贈与税は親子でもかかる?贈与税がかかるケースとかからないケースや計算方法を解説

更新日:2023年3月23日|公開日:2022年6月15日

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相続税対策として贈与を検討している方もいるでしょう。生前に贈与しておくことで相続税は抑えられますが、反対に贈与税が課せられる場合があります。しかし、親子間であれば贈与しても問題ないのでは?と思われている方も多いものです。親子間であっても、贈与税が課せられるケースと課せられないケースがあるので注意しなければなりません。そこで、この記事では、贈与税の基本に触れながら親子間で贈与税がかかるケースとかからないケースについて、分かりやすく解説します。

そもそも贈与・贈与税とは?

個人の資産を無償で第三者に譲り渡すことを「贈与」といいます。譲り渡す際に対価として金銭や物を受け取る場合が、売買や交換となるのです。贈与の場合は、贈る側が「あげた」、贈られる側が「もらった」という意思表示をすることで成立するという特徴があります。

贈与税は、贈与を受け取った相手に課せられる税金です。贈与を受け取った人は、贈与翌年の2月1日から3月15日までの間に申告して納税します。

贈与は、自分が希望する相手に希望する財産が渡るのを確認できるため、相続よりも安心感があるものです。また、生前に自分の財産を贈与しておくことで、相続時の財産を減らして相続税対策としても有効になります。

ただし、一定額以上の贈与がある場合、贈与を受け取った人には贈与税が課せられます。贈与税の税率は相続税よりも高いため、気を付けておかなければ受け取った側が贈与税の負担に苦しむこともあるのです。

贈与税はどんなときにかかるものなのか

贈与自体は、誰が・いつ・誰に・どれくらい贈与しても問題ありません。しかし、一定額以上の贈与をした場合に、贈与税が掛かってくるので、どのような贈与に対して贈与税がかかるのかを理解しておくことが大切です。

基本的には、次の条件を満たす贈与の場合、贈与税が課せられます。

  • 個人から財産をもらったとき
  • 贈る側と贈られる側の合意がある
  • 贈与の額が年間110万円を超える

個人から財産をもらったとき

個人から財産を無償でもらう場合、贈与税の課税対象となります。

ちなみに、贈与は「個人」から財産を取得した人に課せられる税金のため、贈与する側が「法人」の場合は贈与税がかかりません。法人からの贈与の場合は、贈与税の代わりに所得税・住民税が掛かる点には注意しましょう。

贈与税の対象となる財産は、金銭だけではありません。次のようなものも贈与税の対象となります。

  • 預金
  • 有価証券などの金融商品
  • 土地や建物などの不動産
  • 保険金(契約者と受取人が異なる場合)

また、次のようなケースも「みなし贈与財産」として贈与税の対象となるので注意が必要です。

  • 無利子や低金利での金銭の借入
  • 負債の肩代わり
  • 相場よりも極端に低い価格での財産を譲り受ける

贈る側と贈られる側の合意がある

贈る側が「贈った」、贈られる側が「受け取った」という合意があることが条件となります。口約束でも合意となりますが、後々のトラブルを避けるためにも、贈与契約書を交わすことをおすすめします。

贈与の額が年間110万円を超える

贈与のすべてが贈与税の対象となるわけではありません。1年間で受けた贈与の額が一定額を超えた場合、贈与税が課せられます。その一定額の基準となるのが、基礎控除として非課税となる「110万円」です。

そのため、年間で110万円を超える贈与を受けると、超えた部分に対して贈与税が課せられてしまいます。贈与税の対象は、年間贈与額の合計であるため、複数の人から贈与を受ける際には注意が必要です。また、贈与する側は受ける側の負担が大きくならないように配慮する必要があります。

親子間で贈与税がかかるケース

贈与の場合、親子間で行われるケースが多いものです。

「親子間でのやり取りだから贈与税は掛からないだろう」と考えていると、のちのち高額な贈与税が課せられてしまう可能性があるので注意しなければなりません。特に、親子間では一見すると贈与と思われないようなものもあるので、どのようなケースで贈与税がかかるのかを理解しておく必要があるのです。

