければなりません。短期間の間に相続放棄するかどうかを判断し、書類収集や書類作成をする必要があります。

専門家に依頼すれば、相続放棄に関する自身への負担を大幅に軽減できます。確実に相続放棄するためにも、専門家を頼りましょう。

弁護士と司法書士の違い

相続放棄の手続きを依頼できる専門家として、弁護士と司法書士が挙げられます。しかし、両者には依頼できる業務範囲が異なります。

以下の表は、両者の業務範囲を比較したものです。

相談・手続きの内容弁護士司法書士
相続放棄の相談
必要書類の収集
申述書・上申書などの作成※1
裁判所への書類提出不可
裁判所からの照会書への回答・返送助言可※2
裁判所からの受領通知や連絡不可
債権者への相続放棄の報告
訴訟への対応一部可※3

※1ただし本人の署名捺印が必要。
※2本人の署名捺印が必要。
※3認定司法書士による簡易裁判所が管轄する民事訴訟で、負債額が140万円以下であれば相談・交渉の対応が可能。

弁護士には、家庭裁判所で行われるすべての手続きに関して代理を依頼できます。手続きの際に家庭裁判所へ行かなければならない場合や家庭裁判所との連絡のやりとりが必要な場合も、対応してもらえます。

一方、司法書士が対応できる主な業務範囲は、手続きに必要な書類の作成や収集です。家庭裁判所に行く必要が出た場合は本人が出向かなければなりません。家庭裁判所から連絡があった際にも直接やりとりをする必要があります。

また、債権者やほかの相続人と争いが発生している場合、トラブル解決には弁護士が強いです。司法書士からも適切なアドバイスをもらうことは可能ですが、訴訟に発展した際に対応できる内容に制限があります。

このように、対応してもらえる業務範囲が大きく異なるため、依頼したい内容に合わせてどちらの専門家へ相談するべきか判断しましょう。

弁護士に相続放棄を依頼するメリット・デメリット

相続放棄を弁護士に依頼するメリットは、すべての業務を依頼でき、裁判所とのやりとりを代理人として一任できることです。家庭裁判所への書類の提出はもちろん、照会書の返送や家庭裁判所との連絡もすべてお任せできるため、あなたはいつもと変わらない日常を送れます。

すでに期限をすぎてしまっている場合や期限が迫っている場合にも、相続放棄が認められるよう家庭裁判所に対して合理的な説明を行ってくれます。そのため、場合によっては期限を迎えていても「相続放棄できない」と諦めなくても済むでしょう。

また、債権者や他の相続人とトラブルになっている場合やトラブルが予測される場合にも、弁護士に対応を依頼できます。あなたの代理人となって相手方と交渉してくれるため、心強いと感じるはずです。

ただし、デメリットとして費用がかかってしまうことが挙げられます。本人に代わって手続きを進められる代理権を持っている弁護士に手続きを依頼すると、5〜10万円程度かかります。もちろん、争いごとへの対応も依頼すると、費用は膨大になると理解しておきましょう。

このようなメリット・デメリットを踏まえると、お金をかけてでもすべての手続きを任せたい場合や相続トラブルの懸念がある場合に弁護士に依頼することをおすすめします。

司法書士に相続放棄を依頼するメリット・デメリット

相続放棄を司法書士に依頼するメリットは、費用を抑えながらも面倒な書類作成や書類収集を依頼できることです。

相続放棄の手続きにおいて、時間と労力がかかるポイントは書類作成と書類収集です。たしかに、家庭裁判所への提出は自分で行う必要があります。しかし、窓口への持ち込みだけでなく郵送でも受け付けてもらえるため、それほど大変ではありません。

手続き中に家庭裁判所から送付される照会書への回答方法についても、アドバイスが受けられます。自分1人ではどのように記載すべきかわからない場合でも、専門家からのアドバイス通りに記載すれば不安はなくなるでしょう。

一方、相続放棄を司法書士に依頼するデメリットは、訴訟に発展した際に対応してもらえない場合がある点です。そのため、債権者や他の相続人とのトラブルを解決したい際には不向きでしょう。

このようなメリット・デメリットを踏まえると、トラブルの心配がない場合や助言をもらえれば自分で手続きを進められる場合に、司法書士に依頼することをおすすめします。

相続放棄を弁護士・司法書士に依頼する際の費用

相続放棄を弁護士・司法書士に依頼する際の費用相場は、それぞれ以下の通りです。

  • 弁護士の費用相場:5〜10万円程度
  • 司法書士の費用相場:3〜5万円程度

このように、弁護士には家事事件に関する代理権があるため、弁護士に相続放棄の手続きを依頼する時の費用相場は高めです。司法書士に依頼できる手続き範囲で問題なければ、司法書士に依頼した方がリーズナブルに相続放棄を完了させられます。

