弁護士なしでも相続で遺産分割調停できる?メリットや費用・注意点を解説

公開日:2024年5月29日

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遺産分割協議で話し合いがまとまらないと、家庭裁判所で遺産分割調停・審判を行うことになります。遺産分割調停・審判に持ち込まれたら弁護士に依頼したほうがいいのではと考える方も多いでしょう。結論を言えば、弁護士をつけることをおすすめします。この記事では、遺産分割調停の流れや弁護士に依頼するメリット・費用について解説します。

遺産分割調停・審判とは

まずは、遺産分割調停・審判についての基本を押さえていきましょう。

遺産分割調停・審判とは

遺産分割調停・審判とは遺産分割協議で相続についての話し合いがまとまらない際に、家庭裁判所に間に入ってもらい話し合いを進める方法です。

遺言のない相続の場合、法定相続人全員による遺産分割協議が行われます。しかし、遺産分割協議で相続財産の分割方法を決めるには相続人全員の合意が必要です。誰か1人でも内容に納得していない場合、全員が合意するまで協議を続ける必要があります。とはいえ、いつまでも遺産分割協議を続けるわけにもいきません。

遺産分割協議での分割が困難・長引きそうといったケースで、利用するのが遺産分割調停です。相続人が遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることで、裁判所の裁判官・調停員が相続人の間に入って話し合いを進めてくれます。

調停員は中立な立場で相続人の主張を聞いて全員が納得できるような相続の仕方を提案し、全員の合意を得られるようにサポートしてくれるのです。遺産分割調停でも話し合いが進まない場合は、裁判所が相続の仕方を決める審判に移行します。

「遺産分割調停・審判」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺産分割調停・審判の流れ

相続が発生してから遺産分割調停・審判の大まかな流れは、下記の通りです。

  • 遺言書の確認
  • 相続人・相続財産の把握
  • 遺産分割協議
  • 遺産分割協議の決裂
  • 家庭裁判所に遺産分割調停の申し立て
  • 調停で合意できれば調停成立
  • 合意できなければ遺産分割審判へ移行
  • 調停調書または審判書に基づいて遺産分割

相続が発生したら、相続人・相続財産を調査し、遺産分割協議を行います。遺産分割協議で、相続人の合意が得られず決裂した場合、相続人が家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることで調停が行われます。遺産分割調停で全員が合意すれば調停成立です。

しかし、調停でも合意できない場合、遺産分割審判に移行し裁判所が分割方法を決定することになります。遺産分割調停で成立した場合は調停調書、審判の場合は審判書が作成されるので、その内容に従って遺産を分割し相続手続きを進めます。

このどの段階であっても、弁護士のサポートを受けることは可能です。遺産分割協議の段階で弁護士に介入して貰えば、調停になる前に合意できる可能性も高くなるでしょう。

遺産分割調停・審判は弁護士なしでもできる?

結論を言えば、遺産分割調停・審判に弁護士をつけることをおすすめします。ただし、弁護士なしで行うことも可能です。

遺産分割調停の申し立てや調停・審判、それぞれ自分でも手続きや話し合いを進めることができます。しかし、弁護士がいないことで不利になる恐れがあります。

遺産分割調停は話し合いで進められるとはいえ、きちんとした根拠や理路整然とした主張を行う方が有利になります。さらに、審判に移行すると、自分の主張を通すには法的な知識や書類の作成技術がなければ主張を認めてもらえない可能性が高くなります。

また、調停の段階になると他の相続人は弁護士をつけている可能性が高く、その場合は自分の主張を通すのがより困難と言えるでしょう。弁護士なしでも進められるとはいえ、自分に有利に相続を進めたい場合は、弁護士をつけることをおすすめします。

実際、多くの遺産分割調停で弁護士が介入しています。令和4年の司法統計によると、令和4年には1万2981件の遺産分割調停の申し立てがあります。そのうち、弁護士の関与があったのは1万501件となり、弁護士が関与しない件数は2480件です。

さらに、弁護士の関与が合ったうち、4925件(47%)が調停成立しているのに対し、関与しない2480件のうち調停成立したのは804件(32%)という結果も出ています。弁護士が関与する割合が高く、関与したほうが調停での成立を目指しやすいということが言えるでしょう。

