NISA(ニーサ)口座は相続できる?手続きの流れと一般口座との違いを解説します

公開日:2024年12月24日|更新日:2026年9月15日

NISA口座を相続すると相続税はかかる?相続時の手続きや注意点と合わせて解説_サムネイル

親が亡くなり、NISA口座が判明したものの、そもそもNISA口座は相続の対象になるのだろうか?という疑問が浮かぶ方もいるでしょう。NISAは「非課税」と言われる一方で、相続が起きると扱いが変わるため、思い込みのまま動くと手続きが止まったり、税金面で想定外が起きたりします。

NISA口座をそのまま持ち続ける場合と、売却して分ける場合のそれぞれの考えを解説します。そのうえで、相続発生後に必要となる手続きの全体像や税金面で注意すべきポイントについて解説します。

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NISA口座とは?

NISA(少額投資非課税制度:ニーサ)とは、個人が資産形成を行いやすくするために設けられた国の制度のことです。通常、株式や投資信託で得た利益や配当には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で保有している金融商品から生じた利益には税金がかかりません。NISAは2014年(平成26年)から始まり、現在の2026年(令和8年)時点では、制度の内容が見直された新NISAが利用されています。

新NISAでは、投資の目的に応じて「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つが用意されています。そして、それぞれの年間投資額や生涯非課税保有限度額などは下記のようになっています。

投資枠投資できる主な商品年間投資上限額生涯非課税保有限度額
つみたて投資枠長期・積立・分散投資を前提とした投資信託120万円600万円
成長投資枠個別株、ETF、幅広い投資信託など240万円1,200万円
合計360万円1,800万円

NISA口座を非課税で保有できる期間には、期限がありません。また、NISA口座で保有していた金融商品を売却した場合、その分の非課税枠は翌年以降に再利用できます。つまり、すでに非課税保有限度額まで投資している場合でも、売却を通じて新たなNISA枠を使い直せる仕組みになっています。

NISA口座の資産を相続する際の基本

NISA口座そのものは、相続人がそのまま引き継ぐことはできません。ただし、NISA口座で保有していた株式や投資信託といった金融資産は、名義人が亡くなると相続財産として扱われ、ほかの金融資産と同様に相続の対象になります。

相続の進め方自体は、NISA口座の場合も預貯金や証券口座と大きく変わりません。遺言書がある場合はその内容に従い、ない場合は遺産分割協議によって誰が資産を引き継ぐのかを決めます。ですが、NISA口座には相続時に特有のルールがあり、口座の扱いや非課税の考え方については注意が必要です。

ここからは上記のような注意点を含め、NISA口座を相続する際の基本ルールを解説していきます。

相続人のNISA口座へ移管できない

相続が発生した場合、被相続人のNISA口座で保有していた株式や投資信託を相続人のNISA口座へ移管することはできません。NISA口座は名義人ごとに非課税措置が適用される制度であり、相続によって名義を引き継ぐことや、相続人のNISA口座にそのまま移すことは認められていないためです。

そのため、被相続人のNISA口座で保有していた金融商品は、相続人が引き継ぐ場合であっても、相続人名義の課税口座で管理されることになります。

被相続人のNISA口座は名義変更ができない

NISA口座は通常の預金口座とは異なり、相続による名義変更を行うことができません。
これは、NISA口座の非課税措置が名義人である被相続人の死亡時点までに限って適用され、死亡時点以後は非課税扱いが終了する仕組みとなっているためです。

被相続人がNISA口座で保有していた株式や投資信託を相続する場合、相続人は相続人名義の証券総合口座または投資信託口座を新たに用意する必要があります。

相続発生後の含み益は課税対象になる

被相続人が亡くなった日までの間はNISA口座の非課税措置が適用されるため、相続開始日までに生じていた含み益については非課税として扱われます。

一方、相続開始日以後に生じた値上がり益や配当などについては非課税の対象とはならず、売却した際の値上がり益は譲渡所得として課税対象になります。これは、相続が発生すると、NISA口座で保有されていた金融商品は亡くなった日の時価で相続人が取得したものとみなされるからです。