それぞれの費用の内訳は、以下の通りです。

依頼内容弁護士の費用相場司法書士の費用相場
相談0〜1万円0〜5000円
書類作成代行5000〜1万円3000〜5000円
書類取得3000〜5000円※13000〜5000円※1
代理手数料2万〜10万円2万〜3万円

※1別途実費が請求されることが多い。

ここでご紹介した金額はあくまでも相場であって、事務所ごとに設定されている料金形態は異なります。目安として参考にしてください。

「相続放棄に関する費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

相続放棄を依頼する専門家を探す際に知っておきたいこと

相続放棄を依頼する専門家を探す際に知っておきたいことのイメージ

相続放棄の手続きを依頼する専門家を探す際、知っておきたいことがあります。以下の3つのポイントを理解しておけば、納得のうえ専門家へ依頼できます。

  • 相続に強い・専門に扱っている事務所を選ぶ
  • 状況や依頼内容によって加算や高額になることがある
  • 経済的に余裕がない場合でも専門家に相談する手段がある

順番に確認しましょう。

相続に強い・専門に扱っている事務所を選ぶ

専門家に依頼する際は、相続に強い事務所を選びましょう。なぜなら、弁護士や司法書士のなかにもそれぞれに専門分野が異なるからです。

たとえば、離婚・養子縁組に強い弁護士や法人登記に強い司法書士などに相続放棄の相談をしても、十分納得のいく対応をしてもらえないかもしれません。

相続に強い専門家に依頼すれば、過去の事例をふまえて個別に適切な対応をしてくれます。質問をしてもすぐに回答を得られるため、安心感にもつながるでしょう。

そのため、知り合いや知人に弁護士や司法書士がいたとしても、相続を専門にしている方でなければ、新たに探すことをおすすめします。

相続を専門に扱っている司法書士や弁護士を探したいとお考えであれば、ぜひ当サイトをご活用ください。全国の相続に強い専門家を掲載しており、都道府県・市区郡別に専門家を検索できます。

また、相談内容やお悩み別に検索することも可能です。今不安を抱えている相続放棄の手続きの相談に乗ってくれるお住まいのエリアの司法書士や弁護士を探し出せます。

ぜひ、当サイトからあなたの相談相手としてふさわしい司法書士や弁護士を見つけてくださいね。

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状況や依頼内容によって加算や高額になることがある

相続放棄の手続きを依頼する場合、弁護士の費用相場は5〜10万円程度、司法書士の費用相場は3〜5万円程度とご紹介しました。

しかし、状況や依頼内容によって料金が加算されて、最終的な支払い費用が高額になる場合があります。具体的に追加費用がかかる可能性のあるケースは、以下の通りです。

  • 相続放棄申述の期限が過ぎている・期限が迫っている
  • 被相続人の財産調査を依頼する
  • 相続財産管理人選任の申立てをする必要がある

いきなり依頼をせずに無料相談を経て、一度見積もりを取りましょう。

経済的に余裕がない場合でも専門家に相談する手段がある

経済的に余裕がなくて専門家に相談することに躊躇している方もいるかもしれません。しかし、法テラスの民事法律扶助を利用すれば専門家にかかる費用負担を軽減できるため、積極的に活用しましょう。

そもそも法テラスとは、全国どこでも誰でも法トラブルを解決するためのサービスを受けるために国民へ向けた法的支援機関です。法テラスには民事法律扶助業務が設けられており、無料の法律相談や弁護士・司法書士費用の立て替えを行えます。

援助を受けるには、世帯における収入や保有資産の額が一定以下であることが条件です。住んでいる地域によっても基準が異なるため、最寄りの法テラスにて確認してください。

費用がかかるからといって専門家のサポートを諦めず、専門家の力を借りて早期に相続放棄の手続きを終わらせましょう。

参照:民事法律扶助業務|日本司法支援センター法テラス

相続放棄の手続きは弁護士や司法書士の専門家に依頼しよう

相続放棄の手続きを自分で完了させようとすると、必要書類の作成や収集に時間と労力がかかってしまいます。万が一、家庭裁判所で相続放棄が認められなければ、原則再チャレンジはできません。

確実に相続放棄の手続きを終えるためにも、弁護士や司法書士にサポートを依頼しましょう。弁護士に依頼すれば家庭裁判所で行われるすべての手続きに関して代理をお願いできるため、すべてを一任できます。訴訟に発展した際にも安心して任せられます。

一方、書類の作成・収集やアドバイスを受けたいといった限定的なサポートを求めているのであれば、司法書士のほうがリーズナブルに対応してもらえるためおすすめです。

状況や依頼したい内容に合わせて、弁護士と司法書士がどちらがベストかを検討しましょう。多くの事務所では無料相談を実施しているため、ぜひ活用してください。

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記事の著者紹介

安持まい(ライター)

【プロフィール】

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て2018年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年6月7日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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