マンションを相続する方法は?登記手順や必要書類などを解説します

公開日:2025年9月11日

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マンションの相続登記おけるいちばん大事なことは、相続税申告などのために正確な評価額を把握することです。そして敷地権及び建物の権利の形態を確認する必要がある点や、管理費・修繕積立金の支払い義務の取扱いに注意する必要もあります。このようにマンションの相続時には色々と注意点が多いので、確認や把握をしっかり実施することが大切です。本記事では、その重要な確認や把握すべき事柄を詳しく説明していきます。

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そもそも相続登記とは?手続きの内容と目的

相続登記とは、法務局で申請する「登記」と呼ばれる手続きにより、亡くなった人が所有していた土地・建物の名義を変更することです。登記が完了すると、法務局で管理している不動産の所有者や権利関係などの不動産情報(登記事項)が書き換わり、登記事項証明書を持って不動産の権利を主張できるようになります。

相続登記しないとどうなるのか

相続登記しないときのデメリットは、所有権の証明ができないことで、不動産の売却そのほかの利活用が困難になる点です。期間が経過すると、相続人の世代交代によって関係者の数が増えることにより、登記申請自体が困難になる問題もあります。

令和6年4月から相続登記の義務化がスタート

令和6年4月1日以降は法改正により相続登記が義務化され、不動産の相続を知った日から3年以内に登記申請を行わなくてはなりません。更にこの規定では法律の施行前に発生した相続にも適用されます。

現在の法律では、自分のための相続だと知りながら3年を超えて相続登記しない場合、過料10万円に処される可能性があります。長期間にわたって相続手続きが出来ない場合には、「相続人申告登記」の検討をするなどの対応が必要です。

マンション特有の注意点と登記の違い

マンションの相続では、戸建てと異なる特有の注意点があります。土地及び建物の権利が特殊な形態となる「区分所有」であることや、所有すると管理組合に対する管理費・修繕積立金の支払い義務が課せられるなどが主な理由です。

戸建てとの違い(敷地権・共用部分の取扱い)

マンションの所有権は「敷地権」と「建物の権利」で構成されており、相続登記も計2件行う必要があります。ここで注意したいのが、敷地権と建物の権利を切り離して登記できない点と、建物の権利のうち「共用部分」の取扱い方です。

敷地権は建物から切り離せない

マンションの相続登記において「建物に属する部屋はAさん、敷地権はBさん」とのように切り離して名義変更することはできません。理由としては、区分所有法と登記制度上の原則で「建物と敷地権は分離できない一体の権利」として登記されるためです。

わかりやすく解説すると、マンションは土地及び建物の登記記録のうえで「敷地権付マンション」と「敷地権付でないマンション」に分けることができます。建物の登記記録を確認したとき、敷地権の記載があれば敷地権付マンション、記載がない場合は敷地権付でないマンションです。

  • 敷地権付マンション:区分所有法と登記制度上で「建物と敷地権は分離できない一体の権利」のため、敷地権だけ分離して登記するのは不可
  • 敷地権付でないマンション:敷地権のみ分離して登記することもできるが、利活用に差し支えるため行わない(敷地と建物で名義が異なると売却や担保設定が難しい)

建物の共用部分は団地規約設定の登記状況で扱いが変わる

マンションの建物の権利は、自室として使える「専有部分」と、廊下やエレベーターなどほかの住民と譲り合って使用する「共用部分」に分かれます。相続登記では、専有部分を登記すれば共用部分の登記も完了する場合と、専有部分と共用部分それぞれ登記しなければならない場合があります。

共用部分の登記が別途必要とされるかどうかは、共用部分の登記記録を確認し、建物の専有部分と紐づく内容の規約設定も一緒に登記されているかどうかで見分けます。基本的な手続きの考え方は次のとおりです。

  • 規約設定の登記がある:専有部分を登記すれば、共用部分も自動的に登記が完了する
  • 規約設定の登記がない:専有部分だけでなく、共用部分も別途登記申請が必要

1つの部屋を複数人で共有する場合の注意点

マンションの一室を共有名義で登記することは可能ですが、今後の利活用や管理組合との関係で不都合が生じることがあります。当てはまるのは、もともと夫婦の共有名義だった部屋を相続の際に相続名義で登記するときなどです。