このように、NISA口座で保有されていた金融商品を相続した場合、非課税・課税の区切りは相続開始日の前後によって分けられます。相続後の判断を誤らないためには、非課税が適用される範囲と課税に切り替わるタイミングを正しく理解しておくことが重要です。

NISA口座の資産を相続するときの手続きの流れ

NISA口座の相続で必要な手続きのイメージ

NISA口座の相続手続きは、いくつかの段階に分けて進めていきます。ここからは、それぞれの段階で何をすべきか、どのような点に注意すればよいのかを、順を追って具体的に解説します。

NISA口座を開設している証券会社へ名義人の死亡連絡を行う

NISA口座の名義人が亡くなったら、そのNISA口座を開設している金融機関へ相続人が亡くなった旨の連絡を入れましょう。

すると、金融機関側からNISA口座に関する相続手続きの全体像や提出が必要となる書類、手続きの進め方などについて説明を受けられます。この時点で不明点をまとめて確認しておくと、後の関連手続きが滞りにくくなります。

NISA口座の相続手続きに必要な書類を提出する

NISA口座の相続手続きでは、金融機関から案内された必要書類を提出します。金融機関ごとに若干の差異はありますが、一般的に提出を求められる書類は、次の通りです。

  • 非課税口座開設者死亡届出書
  • 金融機関所定の相続関係書類
  • 被相続人の戸籍謄本一式
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 上場株式等移管依頼書

非課税口座開設者死亡届出書や金融機関所定の相続関係書類は、NISA口座の名義人が亡くなった事実を金融機関に正式に届け出て、相続手続きを開始するためのものです。

戸籍謄本は、相続関係を確認するために提出します。相続人全員の戸籍謄本に加えて、金融機関によっては被相続人の出生から死亡までがわかる戸籍一式の提出を求められることがあります。

印鑑登録証明書や遺言書、遺産分割協議書は、誰がNISA口座の資産を引き継ぐのかを確定するために使用されます。また、NISA口座で保有していた株式や投資信託を相続人名義の口座へ移す際には、上場株式等移管依頼書の提出が必要です。

遺産分割の内容や相続人の状況によっては追加の書類を求められる場合もあるため、金融機関からの案内を確認しながら手続きを進めましょう。

名義人のNISA口座の資産を相続人名義の口座へ移管する

相続人が確定すると、被相続人のNISA口座で保有していた株式や投資信託は、相続人名義の証券口座または投資信託口座へ移管されます。この移管は、原則として被相続人がNISA口座を開設していた金融機関内で行われるため、相続人が同じ金融機関の口座を保有していない場合には新たに口座を開設する必要があります。

必要書類と相続人名義の口座が揃うと、金融機関が移管手続きを代行し、NISA口座で保有していた金融商品は相続人の課税口座へ移管されます。

NISA口座の資産を相続したときの相続税評価額と取得価格の決まり方

NISA口座で保有していた株式や投資信託を相続した場合、相続税の計算に用いる相続税評価額と、相続後に売却する際の取得価額の扱いを正しく理解しておくことが重要です。

まず、NISA口座は被相続人が亡くなると非課税措置が終了します。そのため、相続時の相続税評価額や、課税口座に移管された後の取得価額の決まり方が変わります。

ここでは、NISA口座の資産を相続したときに把握しておきたい、相続税評価額の算定方法と取得価額の決まり方について整理して解説します。

なお、一般的な株式の相続に必要な手続きや分割方法、評価額の計算方法については、以下の記事も参考にしてください。

相続税評価額の算定方法は上場株式や投資信託と同じ

NISA口座内の資産も相続税の課税対象となります。相続税評価額の算定方法は、一般の上場株式や投資信託と同様です。

具体的には、相続発生日の時価を基準に、当日・当月・前月・前々月の価格(終値や基準価額など)のうち税法上認められた最も低い価額で評価されます。そのため、評価方法によっては相続発生時の時価より評価額が低くなる場合もあります。

