戸籍の広域交付とは?本籍地以外でも戸籍謄本を取得できる新制度をご紹介

公開日:2024年9月24日

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令和6年3月1日より本籍地でしか取得できなかった戸籍謄本が全国どこでも取得できるようになりました。これによって、相続手続きに必要な戸籍収集の負担を大きく軽減できます。とはいえ、始まったばかりの制度のためよく分からないという方も多いでしょう。この記事では、戸籍の広域交付制度の手続きの流れや注意点を分かりやすく解説します。

戸籍証明書等の広域交付制度とは

戸籍証明等の広域交付制度とは、令和6年3月1日の戸籍法改正にともないスタートした新たな戸籍証明等の取得の仕組みです。従来、戸籍謄本は「本籍地」の市区町村役場でしか取得できませんでした。しかし、この制度によって、本籍地のある市区町村役場以外でも戸籍謄本の取得が可能になります。

まずは、この制度の概要を確認していきましょう。

請求できる場所

この制度では、全国どこの市区町村役場であっても戸籍謄本を取得できます。

各種手続きで戸籍謄本が必要になると、それまでは本籍地のある市区町村役場で取得する必要がありました。ただ、現住所がかならず本籍地とは限りません。

ちなみに、本籍地と本籍・住民票記載の住所とは以下の通りです。

  • 本籍地:戸籍を管理している自治体
  • 本籍:戸籍を置いている具体的な場所(都道府県・市区町村名・町丁字名・地番で表示)
  • 住民票の住所:居住地として公的に認められる住所(現住所)

住民票の住所は、転居のたびに届け出が必要です。一方、本籍は転居ごとに届け出る必要がなく、また登録する住所も全国どこでも指定できるため必ずしも現住所や出生地とは限りません。

従来、戸籍謄本が必要になった場合、本籍地の自治体でしか取得できないため、現住所と異なる自治体の場合は、その自治体に赴くか郵送で取得する必要があったのです。しかし、この制度により本籍地の自治体以外で戸籍謄本を取得できるようになりました。

本籍地に関わらず最寄りの市区町村役場の窓口で取得できるので、戸籍謄本取得の手間を大幅に軽減できるようになったのです。

請求できる人

この制度で戸籍証明書等の請求ができるのは、以下の人に限られます。

  • 本人
  • 配偶者
  • 父母・祖父母など(直系尊属)
  • 子・孫など(直系卑属)

この制度では、兄弟姉妹・おじおばの戸籍証明書等の請求はできません。上記の戸籍謄本が必要な場合は、従来通り本籍地の市区町村役場で手続きする必要があります。

また、この制度を利用して請求手続きできるのは、本人のみとなり代理人での請求はできません。さらに、本人は市区町村役場の窓口に出向く必要があり、郵送による請求ができない点にも注意しましょう。

対象となる戸籍

この制度で請求できる戸籍は以下の通りです。

  • 戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 除籍の全部事項証明書(除籍謄本)
  • 改製原戸籍謄本

改製原戸籍謄本とは、戸籍法改正にともない様式が変更された場合の変更前の戸籍謄本のことを言います。

戸籍の広域交付制度を利用すると相続手続きが便利に

各種相続手続きでは、「被相続人が亡くなったこと」「相続関係」を確認するために、主に以下の2種類の戸籍証明書等が必要です。

  • 被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本または除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本

たとえば、遺産分割協議で相続登記する際の必要書類は以下の通りです。

  • 被相続人の出生から死亡まで在籍していたすべての戸籍・除籍謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 法定相続人の戸籍謄本・印鑑証明
  • 固定資産税課税明細書
  • 相続する人の住民票

仮に、被相続人が転居や結婚で本籍地を何度も変更している場合、それぞれの本籍地の市区町村役場で戸籍謄本を取得する必要があるのです。とはいえ、被相続人の本籍地のすべてを把握している相続人は多くはないでしょう。そのため、まずは死亡時の戸籍謄本を取得して、その戸籍謄本から前の本籍地を確認し請求という作業を出生時まで繰り返します。

本籍地が近隣であれば窓口に出向きやすいですが、本籍地が遠方というケースも珍しくありません。その場合は、遠方まで出向くか郵送で取り寄せる必要があるのです。戸籍謄本の取得が1回で完了せず複数回この作業を繰り返さないといけないケースが多く、相続人の大きな負担となっていました。

戸籍証明書等の広域交付制度がスタートしたことで、基本的に相続人は最寄りの窓口に1回出向くだけで手続きに必要な戸籍謄本がすべて揃うようになります。戸籍謄本によっては即日交付されずに再度出向く必要があるケースもありますが、それでも従来の本籍地でしか手続きできない状態よりも大幅に負担は軽減されるでしょう。

「相続登記の必要書類」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

戸籍の広域交付請求から発行までの手続きと必要書類・費用

戸籍の広域交付請求から発行までの手続きのイメージ

ここでは、広域交付請求から発行までの手続きの流れや必要書類・費用について解説します。

手続きの流れ

大まかな手続きの流れは、以下の通りです。

  • (必要な場合)来庁予約
  • 来庁~必要書類の提出
  • 手数料の支払い
  • 証明書の受取

(必要な場合)来庁予約

自治体や時期によっては混雑緩和などの理由で予約が必要なケースもあります。申請する市区町村役場で来庁予約が必要か確認し、必要な場合は電話やインターネットで来庁予約を行いましょう。予約必須でない場合も予約しておくことでスムーズに受け取りができます。