親子間で贈与税がかかるケースには、次のようなケースが挙げられます。

  • 生活費、教育費などの目的で受け取ったお金を別の目的で使用した
  • 親に借金を肩代わりしてもらった
  • 親から不動産を譲り受けた
  • 親が生命保険に加入していて保険金を子どもが受け取った
  • 子ども名義の建物の建築費(増築)を親が出した
  • 親の財産の時価より低い金額で子どもが贈与を受けた
  • 親が借りている土地を子どもが地主から買い取った

それぞれ詳しく見ていきましょう。

生活費、教育費などの目的で受け取ったお金を別の目的で使用した

親子間には扶養する義務があるため、贈与であっても生活費や教育費であれば贈与税は課せられません。ただし、生活費や教育費以外の一定額以上のお金は贈与税の対象となります。

受け取った時の目的が、生活費・教育費であっても実際の使用用途が、それとは異なる場合は贈与税の対象となる可能性があります。贈与税の対象となる使用用途としては次のようなことがあるので、注意しましょう。

  • 不動産や車の購入
  • 学資保険の保険料
  • 余りを預貯金に回す
  • 有価証券の購入

親に借金を肩代わりしてもらった

借金の肩代わりも、肩代わりした金額分の贈与と見なされます。この場合、子が親に返済する場合は贈与とは見なされません。ただし、明らかに返済が不可能な額の肩代わりや契約書がない場合、利子や返済期限を設定していない場合は贈与と見なされる可能性が高いでしょう。

また、契約書を交わしていても返済をうやむやにしている場合は、「債務を免除した」となり課税対象となります。

借金の肩代わりの場合、子どもが生活に苦しむほどの多額の借金の肩代わりであれば、例外的に贈与と見なされないケースもあります。

親から不動産を譲り受けた

贈与税の対象財産は、現金だけでなく不動産も含まれます。そのため、土地や建物・マンションなどの不動産を無償で譲る場合は贈与税の対象となるのです。

親が生命保険に加入していて保険金を子どもが受け取った

生命保険は契約者と受取人の違いにより、課せられる税金が異なります。

契約者(保険料を支払う人) 被保険者(保険の対象者) 受取人 税金
親(契約者)以外 贈与税
相続税
所得税

親が契約者として保険料を負担しており、被保険者が親(契約者)以外で生命保険の受け取りを子がする場合、親から子への贈与と見なされ贈与税の対象となります。死亡保険以外にも、親の生存中に満期保険金や解約返戻金を受け取る場合も対象です。

一方、契約者・被保険者が親で受取人がこの場合は、贈与税ではなく相続税の対象となります。ただし、ケガや病気が理由の保険金の場合は非課税です。

子ども名義の建物の建築費(増築)を親が出した

子ども名義の建物を建築や増築する場合、その費用を親が負担し子が親に費用を支払わないときは贈与税の対象となります。ただし、建築・増築部分の所有者が親である場合は、贈与税の対象となりません。

親の財産の時価より低い金額で子どもが贈与を受けた

時価よりも著しく安値で財産を譲渡した場合、時価との差額分が贈与税の対象となります。仮に、時価500万円の財産を10万円で譲り渡した場合、差額の490万円が贈与と見なされるのです。

親が借りている土地を子どもが地主から買い取った

親が借りている土地を、子どもが地主から買取り、親が子に地代を支払わない場合は借地権の贈与となり、贈与税の対象となります。ただし、親が借地権者である旨の申出書を税務署に提出することで、贈与には該当しなくなるのです。