なお、評価額が下がったとしても、相続財産全体の金額や法定相続人の数、適用される税率区分などによって相続税額は左右されるため、かならずしも相続税が軽減されるとは限りません。

取得価額は相続開始日の時価に変更される

NISA口座で保有していた株式や投資信託を相続した場合、相続人の取得価額は相続開始日の時価に変更されます。これは、NISA口座で保有していた金融資産については、原則として相続開始日の時価で新たに取得したものとみなされるためです。

NISA口座の場合、被相続人の死亡日までに生じた含み益が非課税で確定する点が、課税口座の相続とは大きく異なります。

NISA口座と一般的な証券総合口座の取得価額の比較

一般的に、相続により取得した株式などについては、相続後に譲渡した際の譲渡所得税の計算上、取得日は相続発生日とされ、取得価額については被相続人が取得した際のものが引き継がれます。

相続人の一般口座や特定口座に移管された株式などの取得日は、相続発生日となります。そして、取得価額は相続発生日の時価とされます。

そのため、NISA口座に受け入れられていた株式などについては税務上、相続人が相続発生日に、その時価で新たに株式等を取得したものとして扱われることになります。その結果、相続発生日までに生じた値上がり分は相続税の評価対象に含まれ、相続後に生じた値上がり分については譲渡時にかかる譲渡所得税の課税対象となります。

 

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生前贈与を活用したNISAの相続税対策

相続税対策を考える際、生前贈与とあわせてNISAの活用を検討する場合も少なくありません。生前贈与とは、生きている間に資産を次世代へ移すことで相続時に残る財産を減らす手段です。運用益が非課税となるNISAと組み合わせることで、将来の相続を見据えた資産の移転とその後の資産形成を同時に進めることができます。

ただし、NISAは相続税そのものを非課税にする制度ではありません。また、生前贈与についても税務上のルールや注意点があります。制度の仕組みを正しく理解せずに進めると、想定していた相続税対策の効果が得られない場合もあります。

ここでは、生前贈与とNISAを組み合わせて活用する際に押さえておきたい考え方や、非課税メリットの位置づけ、贈与税・相続税との関係について整理して解説します。

NISAは運用益が非課税だから効率的な資産形成が可能

生前贈与とは、親が生きている間に子どもや孫へ資産を移すことであり、相続発生時に残る財産を減らすことで相続税の負担を抑える効果があります。一方、NISAは運用によって得られた利益が非課税となる制度であり、贈与された資金を運用する際の税負担を軽減できます。

生前贈与とNISAの違いをまとめると、以下のようになります。

生前贈与NISA
制度の目的生前に資産を次世代へ移す運用益を非課税で増やす
主な効果相続時に残る財産を減らす運用効率を高める
税金との関係相続税対策の軽減所得税・住民税の軽減
相続税への影響相続財産の圧縮につながる相続税そのものは減らない
活用場面親から子ども・孫への資産移転贈与後の資金運用

これらの利点を親の立場から見ると、生前贈与によって相続財産を減らすことができ、子どもや孫の立場から見ると、受け取った資金をNISA口座で運用することで運用益の税金を抑えて資産を増やすことができます。

子どもや孫の将来を見据え、早めに資産を移し、時間を味方につけた運用を行うことが、結果として家族全体の資産形成につながっていきます。

贈与税の非課税枠である年間110万円を活用

生前贈与は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与額が110万円以内であれば、原則として贈与税は課されません。この非課税枠は毎年利用できるため、継続的に活用することで、少しずつ資産を次世代へ移していくことが可能です。