また、自治体によっては広域交付請求できる時間が通常の窓口営業時間と異なるケースもあるので、事前に確認しておくことをおすすめします。

来庁~必要書類の提出

予約した日時にあわせ自治体の窓口に出向いて、必要書類を提出します。必要書類については後述するので参考にしてください、

手数料の支払い

取得する戸籍証明書等の種類に合わせた手数料を支払います。

証明書の受取

請求した証明書が発行されるので受け取って確認しましょう。発行は、即日~1週間程度が目安です。即日で発行されない場合は、後日改めて受け取りに出向く必要があります。

また、即日発行される場合でも他市区町村の戸籍発行は通常の戸籍発行よりも時間がかかるケースも少なくありません。時間に余裕をもって手続きを行うようにしましょう。

必要書類

請求手続きする際の必要書類は以下の通りです。

  • 申請書
  • 顔写真入り本人確認書類

申請書は窓口で取得できるので、その場で記入して提出しましょう。記載内容は自治体によって異なりますが、本籍地や戸籍筆頭者の名前・生年月日が分かっているとスムーズに手続きできます。役所に行く前に確認しておくようにしましょう。

顔写真入り本人確認書としては、マイナンバーカード・運転免許証・パスポート等が該当します。健康保険証などでは手続きできないので注意しましょう。

費用

一般的な戸籍の種類別の費用は以下の通りです。

取得書類費用
戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本)450円/1通
除籍の全部事項証明書(除籍謄本)750円/1通
改製原戸籍謄本750円/1通

自治体によっては異なる場合もあるので、事前に確認するとよいでしょう。

戸籍の広域交付に関する注意点

戸籍の広域交付に関する注意点としては、以下の4つが挙げられます。

  • 請求対象外の戸籍がある
  • 兄弟姉妹やおじおばの戸籍は請求できない
  • 郵送や代理での請求はできない
  • 現状は手続きに時間がかかっている

それぞれ詳しくみていきましょう。

請求対象外の戸籍がある

以下の戸籍については、この制度で交付を受けられません。

  • 戸籍抄本
  • 除籍抄本
  • 戸籍の附票
  • コンピューター化されていない戸籍

戸籍抄本・除籍抄本とは、戸籍謄本・除籍謄本に記載されている人のうち1人分のみを抽出して記載した証明書です。戸籍の附票とは、その本籍の中での住所地の変遷を記載した証明書です。住民票では前住所までしか記載されないのに対し、戸籍の附票なら本籍のある期間の住所の変遷がすべて分かります。

また、この制度はそもそも戸籍管理のシステム化を利用して成り立っている制度です。そのため、コンピューター化されていない戸籍は取得できません。

手書きで戸籍を管理していた時代を含めて、ほとんどの戸籍はコンピューター化されており、取得できるケースが多いでしょう。しかし、自治体の作業が間に合っていない・コンピューター化の時点で戸籍から抹消されているなど一部の事情によりコンピューター化されていない戸籍もあります。多いケースではありませんが、取得できない可能性もある点は覚えておきましょう。

兄弟姉妹やおじおばの戸籍は請求できない

前述のとおり、兄弟姉妹や叔父叔母の戸籍証明書等は取得できません。兄弟姉妹の戸籍謄本が必要な場合は、従来通り本籍地の市区町村役場で取得する必要があります。

本籍地が遠方という場合は、郵送での取得も可能です。郵送で取得する場合は、必要書類・費用・返信用封筒と切手をそえて送付します。郵送での取得方法は自治体によって異なる場合もあるので、事前に確認するようにしましょう。ただし、郵送で取得する場合は送付されるまでに時間がかかる可能性があるため、早めに手続きすることが大切です。

司法書士などの専門家であれば戸籍の収集から依頼もできるので、相続手続きを含めて依頼を検討するのもよいでしょう。

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郵送や代理での請求はできない

広域交付制度を利用する場合、本人が市区町村役場の窓口で手続きする必要があります。郵送での請求や委任状による代理での請求はできないので、注意しましょう。なお、弁護士などの専門家であっても現状では請求は認められておりません。

窓口では顔写真入り本人確認書での本人確認も行われるため、必ず本人が手続きに行くようにしましょう。

現状は手続きに時間がかかっている

広域交付制度はスタートしたばかりの制度であり、令和6年8月時点では制度を利用して取得するのに時間がかかっています。この制度では、他自治体の戸籍を取得する際には本籍地への電話確認が必要になるため、通常の戸籍発行よりも時間がかかります。
また、システム障害や窓口の混雑などの課題もあります。

スムーズに発行できるケースでは申請日にそのまま交付を受けられますが、自治体によっては1週間ほど時間がかかるケースもあるので注意が必要です。申請日に時間がかかってもいいようにスケジュールを調整しておく、数日かかるケースを想定して相続手続きを進めるなども検討しておくようにしましょう。

戸籍収集を含めて相続手続きは専門家に相談を

戸籍証明書などの広域交付制度では、最寄りの市区町村役場でも他自治体を本籍とする戸籍証明書の取得が可能です。この制度を活用することで、相続手続きに必要な戸籍謄本の収集の手間を大幅に軽減でき、効率よく手続きを進められるでしょう。
ただし、兄弟姉妹など一部取得できない戸籍もあり、取得できないケースは従来通りの方法で取得する必要があります。

また、戸籍の収集は相続手続きの第一歩に過ぎません。取得した戸籍をもとに各種手続きをさらに進めていく必要があるので、スムーズに相続手続きを進めるなら、戸籍収集の段階から専門家に相談することをおすすめします。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て平成30年よりライターとして独立。令和2年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識などわかりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年9月24日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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