推定相続人とは?法定相続人との違いや相続人を調査する方法と併せて解説

公開日:2024年10月30日

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「推定相続人って相続人とは違う?」現時点で将来相続人になると推測されている人のことを推定相続人と呼びます。推定相続人と法定相続人・相続人は必ずしもイコールになるわけではないため、違いを理解しておくことが大切です。この記事では、推定相続人の意味や調べ方、法定相続人との違いについてわかりやすく解説します。

推定相続人とは

遺言書作成など、相続の準備を開始する際や、親が亡くなった時に誰が相続人になるかを知りたいといったケースでは、推定相続人を把握することが大切です。

ここでは、まず推定相続人について確認していきましょう。

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いま相続が発生したら相続人になると推測される人

推定相続人とは、「現時点で相続が発生した場合、相続人になると推測される人」を指します。まだ相続が発生しておらず、あくまで相続人と予測される人であることから、「推定」の相続人となるのです。

たとえば、存命中の夫Aに妻Bと子どもC・Dがいたとします。仮に、いま夫Aが亡くなると、財産は妻Bと子どもC・Dが相続することになるので、妻Bと子どもC・Dが夫Aの推定相続人です。

ただし、推定相続人はあくまで現時点で予測される相続人であるため、実際に相続できるとは限りません。上記の例では、もし夫Aより先に妻Bが死亡すれば、相続人となるのは子どもC・Dのみです。死亡以外にも離婚や養子縁組・相続放棄・遺言などで推定相続人と実際の相続人が異なるケースは少なくないでしょう。

また、推定相続人になれる立場であっても相続廃除・相続欠格である人は推定相続人にはならない点にも注意が必要です。

  • 相続廃除:被相続人が家庭裁判所に申し立てて相続権を失わせた人
  • 相続欠格:被相続人の殺害などの相続に関する違法行為・犯罪行為を行い相続権を失った人

相続廃除とは、被相続人が家庭裁判所に申し立てて相続権を剝奪する手続きによって相続権を失った人です。被相続人への虐待や侮辱・著しい非行などがある場合で、相続廃除が認められます。

一方、相続欠格は被相続人や他の相続人の殺害や詐欺・脅迫などの欠格事由に該当した人です。相続欠格は相続廃除のように手続きは必要なく、欠格事由に該当することで当然に相続権を失います。

推定相続人の相続順位

推定相続人の相続順位は、民法の法定相続人の相続順位と同じです。民法では、法定相続人になれる範囲と順位を以下のように定めています。

法定相続人順位
配偶者常に相続人
直系卑属(子ども・孫・ひ孫など)第1順位
直系尊属(父母・祖父母など)第2順位
傍系血族(兄弟姉妹・甥・姪)第3順位

被相続人の配偶者は、常に相続人になれます。なお、この場合の配偶者とは戸籍上の婚姻関係にある人を指し、事実婚や離婚した人などは配偶者とはみなされないので注意しましょう。

加えて、配偶者以外で相続順位のもっとも高い人も相続人となります。たとえば、被相続人に配偶者と子どもがいれば、配偶者と子どもが相続人です。相続順位の高い人が相続人になった場合、それより下の順位の人は相続人になれないため、この場合で被相続人の親や兄弟姉妹がいても、親と兄弟姉妹は相続人にはなれません。

また、相続順位の上位者が同順で複数いればその全員が相続人となり、死亡した人がいれば代襲相続となります。上記の例で、子どもが2人いれば子どもは2人とも相続人になります。しかし、子どものうち1人が死亡しており、死亡した子どもに子(被相続人の孫)がいれば、孫が相続人となるのです。

上記に該当する範囲・順位の人が推定相続人になれます。シンプルな相続であれば配偶者と子どもというケースが多いでしょう。しかし、離婚や再婚をしており親族が多い・養子縁組をしているなどで相続人が複雑になるケースも少なくありません。

推定相続人の特定の仕方については後ほど詳しく解説するので参考にしてください。

「法定相続人の範囲や順位」について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

推定相続人と法定相続人の違い

推定相続人と似たような言葉に法定相続人があります。

法定相続人とは、相続開始後に法律によって相続権が認められている人です。推定相続人が、相続開始前(被相続人が存命中)に相続人であると推測される人を指すのに対して、法定相続人は被相続人が死亡した時点で相続権がある人という違いがあります。

推定相続人の時点から家族関係などの変化がなければ、推定相続人がそのまま法定相続人になります。しかし、推定相続人=法定相続人とならないケースもあるので注意しましょう。

現在は推定相続人でも将来的に推定相続人や法定相続人とならないケース

現時点では推定相続人でも、将来的に推定相続人や法定相続人とならないケースは以下の通りです。

  • 推定相続人が亡くなった
  • 離婚
  • 養子縁組の解消
  • 相続廃除
  • 相続欠格

推定相続人が被相続人よりも先に亡くなってしまうと推定相続人ではなくなります。ただし、推定相続人には代襲相続も含まれるため、推定相続人が死亡している場合は代襲相続人まで調べることが必要です。