親子間で贈与税がかからないケース

親子間の贈与であっても、基本的には贈与税の対象となります。しかし、次のような場合は例外的に贈与税がかからないのです。

  • 基礎控除の範囲内
  • 生活費や教育費
  • 贈与税の非課税制度を適用する

具体的には、次のようなケースが該当します。

  • 年間110万円以内の金額の贈与を受けた
  • 生活費や教育費目的で援助してもらった
  • 「相続時精算課税制度」が適用された
  • 「住宅取得等資金の贈与の非課税制度」が適用された
  • 「教育資金の一括贈与の非課税制度」が適用された
  • 「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度」が適用された

それぞれ見ていきましょう。

年間110万円以内の金額の贈与を受けた

贈与税には基礎控除として年間110万円の非課税枠があります。そのため、年間の贈与額合計が110万円未満であれば贈与税の対象とならないのです。

ただし、贈与税の基礎控除は贈与した人ごとではなく、贈与を受けた人に対して適用されるので注意しましょう。

例えば、子どもが父親から60万円・母親から60万円の金銭の贈与を受けたとします。この場合、贈与税の対象額は父親+母親の120万円となり、ここから基礎控除分110万円を差し引くため、基礎控除を超えた10万円が贈与税の対象となるのです。

この場合、どちらかの贈与額を減らして合計110万円以内にすることで、贈与税は課せられません。

ただし、毎年110万円以下で定期的に贈与する場合は、「定期給付金契約」もしくは「連年贈与」と見なされないように注意が必要です。「定期給付金契約」「連年贈与」と見なされる場合、年間110万円以下の贈与であっても相続税が課せられる可能性があります。定期給付金契約とは、毎年のように定期的に一定額を贈与する契約です。

例えば、毎年100万円を10年間贈与するという契約が定期給付金契約となります。
この場合、1年毎に贈与を受けるのではなく契約した年に「定期金に関する権利」を贈与されたとみなされ、贈与合計額である1000万円に対して贈与税がかかるのです。また、連年贈与も定期給付金契約同様、毎年一定額を贈与することを指します。

連年贈与の場合は、たまたま毎年贈与していたとみなされるため、毎年の贈与額に対して贈与税がかかります。

  • 定期給付金契約:あらかじめ取り決めて毎年贈与している(贈与合計額に課税)
  • 連年贈与:たまたま毎年贈与していた(毎年の贈与額毎に課税)

定期給付金契約や連年贈与と見なされないための対策としては、次のような方法があります。

  • 贈与のたびに(毎年ごとなど)贈与契約書を作成する
  • 贈与する額や時期を毎年変更する

定期的な贈与ではなく、単発の贈与であるとみなされるような贈与にするとよいでしょう。

生活費や教育費目的で援助してもらった

先述したように家族には扶養する義務があるため、必要な生活費や教育費目的の金銭の贈与の場合、基礎控除である110万円を超えても課税されません。仮に、入学費として200万円かかったとしても、教育に必要な資金のため贈与税の対象とはならないのです。

ただし、入学費として贈与されたのに、教育費以外の用途で使用したり余りを貯金に回したりした場合は、贈与税がかかる可能性があるので注意しましょう。

「相続時精算課税制度」が適用された

「相続時精算課税制度」とは、贈与税ではなく相続税の課税対象とすることを条件として、贈与額から2500万円を控除できる制度です。この制度を利用すると、累計2500万円以下の贈与が非課税となり、2500万円を超えた部分は一律20%の贈与税がかかります。

例えば、4000万円をこの制度を利用して贈与した場合、4000万円-2500万円(特別控除)の1500万円に20%の贈与税として300万円がかかるのです。

しかし、相続時精算課税制度は納税の先送りであり、節税にはならない点には注意しましょう。相続時精算課税制度を利用した贈与では、相続時に贈与財産を相続財産に合計して相続税が課せられます。