遺産分割調停・審判を弁護士に依頼するメリット

ここでは、遺産分割調停・審判を弁護士に依頼するメリットとして次の6つを解説します。

  • 手続きを任せられる
  • 適切なアドバイスを受けられる
  • 調停の場で発言してもらえる
  • 代理で出席も可能
  • 相続人との交渉を行ってくれる
  • 審判でも有利に進めてくれる

手続きを任せられる

遺産分割調停を申し立てるには、さまざまな書類が必要です。

収集する書類だけでなく申立書など自分で作成しなければならない書類もあり、申し立ての準備をするだけでも手間と時間がかかります。弁護士に依頼すれば、遺産分割調停に必要な手続きをすべて任せられるので、手間や時間がかかりません。

適切なアドバイスを受けられる

遺産分割調停では、自分の主張がすべて認められるわけではありません。調停委員は相続人全員の主張を聞き、中立な立場で相続の仕方を提案します。そのため、何かしら妥協点を見つけ出す必要があるでしょう。

しかし、相手の提案をどこまで受けるべきか、相手にどう提案すべきかなど、自分だけで判断していると、不利になってしまう恐れもあります。その点、弁護士に相談しながら進めることで、適切な妥協点などアドバイスをもらえ、自分にとって有利に進めやすくなるのです。

調停の場で発言してもらえる

弁護士は、遺産分割調停の場においても依頼人の横で発言することが可能です。話し合いで進められるとはいえ、自分だけで出席すると何を言えばいいのか分からない・うまく伝えられないというケースは珍しくありません。

調停委員相手に、感情的に主張しても主張が通る可能性は高くないでしょう。弁護士が横にいることで、法的な知識と理路整然とした主張をしてくれ主張を通しやすくなります。

また、弁護士なしで自分の主張を通そうとすると「無理なことを言う」「感情的に話してくる」などで調停委員の印象が悪くなる恐れがあります。必要以上に妥協している場合も譲歩しやすい人と認識されてしまう可能性もあるでしょう。

弁護士が調停委員と話し合いを進めてくれれば、無理な主張や過度な譲歩を防げるので調停委員との交渉にも有利になります。

代理で出席も可能

弁護士は、遺産分割調停に代理で出席してくれます。仕事で忙しい、体調が悪いなどどうしても都合がつかない場合は、自分は出席せずに代理を依頼することが可能です。どうしても顔を合わせたくない相続人がいるという場合も、代理出席してもらうことで顔を合わせるストレスがかかりません。

また、遺産分割調停は必ずしも自分の家の近くの裁判所で行われる訳ではありません。

遺産分割調停が行われる裁判所は、相手方の管轄の家庭裁判所か当事者の合意した家庭裁判所です。相手方が遠方に住んでいると裁判所に行くのが難しいというケースもあるので、その場合も代理を依頼することが可能です。

相続人との交渉を行ってくれる

遺産分割調停中でも、相続人同士で交渉を行うことが可能です。

とはいえ、相続人同士では、感情的になり話し合いが進まないケースは珍しくありません。弁護士が介入することで、法的な根拠にも納得しやすく冷静に話し合いを進められる可能性があります。

相手方が弁護士をつけている場合、こちらの弁護士と相手方の弁護士で交渉することで納得いく解決を見つけやすくもなるでしょう。

審判でも有利に進めてくれる

遺産分割調停で合意できなければ、遺産分割審判に移行します。遺産分割審判は、訴訟にも似た手続きで基本的に書面で審理が進められていきます。

そのため、自分の主張を認めてもらうには法的な主張や立証・書類が必要です。弁護士であれば、審判の場で必要な書類の作成も任せられ、自分に有利に進めやすくなるでしょう。

遺産分割調停・審判を弁護士に依頼する場合の費用

遺産分割調停・審判を弁護士に依頼する場合の費用のイメージ

遺産分割調停・審判を弁護士に依頼すると費用が発生するので、どれくらいかかるかを把握しておくことが大切です。ここでは、弁護士に依頼する際の費用について見ていきましょう。