例えば、相続財産が8,000万円で、法定相続人が5人いるとします。この場合、相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×5人(法定相続人の人数)=6,000万円」となります。つまり、8,000万円(相続財産の額)-6,000万円(基礎控除の額)=2,000万円が、相続税の課税対象となります。

しかし、贈与税の非課税枠を活用して毎年110万円ずつ複数年にわたって生前贈与を行い、相続時点の財産が基礎控除額の6,000万円以内に収まれば、計算上は相続税の課税額はゼロとなります。

ただし、相続開始前の一定期間内に行われた贈与や、贈与の実態が認められない場合など、贈与の時期や内容によっては生前贈与を行っていても相続財産に加算されることがあります。そのため、生前贈与によってかならずしも相続税の負担がゼロになるわけではありません。

死亡前7年以内の贈与が相続財産に含まれる点に注意

2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から、被相続人から受けた生前贈与のうち相続開始前7年以内に行われたものは、一定の条件のもとで相続財産に加算される仕組みとなっています。

具体的には、相続や遺贈により財産を取得した人が被相続人から暦年課税による贈与を受けていた場合です。その贈与が相続開始前7年以内に行われていれば、贈与時の価額を相続税の課税価格に加算して計算されます。

もっとも、すべての贈与がただちに7年間さかのぼって加算されるわけではなく、相続開始日によって加算対象期間が異なる経過措置が設けられています。この加算対象期間は、被相続人の相続開始日によって次のように異なります。

被相続人の相続開始日加算対象期間
~2026年(令和8年)12月31日相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)
2027年(令和9年)1月1日~2030年(令和12年)12月31日令和6年1月1日から死亡の日までの間
2031年(令和13年)1月1日~相続開始前7年以内(死亡の日からさかのぼって7年前の日から死亡の日までの間)

生前贈与を相続対策として活用する際には、贈与の時期と相続開始との関係を含めて慎重に計画を立てることが重要です。なお、相続開始日が令和9年1月2日以後の場合、相続開始前3年以内の贈与を除き、加算対象となる贈与財産の合計額から100万円までは相続税の課税価格に加算されません。

ご自身の場合でどの贈与が相続財産に含まれるのか判断に迷う場合は、自己判断をせず、相続税の取扱いに詳しい専門家へ相談するようにしましょう。

NISA口座を相続する前に、非課税の終了と手続きを正しく理解しよう

NISA口座は、運用益が非課税となる点が大きな特徴ですが、この非課税措置は口座名義人が亡くなった時点で終了します。相続が発生すると、NISA口座そのものを引き継ぐことはできず、保有していた金融商品は相続人名義の課税口座へ移管される点に注意が必要です。

また、相続時点までに生じていた含み益は非課税として扱われる一方、相続後に生じた値上がり益や配当などについては課税対象となります。さらに、生前贈与やNISAを活用した相続対策についても、制度改正や経過措置の影響を受けるため、単純に「非課税だから有利」と判断することはできません。

NISA口座を含む金融資産を相続する際には、非課税が適用される範囲や、相続後の税務上の扱い、必要な手続きを正しく理解したうえで対応することが重要です。不明点がある場合は、早めに専門家へ相談し、状況に応じた適切な判断を行いましょう。

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記事の著者紹介

金田直也(ライター)

【プロフィール】

法律×マーケティングの専門家。司法試験予備試験一次合格後、二次試験最終順位は受験者総数の上位約5%。法律ライター歴5年、執筆記事1,000本以上、弁護士への取材100件以上の豊富な実績を持つ。東証マザーズ上場企業(売上高約20億円)、業界トップクラスの大手弁護士ポータルサイト運営企業をはじめ、多様なクライアントと3年以上の長期継続契約を維持。法律知識×弁護士実務への理解×コピーライティングスキルの総合力で、弁護士事務所をはじめ士業の集客・受任数増加に貢献。

【資格】

司法試験予備試験一次合格

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年12月24日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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