上記の場合、贈与された4000万円は相続税の対象となり、相続税からすでに支払った贈与税300万円を控除できるのです。

相続時精算課税制度を利用すると110万円の基礎控除を適用できなくなり、一度選択すると取り消しもできないので注意しましょう。ただし、贈与する人ごとに選択できるので、父親からの贈与は相続時精算課税制度、母親からは110万円の基礎控除ということは可能です。また、贈与する人や受け取る人の条件を満たしている必要があるので、事前に確認するようにしましょう。

「住宅取得等資金の贈与の非課税制度」が適用された

マイホームの資金援助で活用できるのが、「住宅取得等資金の贈与の非課税制度」です。この制度では、住宅の取得に関する贈与に対して、1000万円までを非課税とできます。

ただし、住宅の購入時期や性能などによって非課税額は異なるので、事前に確認するとよいでしょう。

「教育資金の一括贈与の非課税制度」が適用された

教育費としての贈与は贈与税が課せられませんが、この場合は費用が発生するたびごとの贈与です。教育資金として一括で高額な費用を贈与する場合は、「教育資金の一括贈与の非課税制度」を適用する必要があります。

この制度では、金融機関に教育資金口座を開設して、預金や有価証券で教育資金を贈与する場合に1500万円までを非課税とできます。使用目的も、学費だけでなく、学用品購入や塾・習い事など幅広く利用可能です。

「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度」が適用された

結婚や子育て費用の贈与としては、「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度」を活用できます。この制度では、結婚や子育て費用として預金や有価証券を贈与する場合、1000万円を非課税とできるのです。

親子間における贈与税の計算はどうやる?

ここでは、親子間での贈与税の計算方法について見ていきましょう。親子間の贈与であっても、基本的な贈与税の計算とは異なりません。

贈与税の計算方法は、「暦年課税」と「相続時精算課税」を別々に計算していきます。

暦年課税

暦年課税では、1年間(1月1日から12月31日まで)の贈与合計額から、基礎控除を差し引いた額に贈与税の課税率を乗じて算出します。

暦年課税の贈与税額=(その年の贈与額-110万円)×税率-控除

ただし、贈与税の課税率は贈与者と贈与を受ける人の年齢によって異なり、次のようになります。

一般贈与財産 特例贈与財産
特例贈与以外 20歳以上の子や孫が両親・祖父母から受け取る贈与
基礎控除後の課税価格 税率 控除額 基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 200万円以下 10%
00万円超300万円以下 15% 10万円 200万円超400万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円 400万円超600万円以下 20% 30万円
400万円超600万円以下 30% 65万円 600万円超1000万円以下 30% 90万円
600万円超1000万円以下 40% 125万円 1000万円超1500万円以下 40% 190万円
1000万円超1500万円以下 45% 175万円 1500万円超3000万円以下 45% 265万円
1500万円超3000万円以下 50% 250万円 3000万円超4500万円以下 50% 415万円
3000万円超 55% 400万円 4500万円超 55% 640万円

例えば、20歳以上の孫に祖父から年400万円の贈与がある場合は、以下の通りです。

贈与税=(400万円-110万円)×15%-10万円=19万円

相続時精算課税

相続時精算課税では、その年に贈与された額の合計から2500万円を控除し、残額に対して一律20%の贈与税が課せられます。

相続時精算課税の贈与税=(その年の贈与額-2500万円)×20%

仮に、5000万円の贈与があった場合の、贈与税は以下の通りです。

贈与税=(5000万円-2500万円)×20%=500万円

また、この500万円は相続時の相続税から控除できます。

おわりに

親子間の贈与にかかる贈与税についてお伝えしました。個人から無償で財産を譲ることを贈与と言い、一定額以上の贈与は贈与税の対象です。

親子間であっても贈与税は課せられるので、子どものためと思って贈与しても思わぬ贈与税の負担に苦しむこともあります。親子間でも贈与税がかかるケース・かからないケースを理解し、基礎控除や特例などを城津に活用して受け取る側の負担を軽減できるようにする必要があります。

この記事を参考に、親子間の贈与について理解したうえで、贈与を判断するようにしましょう。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報をわかりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月15日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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