非上場株式の評価見直しの流れ、4倍近い相続税格差が生じていたと判明

公開日:2025年2月10日

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会計検査院が、国税庁に対して非上場株の相続税算出ルールの見直しを求めていると報じられました。会社の規模や経営権の有無に応じて3種類の方式が適用される現行の算出方法について、選択する方式によって税額に4倍近い格差が生じていることが判明し、問題視しています。

評価方法によって税額に約4倍の差が生じていることが判明

令和6年11月6日、会計検査院は令和5年度の決算検査報告を公表しました。その中で、非上場株式の評価方法について、公平性や時代への適合性に問題があることを指摘しています。

相続税は相続財産を時価で評価した評価額にもとづいて税額が決まりますが、非上場企業の株式は取引相場がないため、時価を容易に算出することができません。そのため、現在の制度では以下3つの方式が設けられており、会社の規模や経営権の有無によって適用できる算出方法が定められています。

    • 類似業種比準方式:同じ業種の上場企業をもとに計算する方法
    • 純資産価額方式:会社の資産や負債をもとに評価する方法
    • 配当還元方式:配当金額をもとに評価する方法

    類似業種比準方式と純資産価額方式の問題点

    類似業種比準方式と純資産価額方式は、企業の規模に応じてどちらか片方もしくは両方を併用して適用することができる算出方法です。これらの算出方法について、どちらを適用するかによって評価額に大きな差が出ていることが判明し、会計検査院が問題視しています。

    令和2年から令和3年にかけて行われた相続税・贈与税の申告のうち、非上場株式が含まれるものから無作為に1600件を調査した結果、類似業種比準方式の中央値が1万1622円だったのに対し、純資産価額方式の中央値は4万2648円にものぼりました。算出方法によって、税額に約4倍もの差が生じることが判明したということです。

    この原因は、類似業種比準方式は評価額が下がる法改正が行われているのに対し、純資産価額方式は昭和53年以降に改正が行われていないことと指摘しています。これは、類似業種比準方式を用いることで、意図的に評価額を低く抑えることができることを意味しています。

    配当還元方式の問題点

    配当還元方式は、同族会社や同族株主がいる会社で少数株主の株式を評価する際に用いられる算出方法です。今回の報告では、この算出方式にも問題点があることが指摘されました。

    配当還元方式は、年配当金額を10%の還元率で割り戻すことにより評価をするのですが、この10%という還元率は昭和39年に制定されて以降改正されていません。現在の金利環境からすると10%は高すぎる水準となっており、結果として税額が相対的に低く算定されているということです。

    会計検査院の所見

    会計検査院は、こうした評価方法の格差を利用して税負担の軽減をはかる動きを危惧しています。

    特に格差が大きい類似業種比準方式と純資産価額方式について、類似業種比準方式を適用するためには、従業員数や総資産額・取引金額が一定の基準を上回る必要があります。税負担をおさえるために、意図的に従業員数などを操作する動きが見られることを、会計検査院は問題視しています。

    評価方式
    非上場会社の規模類似業種比準方式
    ※評価額が低くなる傾向
    併用方式純資産価額方式
    ※評価額が高くなる傾向
    大会社原則的に適用選択可能
    中会社原則的に適用選択可能
    小会社選択可能原則的に適用

    会計検査院は「取引相場のない株式を取得した者の間での株式評価の公平性を考慮するなどし、評価制度のあり方が適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要」と結論付けています。

    今後、会計検査院の指摘をふまえた法改正がなされる可能性があります。法改正が行われる場合、評価額が上がる方向に改正されると考えるのが自然でしょう。

    今回の報告は非上場企業の事業承継に大きな影響を及ぼす可能性があるので、非上場企業の事業承継に関わる可能性がある方は、事前に専門家に相談のうえで対策を講じることが重要になってくるでしょう。

    参考:令和5年度決算検査報告の本文|会計検査院

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    相続プラス編集部

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