遺産分割調停・審判を依頼する場合、大きく次の項目の費用が発生します。

  • 相談料
  • 遺産分割調停の着手金と報酬
  • 審判の報酬
  • 実費・日当

相談料

弁護士に依頼する場合、まずは相談からスタートするのが一般的です。

弁護士への相談料の目安は、30分5000円程度となります。なかには、初回相談無料としている事務所も多いので、無料相談を活用するのもおすすめです。

遺産分割調停の着手金と報酬

弁護士に依頼した場合、基本的に「着手金」と「報酬金」が必要です。

  • 着手金:引き受ける際に発生する費用、依頼の成果に関わらず発生する
  • 報酬金:依頼の処理が完了した際の結果に応じて発生する費用

着手金の目安は、20~30万円程度です。
依頼する事務所によっては、依頼人の相続財産の額によって%で設定しているケースもあります。

報酬金は、依頼人が実際に相続した財産額に応じて変動するのが一般的です。
どれくらいの割合で発生するかは弁護士によって異なりますが、多くの事務所が参考にするかつて日本弁護士連合会が定めていた弁護士費用の目安は下記のようになります。

経済的利益の金額報酬金(税別)
300万円以下16%
300万円を超え3000万円以下10%+18万円
3000万円を超え3億円以下6%+138万円
3億円超4%+738万円

たとえば、相続した遺産が1億円であれば報奨金の目安は738万円です。

ただし、実際の報酬金の設定は弁護士によって異なるので、相談の段階で確認するとよいでしょう。

審判の報酬

審判に移行した場合の報酬も、調停での報酬と同じ考え方です。ただし、審判に移行した場合、着手金の有無には注意が必要です。

審判に移行した場合、弁護士によっては再度着手金が必要になるケースがあります。事前に、移行した際の着手金についても確認しておくようにしましょう。

実費・日当

着手金・報酬金とは別に、出張費や実費がかかるケースもあります。実費には、郵便代や交通費・書類の取得費などが該当します。

日当とは、弁護士の時間を拘束した際に発生する費用です。遠方の裁判所に出張する際や出廷の際に発生します。

拘束時間や弁護士によって費用は異なりますが、5万円ほどが目安となるでしょう。ただし、出張した場合など日当とは別に交通費などが発生するケースもあるので、事前に確認しましょう。

「弁護士費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺産分割調停や審判を弁護士に依頼するケースとしないケースの注意点

遺産分割調停・審判を弁護士に依頼する・依頼しない際の注意点や知っておきたいことは以下の通りです。

  • 相続に強く実績豊富な弁護士に依頼する
  • 料金を明確に教えてくれる弁護士を選ぶ
  • 審判で依頼するよりも調停の段階から依頼したほうがメリットが大きいこともある
  • 遺産分割調停を欠席しても不利にはならない

弁護士全員が相続を得意分野としているわけではありません。

相続関連の実績が十分でない弁護士に依頼すると、実績豊富な弁護士に依頼する場合と比較して有利に進められない可能性があるので注意しましょう。遺産分割調停を依頼するなら、相続に強く実績が豊富な弁護士を見つけることをおすすめします。

また、相談時に料金体系を明確に教えてくれるかどうかも大切です。調停時には弁護士に依頼しなくても、審判になれば依頼するというケースもあります。審判になってから依頼しても不利になることはありませんが、調停の段階から審判を見越して弁護士に依頼しておくほうが、より自分の主張が通りやすくなる可能性がある点は覚えておきましょう。

弁護士に依頼しない場合は、自分で調停・審判に出席する必要があります。なお、調停を欠席したからと言って調停で不利な相続が決まることはありません。

相続人全員が調停に参加せず、審判に移行した場合も欠席できますが、調停・審判と欠席を続けていると自分の主張ができずに希望と異なる相続になる可能性がある点には注意しましょう。

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遺産分割調停は弁護士に相談を

遺産分割調停は自分でも対応できますが、法的な知識や適切な判断が必要になるため自分だけでは不利になる恐れがあります。弁護士に相談して適切なサポートを受けることで、自分に有利な相続を進めやすくなるでしょう。

費用は掛かりますが、受け取れる遺産が多くなるなどメリットが大きいことが期待でき、プロのサポートを受けられる精神的な安心感も得られます。

遺産分割調停を検討しているなら、早い段階で弁護士に相談して円満な解決を目指しましょう。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年5月29日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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