また、離婚や養子縁組解消などで戸籍上の関係が無くなった人も推定相続人ではなくなります。前述したように、相続廃除や相続欠格に該当する人も、その時点で推定相続人から外されます。

このように、現時点では推定相続人であっても相続開始までの状況によっては、法定相続人とならないケースがあることは覚えておきましょう。

相続人とは

相続人とは、実際に財産を相続することになった人です。そのため、推定相続人・法定相続人とも異なる可能性はあります。

法定相続人と相続人が異なる代表的なケースが「相続放棄」と「遺言」です。法定相続人は相続権を有する人のため、相続放棄しても法定相続人となります。しかし、相続放棄した人は、財産を相続しないため相続人ではありません。

また、遺言で法定相続人の誰か1人にすべて相続させる・法定相続人以外に遺贈すると遺している場合も、他の法定相続人が実際に財産を取得できずに相続人とならない可能性があります。
ただし、兄弟姉妹を除く法定相続人には遺留分が認められているため、不公平な遺言や遺贈であっても一定の財産を取得し相続人になるケースもあります。

このように、「推定相続人=法定相続人=相続人」とはならない可能性もあるので、違いを理解しておくことが大切です。

推定相続人を調査する方法・流れ

推定相続人を調査する方法・流れのイメージ

シンプルな相続であれば推定相続人の把握は難しくありませんが、代襲相続が発生しているなどで推定相続人が複雑になっているケースも少なくありません。ここでは、推定相続人を調査する方法や流れについて解説します。

調査方法

推定相続人は、被相続人になる予定の人の「出生から現時点までの戸籍謄本の収集」で調べることが可能です。

戸籍謄本には、現時点の情報しか記載されていません。また、結婚や離婚・本籍地の異動などで戸籍は新たにつくられるため、それ以前の情報はその前の戸籍を辿る必要があるのです。

たとえば、結婚により新たに夫婦の戸籍がつくられると、結婚前の兄弟姉妹の情報は今の戸籍では確認できないため、結婚前の戸籍を取得する必要があります。また、子どもが死亡している場合などは、その子の戸籍を収集して代襲相続まで確認しなければなりません。

戸籍を取得したら記載されている「被相続人の出生日」と「戸籍の編製日」を確認しましょう。編製日が出生日以前であれば、それ以上戸籍をさかのぼる必要はありません。

反対に、出生日より編製日が後ならその前に戸籍があるので以前の戸籍の取得が必要です。取得した戸籍の「従前戸籍」の欄に、以前の戸籍が管理されている市区町村役場が記載されているので確認し取得しましょう。

このように現時点からさかのぼって出生までの戸籍を取得することで、被相続人の結婚歴・子どもの有無・兄弟姉妹が分かり、推定相続人を把握できるのです。

戸籍が複数枚に渡り関係性が複雑になっている場合、戸籍を収集しても読み取るのが難しい場合もあるでしょう。推定相続人の特定は戸籍の収集を含めて専門家に依頼することが可能なので、検討するのもおすすめです。

戸籍謄本を収集する流れ

戸籍謄本は、最寄りの市区町村役場の窓口で取得することが可能です。従来は本籍地を管轄する市区町村役場でしか取得できませんでしたが、令和6年3月1日より広域交付制度が開始され、本籍地の役場でなくても取得が可能となりました。

そのため、本籍地が遠方や取得したい戸籍謄本が複数あるという場合でも、最寄りの自治体窓口1か所で取得することができます。

広域交付制度を利用して戸籍謄本を収集する大まかな流れは以下の通りです。

  • 来庁予約(必要なら)
  • 窓口に必要書類と本人確認書類の提出
  • 交付

広域交付制度では全国どこの役場であっても取得できるので、都合の良い窓口に申請書とマイナンバーカードなどの本人確認書類を提出します。「出生までの戸籍謄本・除籍謄本が必要」「推定相続人を特定したい」旨を伝えれば、すべての戸籍謄本を発行してもらえます。申請後は即日か1~2週間ほどで戸籍謄本が交付されるので受け取りましょう。

なお、広域交付制度で請求できるのは、本人・配偶者・父母や祖父母(直系尊属)・子や孫(直系卑属)に限られます。

また、コンピューター化される前の戸籍など一部の戸籍は広域取得精度の対象外です。兄弟姉妹やその代襲相続まで調べたい場合は、本籍地の窓口に行くか郵送で取得する必要があるので注意しましょう。

推定相続人の特定は相続準備などの入り口に過ぎません。特定後に遺言書作成や相続対策などがスタートするので、書類収集や推定相続人特定だけでなくその先まで見越して専門家に相談しておくのもよいでしょう。

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推定相続人の特定は専門家に相談を

推定相続人とは、全時点で相続人と推測される人のことです。推定相続人であっても、相続放棄や相続欠格・相続廃除などで法定相続人や相続人とは異なるケースもあります。

推定相続人は出生から現時点までの戸籍を調査することで特定できますが、書類の収集や戸籍をたどるのは大変になる場合もあります。

自分では特定が難しい・推定相続人の特定後に遺言書を作成したいなどは、書類収集から相続までサポートしてくれる専門家に相談することをおすすめします。

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年10月30日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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