マンションの管理について定める区分所有法によれば、一部屋を複数人で共有する場合、その部屋の共有者で話し合って代表者を決めておかなくてはなりません(34条)代表者が決まらないと、各部屋の所有者が集まって構成する「管理組合」での議決がとれない場合があります。こうしてマンションの管理全体が滞ってしまうと、部屋の資産価値の下落もありえます。

また、部屋の売却を希望する場合でも、共有者が複数いることで必要な同意がとれず、取引できないことがあります。

管理費や修繕積立金はどう引き継ぐのか

マンションを相続すると、部屋の所有権だけでなく、管理費や修繕積立金の支払い義務もそのまま引き継ぎます。もしもこれらを滞納していた場合、その滞納分は、相続人全員で連帯して負担することになり、この負担者には部屋をもらい受けなかった人も含まれます。

また、部屋の元の所有者が亡くなったときは、速やかに管理組合に連絡しなければなりません。このとき、銀行口座を指定して管理費・修繕積立金の新しい支払い方法を設定することになります。注意したいのは、従来の支払い方法となっていた銀行口座(亡くなった人の口座)につき、新しい所有者が決まるか否かに関わらず引落しができなくなる点です。相続に伴う解約・払戻しや、あるいは名義人の死亡にともなって行われる凍結の措置があるためです。

部屋をもらい受ける人が決まらなかったりするうちは、一時的に相続登記によって複数人で1部屋を共有したり、誰の口座で支払うか決めるとともに、管理費などの分担の割合を話し合っておきましょう。

マンションの相続手続きの流れ

マンションの相続手続きの流れのイメージ

マンションの相続手続きは、遺言もしくは遺産分割協議でもらい受ける人を判断したのち、必要な手続き及び書類収集を済ませてから登記を進める流れです。整理すると、次のとおりです。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人と相続財産の調査を行う
  3. 相続人全員で遺産分割協議を行う
  4. マンションの相続登記を行う
  5. 相続税申告を行う

遺言書の有無を確認する

親族が亡くなったときは、まずは法的に有効な遺言書をさがしましょう。有効な遺言書が見つかった場合、内容につき相続人から異論がない限り、遺言に沿って相続登記を進められます。

遺言書には3つの方式があり、本文を自分で作成する「自筆証書遺言」及び「秘密証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」のいずれかで作成されます。このうち、自筆証書遺言(※法務局の保管制度を利用していないもの)または秘密証書遺言を見つけた場合、家庭裁判所で内容を確認する「検認」が必要です。

相続人と相続財産の調査を行う

法的に有効な遺言書がない場合や、遺言書で指定されていない財産があるときは、相続人及び相続財産の状況を調べる必要があります。遺産分割の取り決めを一度で完了させるため、見落としがないようにしましょう。

相続人の確定には、故人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)が必要です。財産の調査では、市区町村役場で固定資産税の課税情報を調査する、法務局で登記事項証明書(登記記録の写し)を請求するなどの方法で行います。

相続人全員で遺産分割協議を行う

遺言書がない場合、相続人全員で遺産をどのように分けるかを話し合う遺産分割協議を行います。この遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、遺言書があっても、遺言とは異なる内容で分割することが可能です。

分割協議で決まった内容は、後のトラブルを防ぐためにも「遺産分割協議書」という書類にまとめることになります。この書類には、相続人全員が署名し、実印を押印しなければなりません。また、登記申請のときにも各自の印鑑登録証明書が必要です。

マンションの相続登記を行う

遺産分割協議がまとまったら、マンションの名義を故人から相続人へ変更するための相続登記を申請します。手続きはオンラインで行えますが、戸籍謄本などの電子文書に対応していない添付書類は郵送しなければなりません。

郵送もしくは法務局の窓口で相続登記を申請する場合は、マンションの所在地を管轄する法務局で行います。登記申請書は法務局のWebサイトでひな形をダウンロードでき、パソコンで作成しても手書きでも構いません。

書類に不備がなく相続登記の手続きが終わると「登記完了証」と「登記識別情報通知書」が交付されます。

相続税申告を行う

相続財産の総額が基礎控除額を超えるときは、相続税の申告と納税が必要です。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。課税される財産のうちマンションの相続税評価額については、建物の固定資産税評価額と、土地の権利である敷地権の評価額(路線価または倍率で評価した価額)を合算して算出します。

相続税の申告と納税は、マンションの元の所有者が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。特に相続税の計算は複雑難解で、無理をすると期間内に間に合わなくなってしまう可能性があるので、早めに税理士に相談しましょう。

マンションの名義変更にかかる費用

マンションを相続して名義変更(相続登記)を行う際には、いくつかの費用が発生します。必要になるのは、登記申請時に課税される登録免許税と、戸籍謄本などの「添付書類の取得費用」です。

また、複雑な手続きを専門家に依頼する場合には、その専門家への「報酬」もかかります。

添付書類の取得費用

相続登記の申請では、相続に関係する人全員分の戸籍謄本のほか、マンションを取得する人の住民票の写しや、遺産分割協議書に添える印鑑登録証が必要です。これらの交付請求では1通ごとに手数料がかかります。

  • 戸籍謄本:1通あたり450円から750円程度
  • 住民票の写し:1通あたり300円程度
  • 印鑑登録証明書:1通あたり300円程度
  • 固定資産評価証明書:1通あたり300円から400円程度

登録免許税

相続登記では課税が発生し、登録免許税として収入印紙で納める必要があります。相続または相続人に対する遺言による贈与(遺贈)の場合の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。マンションの登記では、敷地権は土地の持分として扱われ、土地にかかる登録免許税の対象となることに注意しましょう。

専門家の報酬

相続登記は手続きが複雑で専門知識を要するため、多くの場合には相続登記の専門家である司法書士に依頼されて進行することになります。一般的なマンションの相続登記を司法書士に依頼するときは、報酬として6万円から15万円程度の費用がかかります。状況が複雑な場合・特殊事情がある場合などは、報酬が加算されることがあるため、依頼前に確認するようにしましょう。

 

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マンションを相続するときの注意点

マンションの相続を円滑に進めるにあたっては、共有部分の登記に関する取扱いなどの特有の注意点があります。そのほかにも、以下で解説するポイントに留意しましょう。

なるべく遺言書を作成する

故人が生前のうちに対策できることは、健康なうちに遺言書を作成しておくことです。遺産分割についてあらかじめ指定することで、相続人同士で話合いがまとまらずにマンションの取得者が決まらない問題を防ぎつつ、登記手続きをスムーズに進めるやすくなります。

遺言書の書き方によっては自体がより複雑化する可能性もあるので、内容はシンプルでわかりやすい記述にすること良いでしょう。例えば「部屋の共同の所有者である配偶者に持分を譲る」などといった書き方が考えられます。

評価額を正確に把握する

相続手続きでは、遺産の価値を正確に把握することが大切です。マンションの相続で起こりやすい問題として、相続税申告でのトラブルに注意しなければなりません。昨今の不動産市場を踏まえると、とくに市場価格の変動が起こりやすい都心部の物件には注意が必要です。売買するときの価格(市場価格)の上昇により、相続税評価額を大きく上回り、税金を過少に申告していると指摘される可能性などがあります。

また、遺産分割につき、マンションの部屋を単独で取得した人がほかの相続人に代償金を支払う場合(換価分割)を採用するときは、代償金をいくら支払うべきか正確に判断しなければなりません。代償金の額の判断にあたっては、その基礎になるマンションの価値の正確な査定が前提とされるため、評価額を正しく把握することは非常に重要なことだと言えます。

期限内に相続税を申告・納税する

相続税が課税されるときは、期限内に申告・納付しましょう。この期限を過ぎてしまうと、本来の税額に加えて延滞税や無申告加算税といったペナルティ等が課されてしまいます。

また、相続税の申告期限は、相続財産・相続人の調査や遺産分割調停が長引いているなどのやむを得ない事情がない限り、遅らせることができません。納税のためマンションを売る必要があるときは、売れるまで時間がかかる(通常は3か月から6か月程度)ことを見越し、専門家の力を借りながら迅速に手続きを進めましょう。

マンションの相続登記には特有の注意点がある

マンションは戸建てと異なり、部屋の権利と土地の権利(敷地権)の名義を別人とすることが不可能です。部屋の権利についても、共用部分を別途登記しなければならない場合がある点に注意しましょう。

ほかには、共有する場合は管理組合で議決権を行使する代表者を決めておく必要がある点や、管理費・修繕積立金の滞納分及び今後の支払方法について取り決めるべき点にも注意しましょう。

 

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相続プラス編集部

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相続に関するあらゆる情報をわかりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年9月11日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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